ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか   作:お通しラー油

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第16話 誕生!キングオブハジケリスト!!別にハジケてないけどねぇ〜

「結婚してください。ヘスティア様!!」

 

「・・・・・・ゑ?」

 

「ちょっと待ったぁぁぁ!」

 

 二人していい雰囲気を出しそうだったので僕は即座に二人の間に割って入った。

 

「あ、ベル君!?」

 

「アイズさん! あんたよりにもよって他所の神様寝取るとか何考えてんだ! そもそもあんたロキファミリアの幹部だろ!」

 

「愛(アフロ)の為なら私はロキファミリアを抜ける!」

 

「それじゃ主神のロキ様やファミリアの仲間達はどうするんですか!?」

 

「皆、いい奴らだったよ」

 

「勝手に過去の存在にするな!!」

 

 最早我慢の限界だった。僕自身に絡んでくるのはある程度我慢は出来た。

 だが、僕の心の癒しでもある神様に手を出そうと言うのならば話は別だ。

 

「あ〜、話の途中で申し訳ないんだけど、他のファミリアへの移籍ってそう簡単には出来ないんじゃないのかい?」

 

「そ、そうですよ! 神様の言う通りです! 大体移籍するなんてロキ様が聞いたら絶対了承しませんよ」

 

「その時は奴(ロキ)を亡き者にするまで」

 

「やめろぉ! あんたマジで分かってんのか!? 移籍する為に神殺しするなんて正気の沙汰じゃないぞ!」

 

「私はいたって正気だよ。いつも私がやりたいようにやってるんだから問題なし」

 

「ふざけんなーー!!」

 

 この人やばい。このままだとマジでロキ様の事を殺しかねない。

 正直他所のファミリアの事なんで別に勝手にしてくれと言いたいところなのだが、その原因にうちの神様が含まれてる以上他人事には出来ない。

 下手したらロキファミリアの団員達に追い回される未来が安易に予測出来る。

 冗談じゃない。ロキファミリアと言えばこのオラリオの街で五本の指に入るほどの強豪ファミリア。

 そんなファミリアの団員達がこぞって襲いかかって来たら僕たち弱小ファミリアなんてバースデーケーキの蝋燭を吹き消すかのように簡単に消し飛ばされてしまう。

 それだけは避けなければ。折角冒険者としてやって来たのにお尋ね者になんてなりたくない。

 

「さぁ、ヘスティア様。私と結婚してください! そして、二人で愛のアフロを残しましょう!!」

 

「何だよ! 愛のアフロって」

 

 横で僕がツッコミを入れるが当の本人は全く気にも止めようとしていない。

 だって目がマジなんだもん。正直見ててマジで怖かったくらい目が血走ってるんだもん。

 眼力だけで人殺せそうな気がしたほどだった。

 

「ヘスティア様、返答は?」

 

「いや、普通に無理だよ」

 

 僕の予想に反してアッサリと拒否されてた。

 

「な、何故!?」ガクガク!!

 

 拒否されると思ってなかったのかアイズさんの顔は青ざめてブルブルと震えていた。

 え!? そこまでショックだったの? 

 

「だって、君はあのロキファミリアの幹部だろ? そんな重要なポストに座ってる君がそう簡単に抜けられる訳ないじゃないか。確実に僕たちにまで飛び火する事になるよ。ハッキリ言って迷惑だよ」

 

「な、ならば移籍はしないまでも結婚だけなら」

 

「それもダメ。だって僕の心はーーー」

 

 そう言って僕の方を向いた後、頬を赤らめて恥じらう神様。

 やべぇ、素敵過ぎる。この方は天使か? いや!神様だった。

 そんな神様の愛らしい姿に癒された僕がアイズさんの方を見ると、何故か般若のような形相になったアイズさんが僕の事を睨んでいた。

 

「あの、アイズ・・・さん?」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すーーーーーーー」

 

(こえぇぇーーーー!!)

 

 何この人、マジで怖い!?

 形相も怖いけど呟くように発してる言葉がこれまた物騒すぎて怖いんだけど。呪殺されそうでめちゃくちゃ怖いよこの人。

 

「ベル・クラネル」

 

「は、はい!!」

 

「ヘスティア様を私にください」

 

「いや、駄目ですよ」

 

「なら死ね!」

 

「うひぃっ!!」

 

 そう言った途端いきなり切り掛かってきた。

 間一髪初撃はかわせたけどあの剣速には背筋が凍る思いがする。

 ヤバい、今の僕は丸腰だ。それに仮に武装してたとしてもアイズさんの武器をまともに受け切れるか分かったもんじゃない。

 下手したら武器ごと真っ二つにされる。

 

「知ってるよ。今のヘスティアファミリアの団員はベル一人。ならばお前を亡き者にすればファミリアは崩壊。そうすればヘスティア様は私のものに出来る」

 

「どう言う理屈でそうなるのさ!?」

 

「だから、私の愛の為に・・・死ね」

 

 ボソリと囁くように言葉を放ち、斬撃が来た。

 

「ぐっ!!」

 

 これを避ける事はできない。

 避けようにもその一撃の速さは僕の速さを上回っていた。

 何より位置取りが悪すぎた。僕の背後に神様がいたからだ。

 もし僕が避けたらあの無慈悲な斬撃が神様に降り注ぐ事になる。

 それだけはさせない。

 

「ベル君!!」

 

 後ろの方で神様の悲痛な叫びが聞こえる。

 あぁ、短かったけど幸せな冒険者ライフだったなぁ。

 そんな風に自生の句を頭の中で考えていた時だった。

 

「させませんぞぉ!!」

 

 突然僕の前に誰かが割って入ってきた。

 そして、アイズさんの放った斬撃をその身に受けたのだった。

 

「なに!?」

 

「ふぅ、どうやら間一髪間に合ったようですな。ご主人」

 

「あ、あんたは!?」

 

 そこに居たのは、僕が防具屋で無理やり買わされた中年のおっさんことアーマーおじさんその人だった。

 

「ど、どうして?」

 

「無論、私の職業はアーマー。アーマーの役目は装備者の命を守る事。それこそがアーマーである私の役目!」

 

 凄まじい怒気と共に言い放つアーマーおじさんに誰もが戦慄を覚えた瞬間だった。

 

「あのおっさんやべぇ! 縄文土器のこの俺でさえ震えてきやがる」

 

「誰だよお前?」

 

 僕のツッコミを他所に再びアイズさんが切り掛かってきた。

 

「邪魔するのなら、まずお前から切る!」

 

「来るが良い! 何人たりとも我が主人には危害を与えんぞ」

 

 自信満々に言うがそのアーマーおじさんは丸腰。対してアイズさんは殺意増し増しで得物を振り下ろしてくる。

 気のせいかさっきより速度が速く感じる。これが剣姫の実力だっていうのか!?

 

「ふん、この程度の覇気に震えてるようじゃまだまだだな」

 

「き、貴様は弥生土器! なぜ此処に!?」

 

「無論、貴様を屠るためよ縄文土器! 時代遅れの貴様など赤子の手をひねるより容易く倒せるわ!」

 

「お、おのれぇ・・・」

 

「さっきから全く関係ない奴出て来んなよ!」

 

 そんなツッコミを入れてる間にアイズさんとアーマーおじさんが激しくぶつかり合った。

 そして、信じられない事に彼女の繰り出してくる斬撃の数々をアーマーおじさんは両の手だけで受け流していく。

 

「こいつ、私の攻撃を受けるのではなく受け流している!?」

 

「緩いなぁ!! その程度でこのアーマーが破れるものかぁ!」

 

「ちぃぃっ!!」

 

 尚も激しく打ち込んでくるアイズさんの斬撃を涼しい顔で次々に捌いていくアーマーおじさん。

 なんと言うか、凄すぎた。

 

(妻よ、娘よ、不器用なお父さんでごめんな。でもなぁ、お父さんはこの道でしか飯の食い方を知らないんだ! あの時以来、私は己の無力さを思い知った)

 

 それは、遡る事数年前のことーーー

 

 Zブロック基地にてアーマーとして初仕事に臨んだ彼であったが、ろくに役目を果たす事なく、ましてや自身がアーマーに頼ると言う失態を犯すこととなってしまった。

 その失態を挽回すべく、彼は厳しい修行を行い続けた。

 時には迫り来る落石を己の体一つで捌き切り、時には人喰い熊の猛攻を防いだり、人喰い金魚の攻撃や人喰いハムスターや人喰いキャッチの猛攻、他にも海千山千多種多様な攻撃を彼は己の身一つで防ぎ切ったのだった。

 そして、長く苦しい修行の末に真のアーマーへとなった彼であったが、長く続いた不景気の為にアーマー業界は衰退し、彼自身も路頭を彷徨う結果となってしまい、陽の目を浴びる事はないと絶望した日々を送っていた。

 しかし、今彼の元に光が差し込んだ。

 それが今この瞬間なのだ!

 

「どんな攻撃も防いで見せる! アーマーの誇りに賭けて!」

 

「くっ! なんと言う気迫・・・こいつ、強い!」

 

 流石のその気迫にあのアイズさんが退いた。

 それ程までにあのおじさんは強いって事なんだと思う。

 正直なんでアーマーなんてやってるのか疑問に思うほどだ。

 

「だけど、防ぐだけじゃ私には勝てない。どんな鎧にだっていずれは限界が来る」

 

 確かに、アイズさんの言う通りだ。いくら攻撃を防げてても攻撃ができないのなら勝利する事はできない。

 そう思っていた僕の前でアーマーおじさんは不敵に笑っていた。

 

「お嬢さん。まさかアーマーたるこの私が防御しか出来ないとお思いなのかな?」

 

「なに!?」

 

「わたしが長年の修行で編み出したのは防御のみにあらず! お見せしよう、我が秘技【アーマー殺法】を!」

 

「アーマー殺法!?」

 

「札幌ラーメン!?」

 

「俺は味噌味が好きだな」

 

「話に混ざってくるなよ!」

 

 全く関係のない奴が時々混ざってくる。良い加減うざく感じていた時、アーマーおじさんが動いた。

 

「受けてみよ! 我がアーマー殺法の奥義の数々を!」

 

「受けて立つ!」

 

 対するアイズさんも万全の構えにて攻撃に対する構えだ。

 

「行くぞ! アーマー殺法奥義!!」

 

 

 

 

 ピピピピピーーーーー

 

 

 

 

 突如としてアラームが鳴り響く。

 

「な、なんの音だ?」

 

「おっと、今日の業務終了か。さて帰るとしよう」

 

「はぁ!?」

 

 もしかしてさっきのアラームって定時のアラームなの!?

 

「それではご主人、また明日」

 

「いやいやいやいや! 今この場で帰られたら困るよ!」

 

「そんな事言われましても、この後帰ってナイター見ながら晩酌する予定ですし、残業は基本しない契約ですから無理ですよ」

 

「そこをなんとかぁ!!」

 

 懸命に説得するも結局定時上がりの契約だと言われて帰られてしまった。

 後に残ったのは僕と神様とアイズさんの三人のみ。

 

「これで邪魔者はいなくなった。ベル覚悟!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってぶへぇっ!!」

 

 必死の説得も虚しく僕の脳天に必殺の一撃が振り下ろされた。

 このまま縦に真っ二つにされてしまうと諦めていた僕だった。

 

「い、痛い・・・」

 

「か、硬い・・・」

 

 僕の体は真っ二つにならず、代わりに頭のてっぺんに大きなたんこぶが出来上がっただけだった。

 

「も、もしかして・・・これが【頑強】のスキルの効果?」

 

 

 

 此処で、読者の皆様に説明しよう。

 何故ベル・クラネルがアイズ・ヴァレンシュタインの必殺の一撃を耐えられたのか?

 それは即ちーーー

 

「毎日牛乳を飲んでるからなのさ!」

 

 ニュッと出て来て牛乳を片手にドヤ顔をし出す首領パッチ。

 

「違う!毎日ところてんを食べてるから体が頑丈になったんだ!」

 

「どっちも違うよ!」

 

 そう、それは即ちベルが持つ【頑強】のスキルのお陰なのであった。

 このスキルはベルが幼少期から魚雷先生による地獄の個人授業を耐え抜いた結果身に付いたスキルであり、このスキルを持つものは滅茶苦茶防御力が上昇しするのだ。

 このスキルを持てば例え足の小指をタンスの角にぶつけても大丈夫!

 

 ガツン!!

 

「ぎゃぁぁぉ! タンスの角に小指をぶつけたァァァ!」

 

「俺もぉ!!」

 

「良い加減にしろぉ!」バキィッ!!

 

 二人から鉄拳をもらう事になった。

 

「なんで僕が殴られるんだよ!?」

 

 地の分に抗議しないでほしい。

 とにかく、このスキルを持ってる事でベルは防御力が滅茶苦茶上昇してると言う事なのである。

 以上、説明終わり!!

 

 

 

「まさか、私の攻撃を食らって立ってられる猛者がいたなんて」

 

「えと、アイズさん?」

 

「フフフ、まさかとは思っていたけど、今回で確信が持てたよ」

 

「へ? 確信!?」

 

 嫌な予感がする。この町に来てから女の人と関わる度にロクな目に合わない。

 その筆頭たるアイズさんが何か言うのだから絶対にロクな事にならない。

 

「えっとね、アイズさん。僕には頑強って言うスキルがありまして、そのせいで防御力が上がってるだけでしてーーー」

 

「ベル。君もまたハジケリストなんだね」

 

「はぁ!?」

 

 また唐突に何を言い出すんだこの剣姫は!?

 言葉に詰まる僕に畳み掛けるようにアイズさんが続けて来た。

 

「前からおかしいと思ってたんだよ。私の攻撃を食らってもピンピンしてるなんて有り得ない。それは即ちベルがハジケリストのスキルを持ってるからに他ならない事!」ドヤァ!

 

「違うからね! さっきも言ったけどこれは頑強って言うスキルのお陰であってーーー」

 

「けれども私も同じくハジケリスト。ハジケリスト同士にも関わらずこれだけの差がある!」

 

「おいコラ! いい加減人の話聞けや!」

 

「つまり、ベル・クラネルはハジケリストであってハジケリストの頂点に立つ存在! 即ち、【キング・オブ・ハジケリスト】のスキルを持ってる事が私は分かったんだ!」ドヤァァァ!

 

「ちげえっての! 大体なんだよそのキングオブハジケリストって!? 僕はそもそもハジケリストじゃないんだってば!」

 

「嘘をついても無駄。同じハジケリストならば目を見ればそいつがハジケリストかなんて簡単に分かる」

 

「てめぇらハジケリストは揃いも揃って節穴揃いなのかぁ!?」

 

 渾身の僕の叫びが響き渡る中、こちらに向かって大勢の冒険者達が押し寄せて来ていた。

 

「奴だ! 奴こそがキングオブハジケリストのベル・クラネルだ!」

 

「奴をぶっ殺せば俺がキングになれる!」

 

「いや、キングを殺すのはこの俺だ!」

 

「「「ベル・クラネルをぶっ殺せぇぇ!」」」

 

「ぎゃぁぁぁ! だから僕はハジケてなんかないんだってばぁぁぁ!」

 

 僕の必死の説得も虚しく、オラリオ中のハジケた冒険者達にその日はひたすら追いかけ回されることとなった。

 必死に逃げ回りながら僕は西に沈む夕日を見上げていた。

 そして、もうすぐ怪物祭が行われるなと頭の片隅に思いながら腹の底からこうさけんだ。

 

 

 

 

「ハジケリストなんて大嫌いだぁぁぁーーー!」

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