バ美肉パパは駄弁りたい   作:675465

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あなたの欲しいものは何ですか?

 

…pipipipi…pipipipi…

 

「…ふぁ…うーん、もう…朝か…」

 

目覚まし時計のアラーム音が鳴り響く。アラーム音を止めようと、時計のボタンに手を伸ばす。時計の針は五時を指していた。

 

「…んー…そろそろ起きてご飯の準備をしないとね…」

 

体を起こし、背伸びをする。今から娘のお昼のお弁当と朝食、そのどちらも準備しなければならないのだ。そのことを考えると眠気が少し和らいできたようだ。

自室を出てキッチンに向かう。

 

「…今日は何を作ろうかな…うーん」

 

冷蔵庫の中身を確認する。昨日の夕飯で使わなかった材料は…うん

 

「今日は卵焼きがメインでいいかな…」

 

残りの材料からお弁当の具材を決める。あまりこだわりを持って作ろうとしても、材料も足りないし時間もかかる。こういうのは時間との勝負だ。

 

「…できるだけ早めに作ろう。いつ起きてくるかわからないし」

 

今日は平日、娘はいつものように学校に行くため、それまでに朝食とお弁当を用意したい所だ。

そのような気持ちを抱えながら食事の準備をするのであった。

 

 

「…おはよ…」

「おはよう、今宵…先に顔を洗ってきておいで?もう少しで朝ごはんが出来るから」

「あーい…」

 

リビングに降りてきた娘に声を掛ける。見たところ寝起きのまますぐに来たようである。髪の毛が所々は寝ているのも相まって、とても眠たそうである。

 

「…洗ってきたよー」

「…うん。そうだね…ちょっと待ってね、髪の毛がはねてるよ?」

「うぇぇ…いーじゃん別に、困ることじゃないし」

「少し髪の毛を梳かすだけでしょ、母さんもいつも髪の毛の手入れくらいしなさいって言うでしょ?」

「パパもママと同じことを言わないでよ…」

 

娘がそのようなことを言いながら、私に向けて櫛を差し出してくる。

 

「…いつも渡してくるけどさ、自分でしようとは、少しは思わないのかい?」

「何時ものことでしょ?いい加減パパも分かってくれてると思ってたんだけど」

「…その何時ものことを自分で出来るようになってほしいんだけどね」

「ぐちぐち言わないで早くやって」

「…はいはい」

 

何時ものようにゴネをこねられ、その様子に折れてつい櫛を受け取ってしまう。このやり取りも何時もの光景になってしまった。

櫛を受け取り、娘の髪をゆっくりと梳かす。下の方からゆっくりと梳かしていくのだが、櫛に引っかかる感じがない。妻の髪をとかした時は、ほんの少し引っかかる感じがあったのだが、娘の髪にはその感触が微塵もない。

 

「…今宵も頑張ってるんだね」

「は?いきなりどうしたの」

「…こっちの話だよ」

 

ふと呟きを零すと、その呟きが気になったのか娘が問いただしてきたのでお茶を濁す。髪の毛の手入れはすごく大変だろう…妻も以前そんなことを言っていたはず。個人的ではあるが、その妻よりも髪の手入れをしていることだろう。見えないところで一生懸命努力しているんだと思うと嬉しく思う。

 

「…今宵は何か欲しい物とかないの?もう二年生にもなったんだしさ…」

「や…特にほしい物なんてないんだけど、いきなりどうしたの?」

「ちょっと聞きたくなっただけだよ…気にしないで?」

「そう?、ヘンなの…」

 

つい、娘に欲しい物がないかを聞いてみてしまった、こんなにもおしゃれに気を使っているのだ。欲しい物の一つや二つ。あると思ったのだが、そうでもないらしい。

そのようなやり取りをしつつ、娘の髪を梳かすのを終わる。

 

「これで良しっと…はい、梳かし終ったよ…」

「ん、ありがと…」

「うん、じゃあそろそろご飯食べようか…学校遅れるよ?」

「はーい」

 

二人して席に着き、ようやく朝食に着く。毎朝このようなやり取りをしているが、それもいつかなくなると思うと寂しいような気がするものだ。

 

 

「それじゃ、学校いってきまーす」

「…はーい、行ってらっしゃーい…途中の車には気を付けるんだよ?」

「はいはい分かってますよーだ!、見送りするたびに言われれば嫌でも覚えますよーだ」

「うん、覚えてくれてうれしいよ…ほんとに気を付けてね?」

「わかってるー!」

 

そういいながら、学校へ出かける娘を見送る。玄関から出るときに向けられたとき、舌を出している顔を向けられた。やはり高校生にもなって逐一言われるのは恥ずかしいのだろう。

 

「…うん、やっぱり何か買ってあげようかな…」

 

ふと、そのような考えが浮かび上がる。高校二年生にもなったのだ。進級のお祝いとしても何か買ってあげるのもいいだろう。しかし、何を買ってあげたらいいのだろうか…あ、そうか…

 

「…よし、配信しよう」

 

ここはネットの力の使いどころだろう。

 

 

『皆さん、こんティアー!、マネッティア・ブルースターです!』

 

こんティアー

こんにちわー

待ってましたよー

 

『はい、皆さんこんティアーです。今回も配信を見ていただき、ありがとうございます』

 

配信の挨拶をリスナーに返す。このやり取りをすると、配信が始まったと感じる。

 

『さて、今回の配信の本題に入る前に、前回の配信の結果でもお話ししましょうか』

 

まってた

前回の配信って確か帰り道の買い物談義だっけ?

 

『そうですよ。買い物帰りに何か買って帰ろうか…といった配信内容でしたね』

 

前回の配信の内容を振り返りながら話を続ける。前回の配信を見ている人もいたようで、コメントにて返信が書き込まれる。

 

うんうん、確かにその内容だった。

帰り道に初めに目に入ったお菓子を買って帰るってなっていたはず。

 

『ええ、その通りですよ。皆さんで帰り道に、視界に入ったお菓子を買って帰るという内容でした。』

 

そろそろ前回の配信の結果を話していこう。

 

『それでは配信の後の話をしますね…まず、いつものように娘に買い物に付き合ってもらったんですよ』

 

まず?

娘さん、買い物に付き合ってくれるのか…

これはつよい

 

私の場合は頼めば着いてきてくれる…そういうのは珍しいことなのだろうか…

 

『え、そうなんですか?私の場合、お願いしたら大体は手伝ってくれるんですけれどもね…』

 

は?強くないか?

うらやましいですねぇ…

うちの娘は絶対に来ないんだよなぁ

 

コメントから見ても、このような関係は珍しいのだろうか…何だか悲観的なコメントが流れている。

 

『そうなんですか?それですと私の娘はとても素敵な娘なのでしょうねっ…にゅふふふふ

 

うっわ、すごい声出てる…

これが親バカの声ですか…

 

しまった…つい笑い声が漏れ出てしまった。いけないいけない、話の続きをしないと…

 

『ん"ん"っ話が脱線してしまいましたね…まぁ、買い物といっても夕飯の買い出しですからね。時間も下校と合わせて調整しましたし…それでですね、買い物を済ませた後に、目的通り最初に目についたお菓子を買って帰ったんですよ』

 

ほぉーん…

それで、結局何を買ったんですか?

 

『そこで目に着いたのがクレープ屋さんだったんですよ。これなら丁度いいかなって思ったんですよねー

手にもてる商品ですし、はずれがないお菓子でしたし』

 

クレープねぇ

クレープのメニューによっては地雷になりえるんだけど

 

ここで取れ高みたいなのを求めるようなことはしない。というか何を期待しているんだろうか…

 

『いえいえ、そんな奇抜なメニューを頼むつもりはありませんよ。今回、私達が頼んだのはチョコバナナとイチゴチョコでしたしね』

 

なーんだ…面白くないの…

ん?もしかして二人分だけ買ったの?

子供がいる以上、奥さんもいるんでしょ?その人の分は買わなかったの?

 

『…ん?ああ、そうですね、ちょっと説明が足りませんでしたね』

 

コメントの補足をしておこう、勘違いがないようにしておかないと。

 

『先に言いますと…私のミスで、三人分を買う余裕がなかったため、二人分を買った、という話になります。ええ、妻と娘の分を買って帰ったんですよ。』

 

そうなんですか…

嫁と娘を優先するのは普通にいい人

銀行とかATMでお金をおろすという手段は無かったの?

 

『いやぁ…それに気づいたのがですね…注文してからのことでしたし、その後に夕飯を作る時間のことを考えるとおろしに行くのは時間がもったいないかなって思いまして…』

 

お金をおろすのに、ATMまで移動しなければならないし…注文した後ということもあって時間もなかったしね…

 

あっ…そうか、買い物帰りだからか…

夕飯だとすると時間も惜しいしね

 

『コメントの言う通りですよ…そういうわけでして、その後は帰って大急ぎで夕飯を作っていたわけですよ…妻も帰ってきていましたからね…』

 

なるほどね…

共働き?

 

『まぁそう知ったところでしょうか…どちらかというと妻の収入の方が多いですね…はい。一応私でも家計は維持できる…とは思うのですが妻の方が凄いですので…ね?』

 

妻の方が絶対に忙しいのに、暇があれば家事をしてくれていることもあるのだ…そんな妻に無理はさせられないというものだ

 

なるほどねぇ…

だから急ぎだったんだね

 

『ええ、日々頑張っている妻のためにも、家事炊事など出来ることは私が何とかしてあげたいですからねぇ…』

 

出来る限りは、私が頑張りたい所ではある。

 

これはよき家庭

家事が出来るお父さんは珍しい

 

家事は昔の一人暮らしで得た物の一つなんだけどね…そこまで出来るというものでもないし…

 

『家事が出来るといってもそこまで凝った料理などはできませんよ…それでですね、まぁ、帰った後すぐにカレー作りにいそしんでいたわけですよ…でもカレー作りって結構時間がかかるじゃないですか…』

 

まぁ、確かにね…

材料とか、作るのは簡単だけど煮込む時間が掛かるよね…

 

『そうですよねぇ…なので、待ち時間の繋ぎとしてクレープを渡したんですよね。夕飯の前だとしてもクレープ一つくらいなら大丈夫かなって思いまして』

 

どうしてもカレーづくりには時間が掛かってしまうからね…苦肉の策である…

 

夕飯前のお菓子は行儀が悪いゾ?

この場合は夕飯が出来ていないのでセーフ

 

コメントでも意見があるが、この場合は夕飯まで時間があるので大丈夫だと思う…多分

 

『いろいろな意見があるでしょうが、私の場合は30分以上かかるので…そこまで何もなし、というのは辛いですからね…それでですね、渡したんですけれども、突き返されてしまいまして』

 

なんで突き返されたんですか?

クレープ嫌いだったん?

 

そういうのじゃないんですけどね?はい

 

『違いますよ?その後にですね、「半分に分けてくれ」って言ってくれたんですよ?その後に「一緒に食べたいから」って言ってくれたんですよぅ!!!…』

 

あの時はほんっっとに凄かった…!

 

あ、エンジン入った

声の調子が上がってきた

 

『もうほんっっっとにですね!こちらに顔を向けてね!お皿を出してね「お願いね」って見たいにですね!顔をコテンと傾けていた様子がもうすっごく素敵でしてねぇ‼…その様子をじっと見ているとですね…ぷぃって顔を背けていたんですよ!分かりますか!顔は見えないですけれどもほんのりと耳が赤くなっているのを見たときの気持ちが!!もうすっごく愛おしいって感じがあふれていたんですよね!』

 

妻のテレ顔と拗ねた表情が合わさったあのような表情は凄く良かった。もう、言葉では言えないくらいに

 

言葉の速度が早い早い

好きなものを前に語る早口オタク君・・・

 

『でー、その後二人で一緒に食べておいしいねーっなっていたんですよ…ええ、色々と忘れていまして…このやり取り、娘の目の前でしていたんですよ…』

 

あっ…

これは凄く恥ずかしいやーつ

 

この時は凄く恥ずかしかった…妻と二人して顔を赤くしたあと、同じように顔が真っ青になっていたからね…

 

『いや…その…ほんとにね…ご飯の準備しながらでしたけど…じとーとした目で「早くご飯準備して」って見られてましたねぇ…はい、すごく恥ずかしかったです、本当に』

 

これはいけませんねぇ

娘さんを放置は草

 

『その後は必死に謝りましたよ…夕飯の間はむすーっとしてましたし、その後は私の分のクレープを条件に機嫌を直してくれましたけれどもね…』

 

最初は目を合わせてくれなかったし、クレープも受け取ってくれた時もほぼ無言で睨まれて怖かったのは内緒である。

 

割と簡単に許してくれるのな

クレープで許してくれる娘さん可愛い

 

『そんなところも含めて可愛いのが娘ですもの…クレープを食べている娘もすさまじく可愛いですしね』

 

ぽかぽか家族

 

本当にね、私にはもったいないくらいの素敵な家族ですよ…

 

『はい、まぁ…そんなところでして、前回の配信内容を実践した結果でした…いやぁ、すごく良い時間でしたよ』

 

そろそろ今回の配信の主題に入っていくことにしましょう

 

『さて…ここまで話をしましたので…今回のテーマについて話していきましょうか!』

 

ようやくか

待ってましたよ!!

 

コメントも今回のテーマ配信を待っていたようだ

 

『ではでは!今回のテーマを言いましょうか!ずばり、「あなたの欲しいものは何ですか」です!』

 

欲しいもの?

何か買うの?

 

『コメントの言う通りですが、つまりはそういう所です…要するに娘に何か欲しいものがないか聞いてみて、それをプレゼントしようというテーマです!』

 

また急なテーマですな

なんでいきなりプレゼントなの?そこが気になるんだが…

 

『一言で言いますと、進級祝い、とでも言えばいいのでしょうか…娘に聞いてみてもあまり欲しいものは言ってくれないですし、どちらかというと妻に相談している事の方が多いですし』

 

洋服などはもっぱら妻にお願いしているし、それ以外の相談も聞いているのは妻の方が多いのである

 

それはそうでしょうに…

親とはいえ、父には言いづらいでしょうよ…

 

『やはりそうすよね…でも、そこをどうにかするのがこの配信のテーマです!』

 

せやな!

確かに配信の目的そうだったわ

 

『さて!始めにどうやって話しかけるか…ですよね!ここをきちんとしないと欲しいものが聞けませんし』

 

始めが肝心なのは確かですね。

そうだよね…失敗するとそもそもの話に繋がらないし

 

『そうなんですよ…ここは何と言って声を掛けるべきでしょうかね…』

 

本当に難しいことである…なんて声かけたらいいんだろうね?

 

いや、ここは普通に進級祝いでいいでしょ。下手に理由を付けるよりかはいいと思う

 

『そうでしょうか…うん、ならシンプルに考えた方がいいですね!声を掛けるのは進級祝いということで!』

 

それで問題ないと思うよ

あとは話しかけるだけやね

 

『…思ったよりもシンプルに終わりましたね。内容も簡単なことですし』

 

あまり深く考えすぎなのも良くないよ?

娘さんのこと好きだから大丈夫でしょ

下手に言葉使うと余計にヘンになるし

 

『そんなものなのでしょうか…』

 

深く考えすぎて、思考がドツボにはまっていたのかもしれない…

 

そんなもんでしょ

テーマによるけど、今回のは別にテーマするほどでもないような…

まぁこうして配信してくれるのは嬉しいから構わないんだけどね

 

『わかりました…それでは、今回の配信はここまでにしたいと思います!それでは皆さんお疲れ様でした!さようならー!』

 

さようならー!

お疲れ様でした!

バイバーイ

 

 

「…ただいま…」

「ああ、お帰り、今宵…学校お疲れ様」

「…うん」

「…あれ?どうかしたの?」

「別に…うん、何でもない」

 

帰ってきた娘に言葉を掛ける。何か考え事をしていたのだろうか。声を掛けたときに別の方を向いていたようで、こちらに気づくのが少し遅かったように感じる。

すこし気になってしまうが、先に聞いてみるとしよう。

 

「今宵?ちょっといいかな?」

「…ハイ、何でしょうか?」

「いや、何で丁寧に話しているの?…まぁいいや、聞きたいことがあるんだけどいい?」

「…うん」

 

何だが緊張しているように感じる、何かあったんだろうか…

 

「今宵はさ、何か欲しい物とか何のかなって…」

「それ、朝にも聞いたことだよね…どうしたの?」

「そうだね…でもさ、進級したことだし、新しいこともしたいと思わない?だから何かないかなーって思ってね」

「なんだそっちか…うん、今なら丁度いいよね…

 

私がそのように言った後、娘はこちらを見据え、改めて言葉を吐き出した。

 

「あのね、私…新しいパソコンが欲しいの…!」

「うん?…新しいパソコンかい?」

 

新しいパソコンが欲しいと言ってきた事に、少し違和感を覚える。たしか、娘の使うパソコンは高校の入学祝いに買ってあげた物なのである。故障でもしたのだろうか…

 

「…今使っているパソコンが故障したのかい…?修理ぐらいならいつでも出せるよ?」

「ちがうの…そういうことじゃないの…えっと…えっとね…」

「落ち着いて、ゆっくりと話してごらん?」

 

少し言葉が詰まっているようであるため、ゆっくりと落ち着かせる。

そして、娘からの言葉を待つ。

 

「あのね…私、Vtuberになるから…!」

「…はい?」

「だから…私!Vtuberになるから!、配信用のパソコンが欲しいの!!」

「…oh」

 

突然の娘の言葉につい思考が止まってしまい、言葉が出なくなってしまった…

 

どうしてこうなった…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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