ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
今回はボーボボキャラからあの人がついに参戦!
皆様、あの人ですよあの人!
今やすっかりオラリオの街の名物となっているバベルの塔。
そこでは下層に降りるとダンジョンに繋がっており、毎日多くの冒険者たちが魔石を集めに潜ったり、また別の冒険者はさらなる自分磨きの為に潜ったり、またまた別の冒険者に至ってはお弁当片手にピクニック気分で潜って行ったりと、とにかく沢山の冒険者達が利用しているのがダンジョンなのだそうだ。
ダンジョンの内部構成は浅い階層だと弱いモンスターしか現れないが(時々例外もある)その分稼ぎにはあまり向かず、ある程度強くなったら即座に下の階層へと進まれてしまう。要するに初心者用の階層と認識されている。
そして、深い階層へと潜る度にモンスターの強さは跳ね上がっていき、それに比例するかのように魔石やドロップアイテムの質も格段に上がる。
そんな訳なので冒険者達はより良い稼ぎを手にする為に深い階層へと潜る事を目標としている。
それは、この少年も同じようでーーー
***
「何度も言うけど、ダメなものはダメなの!」
「そこを何とか! お願いします!」
ダンジョン前の受付にて受付嬢のエイナに頭を下げて懇願しているのはお馴染み我らがベル・クラネルくんであった。
そして、その横辺りには既に眉間にナイフがぶっすりと刺さって倒れている首領パッチと天の助の姿があった。
どうやらこの場面に入る前にふざけ回ってた為にエイナの手によって粛清された後のようだった。
「お願いしますよエイナさん! 10階層へ行く事を許可して下さい! このままじゃ借金の返済が間に合わなくなって神様に頼らなくちゃならなくなるんですよぉ!」
現在、ベルの所属するヘスティアファミリアは多額の借金を抱えていた。
その借金を返済すべくベルは冒険者らしくダンジョンに潜って稼ごうとしていたのだが、そこでこのエイナに待ったを掛けられてしまっていたのだった。
と言うのも、ベルは過去に無断で5階層へと潜ってしまいそこでミノタウロスと遭遇してしまったのだった。
幸いにもたまたまその場に居合わせていたアイズ・ヴァレンシュタインの手によってミノタウロスは倒されたのだが、もしかしたら命はなかったかも知れない。
そんな訳でエイナから無断で5階層より下へ行く事を禁じられてしまっていた訳だった。
無論、それでは到底返済が間に合わないので仕方なくダンジョンの他に複数のバイトを掛け持つ事になったのだが、冒険者でもあるベルとしては冒険者で返済がしたい。
なのでこうして頼み込んでる次第なのであった。
「何度も言うけどねぇベル君。君はまだ冒険者になって日が浅い新人なんだよ。そんな新人が先走った結果大怪我しちゃったり場合によっては死んじゃったりした事例だってあるんだから」
「分かっています! でも」
「でもじゃないの! それに、ベル君ハジケリストじゃないでしょ?」
「そ、そうですけど・・・」
ハジケリストーーー
それは近年オラリオにて急増したスキルの一つで、このスキルを有した冒険者は基本的にほぼ不死身となり無茶なダンジョン探索も難なくこなせるようになっていく夢のようなスキル。
しかし、その反面スキル所持者の思考が著しく変質していくと言うデメリットがあるが、それでも不死身になれると言う魅力には逆らえず、ついにはこのオラリオの街の実に8割の冒険者がハジケリストになってしまっていた。
それで、そのハジケリストというスキルがベルは憎らしく思えた。
何しろ、この不可思議なスキルがオラリオで蔓延した為にベルがこのオラリオの街で数多あるファミリアから尽く門前払いを食らったのだから。
ベルからしてみればこのスキルは親の仇と同じくらい憎らしい存在にも見えた。
そんなベルを心優しい女神ヘスティアが拾ってくれてかつ自身のファミリアへと誘ってくれた。
まぁ、2匹ほど余計な非常食がついてたのは計算外なのだが、この際贅沢は言わないでおく。
とにかく、ここは何としても女神ヘスティアに自分が如何に優れているかを見せつけたかった。
そんであわよくば彼女とイチャイチャ出来る関係になれば良いなぁ。なんて邪な考えもあるにはあるが。
「とにかく、ベル君はハジケリストのスキルを持ってないんだから無茶はできないの! もし無茶して大怪我なんかしたらそれこそヘスティア様に心配かけちゃうじゃない」
「う! そ、それを言われるとーーー」
ヘスティアの名前を出されるとさっきまでのベルの勢いは何処へやらと思わんばかりに萎んでしまった。
大恩あるヘスティアに無用な心配などかけさせる訳にはいかない。
だが、このままでは確実に彼女に頼る羽目になる。
二進も三進もいかないとはこの事なのだろうか?
「とは言え、このままってのも君的には辛いんだよね」
「はい・・・」
「う〜ん・・・」
暫し思案にくれるエイナ女史。
待つ事およそ1分くらいーーー
「よし、それじゃベルくんの装備の新調をしよう!」
「へ、装備・・・ですか?」
余りに突拍子な答えに思わずベルは聞き返した。
「そ、今のベルくんの装備だと心配なんだけど、強い防具を装備してれば少しは安心できるでしょう」
「そ、そうです、ね」
「だったら俺の装備を使いな!」
そう言って不死鳥の如く蘇った天の助が取り出したのは全身に「ぬ」と書かれた不気味な鎧一式だった。
「えと、何これ?」
「その名も【ぬアーマー】だ。この全身にびっしりと書かれたぬの力がきっとお前を守ってくれるぞ」
自信たっぷりに言う天の助だったが、はっきり言ってこんなの着たくない。
それこそ防御力が高くたってお断りしたいところだ。
「さぁ! 早速試着してくれたまえ! そして君もぬの境地に辿り着こうではないか!」
「えぇ! 僕がこれ着るの?!」
さぁさぁ、と勧められて今一度このぬアーマーを見た。
うん、絶対に着たくない。例えこれしかまともな防具がなかったとしてもこんな防具はごめん被りたい。
「その防具、俺にくれ!」
そんな中、突如として名乗り出たのはこの町で有名な(自称)冒険者のAさんだった。
しかも何故かパンイチでだった。
「誰ぇ!? ってか何でパンイチ!?」
「くっ! この姿には聞くも涙語るも涙な訳があるんだ」
因みに彼は昨晩キャバクラで散財した後にそれを取り返そうとギャンブルに手を出した為に身包みを剥がされたのだそうだ。
「くっ! あの時俺が・・・俺がついていれば・・・」
「うわぁ、奈落だぁ」
「畜生、泣かせやがって」
「あんたぁ男だよ!」
呆れるベルの横では何故か号泣してる首領パッチと天の助。
「何でお前らはそんなに泣けるの?」
「おっしゃぁ! それなら俺のこのぬアーマーをくれてやる!」
「ありがとう! これで俺はまた再起出来る!」
そしてぬアーマーを受け取った男は、早速そのアーマーを質屋に持っていき換金してしまった。
「ぐへへ、この金で、この金でまたギャンブルが出来る。それで、今度こそ、今度こそ!」
「使用する目的が奈落すぎるよあの人!」
因みに彼はその後再び賭け事に挑んだのだが、結局また負けてしまい今度は下着まで取られてしまいそのまま簀巻きにされてオラリオ郊外に捨てられたらしい。
その後、なんやかんやあって後に彼はとある人気アイドルグループのバックダンサーになるのだが、そこら辺に関する記述は残されていないそうだ。
「さてと、邪魔者も片付いたし、早速行こうか」
「エイナさんって、時々恐ろしいですよね」
今後彼女を怒らせたら命はないなと確信するベル君であったそうな。
「ベル君は知らないだろうけど、このバベルの塔の上層階は冒険者が使う装備の販売をしてるんだよ」
「そうなんですか!? ぜひ見てみたいです!」
「ふふっ、そう来ると思ったよ。私も今丁度勤務が終わったところだから案内してあげるよ」
「有難うございます」
美人な受付嬢のエイナと同行できる事にベルの頬は赤く染まり出した。
ちょっと怖いところもあるけど彼女は優しく丁寧でその上美人と来た正に受付嬢に立つべき人だと思わせられる。
そんな素晴らしい女性だった。それくらい完璧な女性ならばちょっとくらい欠点があったとしても目を瞑る事は容易だ。
「それじゃ、早く上の階に行きましょう」
そう言って彼女は上の階へと登って行った。
・・・ロープでーーー
「へ?!何でロープ!?」
「階段やエレベーターは混むから嫌なの。それに最近受付嬢の仕事ばっかりで腕が鈍っちゃうといけないから移動は専らこれにしてるのよ。さ、ベルくん達も早く登って!」
「えぇ!? 僕たちもぉ!?」
拒否権はないらしい。
仕方なくベル達三人はエイナの後に続きロープを伝ってバベルの塔を登って行った。
因みに登ってる最中に彼女の事をチラチラ見ていたベルであったがその刹那に彼の右頬をナイフが掠めてからは一切見ないように努めていた。
「つ、ついたぁ!!」
「8分間30秒・・・鈍ったわねぇ。現役の頃なら5分は軽く切れたのに」
一人悔しそうに呟くエイナ女史を見て、一体彼女の現役ってなんだったんだろう?
と密かに疑問に思いつつも口には出さないようにした。
なんと言うか関わったらやばそうに思えたのでーーー
***
その後、ベル達は上級冒険者達御用達の装備の値段に驚き、その後さらに上の階に登りそこでお手頃価格になってる事にまた驚くことになったのだがーーー
「何よ! 私の美貌に合う防具がないじゃない!」
一人喚き散らす首領パッチと何故か展示ガラスに映る自分の姿にうっとりしてる天の助。そんな好き放題してる二人を放置して、ベルは早速自分に見合う防具探しに入った。
駆け出しレベルの作品なだけあってとてもお財布に優しいリーズナブルなお値段となっていた。
その分性能はお察しなのだが。
(まぁ、この際性能とかは無視しても良いよね。僕の場合大概は無傷だし)
ベルの保有する頑強のスキルの効果によってベルの防御力はとんでもないくらいにまで跳ね上がっていた。
その為かハジケリストでもないのにハジケリスト達のハジケ攻撃にも耐える事が出来ていた。
しかし、それをいくらエイナに説明したところで首を縦に振ってくれることはなかった。
なので彼女を安心させて晴れて胸を張ってさらに下層の階へ足を踏み入れるべくこうして防具の吟味をしていた次第でもあった。
(安いのは勿論だけど付け心地も考慮したいな。出来れば動き易い感じのが良いんだけど)
そんな事を考えながらベルが見ていたのは武具屋の中で一際安い最早投げ売りレベルの鎧一式だった。
色々と要望はあるのだけれども現状のヘスティアファミリア、と言うかベル本人は割と高額な借金を抱えてしまっている。
余り贅沢は出来ない。となるとこの辺の投げ売りレベルの鎧一式で我慢するしかない。
「これは、僕のとサイズが合わないな。それでこっちは、形的に腕が回しづらくなるな」
一つ一つ吟味しながら確認していく。そうこうしているといつしか壁際まで来ていたことに気づく。
参ったな。何かしら決めないといけないのに。
そう思いながら壁際にあった手甲を手に取ってみる。
「軽い・・・それに、僕の腕にフィットして動かし易い。これなら良いかも!」
思わぬ発見に心が舞い上がりそうになるベル。ふと、製作者が気になったので見てみた。
「ヴェルフ・クロッゾ・・・誰だろう?」
名前だけではピンとこないが、とにかくこの人の作品ならば買いだと思い一式入った箱を持ち上げた。
その際に見えてしまったのだが、壁の端で一人のおっさんが薄暗い影を落としながら座っているのが見えてしまった。
「だ、誰ぇ!?」
「ふっ、私かい? 私はこう見えてかつてはアーマーだったんだよ。だが、最近の不況の煽りを受けてしまいアーマー業界は衰退してしまい、私もリストラにあってしまったのさ」
「えっと、色々とツッコミたい事が沢山あるんですけど」
「だけど、私はなんとしてもアーマーで稼ぎたいんだ! その為にこうして武具店に陳列されていたんだが、結局誰にも買って貰えなくてね」
「そりゃそうでしょ。あんたアーマーじゃなくてただのおっさんなんだから」
目の前にはくたびれたスーツを着た若干禿げが加速し出したバーコードヘアーの中年のおっさんにしか見えない。とてもアーマーとしては使えそうに見えなかった。
「しかし、私は遂に見つけたよ。この私を受け入れてくれるマスターを! 君こそ私の主人に相応しい! さぁ、私を買ってくれ!」
「いやです」
キッパリと断られてしまった。
その後、クロッゾ印の防具一式を購入して、いざ帰ろうとした時だった。
「ベルくん。これは私からの餞別だよ」
そう言ってエイナが渡してくれたのは、先程出会った自称アーマーを名乗るおっさんだった。
「やぁ、これから宜しく頼むよマスター」
「あ、悪夢だ・・・」
ベルくんの苦悩はまだまだ続くようです。
アーマーおじさんの初登場はZブロック基地での時ですね。あまりにもキャラが立ってたので参戦してもらいました。そして、今後はベルくんの心強いアーマーとして活躍する方でしょう。
活躍するよね?