ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
しかし、彼らを待ち受けるのは予想だにしない出来事であったーーー
冒険者登録を無事に終えたその日から翌日ーーー
ベル達ヘスティアファミリア一行はいよいよ初ダンジョンへと乗り出す事となった。
「いよいよダンジョンか・・・緊張するな」
「って言うか5話目でようやくダンジョンって遅くね?」
「原作だとプロローグから潜ってたのにな」
「家は家!他所は他所!早く行くよ」
めたい事を言う非常食二匹を連れて先日訪れたバベル内の受付へと再度やって来た。
今回はエイナさんのところが空いている。安堵の息を吐き彼女の下へと向かった。
「こんにちは、エイナさん」
「こんにちは。今日がダンジョンデビューの日だったよね?」
「はい、今からダンジョンに潜りに行くところです」
何気ない会話をしつつも彼女の放つ大人のお姉さんの魅力に思わず頬が染まりそうになるのを必死に誤魔化しつつベルは必要な手続きをした。
その間手持ち無沙汰な首領パッチと天の助は後ろの方で好き勝手に騒ぎまくる。
「良いベル君。前にも言ったけど絶対に無理や無茶はしてはダメだからね」
「はい、講習で教わった通り深入りしないで浅い層から徐々に攻略していく。ですよね?」
「そうだよ。ダンジョンは何が起こるか分からない場所なの。いつ何が起こるか【シェケラベイベェ!!】から注意して命を大事にしてね。ベル君はハジケリストじゃないみたいだから余計に【ところてん食えやぁぁぁーーー!!】からね。まだ行けるはもう危ないってよく言われてる事だからちゃんと肝に命じてね。大丈夫!君の事は私がちゃんとサポ【アプチョマウワウ!アプチョマウンウ!!】・・・・・・」
エイナさんが丁寧に説明している中、首領パッチと天の助の妨害ともとれる騒音活動がさらに活発化してきていた。
流石にエイナさんが可愛そうだと思い二匹を止めようと振り返ったその時、背後で彼女が何かを手に取る音がした。
振り返ると、エイナさんが一丁の自動拳銃【ベ○ッタ92】を手に持っておりその安全装置を解除し構を取り、その銃口から二発の発砲音が鳴り響いた。
その直後に背後から「ぎゃっ!!」と悲鳴が上がりバタリと何かが倒れる音がした。
振り返ると、首領パッチと天の助が横たわっており、その額には銃弾の跡がくっきりと残っていた。
その光景にベルの顔は一気に血の気が引いたかのように真っ青になりだし、ガクガク震えながらエイナの方を見た。
彼女の方はと言えば既に元の営業スマイルへと戻っており再度ベルにアドバイスをしていた。
まるで、さっきの事が無かったかのようにーーー
「そう言う事だから。分かった?ベル君」
「ひゃ、ひゃい!!」
緊張と恐怖で声が上ずってしまった。
今後彼女を怒らせるのは絶対にしないようにしよう。
そう心に深く誓うベルであった。
***
受付嬢エイナの怖い一面を知ったベル達は襲いくる恐怖心をどうにか克服し、ようやくダンジョンへと潜り込んでいた。
中は自然にできた洞窟みたいになっており、なかなか広い空間なのでこんな事ができていた。
「そ〜れブレイクダンス!ブレイクダンス!!」
「なんでこんなとこで踊るの?!」
急にその場で激しくブレイクダンスを踊り出す首領パッチと天の助。そんな奴らのハジケっぷりにベルはほとほと参ってしまう思いだった。
「まったく、此処はもうダンジョンの中なんだからさぁ。もっと緊張感を持ってよ!」
「わぁったよ!」
「持てば良いんだろ?」
そう言って首領パッチと天の助は「きんちょう」と書かれた何かを持っていた。
「・・・一応聞くけど・・・何それ?」
「緊張を持ってる」
「言われた通りにしてるだけだぞ」
「そう言う意味じゃなあぁぁぁい!!」
薄暗いダンジョン内にベルの怒号が響き渡った。
すると、突然首領パッチが指を立ててしーっと言ってきた。
「静かにしろよ。モンスターに気づかれるだろ?」
「なんなら今すぐにでも目の前にいるお前を討伐しようか?」
ベルの額に青筋が浮かび上がる。
そろそろ我慢の限界かなと思った時、突如背筋に緊張が走った。
本能的に何かの気配を察知したようだ。
「近くに誰かいる」
「冒険者か?」
「いや、この階層には俺たちしかいない。となればーーー」
天の助の予測通り、此処はダンジョンの入り口にも等しい第一階層。
入りたての新人であるベル達ならともかく、何度もダンジョンに潜った初心者冒険者でも此処で足踏みはそうそうしない。
下の階層の方が稼げるからだ。
なのでこの階層にはベル達しか冒険者はいない。となれば出てくる答えは一つしかなかった。
ベルは受付で支給された簡素なダガーナイフを抜き、首領パッチは首領パッチソードを手に取り、天の助は魔剣大根ブレードを抜き放った。
「って、何でネギと大根?!」
「馬鹿野郎!これはネギじゃねぇ!首領パッチソードだ!」
「俺のこれも大根じゃなくて魔剣大根ブレードだぞ!」
「はぁ、もう何でも良いよ」
もうツッコミ疲れた。ため息一つしてすぐさま戦闘態勢を整える。
これくらいの事は新人講習で習った基本だ。
「相手はゴブリンか、もしくはスライムあたりか・・・ランクは低いけど群れてると厄介だ。慎重に行くよ!」
そう言ってベルは溜まった唾を飲み込みナイフを強く握り締めた。
いよいよ初の戦闘だ。講習で行ったような寸止めの模擬戦や人形相手の打ち込みとは違う。
生きたモンスターとの命のやりとりをする本当の戦い。
負ければ勿論、命はないーーー
緊張が走る。体が強張り始めたのを太もも辺りを強く叩いて気を強く持たせる。
しっかりしろベル・クラネル!こんなとこで躓いてちゃ意味ないじゃないか!僕には目標が、夢があった筈だ!それを果たす為にも此処で怖気付いてちゃ駄目なんだ!
それに、今の僕には心強い仲間がついてる。ちょっと頼りない気もするけど大事な仲間だ。彼らを信用しなければーーー
気配の主はこの先の角を曲がったところにいる。
丁度死角になっていて姿を視認する事は出来ないが間違いなくいるのほ分かる。
となれば、やる事は一つしかない。
実戦経験の乏しいベルがいきなり戦闘を仕掛けても勝てる見込みはあまり高くない。
ならば、勝率をより確実にする為にもここは奇襲からの一撃必殺にかけるしかない。
ゴブリンなら人間と体つきは似ている。ならば相手が背を向けている隙に素早く背後に回り込み喉元をナイフで掻き切り倒す。だがもしこちら側をむいていたら・・・
その時は最短距離を突っ切り相手の心臓部にナイフを突き立てれば良い。
だが相手がスライムだったらどうする?
スライム相手にナイフは通るのか?そもそも切れるのか?
と言うか奴はどう言う生態系をしているんだ?
そもそもゲル状の生物なんて存在出来るものなのか?
どうする、もしこの先にいるのがゴブリンではなくスライムだったらどう対処する。
相手は液状、おそらく刃物は効果が薄い筈。
やはり火か!火で炙って倒して仕舞えば・・・待て!その火種は何処だ?
そもそも僕は魔法が使えないんだ!それなのに何故火を意識したんだ。
くそっ、僕は何て愚かなんだ!こんな時こそ自分の出来る最善の策を尽くす事こそが冒険者なんじゃないのか?!
考えろ!考えるんだ!この場を乗り切る最善の策をーーー
「どうでも良いけどこの一人語りいつまで続けるつもりだよ?」
「あ、ごめん・・・緊張感しててついーーー」
すっかり自分の世界に入ってたみたいだ。
これじゃ成功する冒険も成功しなくなる。
余計な事は考えずに目の前の敵に集中すべきだ。
「首領パッチ、天の助。準備はいい?」
「へっ、言われるまでもねぇ!こちとら早くハジケてぇんだ!」
「人の事心配する前に自分の心配をするんだな。まぁ安心しな。お前の事は先輩である俺たちがしっかりフォローしてやるから安心して戦闘に集中しな!」
「ありがとう、二人とも・・・よし、行くぞ!」
ベルの掛け声と共に三人は一斉に飛び出した。
其処には確かに一体のモンスターの姿があった。
カオス・ダークネス・デビル・ドラゴン(推定討伐レベル99)
其処にいたのは全身黒一色で彩られためちゃくちゃ巨大なドラゴンだった。
その風貌はまるでロールプレイングゲームのラスボスとかに出てきそうな感じのヤバさがひしひしと感じられていた。
『我が前に立つ愚かな挑戦者よ、その無謀な勇気に敬意を評して苦しまずにこの世から消してやろう!!』
「「「すっげぇ場違いなのでたぁぁぁぁぁーーー!!!」」」
いきなりこんなラスボスクラスのモンスターの登場にベルは勿論、首領パッチと天の助も驚愕していた。
『どうした?まさか今更怖気付いたなどとわ言うまいな?折角やってきたのだから少しは楽しませよ』
「無理無理無理無理!初ダンジョンの上に初モンスター遭遇で戦う相手じゃないってあんたは!」
「そうそう!あんたみたいのは寧ろ魔王城とかにどっかりと座って勇者が来るのをずっと待ってるべきなんだよ!」
「あんたくる場所間違ってるよ!ここにはあんたが求めるような強者なんていないから!」
『えぇい!ごちゃごちゃとうるさい奴らよ!こないのならこちらから行くぞ!食らうが良い! 【デスダークネスフレイムブレス】」
説明しよう!
デスダークネスフレイムブレスとは、カオス(以下略)ドラゴンの体内に溜め込まれている暗黒エネルギーを凝縮して圧縮して更に温めたり冷ましたりし何やかんやでめいっぱい集めた感じのエネルギーを口内に集めて一気に放射すると言うカオ(以下略)ゴンの必殺技なのである!
ブレスの温度はおよそ一兆度とされており、食らえば骨も残らず蒸発させられると言う恐ろしい技なのだ。
「ぎぃぃぃやあぁぁぁぁーーー!!死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅーーー!今度こそマジで死ぬぅぅぅーーー!」
「ぎゃーーー!真っ黒に焼けちゃうぅぅぅーー!俺の見た目オレンジ味なのにコーラ味になっちゃうぅぅぅーーー!」
「やべぇ!首領パッチがまともにブレス食らってるぅ!真っ黒な炭になりかけてるぅぅーーー!」
最早戦いにすらならなかった。圧倒的力を持つこのラスボス紛いのモンスターの放つブレスをどうにかかわすだけで精一杯な状況であった。
しかも、うち1名はもろに直撃してるしーーー
「に、逃げろぉぉぉーーーー!」
『逃すと思うかぁぁぁぁーーー!』
「げぇぇぇっお、追ってきたぁぁーー!」
必死にダンジョン内を逃げ惑うベル達を執拗に追いかけ回すカオ(以下略)ゴン。
そしてひっきりなしに放たれる黒炎のブレス。正にダンジョン第一階層は地獄の一丁目と化していた。
『其処までにせよ!カオスダークネスデビルドラゴンよ!』
『む!!』
突如として、逃げ惑うベル達の前に神々しい光を放つ白いドラゴンが姿を現した。
シャイニング・スターライト・ゴッド・ドラゴン(推奨討伐レベル99)
「「「また場違いなのが出たぁぁぁーーー!!!」」」
逃げるベル達の前に殺意剥き出しで前に立つシャイ(以下略)ゴン。
前方のシャイ(以下略)ゴン。後方のカオ(以下略)ゴン。
どう考えても勝ち目など全くないのは誰から見ても明らかな事だった。
『貴様だけ楽しむなどずるいではないか。強者なら我にも挑む権利があると言うものよ!』
『何を言うか!ただ眩しく輝くだけしか出来んトカゲの分際で強者と戦うなどとは片腹痛いわ!』
『抜かせ!貴様こそ陰険で根暗なトカゲの分際で強者に挑むなど笑止千万!この強者とは私が戦うべきだ!』
『おのれ小癪な!ならば先に貴様を葬ってくれるは!【デス(以下略)レス】
『ならば受けてみるが良い!【スターダストシャイニングフレイムバースト!】
説明しよう!
スターダストシャイニングフレイムバーストとは、体内に溜め込まれた聖なるエネルギーを凝縮し圧縮し更に温めたり冷ましたり調味料や隠し味を加えるなりしてとにかくめいっぱい溜め込んだエネルギーを口内から一気に放出するシャイ(以下略)ゴンの必殺技である。
この熱線温度はオラリオで人気の健康サウナの数億倍の熱量と光量を誇っており、まともに食らえばたちまちこんがり小麦色の肌・・・などにはならず全て蒸発し原始レベルで分解されると言う恐ろしい技なのだ!
互いの必殺技ブレスがぶつかり合いあたりに衝撃を撒き散らす。
放っているドラゴン達でさえ苦悶の表情を浮かべているのだからその間に板挟みされていたベル達に来る衝撃波は溜まったものではなかった。
襲い来るショックウェーブに身を焦がすほどの熱量に日焼けサロン顔負けの光量、更には落盤や落石や落大生や落花生やオットセイなどが降り注ぎ辺りは阿鼻叫喚の世界の週末を彷彿とさせるほどのカオスな空間と化していた。
幸いだったのはどちらも互いを相手にするので手一杯だったらしく足元にいるベル達の事などすっかり忘れていた事だった。
この隙にベル、首領パッチ、天の助の三人は命かながらダンジョンから脱出する事に成功するのであった。
「し、死ぬかと思った・・・」
「さ、流石の俺も・・・あれはダメだな・・・相手が悪すぎる」
「なぁ、俺溶けてんだけどーーー」
「仕方ない。今日はこのまま引き上げることにしてまた明日潜るとしよう」
「それしかねぇな。しゃぁねぇ、また明日だな!」
「俺溶けてんだけどーーー」
「よし、明日こそはダンジョン攻略頑張ろう!」
「明日こそはハジケまくってやるぜぃ!!」
「俺溶けてんだけどぉぉぉーーーー!!!」
明日に向かいやる気を出すベルと首領パッチ。そして溶けて頭だけになったのに無視される天の助。
初日は散々な目にあってしまったが、明日こそはきっとーーー
そんなことを夢見ながら一人と二匹は帰路についた。
尚、初日で成果ゼロな上にボロボロな状態のベル達を見たエイナは優しく励ましてくれたのだそうなーーー
***
翌日、前回とんでもないモンスターと遭遇してしまい成果ゼロのまま帰宅したベル達は早速成果を出す為にと再度ダンジョンに潜っていた。
「昨日はとんでもないのとでくわしたからなぁ。今日は出ませんように」
「つぅかなんで第一階層であんなの出てくんだよ?初見殺しにしても露骨すぎんぞ」
ベルの隣で首領パッチがグチグチ文句を言ってはいるがそこは苦笑いでスルーする。
道なりにダンジョン内を歩いていると何かの気配を感じた。
またカオスなんちゃらとかシャイニングどうたらとか言うとんでもモンスターなのでは?
そう思い今度は慎重に姿を確認してみた。
『奴らが来たか。今日で俺は死ぬかもしれんな』
『そんな!行かないであなた!』
『許せ、ゴブ子。これもダンジョンで生まれた者の運命なんだ。ゴブ助を頼むぞ。強いモンスターに育て上げてくれ!』
『いや!行かないであなたぁぁ!!』
『父ちゃぁぁぁーーーん!!』
『ギギギィ!ギギーギギィーー!』
ゴブリンが現れた。
「やり辛いわぁぁぁぁぁーーー!!!」
先のゴブリン達の行いを見てベルが天に向かい叫んだ。
「何あれ?何でゴブリンが家族持ってんの?なんで温かい家庭を築き上げてんの?なんでドラマチックな展開になってんの?あれじゃ狩るにも狩り辛いよ!僕倒せないよなんか泣けてきたよ僕!」
ゴブリンの健気さに涙を流すベル。だがーーー
「おりゃぁ!くたばれゴブリンがぁぁ!」
「魔石よこせやぁぁぁーーー!!」
『ギギィィィーーー!!』
同情なんて一切せずにゴブリンを倒す首領パッチと天の助。
彼らの足元には無残にもボコボコにされて顔面が元の形の数倍に膨れ上がったゴブリンが横たわっていた。
「ち、血も涙もねぇぇぇーーーー!」
さっきまでの悲しきドラマなど欲にまみれたこいつらには全く意味をなさないらしくあっさりと倒される父ゴブリン。
その奥で母ゴブリンと子供ゴブリンが父の最期を涙を流して見つめていた。
しかし、欲にまみれた二体の怪物がめざとく二人を見つけてしまう。
「此処にもゴブリンが居たぞぉぉ!」
「狩りじゃ狩りじゃぁぁーーー!」
『いやぁぁ!こないでぇぇ!このけだものぉぉぉ!』
『うわぁぁぁん!母ちゃぁぁぁん!』
「・・・・・・」
ベルは無言だった。無言のまま動いた。
一言も言葉を発することなく首領パッチと天の助を掴み、その場を去って行く。
「強く生きなよ・・・死んでしまった父親の分までーーー」
去り際に二匹のゴブリンにそう言葉を送り、ベル達は第一階層を後にし、第二階層へと向かった。
「ったくよぉ、何考えてんだよベルよぉ」
「折角魔石を難なくゲットできるとこだったのによぉ」
「まぁ良いじゃん。二階層でその分稼げば良いんだしさ」
「それもそうだな」
なんだかんだで納得し、一同は二階層へとやってきた。
其処では大勢のモンスターがフロア内にぎっしりと詰め込まれていた。
「な、何このモンスターの量は?!」
「いけねっ!今日がその日だったんだ!」
大慌てでフロアへと駆け出して行く首領パッチと天の助。
残されたベルには何がなんだかさっぱり分からなかった。
「えぇ?ど、どうしたんだよ二人とも!」
「馬鹿野郎!何モタモタしてんだよ!今日はあの人気バンドグループ【ジャンクフーズ】の解散記念ライブだぞ!」
「何そのグループ聞いた事ないんだけど?」
「ばっかおめぇ!今オラリオで一番熱いグループだぞ!」
「そ、そうなの?!」
全く知らないベルには何がなんだかさっぱりだった。
結局二人に連れられてフロア内へとやってくる。
周りのモンスター達はライブに夢中なのかベル達に全く気付かず視線が釘付けになっていた。
「みんな!今日は俺たちの解散ライブに集まってくれて本当に有難う!今夜は朝までフィーバーするからよろしくなぁ!」
「「「うぉぉぉぉぉーーーーー!!!」」」
メインボーカルのハンバーガーの言葉に会場から割れんばかりの歓声が起こった。
「それじゃ行くぜ!曲名は【健康野菜生活】聞いてクレェ!!」
「ジャンクフードなのに曲がそれぇ?!選曲おかしいだろ?!」
ベルのツッコミを他所に曲は始まった。
「ナス!キュウリ!レタス!ハクサイ!ニンジン!ゴボウ!ジャガイモ!キャベツ!西瓜ーーーーーー!!」
「「「もうだめぇぇぇーーーーー!!!」」」
「西瓜で?!ってかなんですいかだけ漢字!?」
最後の西瓜の時点で会場にいた殆どのモンスターは皆失神して倒れ、魔石を残して消滅してしまった。
後に残っているのはベル、首領パッチ、天の助とジャンクフーズのメンバー達だけだった。
「皆、応援ありがとう!サンキューーーーー!」
その言葉を最後にジャンクフーズはお腹を空かせた首領パッチと天の助にりより美味しく食べられてしまった。
「うまうま〜♪」
「やっぱジャンクフードは美味いな」
「って、食べてるぅぅぅーーー!」
ベルのツッコミもそこそこに三人は辺りに散らばった魔石を残さず拾い集めた。フロア内にぎっしりと集められただけあってその魔石の数はとんでもない数になっており、ベル達が持ってきた魔石袋から溢れそうになる程だった。
「これ以上は無理か。今日はここまでだな」
「あぁ、ライブ楽しかったなぁ」
「またやらないかなぁ?」
「もう出来ないだろ?二人が食べちゃったんだから」
ジャンクフーズの犠牲を胸に三人は探索を打ち切り地上へと帰還を果たした。
帰還後、魔石を換金したところ20万ヴァリス相当になったのだが、それを見たエイナから無茶をしたのだろうと誤解され小一時間説教をされる事となった。
尚、その時も首領パッチや天の助がふざけまくっていた為に彼女の逆鱗に触れてしまいどこから取り出したのかショットガンレ○ントンM870の散弾をもろに浴びせられたと言うそうだ。
***
其処はダンジョンのどこかの階層。
そこでは今、一つの戦闘が終わった後であった。
足元に広がる無数の強豪モンスターたちの哀れな姿。
そのモンスターたちの上に立つは華奢な体つきをした一人の少女と長身アフロヘアーの男だった。
少女の髪は金色の長い髪で動き易さを重視したのか体の重要な部分のみをアーマーで覆うと言う軽装で身を固めており、手には彼女の得物と思わしき巨大な杓文字が持たれており先端には「ごはんですよ」と書かれていた。
アフロの男はと言うと上半身を段ボールで作った自作アーマーで武装し、彼の鼻からは長い鞭のような鼻毛が漂っていた。
「この辺りのモンスターは片付いたみたいだな」
「うん、もう敵の気配は感じられない」
「そうか、少し見ない間にずいぶん腕前をあげたな」
「有難う。おじさま」
アフロ男に褒められて嬉しいのか少女がはにかんだ顔を浮かべていた。
「だが、まだハジケ不足な面もあるな。それでは今年の【決戦】では予選も通らんぞ」
「む、ハジケの道は厳しいーーー」
「その通り!ハジケの道は獣道!または茨の道とも言うしときどきししゃもの道とも言うぞ!」
「ししゃも・・・じゅるり!」
魚を連想したのか少女の口からは涎が垂れていた。
育ち盛りゆえの事なのだろう。
「よし、帰ったらいつもの酒場で打ち上げだ!何でも好きな物食べても良いぞ!俺が許す(代金はロキ持ちだけどね」
「なんでも?」
「もちろんだ。アフロに二言はない!」
「なら、シーラカンスの丸焼き!」
「良いだろう!戻ったら作ってやろう!」
「(じゅるり)」
先ほど以上によだれを垂らす少女。
そんな少女を見て満足そうに笑うアフロ男。
後にベルはこの二人とも運命的な出会いを果たすことになる。
「剣姫」と呼ばれる少女と「鼻毛真拳」を使う男とーーー
人物紹介のコーナー
・なまたまご
ロキファミリア所属の冒険者。レベルは5ーーー
冒険者登録にやってきたベル達に絡んで来たは良かったのだが見た目がまんま卵だった為に唯一の弱点でもある「物理耐性の弱さ」を突かれてしまいお碗で殻を割られて絶命してしまった。
趣味はロッククライミング(過去に二度ほど死にかけている)
・しろごはん
なまたまごと同じくロキファミリア所属の冒険者。レベルも同じ。
なまたまごの敵討ちにと天の助と主食の座を賭けて勝負をし、見事勝利を収めたのだがその代償としてお椀の中の米を全て食べられてしまい絶命してしまう。
彼の死が後の冒険者達の礎になったかどうかは定かではない。
趣味はサーフィン(過去に何度か波に米粒をさらわれて死にかけた事があるらしい)
・ひきわりなっとう
ロキファミリア所属の(以下略)
しろごはんの回想シーンのついでに首領パッチと天の助に食べられてしまい絶命。
彼の残した偉業は多くの冒険者達の助けになったとかならなかったとか?
趣味は発酵(過去に何度か腐敗しかけた事があるそうだ)