ダンジョンにハジケを求めるのは間違ってるだろうか 作:お通しラー油
田楽
「ふっ、待たせたな」
・・・誰だよお前?
ってな訳で今回も始まるよ〜
前回のあらすじ
突如現れた謎の少女に無残にも殺害されてしまったミノタウロス。
彼の葬儀が今しめやかに行われていた。
「いきなり葬儀?!あらすじから既に嘘言ってるじゃん!!」
葬儀場には沢山の花が贈られ、周囲には喪服を着込んだゴブリンやらコボルトらが参列し、皆がハンカチを目元に押し当てとり俯いたりしていて誰もが彼の死を嘆いている様子だった。
沢山の花の山が飾られてる壇上には彼の生前の写真がでかでかと飾られており、その写真を見て皆が彼との別れを惜しんでいた。
「何これ、ガ○マの国葬みたいになってるんだけど」
その壇上の上では、同じく喪服を着た首領パッチ、ところ天の助、そして謎の少女の三人が並び、スピーチを行なっていた。
「なんでお前らが中心になって仕切ってんの?!ってか、そこの人はさっき自分でミノタウロス倒したじゃん!なんで喪服なんて着てるのさぁ!?」
因みに、さっきからツッコミしかしてないベルは喪服を着てない為に周囲から白い目で見られていた。
「別に良いよ!モンスターに白い目で見られたって気にしないからさ!」
何とも図太い神経の持ち主のようで。
そんなベルを放置して葬儀は行われていた。
『我々は、一人の英雄を失った。これは敗北を意味しているのか?否!!始まりなのだ!!』
「まんまガ○マ・ザ○の国葬じゃん!」
その後もだこかのお坊ちゃんの葬儀に似たスピーチは行われ、それが終わった後に彼の生き様を写真で大々的に公表する場面に切り替わった。
『彼とは、長い付き合いで、共に幾多の試練を乗り越えてきました』
涙ぐみながらスピーチする首領パッチのそれに呼応して天の助と謎の少女も涙する。
会場の参列者たちの中には声を上げて泣く者まで出ていた。
その写真の映像と言うのが、まんまな雌牛の出産シーンから始まった。
「ミノタウロスじゃなくてただの牛じゃんそれぇぇ!!」
その後も産まれた仔牛はすくすくと成長していき、やがて大人の雄牛となりそして業者に引き取られて行き最終的にはなんやかんやで分厚いステーキにされていた。
「解体されてるぅぅーーー!しかも後味が悪すぎる!!」
ステーキの映像をバックに「こうして、僕達の食卓に美味しい牛肉はやってくるのです」とテロップが流れた途端会場は大号泣した。
「なんで今ので泣けるの?!」
一人全くついてこれてないベルを他所に葬儀は終わりセットは全て片づけられた。
後に残ったのは首領パッチと天の助。そしてその二人を前にして立つ謎の少女達だけとなった。
「さて、前回のあらすじも終わった事だし、本腰入れるとするか」
「今までのをあらすじにしようとしてるぅ?!あんなの前回やってないからねぇ!!」
「おいベル!いつまで前回のあらすじ気分に浸ってるんだよ!もう敵は目の前なんだぞ!シャキッとしろよ!」
「何これ?僕がおかしいの?僕が間違ってるの?」
一人全くハジケについて行けてないベルは頭を抱える。
そんなベルの事など気にもせず展開は激しく動いていく。
「この小説の主人公が彼なら、彼と共に行けばそれはヒロインとなる。つまり私こそがこの小説のヒロインに相応しいことは誰から見ても明らかな事!」
と、謎の少女が自信満々に言い放つが、それを首領パッチは鼻で笑って見せた。
「それなら、最初に出会ってる私の方こそがヒロインに相応しい筈よ!こうして彼の事を私の美貌で悩殺したんだし」
そう言ってセクシーポーズを取るが当のベルには全く効果がなかった。
彼にしてみれば非常食が何か言ってる程度にしか感じてないみたいだ。
「貴方たち、私の事も忘れちゃ駄目よ!私なんて彼のハートどけでなく胃袋まで満たせるんだから!」
今度は天の助が巨大な皿の上に乗って悩殺ポーズを決めたが、やはりベルには効果がない。
やっぱり非常食なのでそう言う認識しかされていないみたいだ。
そんなベルの反応を見て少女は勝ち誇っていた。
「無様ね。どうやら彼の心は貴方たちには向いていないみたいよ」
「ぐぬぬーーー」
「うぎぎーーー」
「やっぱり、彼の心は原作通り私に向いてるみたいだね」
そう言って少女はベルの方を見たが、即座にベルは視線を逸らした。
もし、原作と同じ出会い方をしていればベルの心は彼女に夢中になっていた事だろう。
だが、初めての出会いでモンスターと間違えて襲撃された上に人の話を聞かずに連れて帰ろうとかして、挙句の果てに自身をヒロインなんて呼んでる正直かなり痛い少女にベルの心が動く筈もなく、唯々色々と危ない娘だと認識されてしまい警戒されてしまっていた。
そんな事に気付いていない少女は潤んだ眼差しを向けてくるがベルは一向に向き合おとしない。
「はん!どうやらあんたもベルの心を掴んでないみたいだねぇ!」
「くっ!!まだだよ!これから先のイベントで好感度を上げればきっと告白までいける筈!」
何好き勝手言ってるんだこいつらは。
もうこれ以上付き合ってられないなと上への階段へ向かおうとした時、下階層から何かが猛スピードで駆け上がってくるのが聞こえてきた。
しかし、それは足音などではなく機械的な音を撒き散らす感じだった。
具体的に言えばバイクみたいな奴とかーーー
「「ぎゃああかああああーーー」」
突然下階層から現れたそれは目の前にいた首領パッチと天の助を跳ね飛ばし、少女の前で止まった。
「待たせたな、アイズ!」
「伯父様!!」
アイズと呼ばれた少女が目の前の奇妙な格好をした男を見ていた。
黄色いアフロヘアーにサンダラスを掛けたおっさんが両手と両膝辺りにタイヤを抱えてまるで大型バイクみたいな姿をしてるつもりなのだろうがどう見てもおっさんだった。
「て、てめぇは!!」
「え?知り合い?」
アフロ男を見た途端首領パッチ達の表情に戦慄が走った。また、それはあのアフロ男も同じだった。
「知り合いなの?伯父様」
「あぁ、奴らとは切っても切れない深い関わりがある。いい機会だからお前に話そう。あれは今から10年くらい前の暑い夏の日の出来事だったーーー」
「何か語り出してるんだけど?」
***
10年前、とある街の一角。
そこで彼らは出会う事となった。
「ちくわ〜、ちくわいりませんかぁ?クリスマスにはちくわ〜」
「おい?売れ行きはどうなんだ?」
必死にちくわを売っている少年のもとへとやってきたのはガラの悪そうないかにもやのつく仕事をしてそうなきかつい男だった。
高そうなスーツを着こなし装飾品もこれまた豪華な男は痩せこけた少年にそう尋ねてきた。
「きょ、今日はまだ・・・一本も売れてないんです」
「そうか、今日はもう遅いから帰りな。後は俺がなんとかしとくからよ」
「で、でもーーー」
渋る少年の頭を男はくしゃくしゃと撫で回した。
「いいから帰ってやれ。今日はクリスマスだ。目一杯親御さんに甘えてこいや」
「は、はい!」
そう言って少年は走り去っていった。
残された男はちくわの入った箱を持ってある場所へと行き着く。
「ほらよ、今日のバイト代だ」
そう言って男は箱に入っていたちくわをばら撒く。それに群がるかのように顔面が首領パッチの犬と天の助の犬が集まってきてちくわを貪りだす。
その光景を男はとても楽しそうに眺めていた。
それは、とある雪の降るクリスマスのささやかな出来事ーーー
『ボーボボ劇場 ちくわと野良犬とクリスマス 完』
***
「これが俺たちの過去に起こった経緯だ」
「全く意味わかんない回想だったしそもそも夏って言ってたのになんでクリスマス?!後なんでお前達は犬だったんだよ!」
ツッコミたい事は山ほどあったがとりあえずこれだけは言いたかったので言うベルだった。
「忘れもしねぇ、あの時の屈辱は忘れもしねぇぜ!」
「どのへんが屈辱だったんだよ?!」
「この俺にちくわなんて食わせやがって!そこはところてんだろうが!」
「お前に至っては全く別の事で怒ってるのかよ!!」
二人はそれぞれの理由で怒りを露わにしていた。
が、その怒りを向けられている男の方はまるでどこ吹く風の如く涼しげな顔をしている。
「はん、この俺に一度は敗北したてめぇらがまた俺に挑もうと?笑わせてくれる」
「好きなだけ笑いやがれ!今の俺は昔の俺じゃない。多くの修羅場を潜り抜けて大きく成長したんだ」
「首領パッチの言う通りだ。いつまでもてめぇの天下だと思うなよ!今度こそてめぇをぶっ倒して全世界の主食をところてんにしてやる!」
「まだ言ってるんだそれ」
三者がそれぞれ睨み合う。正に一触即発と言ったところだった。
先に動いたのはアフロ男の方だった。
パカッ
男のアフロが真ん中から真っ二つに割れて開き、中から奇妙な生き物が姿を現した。
「ぶっちゃけ、マジギレ」
「な!!そいつは・・・」
「くぅ、奴も本気って事かーーー」
戦慄する二人。
「え?なんでアフロが?ってかあの生き物は何?それでなんで二人があんなにシリアスな顔してんの?」
「あれは【アレキサンダーさん】と言って、彼の怒りの度合いを知らせてくれる。因みに今のはあまりの怒りにこの場にいる全ての生き物を根絶やしにしてやる!と言う心情の表しを指してる」
「そんなに?そんなに怒ってんのあの人?」
いつのまにか近くに来ていた少女が解説をしていた事に驚きつつもいまはそれどころじゃないとベルは無理やり気持ちを押し込めて再度視線を戻した。
「覚悟は良いかてめぇら!二人まとめて嬲り倒してやんよぉ!」
「上等だぁかかってこいやぁ!!」
「舐めんじゃねぇぞごらぁ!!」
ついに戦いの火蓋は切って落とされた。
三人が一斉に駆け出し、拳を振り上げて肉迫し、そのまま三人は力一杯互いを抱きしめ合った。
「うゎいとぅわくゎっとゎよーーーーー!どぅおんぷぁっつぃぃぃぃ!!とぇんのすくぇええええーーー!!!」
「「ブォォォォォォブォブォォォォォォ!!」」
「はぁぁぁぁ?!」
三人が号泣しながら抱き合い再会を喜び合う。
隣ではアイズが感動のあまりハンカチで目元を拭っていたりしていた。
ただ一人、ベルだけがこの空間に取り残される形となってしまった。
「・・・・・・もう、帰ろう」
その時のベルの目はすっかり疲れ果てたのか若干濁りが見えた。そして、未だに抱き合う首領パッチと天の助、そしてボーボボと呼ばれた男やそれを見ているアイズの事なども考えないようにしてその日はダンジョンを後にした。
***
すっかり意気消沈したベルはそのままギルドへと赴き魔石の換金を行おうとやって来た。
そこを見つけたのか受付のエイナが手招きしてきたので応じて向かった。
「どうしたんですか?」
「どうしたじゃないよ。君一体何したの?」
「へ?何って??」
「とぼけたって駄目だよ。さっきヴァレンシュタインさんが来て君の事聞きに来たよ」
「ヴァレンシュタイン?」
誰だろう。ここに来てまだ半月しか経ってないから冒険者の知り合いなんてそれほど居ないし、ましてやそんなヴァレン某なんて人聞いたことがない。
「誰なんですか?その、ヴァレン某って人は」
「知らないの?アイズ・ヴァレンシュタイン。ロキファミリアの幹部でレベル5の冒険者だよ」
「アイズ?アイズ・ヴァレンシュタイン・・・あぁ!!」
まさかあの時のダンジョンで出会った彼女の事じゃーーー
しかもまさかロキファミリアの幹部だったなんて。
「その様子だと、彼女と会ったの?」
「えと・・・まぁ・・・はい・・・」
半ばしどろもどろながらもエイナに事の端末を全て話した。
彼女の許可なく5階層へと降りた事。
そこで見つけた牛頭のモンスター【ミノタウロス】を発見して討伐しようとした際に横から彼女に襲撃された事。
何故か彼女に目をつけられてしまい勧誘された事。
謎のアフロ男、ボーボボの事。
それらを全て話し合えると、目の前でエイナは深くため息をついた。
「あのねぇベル君。君は三人パーティだから良いけど、ミノタウロスに挑むなんて自殺行為だよ」
「え?ミノタウロスって5階層のモンスターじゃないんですか?」
「違うよ。ミノタウロスは15階層のモンスターだよ。新人のベル君じゃ到底敵わない強敵だよ!」
「えぇ?!」
衝撃の事実に驚くベル。
「な、何でそんなモンスターが浅い階層に?」
「多分逃げて来たんだろうね。下の階層に逃げたら自分より強いモンスターにやられちゃうしその場に留まってもどの道やられる。だから上の階層に逃げて来たところにたまたま君たちが出会したってとこじゃないかな?」
もしそうなら傍迷惑な話だった。
これからダンジョン探索がやり辛くなってしまう。
「あのぉ、そのアイズ・ヴァレンシュタインさんって、どんな人なんですか?」
「一言で言うなら凄腕の冒険者だよ。剣の腕前は達人とまで言われてて、彼女につけられた二つ名は【剣姫】。過去に彼女に近寄った男達は皆玉砕。遂には最近千人斬りを達成したとか言われてるね。これ以上の詳細はファミリアの情報漏洩になっちゃうから私の口からは言えないよ」
「そうですかーーー」
何ともとんでもない人なんだなぁと聞いた話を頭の中で整理していると、そんなベルをエイナはからかうかのように話を続けて来た。
「でも、そんの彼女が君の事を聞きたがってね。一応ファミリアの詳細とかは伏せておいたけどとても君に興味津々だったよ」
「はははっ、そ、そうですかーーー」
「もしかして、助けて貰った彼女の事が好きになったとか?」
「好きに?アイズさんを?」
脳内に浮かぶ彼女の姿。
眩しく微笑みながら手に持った杓文字を振り回して駆け寄ってくるおぞましい光景しか浮かんでこない。
「うん、ないな・・・絶対ない」
どちらかと言うと好意より脅威しか感じなかった。
「うん、まぁ君はもうヘスティアファミリアの団員だし、ヴァレンシュタインさんはロキファミリアの幹部。恋愛するにしてもハードルが高すぎるかもね」
「は?」
「しかも君はまだ冒険者になってまだ一月も経ってないド新人。彼女と釣り合う為にはもっと腕前を上げないとね」
「あの、エイナさん?」
「でもねぇ、私はベル君の事応援してるよ。たとえ叶わぬ恋だとしてもそんな簡単に諦めたら駄目だよ」
「もしもし、エイナさん?聞いてますか?」
「ファイトだよベル君!君の想いが成就する日が来るのを楽しみにしてるから」
「え?想い?成就?僕が?誰に?」
「何はともあれ、今日はもう遅いから魔石を換金しちゃって、今日の疲れを明日に残さないようにしてね。道は険しいけど、頑張れ!ベル君」
「エイナさん。もしかして人の話聞かないって言われません?」
結局勘違いされまくったのだが訂正するのも面倒だしまぁ別に問題ないかと思いその日は魔石の換金だけ済ませて帰ることにした。
それが、後々に大きく響く事になることを、この時のベルはまだ知る由もない。
***
「スパイとして潜り込ませておいた奴らがやられたと?」
「はい、相手は冒険者にすらなってない新人だったとか」
「ふむ、だとしてもそんな奴にああつらがやられるとは到底思えん」
「報告によりますと、その新人の周りには腕の立つ者が二人ほどいたとか?」
「すると奴らはそいつ達にやられたと考えた方がいいな」
「それでどうする?またスパイを送り込むか?」
「そうだな。恐らくはこの地に居るはずだ。なんとしても見つけ出すのだ!」
「毛の王国の生き残り。あのボボボーボ・ボーボボの長兄、バババーバ・バーババの子を何としても探し出せ!そして殺せ!」
「我らマルハーゲ帝国の野望を潰した憎き毛の王国の血筋。それを根絶やしにしろ!」
「全ては、我らが皇帝ツル・ツルリーナ様の為に!!」
背後で暗躍し始める影。奴らは一体何者なのだろうか?
そして、冒険者になったベルがまともな冒険が出来るのは一体いつの日なのだろうか?
「ところで、今日この後飯どうする?」
「外食でいいんじゃね?」
「また外食〜。たまには自炊しろよ」
「ならお前が作れよ」
「やだ、めんどい」
・・・・・・案外余裕はありそうだった。
主人公のベルがハジケてないせいか彼一人だと途端に真面目な話になってしまう。
早くもっとハジケた奴を出さないと