ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
こうなれば原作に負けないくらいハジケまくれるよう頑張ります!
ベルが冒険者になってすでに半月の時が経過していた。
来る日も来る日もダンジョンへと潜り、心に描いた冒険をしようと息巻いていたのだが、現実は非情なようでーーー
ある時はモンスター同士の寒い三文芝居を見せられ、ある時はモンスター自体がやる気がないと言うので魔石だけ渡されてダンジョンを追い出され、ある時はモンスター同士の小競り合いに巻き込まれて審判役をやらされ、またある時はキノコタケノコ戦争に偶然立ち会ってしまったりととにかくろくな冒険を出来ずにいた。
それなのに稼ぎはかなり良い方なので余り無碍に怒る事も出来ず、思い描いていた冒険譚とのギャップの差にベルはすっかりテンションが落ち込み始めていた。
今日もどうせまた冒険譚とは名ばかりのカオス染みたダンジョン探索で終わるんだろうな。
などと思いながらも心の片隅ではモンスターとの緊迫したバトルが出来るのではと淡い期待も持ちつつ現在ヘスティアファミリアの拠点となっているアフロ屋さんの近くを通り過ぎる。
【バンギャオォォォォーーーン!!】
「わぁぁーー!ジャイアントハジケザウルスがでたぁぁ!」
「急げ!大至急オラリオ防衛軍の出動を要請しろぉ!」
ドカン! ドカン! ボヨヨ〜ン!
【アンギャ〜〜ス!!】
「駄目だぁ!怪獣相手じゃ戦車やヘリじゃ話にならない!」
「くそぅ、こうなったら・・・変身!」
シュワン、シュワン、シュワン!
【ジョワッチ!】
ズズゥゥゥゥーーン!!
「ああ!ウルトラハジケマンだ!」
「頑張れ!ウルトラハジケマン!」
【ジョワッチ!】
【バンギャオォォォーーン!!】
バキッ! ドカッ! スポポーン!!
「・・・うん、今日もオラリオは平和だ」
最早ツッコミをする事すら放棄してダンジョンへと向かうベルであった。
***
ダンジョン入り口では既に首領パッチと天の助が待っておりベルの到着したのを見るや「おせぇんしゃボケェ!」と怒号をあげながらジャンピングキックを仕掛けてきた。
それを軽くスルーし、入口へと向かおうとすると、今度は大号泣しながらベルの足にふがりついてきた。
「置いてかないでけれ〜」
「わしらもうお役御免なんかぁ?!役立たずなんかぁ!?」
「うっさい!さっさと行くよ!」
いつも以上にぞんざいに扱いつついつものメンバーでダンジョン攻略を行なっていく。
やっぱりと言うか、入ってすぐにモンスターの三文芝居を見せられたので今回はそれを見終わる前に仕掛けて一網打尽にした。
正直関わるのも面倒になってきたのが正直なところだった。
こっちは真面目にダンジョン攻略をしているのだからそちらも真面目に取り組むのが礼儀ってものではないのだろうか?
ため息まじりに二階層へと降りると、やっぱりと言うか今度は南極と北極のどちらが寒いかと言うくだらない論争を繰り広げていたのでそこもサクッと突破する。
何だろう。もしかして冒険者だけじゃなくダンジョンまでもがおかしくなってしまったんだろうか?
不安になってくる気持ちを押さえ込んで続く三階層、四階層と潜ってみたものの結果は前回となんら変わらなかった。
やっぱりと言うか三階層も四階層もベルが求めていた展開にはならず結局のところ魔石だけが潤沢に集まるだけと言う至極つまらないダンジョン探索になってしまっていた。
「はぁ〜」
「どうしたんだよベル?そんならため息なんてついて」
「これ、冒険って言うのかな?」
「知らね」
相変わらず首領パッチは我関せずを貫いていた。
そんな首領パッチだが、他がふぞけているとそれ以上にふざけだすのでたちが悪い。
だが、今のところまともなパーティーを組めない以上この二人の助力はとても有り難い。
まぁ、戦闘で役に立つかどうかと聞かれると答えづらいところがあるんだが。
「だいぶ集まってきたな。ここらで引き上げるか?」
魔石袋の中を見て天の助が提案してきた。
今までだったらそこで一旦打ち切って帰るところなのだが、今回は違った。
「首領パッチ、天の助。今回は5階層まで行ってみよう!」
「はぁ?!お前まじで言ってんのか?」
「前にエイナに言われただろ?まだオレ達には5階層は早いって!」
二人が狼狽出す。これは単にモンスターを警戒しているのではなくエイナの方を警戒しているのが大きい。
何しろ何かやらかす度に彼女の厳しい制裁を食らっているために二人は彼女のことをかなり警戒してしまっていた。
まぁ、全ては二人の自業自得なのだが。
「大丈夫だよ。エイナさんには内緒でさ。ほんの入り口までで良いんだ」
「そこまで言うならーーー」
「本当に入り口までだからな!」
二人は渋々了承してくれた。
そんな訳でベル達は初の5階層へと潜って行った。
冒険者になり立ての新人にしては相当早いペースなのだろうがそこが返って危険だとも言えた。
何しろ、ダンジョンは何が起こるか分からない場所なのだから。
「ブモォォォーーー!!!」
五階層に辿り着いたベル達三人を出迎えたのは牛の顔を持った巨大なモンスターだった。
「なんだ?あれ」
「ただの牛だろ?」
「何だよ!まだ五階層は早いなんて言いやがって結局出てくんのは牛の化け物かよ?拍子抜けだな!」
「だな。もう少しインパクトがないと張り合いがないぞ」
「ぶ、ブモ?!」
いきなりの無茶振りに牛顔のモンスターことミノタウロスは対応に困りだしていた。
そんな中ベルはと言うとーーー
「き、き、き・・・」
ベルの肩が震えている。
一体どうしたのだろうか?
まぁ、無理もないだろう。五階層にやってきていきなりの相手がこのミノタウロスなのだからきっと恐怖で打ち震えてーーー
「キターーーーーーーーー!!!」
前言撤回!
単に喜んでるだけでした。
「ど、どうしたんだよベル?!急に大声だしてよぉ?」
「これだよ!これなんだよ!僕が求めていた冒険ってのはこう言う事なんだよ!ダンジョンと言ったら寒い三文芝居やる奴らじゃなくて下らない論争してる奴らでもない!目の前にいるこいつみたいなモンスターこそがダンジョンの醍醐味であり冒険の醍醐味なんだよ!!」
「ブ、ブモッ?!」
「え?俺のこと?」とばかりにミノタウロスが自分を指差していた。
何というか先程までのモンスターらしいテンションはすっかり大人しくなってしまい、ミノタウロス自身どうしたら良いのか困り始める始末だった。
「さぁ、やるよ二人とも!このモンスターを倒して冒険を始めるんだ!」
「なんか良く分かんねぇけど、良いぜ!俺のハジケっぷりを見せてやるよ!」
「ふっ。まったくしょうのない人たちだ。ここは私も加わるとしましょうかねぇ」
三人ともやる気満々な様子だった。
それに対してミノタウロスはと言うと明らかに目の前のベル達を頭のおかしい連中と言った視線で見ており、なんと三人から逃走しだしたのだ。
それこそ牛が兎の如く逃げ出した。
「逃げた!追うぞ首領パッチ!天の助!!」
「にゃろう!ミノタウロスの癖に戦わずに逃げるとか原作無視してんじゃねぇよ!」
「なんで逃げんだよ!普通そこは襲いかかるとこだろうが!」
逃げるミノタウロスを追いかける新人冒険者と奇妙な生命体二名。
普通新人冒険者がミノタウロスを相手に追いかけるなんて事有り得ないのだが、今回はベル自身がダンジョンのハジケっぷりに嫌気がさしてたのとようやく会えたまともなモンスターにテンションバカ上がりになった為にモンスターの強さ云々が度外視された事と今はソロではなく仲間がいる為こんな無茶苦茶な事が出来る事と、このミノタウロスが少々ヘタレなとこが重なり今の構図が出来上がったようだ。
必死にダンジョン内を逃げ惑うミノタウロス。その後ろを必死に追いかけるベル、首領パッチ、天の助の三人。
やがて、ミノタウロスの目の前が壁になり追い込まれてしまった。
「もう逃げられないぞ!」
「覚悟しろや!この牛頭!」
「ところてん漬けにしてやんよぉ!!」
最早どっちが悪だか分からなくなってきた。
もうダメだと思ったミノタウロスの目にはうっすらと涙が滲んでいた。
「ブモッ!ブモォォォーーー!(誰か、誰か助けてぇぇぇーーー!」
泣き叫ぶミノタウロス。しかしこの階層にはこの場にいるもの達以外誰もいない。
ましてや上の階層からわざわざ救援に駆けつけて来るものもいない。
あぁ無情。誰か助けてくれる心優しい者は居ないのだろうか?
目の前の非情な現実に絶望したその時、横一文字に閃光が走った。
「「「きゃぁぁぁーーーーー!!!!」」」
閃光と同時に吹き飛ばされる三人。
そして、三人が吹き飛ばされたその場所には一人の少女が立っていた。
金色の長い髪をした綺麗な顔立ちの少女が持っていた巨大なしゃもじを振り下ろす。
「大丈夫・・・ですか?」
「ブ・・・ブモッ(は・・・はい」
「・・・・・・」
助けに来た少女だが、目の前にいたミノタウロスを見て目が大きく見開かれた。
そして、先ほどぶっ飛ばしたベル達を見やり、そしてミノタウロスを見る。
その後、またベル達を見てまたミノタウロスを見る。
見事なまでの二度見であった。
「・・・・・・間違えた」
「ブッ、ブモモッ(あ、やっぱり」
「それじゃ仕切り直しで」
「ブモモーーーーーー!!(ぎゃぁぁぁーーーー!!」
仕切り直しとばかりに先ほど助けた筈のミノタウロスをしゃもじの一撃にて倒す少女。
血も涙もない所行とはまさにこの事。
「「み、ミノタウロスぅぅぅーーー!!」」
倒されたミノタウロスの下へと駆け寄る首領パッチと天の助の両名。
「しっかりしろ!」
「大丈夫なのか?!」
「ブッ、ブモッ、ブモッブモモッ(す、すまねぇ・・・ドジ踏んじまったぜ。我ながら情けねぇ」
「馬鹿野郎!何らしくない事言ってんだ!しっかりしろ!」
「ブモッブモモッブモッ(俺はもうダメだ。この傷じゃどの道助からん」
「畜生!ミノタウロス!」
首領パッチと天の助の二人が涙を流す。
さっきまで追いかけ回していたのにね。
「ブモッ(頼むぞお前たち。この俺の死を乗り越えて立派な冒険者になってくれよ。この俺の屍を・・・越えてグフッ」
「「み、ミノタウロスーーーーーーーーーーーーー!!」」
二人が見守る中、ミノタウロスは静かに息を引き取った。
彼とのこれまでの思い出が色濃く蘇ってくる。
晩ご飯のおかずをとりあって喧嘩したことや
雌のミノタウロスの風呂場を覗こうとして袋叩きにあったことや
数多の強敵たちと激闘を繰り広げたことや
消灯時間を過ぎても遅くまで恋話に花を咲かせて先生に怒られたことや
とにかく、たくさんの思い出が二人の中に蘇っていた。
「そんな思い出なかっただろ?!」
一足遅れて復帰したベルがツッコミを入れてきた。
そんなベルを先の少女はただじっと見つめていた。
「えっと・・・何ですか?」
「君、ツッコミが出来るの?」
「へ?!ま、まぁ一応ーーー」
食い気味に聞いてくる少女に若干引きつつベルは答える。
何気に顔は美形なのでそれが目の前に来ているのだから尚更ドキドキしてしまう。
ガッと両肩を掴まれ何事かと思った時、目の前の少女の顔が明らかにやばい感じに変貌していた。
両の目が凄まじい位血走っていて鼻息が荒い。
ぶっちゃけめちゃ怖いーーー
「え?!えぇ!?なに?何ですかかかかーーー?」
「見つけたーーー」
「へ?」
「君のようなツッコミが出来る人を私は求めてた!家のファミリアに来ない?」
いきなり何言い出すんだこいつは?!
もしこれがヘスティアファミリアに入団する前なら即承諾していたとこなのだが、生憎今はヘスティアファミリア唯一の団員だ。
今あそこを離れる訳にはいかない。神様を飢えさせる訳にはいかない。
「す!すみません!僕もう別のファミリアに入団してて、勧誘は嬉しいんですけど、お、お断りーーー」
「交渉成立だね!それじゃ早速私のファミリアに行こうか」
「いや、さっき言ったよね?お断りするって言ったよね?」
「私はロキファミリアの団員なんだよ。だから君も今日からロキファミリアの団員だね!」
「いや、だから話聞いてよ!僕もう別のファミリアに入ってるの!だから勧誘はお断りするってーーー」
「それじゃ早速行こうか。案内するからついてきてね」
「人の話を聞けエエエエエエエーーーーー!!!」
ダメだ。こいつ人の話を全く聞こうとしない。
きっとあれだ。都合の悪い話は脳内スルーされる割と羨ましい脳味噌をしているんだろう。
ヤバイ。この女確実にヤバイ!なんとかしてこの場を投げ出さないとーーー
「ちょっと待ちなよあんた!」
「なに?」
今にもベルを連れ去ろうとしている少女を止めるべく二人の美女? が前に立ちはだかった。
「あんた人の彼氏を勝手に連れて行こうとは随分と舐めた真似してくれんじゃないのさ!」
「あたしらこの小説のヒロインだよ!ポット出のモブキャラの癖にヒロイン顔してんじゃないわよ!」
「ヒロイン?そんな化け物みたいな顔してて?」
「「誰が化け物じゃぁぁあーーー!!」」
そりゃ全身トゲウニ状の生物やゼラチン質の生物がヒロインになんてなったらそれこそ小説自体が終わる危険性がある。
「そんなんじゃヒロインなんて到底無理だよね。ならばこの小説のヒロインは私で決まりじゃないかな?原作でもそんな感じだったし」
「はあ?!てめぇ原作のネタがここで通用すると思ってんのか?」
「今時てめぇみたいな顔だけの女なんざにゃヒロインなんてならねぇんだよ!」
「ふぅん、なら勝負してみる?私と貴方達、どちらがヒロインにふさわしいか?」
「「望むところじゃーーー!!」」
こうして、謎の少女対パチ美と天子のヒロインの座を賭けた一戦が行われようとしていた。
果たして、この小説のヒロインになるのは一体誰なのだろうか?
まぁ、結局のところここの誰かがヒロインになったらそれこそこの小説が終わるのは目に見えているだろうがーーー
「あの・・・僕、もう帰っても良い?」
ベル・クラネルが真の冒険が出来るのはいつの日になる事やら?
ついに始まってしまったヒロイン決定戦。
果たして勝利するのはパチ美か?それとも天子か?それともまさか謎の美女なのか?
因みに謎の美女の正体は、まぁ皆さんご存知ですよねww