ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
そして本編の方は、相変わらずの調子だと思われます。
みんなは彼のことを覚えているだろうか?
かつて世界征服を謳った一大帝国【マルハーゲ帝国】の皇帝に君臨した男、ツル・ツルリーナ四世の事を。
既に彼が率いていたマルハーゲ帝国も、三世が新たに築き上げたネオマルハーゲ帝国も、更には毛刈り隊残党が集まって軌道上に築いたピーマン帝国も、全てがボボボーボ・ボーボボらの活躍により壊滅させられてしまい、戦力の殆どを失った四世に待っていたのは執拗に迫る毛の王国からの追撃部隊による終わりなき追走であった。
最早、地球にツルリーナの安住の地などなく、追手から逃れる為にツルリーナはこうして一人広大な宇宙を逃げ続けていたのだった。
「陛下、もう少しです。もう少し先まで逃げ切れば、必ず陛下にお力をお貸し下さる方が参ります」
「その話は何度も聞いた。本当なのか? オクトパスカル」
彼の頭の上に乗っかってる小さなタコのような生物(と言うかタコそのもの)にも見えるオクトパスカルの案内の下こうしてツルリーナは一人広大な宇宙を飛んでいた。
内心ツルリーナは不安で押しつぶされそうになっていた。
頼れる部下も失い強大だった帝国も今となっては影も形も存在していない。
残ったのは己の身一つのみ。
そんな状態の男を果たして匿ってくれるような物好きな奴らがこんな何もない宇宙の果てのような場所にいるのだろうか?
考えれば考えるだけ不安が募るばかりだった中、突如としてコクピット内にアラート音が喧しく鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
「陛下! 毛の王国の追撃部隊です! ロックオンされてます!」
「何だと!?」
見れば、後方にはいつの間にか毛の王国の艦隊が迫って来ていた。
巡洋艦、駆逐艦、重巡洋艦、その他色々、とにかく多種多様な艦隊がそれこそ数えるのも馬鹿らしくなるほど集まって来ていた。
『ツル・ツルリーナ四世に告ぐ! 無駄な抵抗はやめて大人しく投降しろ! 応じない場合は撃墜する!』
「くっ、これまでか・・・」
戦力差は歴然であった。向こうは大艦隊。こちらは小型艇一隻と、まるで話にならない。
挑むのさえ馬鹿らしく思える。しかし、かつては強大な帝国を誇った皇帝のプライドもある。
何より、大人しく投降したところで命の保障があるとは到底思えない。
こうなれば玉砕特攻するべきかと、覚悟を決めようとした最中、その大艦隊を突如として複数の閃光が襲い掛かった。
その閃光は瞬く間に毛の王国の大艦隊を悉く沈めていき、艦隊が全滅するのに数分とかかることは無かった。
一瞬、正に一瞬の出来事だった。その一瞬の内にツルリーナを追ってここまでやって来た大艦隊は宇宙の藻屑と化してしまったのだった。
「い、一体・・・何が起こったと言うのだ?」
「陛下、ご安心ください! あの方達がお迎えにあがりましたですポン」
「あの方達だと!?」
疑問に首を傾げるツルリーナであったが、その疑念は目の前に突如として姿を現した巨大な戦艦を目の当たりにして理解した。
それは、例えるならば巨大な大陸であった。
大陸そのものが宇宙に浮かんでるかのような、そう思わせる程の巨大さを誇っていた。
これだけの巨大な戦艦ならば毛の王国の追撃艦隊など物の数ではないだろう。
『ようこそ、マルハーゲ帝国皇帝ツル・ツルリーナよ。貴公の来訪を我が大帝陛下は大変御喜びになられておる』
「大帝陛下、だと!?」
『ガイドビーコンを出す。こちらの指示に従い着艦して欲しい。我が艦は貴公を招き入れる手筈を整えてある』
「先のご助力と良い、寛大な振る舞い感謝の極みに至る。我が艦も幾度の追撃により既に航行する力は然程残ってはいない。有り難く着艦させて貰う」
巨大戦艦から発せられたガイドビーコンに従い、ツルリーナを乗せた小型艇は無事に着艦することが出来た。
これにより、ツルリーナはようやく安堵することが出来、深くため息を吐くのだった。
『ツルリーナよ、着艦して早々ではあるが大帝陛下が貴公に会いたいと仰られている。長旅の疲れがあるだろうが謁見の間に赴いて欲しい』
「構わん、私もその大帝陛下に礼を述べたいと思っていたところだ。案内して欲しい」
『道案内はそこに居るオクトパスカルがしてくれる。其奴の指示に従うのだ』
「何!?」
「陛下、私について来てくださいポン」
「う、うむ・・・」
釈然としないながらもオクトパスカルに導かれるがままに訪れた場所。其処は言うならば豪華絢爛と呼ぶに相応しい場所であった。
まるで古代ローマの貴族達の住む豪邸をイメージしたかのような一面大理石で彩られた壁に床に天井、飾られてる家具の一つ一つでさえ、気品さが漂ってくるかのようだった。
(一体、どれ程の富を費やしたのだろうか?)
かつて地球で栄華を誇った当時のマルハーゲ帝国でさえ、これ程の豪華さはなかった。
いや、もしかしたらその辺に置かれてるような何気ない家具一つでさえ買えるかどうかも怪しい。
そう思わせられるほどにこの空間は煌びやかに映った。
余りの光景に思わず眩暈がしそうになるのを必死に堪え、視線を最奥へと持っていく。
そこには玉座と思わしき数段の階段が設けられた上に分厚いカーテンが覆われ、其処から微かにだが人影が見えていた。
「よくぞ参った。はるばる遠い辺境の地からの長旅ご苦労であったな」
「貴様が大帝とやらか? 先の助力には感謝する。だが、この私を出迎えるのにそのような分厚いカーテン越しと言うのは些か失礼ではないのか?」
「・・・・・・貴公は余と顔を合わせたいと、そう言いたいのか?」
「それが礼儀というものであろう。分かったのならばその分厚いカーテンを退けて顔を見せて欲しい」
「その必要は・・・ない」
「な!!」
まるで囁くように、微風が耳を撫でるかのように、そう言い放たれたことにツルリーナは驚愕した。
「な、なぜだ!?」
「貴公は何か思い違いをしているようだな。何故余が貴公の如きにわざわざ顔を見せねばならぬ? 貴公如きこのままでも問題はあるまい」
「ぶ、無礼な! この私を皇帝ツル・ツルリーナ四世と知っての暴言か!?」
「貴公こそ無礼であろう。余を前にしてその様な振る舞い、目に余るぞ」
「なに!?」
「貴公が世の前に立ちまず最初に行う事は、世の前に跪き頭を下げる事からではないのか?」
予想外の応答にツルリーナは狼狽えた。
すると彼の背後から近づく物たちの気配を感じて振り返る。
「おやおや、誰かと思ったらツルリーナじゃないですか」
「久しぶりだな。もっとも、俺たちがこうして合うのは初めてなんだろうがな」
「き、貴様らは・・・」
突如現れた二人の男達にツルリーナは戦慄を覚えたのだった。
***
無敵要塞ザイガス(現ヘスティアファミリアホーム)内のとある一室にて、新しく仲間になったアーマーおじさんの歓迎が行われていた。
「どうもはじめまして。アーマーおじさんです。職業はアーマーをやっております」
「ついにホームにまでついて来たよこのおっさん」
買った手前仕方なしとは思えなくもないのだけれどもやはり此処は僕にとっての聖域みたいな場所。
そんな場所なのに余計なゲテモノのみならず中年のおっさんまでもが加わってますますカオス染みて来てる。
本来ならば僕と神様だけの聖域になる筈だったと言うのに何故こうなってしまったのか?
「よっしゃぁ! 新入りの歓迎会すっぞゴラァ!」
「無礼講無礼講〜」
と、僕のすぐ横では生物二匹が酒盛りを始め出してるし、本来ならこいつらさっさと追い出したい所なんだけれどもそうすると折角エイナさんから五階層より下の階層まで潜れるようになった許しが撤回されるかも知れない。
「はぁ、せめてまともな仲間が欲しい」
因みに現在のヘスティアファミリアの戦力と言えば僕以外は人外と装備品しかないかなり極端な構成となっていた。
「そう言えばアーマーおじさんはまだ【恩恵】を持ってないよね? なんなら僕の恩恵をーーー」
「ちょっと待ったぁぁ!!」
「ほぇ?! どったのベル君」
我らが神様がトチ狂ったことをしようとしてたので即止めに入った。
ヤバい、それはかなりヤバい事ですよ神様。
何がってそりゃ絵的に完全アウトって事がですよ。
神様が恩恵を刻む際には眷属の上半身を裸にしてうつ伏せに寝かせてその上に跨る形で恩恵を刻むのが一般的な手法となってる。
しかも我らが主神ヘスティア様は絶世の美女(?)だ。
そんな神様が中年のおっさんの上に跨るなんて想像しただけで殺意が湧き出てきそうになる。
駄目だ! 認めない! あの魅惑の太ももの感触は絶対に渡さない!
「ははは、ご心配なく。私はベル様の装備品なので恩恵とかは不要なのですよ」
「そうなんだ」
どうやら装備品に恩恵を刻む必要はないみたいだ。
それを聞けて一安心。と思った矢先の事だった。
「ゴラァ! コーラが切れてるじゃねぇか!」
「ゴフッ!!」
怒号と共に首領パッチの右ストレートを喰らう羽目になった。
「な、何するんだよ!」
殴られた頬を抑えながらそう叫ぶも、殴ったであろうそいつはふてぶてしい態度で僕に空のペットボトル(2L)を見せて来た。
「てめぇ、これを見てもまだ分んねぇのか? コーラが空なんだよコーラが! 新人の癖に酒の管理もできねぇのか! てめぇこの世界に入って何年だゴラァ!」
「知るかそんなの! コーラが欲しかったら自分で買ってこいよ! 僕の事をパシリに使うな!」
僕と首領パッチがそうやって言い争っていると、今度は天の助が僕のことを呼んできた。
「おい」
「な、なんだよ?」
「火」
「は?」
ブチッ!!
「火だ! っつってんだろうが! 俺がタバコ咥えたら黙って火を付けるのが常識だろうが! てめぇこの世界舐めてんのか!」
「そんなの知るか! 人の事をパシリや舎弟扱いすんな!」
そんな感じでせっかくの歓迎会がいつもの調子で大騒ぎとなってしまった。
つくづく思う。こいつら追い出したいとーーー
「あ、お酒が切れちゃった!!」
「任せて下さい神様! 1分で買って来ます!!」
首領パッチや天の助には反抗するが神様は別だ。
神様の頼みとあらば例えダンジョンの最奥にだって潜れる覚悟が僕にはある。
実際にやれと言われたら多分少し躊躇すると思うけれども。
「あぁ、気にしなくても良いよベル君。ないんなら別にないで構わないし」
「いえ! 折角の祝いの場に酒が無いなんてあんまりじゃないですか! 任せて下さい! 神様の舌に合う絶品の酒を買って来ます! ソーマファミリアの酒とかどうですか?」
「いやいや! あれ一本で数万ヴァリスするよ! そんなんじゃなくてもっと安いので良いよ!」
「分かりました! なるだけ高そうで安そうに見える高酒買って来ます!」
「だから違うんだってばぁ!!」
後ろで何か叫んでいるが聞いてる暇はない。
神様にあぁ言った手前モタモタなどしてられない。
僕は即座にホームから飛び出し酒屋へと駆け出した。
スピードに特化した僕の足なら往復で1分も掛からない。後はどれだけの速さで良質な酒を見分けるかだが、そこは半ば賭けに近い。
何しろ僕自身あまり酒を飲まないからだ。
だが、神様が望むと言うのならば例えソーマでも買ってみせる。
「うおぉぉぉぉぉ! 音速を超えろ僕の足ぃぃぃぃーーー!!」
その時の僕のダッシュは時速100kは出てたと思う。
それくらいの速さで酒屋に辿り着き、中の店員の愛想いい挨拶も振り払い品物を物色。そして手に取り会計して店を飛び出した。
この時の所要時間僅か0.5秒。
「行ける! このまま行けば余裕で間に合う!」
間に合うと安堵した僕の脳裏には買って来た酒をもらって頬を桃色に染めて喜ぶ神様の姿があった。
そして酔った勢いでそのまま神様とーーー
「ア〜〜フ〜〜ロ〜〜」
「へ?」
突然後ろから奇妙な唸り声のようなものが聞こえて来た。
なんだろうと思って振り返ると、そこにはどこかで見た覚えのある誰かがこちらに向かって全速力で走って来ていた。
長い金髪を靡かせて鋭く光る眼光を持ち今にも誰かに飛びかかりそうな危険性を帯びたまるで何処ぞの暴走した初号機を彷彿とさせる感じでこちらに向かって来ていた。
「アフロォォォォォ!!」
「ぎゃぁぁぁーーー!!」
拝啓、おじいちゃんへーーー
生まれて初めて女の人に飛びかかられました。
一瞬女の人のいい匂いがしてときめいたりもしたんですが、目の前にいるのはお話とかでよくある胸キュンな出会いなどではなく、ホラーものでモンスターに襲われる哀れな犠牲者の気分になりました。
「アフロアフロアフロォォォォォ!」
「ひぃぃぃ! こえぇぇぇ!」
両肩を掴まれてそのまま左右にブランブランされまくるそんな僕は今日も元気です。
なんて言ってる場合じゃない!
よく見たらこの人毎回毎回事ある毎に僕に突っかかってくるあのロキファミリアのアイズさんじゃないか!?
初めて会った時からヤバい人だと思ったたけどまさか一人になったところを襲われるなんて完全に想定外だ。
しかも彼女のレベルは5。常人では到達するのすら夢と言われてるような領域にいる人だ。
冒険者になってまだ一年にも満たない僕では到底敵わない。
こんな時に首領パッチか天の助がいれば身代わりにしてやれるのに!
肝心な時にいないなんて使えない非常食め!
「「誰が非常食だぁ!!」」
「ごっふ!!」
突然どこからか飛んで来た首領パッチと天の助の二人から最大パワーの鉄拳をもろに食らってしまった。
すっごい痛かったけど幸い僕が持ってた【頑強】のスキルのお陰でダメージはほぼないに等しかった。
このスキルがなかったら今頃僕は何回死んでただろうか?
「このノロマ野郎が! 酒を買って来んのにどんだけもたついてんだよ! てめぇはカタツムリかぁ?!」
「先輩を待たせるなんざ冒険者の風上にもおけねぇなぁ。死んで詫び入れるかボケェ!」
「お、お前らはヤ○ザか!?」
こいつらの意味不明な言い分にいちいち付き合ってる暇なんてない。
しかし、ここに来てくれたのは有り難い。
この場はこの暴走した合図さんの相手をこいつらに任せて早くここから逃げ出さないと。
そう思っていた時だった。
「おかえり、ベル君。早かったね」
最悪のタイミングだった。
正に最悪のタイミングで神様が僕達の前に現れてしまったんだ。
本当なら僕の苦労を労っての事と心の底から歓喜するところなんだけど今はまずい。
暴走して手の付けられないモンスターと化したアイズさんがすぐ近くにいるんだ。
今の彼女は見境がない。現に目の前で首領パッチが全身のトゲを一旦抜かれてその後先端を突き刺されてるし、天の助に至っては出刃包丁でなます切りにされて舟盛りにされてる真っ最中だった。
「か、神様! すぐに逃げて下さい! モンスターが! モンスターがぁ!!」
「へ? モンスター?」
必死に逃げるように叫ぶがそれよりも早くアイズさんが神様に向かって飛び掛かっていた。
止めようにも間に合わない。
仕切りに「アフロアフロアフロ」と訳の分からない事を口走ってる合図さんを止められるものなどこの世には存在しない。
「はい、アフロ」
「!!!!!!」
一瞬どこから出したのか、神様の手にはアフロヘアーのカツラが持たれていた。
大きさ的に大玉のスイカに近い大きさだ。
ポケットに入るサイズでは断じてない。
にも関わらず一瞬の間にそれを取り出すなんて、一体何処に仕舞ってたんだ神様?
そんな事を思ってた僕の目の前で、アイズさんは明らかに変化していった。
さっきまで暴走した初号機みたいに手の付けられないモンスターだった筈の彼女がすっかり落ち着き出し、見紛うほどの美貌を振り撒く女性の顔になったんだ。
初めて彼女のその顔を見ていたらきっとときめいたかも知れない。
まぁ、今ならそんな事は絶対に有り得ないだろうけども。
「こ、こ、このアフロは・・・」
「ふふん! 凄いだろぉ。渾身の力作さ!」
誰に聞かれるまでもなく神様は鼻を鳴らして胸を張っていた。
たわわに揺れる二つの果実が僕のハートを鷲掴みにしてくる。
ヤバい、普段の神様も素敵だけど自信に満ち溢れた神様も素敵過ぎる。
「この毛並み、この手触り、この弾力、そしてこの形・・・全てが完璧なまでに仕上げられている。これは正しくアフロ! 私が求めていたアフロそのもの!」
「そうだろうそうだろう。この仕上がりにするのに随分と苦労したもんだよ。お陰で売れ行きは絶好調なんだけどさ」
「このアフロを、貴方が作ったのですか?」
「ん? そうだけど」
「名前をお教え下さい」
「へ? ヘスティアだけど。ヘスティアファミリアの主神をやってる」
「結婚して下さい! ヘスティア様!!」
「・・・・・・ゑ?」
突然そんな事を言い出す剣姫に思考が停止してしまう僕と神様だった。
因みに、後で聞いた話だけど、アーマーおじさんは僕が酒を買いに行ってた間に首領パッチ達にしこたま強いお酒を飲まされた為に爆睡していたみたいだったそうだ。
新たな敵の予感!?果たしてベル・クラネル達の運命や如何に!?