魔法剣士と異世界の姉妹 作:ニック
本当に物語は些細なものからだった
放課後、屋上で物語でもあるような告白から始まったのだ。
「瀬川くんのことが好きです。私と付き合ってください。」
「……」
容姿はそこそこであるのだがそれでも日頃のカースト的にはそんなに高くなく、野球オタクとアニメ、ゲーム好きってことでとある少年。瀬川匠は少し動揺していた。
生まれて初めての告白。
女子と話すこともできないこともないのだがアニメが好きってだけでオタクと判断されているタクミは
この少女と結構仲がよく、隣の少女が話しているのもあったしな。
でも相手が問題なのだ。
黒髮の少女、名前を白崎香織という少女が問題だ。
学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。
そしてたくみとは普通であればつりあわないくらいのは人気が高い少女。
でも、なんだかの理由で明らかに好意を漏らしていたことは分かっていた。
だから遠回しに告白までいかないようにしてきたはずだ。しかしこの結果になったこと。そして断らないといけないことに少し罪悪感を覚えていた。
「……ごめん。」
「っ!」
「悪い。白崎とは付き合えない。本当に悪い。」
多分こんなことは二度とないだろうなっと思いつつ香織に頭を下げるたくみ。
すると少し涙目になる香織が少しだけ決心をつけたように次の言葉を紡いだ
「……どうしてだか聞いてもいいかな?」
「俺も好きな人がいるから。だから白崎とは付き合えない。」
タクミには香織同様に好きな人がいるのだ。
まさに王道の断り文句といえることに香織は信じるかとタクミは心配していたが香織は信じたよう少し涙を貯める。香織はふざける自分の好きな人が普段は不真面目だと見られているがこういう時はちゃんと嘘をつかないことを知っていた。
「……そっか。それなら今まで通り友達のままいてくれないかな?」
「それは当然。しばらくの間は普段通りにできないかもしれない。俺って結構顔に出るから。」
「うん。それじゃあまた月曜日ね。」
「あぁ。またな。」
といい香織は走って去っていく。それをたくみは下が地面にも関わらず腰を下ろした。
好きな人を聞かれないでよかったと思いつつ、タクミは自分の想い人に強制的に連絡先交換されたメールにフォローを頼むと書き綴り少しの間天を見上げていた。
週明け、告白から2日の休みが明け登校日。
日頃の憂鬱な月曜日より数倍面倒な月曜日を迎えていた。
普段から誰より早く登校しそして睡眠を取るのが基本的なタクミのスタイルである。そうでもあるのだが、珍しいほとんど寝てばかりいたタクミはその日は唯一寝れなかった
告白慣れしたことがある人ならまだしもタクミは初めて告白されたのでどうやっても寝れなかったのだ。
それもタクミは自分に評価が低いので尚更だ。
はぁ。
そうため息を吐いた瞬間ガラガラと教室のドアが開く
するとそこにはポニーテールの印象的な少し柔らかな目をした少女が俺の方を見ていた。
「あら。今日は起きているのね。」
「……おはよう。八重樫。朝練終わりか?」
彼女の名前は八重樫雫。彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、雫自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしであるがとあることから裏に可愛いもの好きの少女であることは分かっている。
なお香織の親友であり、タクミの想い人でもある
「いえ。あなたに少し聞きたいことがあったから。」
「……そうか。まぁ白崎のことだろうけど。」
「そうね。本当に振ったの?」
「あぁ。断ったな。」
するとそうといいタクミの隣の雫の席につく。
「……香織泣いていたわよ。」
「それほど本気だったってことだろ。俺も初恋相手に振られたとき泣いた覚えがあるし恋愛ってそんなものだろ。自分に好きな人がいるままでその相手と付き合っても長持ちはしない。俺の両親みたいにな。……それだから振るしかなかった。本気って分かっていたし傷つけるとは言え余計に傷つける選択なんてできるわけねーだろ。」
タクミがぶっきらぼうにいうと雫は少し苦い顔をする。
それはタクミの家の家族構成が原因だった。
タクミは義理の父親がいることは本人から聞いていた。
それも本当の父親の顔すら見たことがないらしい。
別にそれならいい。でも問題はその母親だ。
再婚が3回。
一応タクミが知っている限り離婚を知っている限りは三回している。
だから一番小さい義妹を除いてあまり家族仲がよくないことは知っていて休日は基本的に朝早くに出てバイトや野球をすることによって時間を潰していることを話していたことがある。
家に居場所がないっということも。
「……ちゃんと香織のことも考えてくれていたわけね。」
「考えるさ。俺が多分そいつに出会ってなければ確実に白崎のことを好きになっていただろうし。」
「……」
「いっとくけど俺も白崎ことは好きだぞ。恋愛感情含んでもな。好きだけどそれでもそれ以上に好きな奴がいるってだけ。だからこんなに苦しんでいるんだろうが。」
おそらく目の前にいる雫のことをいつもならからかってくるタクミがこんなにも静かなのは珍しい。
そして隣人がいつもとは違うってことも雫は理解できた。
なお、雫は当然ながらタクミの想い人を知らないのだが。
すると教室の扉が開くとまたクラスメイトが入ってくる。
「んじゃ。ちょっと寝るわ。さすがに2日寝てないときつい。」
「……あなた本当に大丈夫なの?」
「大丈夫。大丈夫。それじゃあおやすみ。」
とタクミが睡眠を取るため机にうつ伏せになり睡眠を取る。
しかしいつもなら授業までには起きるのに珍しくタクミはずっと睡眠をとったままであり、雫は少し苦笑しタクミの分までノートを取っていた
しかし、そのノートはタクミが見ることがなく終わることになる
昼休みも相変わらず爆睡しているタクミに親友である南雲ハジメは苦笑していた。
実はタクミのバイト先はハジメの母親の漫画家のアシスタントであり、タクミ自身将来的に漫画家になりたいと思っているのもあるので働きながら学んでいることもある。
おとといと昨日まで漫画の締め切りが近く泊りがけでハジメの母親の漫画を書いていたことは知っており、あとは物語の構成を鍛えれば人気漫画家になれるだろうというのがタクミの腕だ。
そういや。タクミの本当の父親も漫画家だったって言っていたっけ?
とハジメが思っていた中で一人の少女がタクミの方に近づいていた。
「雫ちゃん。タクミくんは起こしても大丈夫かな。」
「今日はやめておきなさい。どうやら結構きてるらしいから。多分今日は放課後までこのままよ。」
「珍しいね。タクミくんが授業中に寝るなんて。」
ともちろん香織と雫の会話である。
どこか今日の香織は元気がないとクラスメイト全員が気づいていた。
しかし、それよりもタクミの違和感は誰もが拭えないのである。
誰から見ても真面目で明るい生徒であるとクラス全員答えるくらいには印象も悪くはない。アニメ好きって一面もあるが野球が好きで中学生まで硬式のチームに入っていたとも聞いている。ただ怪我の影響で断念しざるを得なくなったが今でも草野球で大人に混じって外を駆け回っているのはクラスの共通認識だ。
嫌っているのは数人いるがそれも気にしていない
だって家族ですら味方がいないのだから
そのうちの一人天之河光輝は香織に話しかけようか迷っていたが一度あまりタクミたちに関わらないように言ったところ絶対零度の視線を向けられながらタクミから
『人を自分のアイテム扱いするなよ』
と怒気を含んだ言葉を話しかけづらくなっていた。幼馴染とはいえ話かけづらくなったのはタクミの仕業。そして何よりも許せないのは雫や香織と今では光輝以上に話していることだった
そんな視線はいと知らず二人は相変わらずタクミに向けられている
「……雫ちゃん。私やっぱり諦めないよ。」
「香織。」
「誰が相手だろうと負けない。タクミくんの隣に立ちたいもん。」
と一度振られているにも関わらずまた積極的にアピールすることに決めた香織に雫は少し笑顔になる。
ハジメにもタクミとは雫と香織みたいな関係でよく小学校のころから遊びに行く仲だ。最近でもハジメは外を出なさすぎといい平日限定で遊びに連れていかれる。でもそれが嫌ではなく、さらに休日は基本的に自由にしていることもある。
タクミにとって休日が一番嫌いであることを知っているのに。
……せっかくだし今日は僕の方から誘ってみようかな
そんなことをハジメが考えている時だった
急に幾何学模様の純白を魔法陣が現れ光輝の周りを発光する。
そしてそれと同様にタクミだけを包み込んだ赤色の魔法陣が発光していた。
その二つの魔法陣の異常さに気づいた愛子先生は咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。
この瞬間非日常的な日常生活が始まるのもいと知らずタクミは相変わらず夢を見ていた