魔法剣士と異世界の姉妹 作:ニック
遠藤は俺たちの声が聞こえたのか辺りをキョロキョロと見渡し、それでも目当ての人物が見つからないことに苛立ったように大声を出し始めた。
「南雲ぉ!瀬川ぁ!いるのか!お前なのか!何処なんだ!南雲ぉ!生きてんなら出てきやがれぇ!南雲ハジメェー!瀬川匠!」
「あっやべ。認識阻害のローブ脱ぎ忘れていた」
俺がローブを脱ぐと、昔さながらの装備が俺を包む。するとざわっ!と声が漏れた途端、ギルドが大騒ぎになる。
「死神だ!!何でこの街に」
「報復か?どっちにしろ全員殺されるんだ」
……あの、俺を快楽殺人鬼と思ってないか?
襲ってくるから殺しているだけであって、別に無抵抗の奴はどうでもいいからほったらかしだし。
「……瀬川か?」
「あぁ。ついでにそこにいるのがハジメ」
「あぁ」
俺がハジメを指差すと、遠藤はキョロキョロと見ているが、白髮の少年のことをハジメとは思えないらしい。
「くそっ!声は聞こえるのに姿が見当たらねぇ!幽霊か?やっぱり化けて出てきたのか!?俺には姿が見えないってのか!?」
「いや、目の前にいるだろうが、ど阿呆。つか、いい加減落ち着けよ。影の薄さランキング生涯世界一位」
「!? また、声が!? ていうか、誰がコンビニの自動ドアすら反応してくれない、影が薄いどころか存在自体が薄くて何時か消えそうな男だ! 自動ドアくらい三回に一回はちゃんと開くわ!」
「三回中二回は開かないのか……お前流石だな」
「……センサーに引っかからないって、もはや幽霊かよ」
そこまで言葉を交わしてようやく、目の前の白髪眼帯の男がハジメだと気がついたようで、遠藤は、ハジメの顔をマジマジと見つめ始める。
「お、お前……お前が南雲……なのか?」
「はぁ……ああ、そうだ。見た目こんなだが、正真正銘南雲ハジメだ」
「……やっぱり結構変わっているんだな?」
「お前は全く変わっちゃいなかったしな」
するとようやくハジメだと気づいたらしい。じろじろとハジメを見て驚いている。
「お前……生きていたのか」
「今、目の前にいるんだから当たり前だろ」
「何か、えらく変わってるんだけど……見た目とか雰囲気とか口調とか……」
「奈落の底から自力で這い上がってきたんだぞ? そりゃ多少変わるだろ」
「そ、そういうものかな? いや、でも、そうか……ホントに生きて……」
あっけらかんとしたハジメの態度に困惑する遠藤だったが、それでも死んだと思っていたクラスメイトが本当に生きていたと理解し、安堵したように目元を和らげた。
遠藤たちは一応常識人枠だからな
「……てかそういえばみんなは?オルクスの大迷宮まだ潜っているって聞いているけど?」
「……そうだ!!南雲に瀬川、迷宮へ一緒に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ!健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ」
「ちょ、ちょっと待て。いきなりなんだ!? 状況が全くわからないんだが? 死んじまうって何だよ。天之河がいれば大抵何とかなるだろ? メルド団長がいれば、二度とベヒモスの時みたいな失敗もしないだろうし……」
ハジメが、普段目立たない遠藤のあまりに切羽詰った尋常でない様子に、困惑しながら問い返す。すると、遠藤はメルド団長の名が出た瞬間、ひどく暗い表情になって膝から崩れ落ちる。そして、押し殺したような低く澱んだ声でポツリと呟く。
「……んだよ」
「は? 聞こえねぇよ。何だって?」
「……死んだって言ったんだ! メルド団長もアランさんも他の皆も!迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がすために!俺のせいで! 死んだんだ!死んだんだよぉ!」
「……そうか」
……そっか。あんまり話さなかったけど、メルドさんってクラスメイトからの人望は厚かったはずだ。
「……魔人族の襲撃だろ?」
「へ?」
「ちょっと俺はスラムにいて、裏の人脈と繋がりがあったんだよ。ハジメからも聞いたけど、ウルでも襲撃を受けていたはず。まぁ先生を狙っていたから、勇者の天之河も狙われてもおかしくないってこと」
と、ミオの存在はバラさずに知っている情報を話したところだった。
「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」
すると、体がいかにも鍛え抜かれたと言える体で、左目には大きな傷を負った男性が俺たちの話に割って入る。
そして俺にとって始まろうとしていた。
未来を変えるための戦いが。
「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」
「まぁ、全部成り行きだけどな」
「そっちの死神、いやタクミって言った方がいいか?お前も十分暴れていたらしいじゃないか?そっちの子供二人は魔人族だろ?」
「……知っていたのか?」
「あぁ。突如現れた魔人族の子供が行方不明になっていたからな。尋問して情報を吐かせたようとしたが……騎士団冒険者合わせ、数百人がお前に殺されたからな」
「…子供に罪はねぇだろ?それにミオもリンも女性だ。捕まればどうなるかは予想つくだろ?」
俺の言葉に少しだけため息を吐く。
「手紙には、お前の〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が、適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」
まぁ確かに化け物やな。遠藤が大きく目を見開いて驚愕をあらわにする。自分よりは弱いと考えていたのだろうか
「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」
「ふっ、魔王を雑魚扱いか? 随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルド、ホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」
「……勇者達の救出だな?」
「そ、そうだ!南雲!一緒に助けに行こう!お前がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」
「……」
ハジメが話を聞いているが、遠藤はそれを聞き捲くしたてる。しかし、ハジメはいい顔をしない。
「どうしたんだよ!今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ!何を迷ってんだよ!仲間だろ!」
「……仲間?」
「仲間ではないだろ?結果的にクラスメイトに殺されかけて、普段からいじめられて。さすがに都合が良すぎるってことだ。それに、ハジメには見た通り、信頼している仲間がいるからな」
「……お前な」
「事実だろ?俺だって、八重樫と白崎がいなければ、ここに戻ってこようだなんて思ってもいなかったからな」
実際そうだ、俺も普通ならどうでもいい。
だから一応聞いておきたかった。
「……二人はどうだ?」
「えっ?」
「八重樫と白崎」
「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし……白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか……あの日、お前が王都を去ったあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな?こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて……雰囲気も少し変わったかな?ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか………八重樫さんはどこか心配そうに、瀬川の記事を見ていることが多くなったな。まだ生きているって何度も言っているし、一人でいる時間も増えたと思う。朝方もずっと訓練していたから」
「……そっか」
俺は小さく目を瞑る。ハジメを見ると少しだけため息をつく。
「行くんだろ?」
「あぁ。……俺は行く」
元から決めていたことだ。俺は何がどうであれ義理を果たしたい。
「……おう。それなら子供たちはティオに任せられるか?俺も行く」
「…ん。それじゃあ私もいく」
「へ?いいのか?」
「あぁ。…ただ俺は基本的には手出しはしない。防御に入るからお前がケリをつけろ」
「ん。大切な人がいるなら私も力になる。それにハジメのしたいように。私は、どこでも付いて行く」
「……ユエ」
「わ、私も! どこまでも付いて行きますよ! ハジメさん!」
「ふむ、妾ももちろんついて行くぞ。ご主人様」
「ふぇ、えっと、えっと、ミュウもなの!」
「あぁもういちゃつくな」
なんか、未だに警戒されているシアさんやティオさんと比べて、やけに協力的だよな?
ハジメに少しだけ感謝しながら、そしてギルドの長の顔を見る。
「一応俺が依頼を受けることにして欲しい。勇者たちの救出。報酬は、今後冒険者ギルドの、俺及びミオとリンの討伐依頼を全部解除し取り消すこと。味方になって欲しいところだけど、異端者扱いされる可能性があるからな。冒険者ギルドが敵対しないでいてくれたのなら、後は教会だけで済むからな」
「……っ!それだけでいいのか?」
「あぁ。元々俺を殺しに来たから殺したに過ぎないからな」
すると、ホッとするギルド長に俺は少しだけ目をつぶる。
「……遠藤急いでいるんだろ?」
「行ってくれるのか?」
「当然」
俺は少し燃えていると、シアさんとティオさんが驚いたようにしている。
「おら、さっさと案内しやがれ、遠藤」
「うわっ、ケツを蹴るなよ! っていうかお前いろいろ変わりすぎだろ!」
「やかましい。さくっと行って、一日……いや、半日で終わらせるぞ。半日とは言え、ミュウを置いていくんだからな。早く帰らねぇと。一緒にいるのが変態というのも心配だし」
「……お前、本当に父親やってんのな……美少女ハーレムまで作ってるし……一体、何がどうなったら、あの南雲がこんなのになるんだよ……」
「そればっかりは俺も聞いてみたいけど」
と、いいながら俺たちは迷宮へと向かう。
再会までの道のりの間は無言だったが、俺の魔法と、ハジメの持っている神代魔法の一つである生成魔法と呼ばれる、鉱石で魔法を付与して作った氷属性の雹大剣で刻み込まれている
そうしてあっけにとられている遠藤を無視しながら下の階層に向かっていると。
「おっと気配が捉えてきたな。でも、どうやら戦闘中ぽい」
「あぁ。俺の方でも捉えたけど……魔力が膨大しているな」
「限界突破か、その派生の類じゃないか?」
「……あぁなるほど」
「正確な位置を求めることってできるか?」
と、気配感知など多くのステータスを使い、捉える。
「ん。恐らくもう少し先にいったあたりだな」
「……了解。……魔力の気配も消えたし、急がないと間に合いそうにないよな?」
俺は一度迷宮の道を叩く。普通であればぶち抜くことはできないだろう。
普通であればの話だけど。
「……ん〜まぁすぐに修復すると思うけど……まぁいいか。ハジメ、軽く表面を錬成で削ってくれないか?」
「いいけど、一体どうするつもりだ?」
俺は軽く飛び上がると、色々と防御タグを乗っけているので恐らく
するとシアさんが何をするのかわかったのだろう。冷や汗をかいている。
「……あの、タクミさん?も、もしかして」
「離れておけよ。ちょっとぶち抜くから」
俺は軽く身体強化Ⅵを片手にかけると小さく飛び、そして岩盤を破ると同時に落下する。次の階層は落下とともに一回転し、足に強化をかけて同じように床を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした先には魔物と二人の姿が見れる。
命をかりとろうとする魔物に、二人は静かに目を流している。
「「……タクミくん」」
そんな声が聞こえてきたような気がした。
崩れた床下が瓦礫となり魔物の上に落下。土埃が舞う。
驚いたように俺を見る二人。久しぶりに見る二人に涙腺が刺激されて、今にも泣きそうになってしまう。
でも、
「久しぶり白崎、八重樫」
俺は笑顔で答える。戦場で見る二人は、いかにも泣き出しそうな顔をして一言だけ告げた。
「「タクミくん!!」」
恵里をヒロインに追加するか
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