ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか   作:お通しラー油

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第17話 ニューヒロイン登場! おふざけダメ絶対!!

 ベル・クラネルがハジケリストで、かつキングオブハジケリストだとオラリオ中で誤解されるようになってから既に一週間が経過していた。

 その間、ベルはオラリオ中に滞在しているハジケた冒険者達から出会う度にハジケ勝負を挑まれる羽目になっていた。

 

「ベル・クラネル! この俺と勝負しろ!」

 

「いや、この俺とが先だ!」

 

「キングの称号はいただきだ!」

 

 と、このように外を歩けば必ず誰かしらに勝負を挑まれる事となり、流石に対応しきれないと判断したベルはそいつらから逃げる選択肢を選んだのだった。

 

「待て! 逃げるのか!?」

 

「逃すな! 何としても奴を倒せ!」

 

「ハジケキングの称号を奪い取れ!」

 

「何でこうなるんだよぉぉぉ!!」

 

 その日もまた大勢のハジケた冒険者達から必死に逃げ続けていた。

 ベルの後ろにはオラリオ中の冒険者達が集まっていて、その誰もがキングの称号を奪い取ろうと躍起になっている有様だった。

 

「こ、こんなことしてる場合じゃないのにぃぃ!」

 

 実際その通りでもあった。

 現在ベル達は多額の借金を抱えておりその返済の為に日々バイトに勤しんだりダンジョンで拾った魔石やドロップなどを換金して返済に充てている毎日だった。

 

 それが、あの日を境に街を歩けば冒険者達から狙われる日々となってしまい以降まともに稼げてないのが現状でもあった。

 

(こんな時に限って首領パッチも天の助もどっか行ってていないしアーマーおじさんは定時で帰っちゃってるし、ハジケリストなんて大っ嫌いだぁぁぁーーー!!)

 

 なんて事を心の中で叫ぶベル。

 口に出して叫ぶと居場所がバレてしまうので仕方ないよね。

 そんな風にハジケリストに対する嫌悪感を持ちながら路地裏まで逃げていた時のことだった。

 

「うわっ!!」

 

 丁度見通しの悪い交差点辺りでの事だった。

 横から現れた誰かとぶつかってしまいその場で尻餅をついてしまった。

 石造りの路面に思い切り尻をぶつけたもんだからそりゃ痛い訳で痛む尻を摩っていると。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 そう言って手を差し伸ばして来てくれていたのだ。

 

「あ、はい。すみません、急いでたもの・・・で!?」

 

 手を取ろうとして差し出して来た人を見てベルは一瞬驚いた。

 その背丈はベルより半分近く低く、全体的に細身の体つきをした小柄の少女であった。

 その少女が倒れたベルに手を差し伸ばして来ていたのだ。

 

(え? 僕、確か全力疾走してたよね? なのになんで僕が倒れてて目の前のこの子は平気な顔してるの?)

 

 小柄な少女を見て彼女が小人族(パルゥム族)だとすぐに理解することが出来た。しかし、ベルとぶつかって何故彼女が立っていられたのかは全く分からず仕舞いだった。

 

「奴はこの近くに居る筈だ! なんとしても探し出せ!!」

 

「やばっ!!」

 

 急いで身を隠さねばと周囲を見回して咄嗟に近場にあったゴミ箱の中へと身を隠したのとハジケた冒険者達が雪崩れ込んできたのはほんの僅かの差だった。

 

「居ない!」

 

「まだ近くに居る筈だ!」

 

「よし、俺が犬の真似をして匂いで奴を探し当ててやろう!」

 

「おう、頼むぞ!」

 

 そう言うと冒険者の一人が犬の鼻と耳を付けて匂いを嗅ぎ始めた。

 

「くんくん・・・くんくん・・・」

 

「どうだ? 何かわかったか」

 

「全然分からん。そもそも俺犬じゃねぇし」

 

 そりゃそうだ。

 しかしそんな事で納得する程ハジケた冒険者は素直ではない。

 

「バカヤロー! 簡単に諦めんな! 匂いが分からないのはお前が犬になり切れてないからだ! もっと犬になりきれ! 心から犬になるんだ! 骨を欲しがれ! ボールを欲しがれ! 散歩に行きたそうにしろ! そうする事でお前は身も心も犬になりきれるんだ!」

 

「分かった! よし、今から俺は犬だ! ワオーーーン!!」

 

 そうして再度匂いを嗅ぎ始めたのだが、その直後に顔を真っ青にして口から泡を吹いて気絶してしまった。

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

「まさか、ベル・クラネルとは相当体臭きつかったのか?」

 

「すまん、俺がさっき屁をこいたのが原因だと思うぞ」

 

 どうやら原因は一人の冒険者がオナラをしたのが原因だったようだ。

 

「駄目だ、匂いで奴を追うのは不可能だ!」

 

「よし、こうなったら! おい、そこの小人族!」

 

「は、はい!!」

 

 今更になってようやくこちらを認識して来た冒険者達。

 

「この辺で銀髪で赤い目をした少年がこなかったか?」

 

「あ、あっちへ行きましたよ」

 

 少女は咄嗟に全く関係のないの方向を指差した。

 因みに適当だったりする。

 しかし、その適当な指示を間に受けた冒険者達はその方向へと消えてしまった。

 

 嵐のように現れて、これまた嵐のように過ぎ去ってしまった。

 

「もう大丈夫そうですね。さっきの方はーーー」

 

 ベルが隠れたゴミ箱を見ると、丁度ゴミ回収業者がゴミ箱をゴミ収集車へと放り込んでしまった直後だった。

 

 バキバキ!!

 

「ぎゃあああああああああああああーーー!!」

 

 慌ててゴミ箱なんかに隠れたせいでゴミと間違われてしまったようだ。

 その後なんとか抜け出す事が出来たのだが、業者の人にそれはもうこってりと叱られたそうだ。

 

「うぅ、不幸だ」

 

「大変そうですね」

 

 ゴミ収集車に巻き込まれてしまい衣服はボロボロになってしまったが体の方は持ち前のスキルのお陰で傷一つついてない。

 

「えっと、さっきはごめんね。ぶつかっちゃって」

 

「何やら訳ありのようですね。今後は外を出歩く際は気をつけるべきですよ。それでは」

 

 そう言い残して少女は去ってしまった。

 なんとも不思議な少女だった。今までオラリオの街で色んな女性を見て来たが彼女みたいなのは初めてだった。

 

(なんだろう、この感覚・・・まさか! 僕は初対面の女の子に恋してしまったのか!? いや待て待て! 落ち着けベル・クラネル! 僕の初恋は神様の筈だ! それなのに他の女に鞍替えするなんて、それじゃまるで不倫じゃないか! 違う、断じて違う! これは多分あれだ! まともな反応をする人だったから思わず警戒しちゃっただけだったんだ! きっとそうだ。そうに違いない! ・・・何故だろう、凄く泣きたくなって来た)

 

 一人センチメンタルな気分になりながらもこれ以上この場に留まっててはまた他の冒険者達に見つかってしまうのでさっさとホームへ帰るとしよう。

 

「こんなところで会うのは奇遇ですね」

 

 なんて思ってたら誰かに呼び止められてしまい咄嗟に身構えたが、そこに居たのは見覚えのある服装をしたエルフの女性だった。

 

「えと? 前にどこかでーーー」

 

「こうして面と向かって話すのは初めてでしたね。私は『豊穣の女主人』で働かせて貰っておりますリューと申します。以降お見知り置きを」

 

「あ、これはご丁寧にどうも」

 

「それはそうと、何かお困りのようですね?」

 

「はい、実はーーー」

 

 

 カクカクシカジカ・・・

 

 

「なるほど、そう言ったご事情がおありでしたか」

 

「もうこうなったら顔でも変えないとオラリオの街を歩けませんよ」

 

「では、変えましょう」

 

 この人は今何と言った?

 顔を変えよう? そんな某顔がパンで出来たヒーローじゃあるまいしそんな容易く出来るわけがーーー

 

「丁度手元に着替えと小道具がありますので物は試しにやってみましょう」

 

「え、偉く準備が良いですね」

 

「小説ですから」

 

 メタ発言を挟みつつエルフのリュー監修の元ベル・クラネルのイメチェンが行われた。

 その所要時間はわずか1ミリ秒。

 そして、全てが終わった時、そこには銀色の長い髪を伸ばした絶世の美女が立っていた。

 

「って、何じゃこりゃああああああああ!!」

 

「見ての通り、イメチェンです」

 

「いや、これイメチェンって言うか女装じゃないですか! こんな格好益々街の中歩けませんよ! ただでさえ変な誤解されてるのにこれじゃ更に誤解されますよぉ!」

 

「その時はその時で」

 

 この時、ベルは彼女の事を「一回マジで引っ叩きてぇ〜」と、内心思っていたそうだ。

 

「この辺りから奴の声が聞こえて来たぞ!」

 

「探せ探せぇ!!」

 

「げっ! また来た!!」

 

 慌てて身を隠そうとしたがそれをリューが止めた。

 

「ちょっ、何するんですか!? ってか、スカート掴まないで! パンチラしちゃうから!」

 

「折角変装したのですから彼らに見てもらいましょう」

 

「はぁ!? あんた何言ってんだよ! 見つかったら僕殺されちゃうかもしれないんだよ!」

 

「その時はその時です」

 

「こ、この性悪エルフがぁぁぁーーー!」

 

 腹の底から叫ぶベル。

 そうこうしてると濁流のようにハジケた冒険者達が濁流の如く押し寄せて来た。

 

「げぇっ! もう来たぁ!」

 

「ここだ! ここにベル・クラネルはいるは・・・ず・・・」

 

 怒涛の勢いでやって来た冒険者達が揃って黙り込んでしまった。

 そりゃそうだろう。目の前に絶世の美女が二人もいれば男なら誰しも黙るものだ。

 

「ななな、なんだあの超絶美女達はぁぁぁ!」

 

「あのエルフの方は知ってるぞ! 豊穣の女主人って店で働いてる子だ!」

 

「俺も知ってる! 注文する度に【この卑しい豚どもが】って言われるの溜まらないんだよ!」

 

「お前もその口だったのか!?」

 

 何やら悍ましい事を囁き合う冒険者の皆様。

 

「それじゃ、その隣の子は誰だ?」

 

「分からん、俺も初めて見る子だ」

 

「俺の見立てでは上から88、50、85だな」

 

「な、なんてグラマラスなボディなんだ!」

 

「いやらしい体つきしてるぜ」

 

(し、視線が痛い・・・)

 

 冒険者達が女装したベルに好意の目線を向けてくるのがとても痛く感じた。

 バレたらきっとただじゃ済まないだろうなぁ。

 なんて思えてしまった。

 

「彼女は来週我が豊穣の女主人で働いてもらうことになった新人です。皆さま是非贔屓にしてやってください」

 

「「「な、なんだとぉぉぉ!」」」

 

(何言ってんだお前ぇぇぇーーー!!)

 

 リューの一言に驚愕する冒険者達と絶望するベル。

 しかしそんな事リューにとっては正に他人事なのだ。

 

「ほら、自己紹介してください」

 

「えぇ、し、しなきゃ駄目ですか?」

 

「駄目です」

 

「うぐぐ・・・」

 

 ここで名乗らないと帰れそうにない。とは言え即席で名前を考えるなんて芸当をベルが出来るはずもない。

 

「は、初めまして・・・ペル・クラネルと言います。いつも兄がお世話になっております」

 

 結局、落とし所として自分の妹と言う謎設定を盛り込むことにした。

 そして、それが最大の間違いだったとこの後すぐに気づくこととなった。

 

「なんだと!? あのベルに妹が!?」

 

「しかもこんな可愛いなんて!」

 

「益々許せん! ベル・クラネルめ!」

 

「奴だけ美味しい思いをするなんて間違ってる!」

 

 散々冒険者達のヘイトを稼ぎまくることとなってしまった。最終的には【マジで今度こそベル・クラネルをぶっ殺す!】と冒険者達が全員一丸となってしまっていた。

 

「あらあら、お兄さん大変なことに巻き込まれてそうですねぇww」

 

「リューさん。貴方この状況楽しんでませんか?」

 

「はい、とても楽しませてもらってます」

 

「もう、穴があったら入りたい」

 

 泣きそうになるベルだった。

 

「それじゃ、来週からお願いしますね」

 

「へ?! さっきの話マジなんですか!?」

 

「当然です。来なかったら服のレンタル代として500万ヴァリス請求しますからね。その服結構高いんですよ」

 

「ごご、500万んん!!」

 

 とても払える金額ではなかった。ただでさえ莫大な借金を抱えていると言うのにそこへ更に借金の上乗せなんてされたらそれこそ首が回らなくなってしまう。

 

「わ、分かりました・・・来週から・・・よろしくお願いします」

 

「キリキリ働いて下さいね。勿論給料は借金返済まで出ませんから。あ、賄いは出ますのでご安心を」

 

「僕に救いはないんですか?」

 

「債務者が何を言ってるんですか? まともな人扱いされたいのなら1ヴァリスでも借金を返してください。女将もそろそろマジでキレそうですよ」

 

 どうやら当分救いはないみたいだった。

 失意のどん底にまで叩き落とされた挙句、大して知り合いでもない人にいいようにオモチャ扱いされるこの現状に正直、声を上げて泣きたくなるベルであった。

 

「おぉ〜い、ベルどこだ〜」

 

「そろそろ晩飯の時間だぞ〜。今夜はところてんの盛り合わせだぞ〜」

 

 また、こう言うときに限って不幸とは重ねて起こる物であって。

 タイミング悪く冒険者たちが去った後に今度はベルを探しにやって来た首領パッチと天の助の2人とバッタリ出会ってしまった。

 勿論ベルは女装したままである。

 

「「・・・・・・」」

 

「あの、これはなんと言うか・・・その・・・」

 

「「ギャハハハハハハッ!!」」

 

 暫くの沈黙の後、ベルを指差して二人は腹の底から爆笑していた。

 

「な、なんだお前!? 今更女装癖にでも目覚めたのか?」

 

「似合ってる! 似合ってるよベル子ちゃん! ガハハハハハハハ!」

 

(あいつら、後で絶対焼き入れてやる!)

 

 人の苦労を知らずに爆笑する2人に密かに復讐を誓うベル。

 だが、彼はまだ知らなかった。

 

 この街の中でふざけた行為をすることがどれ程命取りになるのかと言う事をーーー

 

「何ふざけとんじゃてめぇはあああああーーー!」

 

「ごっふぅぅ!!」

 

 突如和空から飛来して来た魚雷ガールの音速の体当たりをモロに喰らってしまったベルはそのまま壁に叩きつけられてしまう。

 

「あんた達もふざけ過ぎよ!」

 

「ごふっ!」「がはっ!」

 

 ついで感覚で近くに居た首領パッチと天の助の二人に横なぎの回し蹴りを放つ。

 勢いの入った蹴りが首領パッチと天の助の横っ面に突き刺さり、その顔は見事に変形してしまった。

 

「まったく! あんた達には失望したわ! 私いつも言ってたでしょ! おふざけなんてしてたら碌な大人になれないって! それなのにあなた達は私の居ない間にこんなおふざけをしてるなんて、これはまた教育が必要なようねぇ!」

 

「えぇ!?」

 

 魚雷ガールの教育は教育とは名ばかりの拷問の数々を有無を言わさず無理やり執行する事を指す。

 しかも手向かうようなら更に過酷なお仕置きと言う名の拷問が追加される。

 ベルが幼少の頃、無理やり魚雷ガールの生徒にされて教育させられていた頃に、幾度となく脱走を試みたのだが、その度に魚雷の突撃をモロに喰らい、その後はいつも以上に過酷な教育が施された。

 

 あの時の恐怖が蘇り、ベルの顔はみるみる真っ青になっていった。

 今すぐこの場から逃げねば。もうあんな拷問なんて受けたくない。

 

 そう思いいの一番にその場から逃げ出そうとしたがーーー

 

「逃げてんじゃねぇよゴラァァ!!」

 

「ぐふぅっ!!」

 

 背後から魚雷の突撃を喰らってしまい背中からくの字に折れ曲がってしまった。

 あまりの威力にその場から立ち上がる事さえ出来ずに手足がわずかに痙攣し続けているベル。

 そんなベルを見て今度は首領パッチと天の助の2人までもが青ざめていた。

 

(やべぇ、マジやべぇ。このままじゃ、俺たちは)

 

(あの魚雷に・・・教育される)

 

 その時、首領パッチは予防接種を受けに来た時に普段の倍近い太さの注射をぶっ刺された気分になったと言う。

 

 また、天の助は神様からチートスキルをもらって異世界無双俺ツエーをしようと思ったら出会う人皆が同姓ばかりで萌え要素が1ミリも得られないしょっぱい異世界転生に巻き込まれた気分だった。

 

「どんな気分じゃボケがァァァ!!」

 

「「ぎゃぁぁぁぁぁーーー!!!」」

 

 何故か心の中を読み抜いた魚雷の突撃を喰らい首領パッチと天の助の二人もまた身動きが出来なくなり手足を痙攣させる結果となった。

 

 そんな動けない3人の足にロープを結びつけてそれを手に持つとーーー

 

「あんた達は再教育執行よぉ! 今度こそおふざけなんてしないように徹底的に教育してあげるギョラよぉぉーーー!」

 

「「「いやだあああああーーーーー!!!」」」

 

 泣き叫ぶ3人だったが、そんな事で許すほど魚雷ガールは優しくはなかった。

 散々引き摺られまくり壁にぶつけられたりゴミ捨て場に落とされたりした末に辿り着いたのは何処とも分からない謎の拷問部屋だった。

 そして、其処にはベル達の他に二人の人物が倒れていた。

 

「って、其処にいるのってまさか!? アイズさんにベートさん!?」

 

 其処にいたのは【アフロLOVE】と全身に書かれたパジャマに巨大なアフロを被ったまま呑気に寝ていたアイズと、何故か全身簀巻きにされた上に顔面がボコボコにされて気絶してるベートの姿が其処にあった。

 

 そして、これからこの二人を交えた計五人の教育と言う名の拷問が、魚雷ガールによって執行される事となった。

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