魔法剣士と異世界の姉妹 作:ニック
「ヒャッハー! ですぅ!」
左側のライセン大峡谷と右側の雄大な草原に挟まれながら、魔力駆動二輪と四輪が太陽を背に西へと疾走する。街道の砂埃を巻き上げながら、それでも道に沿って進む四輪と異なり、二輪の方は、峡谷側の荒地や草原を行ったり来たりしながらご機嫌な様子で爆走している。
「……シアのやつご機嫌だな。世紀末な野郎みたいな雄叫び上げやがって」
「……むぅ。ちょっとやってみたいかも」
「やめとけ。つーか子供が見ているから」
「パパ!!パパ! ミュウもあれやりたいの!」
「ダメに決まってるだろ」
と海人族の少女、ハジメの娘?であるミュウという女の子がおねだりをしている。
即行で自分のお願いを否定したハジメに駄々をこねる。暴れるミュウが座席から転げ落ちないよう、ユエが後ろから抱きしめて叱りつける姿は本当に親子みたいだ。
「…お父さんここは?」
「ほらこう折るんだよ」
「パパここは?」
それに対し、俺たちは普通に折り紙をしていた。
元々細かい作業は俺が義理の妹がいるせいか慣れているので、既に作品が並んでいる。
反対に俺たちの方は、こういった少し大人しい二人が料理のこととかで聞いてくることが多いのだ。
「……お前のところ手がかからなくていいな」
「そうか?まぁミュウちゃんは少し活発かもしれないけど、普通に可愛らしいと思うけど」
「…」
俺は小さく息を呑むハジメに少しだけ笑ってしまう。
「考えろ。ミュウのことも自分のことも。相談できる彼女だっているんだろうしな」
「…あぁ」
「うにゅ?」
という声でハジメはミュウの頭を撫でる。
恐らく今後のことを考える余裕ができたことにお互いに一安心して、俺はリンとミオと話すのであった
「……」
「パパ?何でフードをつけないといけないの?」
「俺が追われているからだよ。魔人族も追われる対象だし、あんまり目をつけられたくないからな」
「私たちは追われている存在だからね」
俺は小さくローブを着る。意識遮断系のローブをつけているのだから当たり前だが、顔も全て別の人物にしか見えない。
「パパ? どうしたの?」
「ん? あ~、いや、前に来たことがあってな……まだ四ヶ月程度しか経ってないのに、もう何年も前のような気がして……」
「……ハジメ、大丈夫?」
ハジメも俺もここから全てが始まったのだ。確かに時間の流れは早いように感じていた
「ああ、問題ない。ちょっとな、えらく濃密な時間を過ごしたもんだと思って感慨に耽っちまった。思えば、ここから始まったんだよなって……緊張と恐怖と若干の自棄を抱いて一晩過ごして、次の日に迷宮に潜って……そして落ちた」
「……そうだな」
俺は少しだけ考える。でも
「ふむ。ご主人様は、やり直したいとは思わんのか? 元々の仲間がおったのじゃろ? ご主人様の境遇はある程度聞いてはいるが……皆が皆、ご主人様を傷つけたわけではあるまい? 仲の良かったものもいるのではないか?」
「……いや。俺は本当に仲がよかったのはタクミだけだ。だからタクミの事以外ではやり直したいってことはないさ。タクミはどうなんだ?やり直したいって思わないのか?」
「そんなことは興味無いな。今更言ったって後の祭りだろ?やり直したいんじゃなくて、俺にとっては後始末をしたいって方が合っているな。それに……二人にも会えなかったかもしれないし、俺にとって今が幸せだからいいんだよ」
実際今が一番大事だと思うから、そんなことは些細でしかない。
それに、元に戻れたというより、本当に大事なことに気付かせてくれた二人がいるのだ。
「…すっかり父親だな」
「お前もな」
と、言いながらギルドへと向かう。
どうやらハジメがフューレンのギルド支部長から頼まれごとをされたらしい。
そうして俺たちもそこに入ると、いかにも冒険者ギルドらしい。壁や床は何度も修復された形跡があり、正面がカウンター、左手側に食事処がある。どうやらお酒もあるのか、昼間から飲んだくれたおっさん達が屯している
「……ティオさんに二人を預けてくればよかったかな?」
俺は少しだけ反省してしまう。怯えてリンは、俺の頭をいつもよりも力を強く抱きしめている。
「……小さいとこうも大人が怖くみえるんだね」
「…ミオもかよ」
と、手を握っているミオに少しだけ苦笑してしまう。
それはミュウちゃんも同じらしく、悲鳴を上げ、ハジメの頭にしがみついている。
あっ死んだな
と、小さくため息をつくと、一瞬にしてプレッシャーがこのギルド中を支配する。威圧と、魔力放射だろうか?そんなことを考えていたら……そんな彼等にハジメがニッコリ笑いながら話しかけた。
「おい、今、こっちを睨んだやつ」
「「「「「「「!」」」」」」」
蛇に睨まれたカエルみたいな顔をしている冒険者たちに、俺は少しだけ同情してしまう。
喧嘩を売る相手を間違えたのだと。
「笑え」
「「「「「「「え?」」」」」」」
いきなり、状況を無視した命令に戸惑う冒険者達。ハジメが、更に言葉を続ける。
「聞こえなかったか? 笑えと言ったんだ。にっこりとな。怖くないアピールだ。ついでに手も振れ。お前らのせいで家の子が怯えちまったんだ。トラウマになったらどうする気だ? ア゛ァ゛? 責任とれや」
「んな無茶な」
少しだけ爆笑しそうになったが堪える。俺は冒険者たちから色々な目で見られているが、小さくミュウに近づく
「少し怖いかもしれないけど、笑って手を振ってみろ」
「みゅ?」
「これで全てが解決するから」
海人族の女性は珍しいし、ミュウ特有の可愛らしさがあるしな。
少し震えながらも、ミュウは笑顔になり小さく手を振る。
するとさっきまでの空気と変わり、和やかな雰囲気が流れる。
しばらくミュウたち3人の子供が冒険者ギルドを探検し、俺がそれについて行っていると、ギルドの奥からと何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。
俺たちが音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年が床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた
……やっぱりこうなるのか
俺は小さくため息を吐くと、そのクラスメイトの名前を告げるのであった。
「……遠藤?」
恵里をヒロインに追加するか
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する
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しない