魔法剣士と異世界の姉妹   作:ニック

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再会。戦う理由とは

八重樫と白崎は驚いたようにこっちを見る。

何でクラスメイトから離れこんな孤立している場所に二人はいるのか疑問だけど…

とりあえず治療からだろう。

 

手をかざすだけで光が二人を包み、その姿を見て全てを破壊するために小さく笑う。

やることは簡単だ。あの時いたスラムと同じこと。

全員殺せばいいだけだ。

 

魔力を感じ生物の中の液体に魔力を集める

 

「氷棘」

 

魔力を感じたところに氷の花のように魔物の体内から氷が生える。

その姿に後からきた三人すらあっけにとられていた

 

「な、なんですかこの魔法は。」

「しかもあの女を回復しながらしている。……魔力操作ならわたしたち以上かも。」

「……悪魔だろ。あいつ。俺よりもえげつない。問答無用で敵だと判断して殺しているだろ。」

 

先ほどまで魔王と呼ばれていたハジメたちでもドン引きの様子らしい。

 

「あいにく、俺には味方なんてお前くらいしかいないだろうし今回の依頼は勇者パーティーを救うことだろ。それに、もうさよならを伝えにきたのに長い間いてもつらいだけだろ」

「…お前。」

「…んじゃ続きをするか。遠藤いるだろ。ここの奴らは皆殺しにするからさっさと地上に戻れ。一人で全員を守りながら戦うのも面倒だし、殺したら面倒くさそうなやつもいるからな。」

「…タクミ?」

「んじゃ再開するか。ハジメ手を出すなよ。つーかあいつ等連れて戻ってくれ。巻き添えくらうぞ。」

「自分の身くらい自分で守れる奴らだから大丈夫だ。」

「……そんなに強いのあいつら?」

 

体中に魔力を包み俺は闇を使った斧を生成し持ち上げ身体強化により加速し斬り捨てていく。

 

「…貴様。食らえ落牢」

「「タクミくん?」」

 

すると魔人族が何か魔法を唱えその後粉塵が俺を包みこむ。多分目隠し系の魔法だろうけど魔力感知と気配で分かり切っている。すぐさま瞬時で詰め俺はその首筋に刃を向けた。

 

「ば、化け物め。上級魔法が意味をなさないなんて、あんた、本当に人間?」

「ハジメ…何かこいつに聞くことないか?要らないんなら殺すけど。」

「……タクミ?」

「言いたいことはあるだろうけど。これが今の俺だよ。これから死ぬ奴らの話を聞く義理もないけど、こいつに一つ聞くならばこれか。」

「あたしが話すと思うのかい? 人間族の有利になるかもしれないのに?」

「ミハイル。お前の婚約者の名前だろ」

 

…その言葉に言葉を止める。

 

「き、貴様何でその名を。」

「なるほどな。どうやら澪のいうことはどうやら本当らしいな。んじゃそれだけ聞けたらいいや。じゃあね。カトレアさん。」

「ちょ、ちょっと。」

 

俺は闇の刃を振り下ろす。その言葉にはユエさんやシアさんは驚いていたがハジメは静かにため息を吐く。

 

「らしいぞ。ハジメ。」

「お前…」

「言っとくけど今の俺は壊れているからな。敵になろうものなら問答無用で誰であろうが殺すぞ。そこまでの余裕もないからな。」

「……」

 

どこか重苦しい雰囲気が流れる。まぁ、ハジメには最初から伝えていたけど。

 

「シア、メルドの容態はどうだ?」

「危なかったです。あと少し遅ければ助かりませんでした。……指示通り〝神水〟を使っておきましたけど……良かったのですか?」

「ああ、この人には、それなりに世話になったんだ。それに、メルドが抜ける穴は、色んな意味で大きすぎる。特に、勇者パーティーの教育係に変なのがついても困るしな。まぁ、あの様子を見る限り、メルドもきちんと教育しきれていないようだが……人格者であることに違いはない。死なせるにはいろんな意味で惜しい人だ」

「…」

 

あまりいい思い出は正直ないのだが。まぁお世話になったらしいから黙っておこうか。

 

「……ハジメ」

「ユエ。ありがとな、頼み聞いてくれて」

「んっ」

 

いちゃつくユエとハジメに俺は軽く羨ましさを覚える。

 

「……お二人共、空気読んで下さいよ……ほら、正気に戻って! ぞろぞろ集まって来ましたよ!」

「本当に慕われてるんだな。ハジメ。」

「…」

 

どこか遠い目をしているハジメに俺は首をかしげる

 

「お前に言われたくない。」

「どういうことだ。」

「タクミ。」

 

すぐさま一人の長身のポニーテールの少女が俺の胸に飛び込んできて抱きしめられる。

 

「…八重樫?」

「タクミなのよね?本当にタクミなのよね。」

「…あの?八重樫?お前そんなキャラじゃ。」

「うるさい!!どれだけ心配したと思っているのよ。」

 

目には光るものが見えてわずかにだけど肩も震えている。嗚咽をすでに流しながら体が揺れる顔をうずめているが戦闘中ずっと泣き続けただけあって少しは落ち着いていた。

 

「誰かを頼らず自分だけで物事を考えるくせに何かと物事を隠そうってしているのバレバレってあなたもじゃない!何で相談してくれなかったのよ!!あなたは昔から自己犠牲ばかりじゃない!何で壊れるまでそのままにしていたのよ。」

「あの八重樫。」

「あなたは黙って聞いておきなさい。どうせ殺人鬼ってことを気にして二度と会わないって思っているからあの態度なんでしょ?」

 

全部ばれてるんだけど。もしかしてこれからやろうってことも読まれているのか?

 

「そんなの嫌よ。せっかくタクミともう一度会えたのにこのままお別れなんて嫌。ベヒモスの時も今回も命を救ってもらって何も恩返しも出来てないのよ。」

「恩返しって。そんなもん求めてるわけじゃないけど。」

「貴方って本当に自己評価低いわよね。そこのえっと話を聞く限り南雲君かしら?……って南雲君!?」

「気づいてなかったのか!?」

 

何だか泣いたり驚いたりでコロコロ表情が変わっていく八重樫は何か新鮮な雰囲気を覚える。ここまでの変わりように俺もハジメも少しばかり

 

「えっ?えっ?ホントに?ホントに南雲くんなの?えっ?なに?ホントどういうこと?」

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?」

「死んだと思っていた人間が生きてたら普通の反応だろ。俺も生きているって聞いて藁にも縋る想いだったわけだし。つーか俺はその時自暴自棄になってたし。」

「……それに関しては本当に悪い。まさかお前がこんなになるとは思ってもなかったからな。」

「別に。こうやって生きていること事態が奇跡的だろ。俺もハジメも。だから、あの場面で唯一二人とも生き残れたのはあの手しかなかったんだろ?だからよかっただろ。お互いに地獄のような思いをして生き残れたんだから今があるからな。」

 

地獄に救われると思ってなかったけど、落下したのが俺だったら即死だったであろう。だからこそ、こうやって二人が生き残ったのは不幸中の幸いだったのだ。

 

「まぁ、心配してくれてたんだな。白崎はともかく八重樫がここまで心配してくれるなんて思いもしてなかったけど。」

「……心配しないわけないじゃない。バカ。それと南雲君とタクミ。いろいろごめんなさい。それと、改めて礼をいうわ。ありがとう。助けてくれたことも」

「こっちも、ありがとうな。それと。」

「謝らなくてもいいわ。あなたのおかげで私たちは助かったのだから。それにこれからは絶対にあなたを一人になんてさせないから。」

「それってどういう?」

「そろそろ私もいいかな?」

 

嫌な予感は拭えずに今度は白崎がかけてくる。

 

「白崎。」

「久しぶり二人とも。……いろいろ聞きたい事はあるんだけど、取り敢えずメルドさんはどうなったの? 見た感じ、傷が塞がっているみたいだし呼吸も安定してる。致命傷だったはずなのに……」

「ああ、それな……ちょっと特別な薬を使ったんだよ。飲めば瀕死でも一瞬で完全治癒するって代物だ」

「そ、そんな薬、聞いたことないよ?」

「…あぁもしかして神水のことか?存在してたんだな。」

「そりゃ、伝説になってるくらいだしな……普通は手に入らない。」

 

その言葉に少し安堵のの表情を浮かべる白崎が、未だに八重樫に抱き着かれている俺をじっと見ている。前の白崎だったら真っ先にきそうなのに、どこか、昔の八重樫と白崎が反対のように感じる。

 

「…お前少し変わったな。」

「そう?本当は今すぐ、泣き出しちゃいそうだけど…私以上に雫ちゃんが多分誰よりも傷ついていたから。」

「ん?八重樫が。」

「雫ちゃんタクミくんが出て行ってから、ほとんど一ヶ月間部屋から出てこなかったんだよ。私が来ても無気力状態だったし、私と雫ちゃんは二人と友達だったと思っていたから。ずっと新聞でタクミくんの記事が出た日にはまだ生きてるって泣き出しちゃうくらいには。」

「「……」」

 

 

俺もハジメも頭が痛い。俺もハジメも二人とは中学時代から少しばかりは交流があったこともあったし、どこか忘れていたようにハジメの言葉ばかりだった。ハジメも少し罪悪感があるのか目をそらしている。

 

「それは。」

「いいの。雫ちゃんから全部教えてもらったから。……二人はトータスに来てからずっと戦ってきたんだって。でも私たちは浮かれて戦争に参加するって。」

「白崎。」

「あはは。何でだろうね。会えて嬉しいのに、助けてもらったのに嬉しいよりも胸が痛いんだ。今度は助けてあげられるって思ったのにまだ私たちは助けられて、二人は私たち以上に苦しい思いをしてきたはずなのだから当然なのに今度こそは助けてあげられるって思ってたことなのかな。」

 

今にも苦しそうな白崎に胸が本当に痛い。

もしかして俺や八重樫以上に傷ついてきたのはこの少女であるかもしれない。大切な親友は傷つき、好きだった少年は壊れ殺人鬼となした。

八重樫も気づいたのであろう。親友が傷ついてきたこと。俺もハジメも誰もこの世界で傷ついてこなかったことはいないだろう。

 

「誰も悪いんだよ。多分俺もタクミもトータス来た当初から生きることに必死だった。でも俺も白崎も少しは浮かれていたからな。でもタクミや八重樫は気づいていたんだろ。戦争の意味も殺し合いってこともな。だからこそベヒモスに自己犠牲で俺を守ろうとした奴がいて心配した二人の気持ちにも気づかずに自暴自棄になったタクミにも全員が責任があったからな。」

「違いない。まぁ、それを抜きにしても俺が何かやらかしてるって感じか。」

 

すると近くにいた全員が頷く。少しは否定してほしかったが一番問題をかけている自覚はあるのでこらえる。

 

「でも、生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。私達のことも……助けてくれでありがどう」

「……」

 

生きてくれてありがとうか。

 

「この場でいうこともないんだけど。生まれて初めて生きててよかったと思ったかも。」

「……お前の境遇からいったら多分本当のことだろうな。」

「あなた、本当にどんな生活送ってきたのよ。」

 

抱きしめる力が強くなる八重樫に突っ込もうか迷っているとすると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「……ふぅ、香織と雫は本当に優しいな。クラスメイトが生きていた事を泣いて喜ぶなんて……でも、瀬川は無抵抗の人を殺したきたんだ。話し合う必要がある。もうそれくらいにして、瀬川から離れた方がいい」

 

まぁ、何か言われることは分かっていたけど、正直ここまで言われるのはさすがにくるものがある。まぁさすがに自分に敵対してない人は殺してはいないつもりだしな

 

「ちょっと、光輝!タクミは、私達を助けてくれたのよ? そんな言い方はないでしょう?」

「だが、雫。彼女は既に戦意を喪失していたんだ。殺す必要はなかった。タクミがしたことは許されることじゃない」

「あのね、光輝、いい加減にしなさいよ? 大体……」

「戦争なんてそういうことだろ」

 

俺の言葉に全員が黙り込む。その言葉は誰よりも通る声で、何よりも低い声だった。

 

「言っとくけど俺は殺し合いで容赦するつもりはないぞ。大切な人が傷ついていたらこの世界に来た当初から殺す覚悟はあった。たとえ教会やお前らと敵対してもな。戦争の意味をきちんと理解していたのは俺と八重樫だけだろ?」

「雫が?」

「お前は幼馴染の何を見てたんだよ。八重樫は迷宮に初めて入る際も不安で夜間に素振りをするほど不安だったんだぞ?」

「……そうなのか?雫。」

 

その言葉に八重樫は苦い顔をしている。

 

「……えぇ。それに私は、彼女を殺すつもりだったわ。力が及ばなくて出来なかっただけで。これから先も……同じ事があれば、私はきっと、殺意を以て刀を振るう。生き残るために。私自身と大切な人達のために。本当に出来るかは、その時になってみないと分からないけどね……一応、殺人未遂なわけだけど……私のことも人殺しだと軽蔑する?」

「雫。」

「まぁ、俺も少し浮かれた節はあったけど、ハジメを迷宮に連れて行ったことからこの教会は相当にヤバいって思ったよ。よく考えてみろよ。あいつらは最悪一般人よりも弱い可能性のあるハジメを迷宮に連れていったんだぞ?まるでハジメの命を何にも考えていないことと同じだろ。あいつらにとって大事なのは俺たちの命じゃない。俺たちの力にあるんだよ。」

「っ!」

 

天之河はその言葉を詰まらせる。

 

「……お前本当にあのときそんなことを考えていたのか?」

「考えてたよ。だから脱出計画とか立ててたのに。」

「……」

 

ハジメでさえ絶句している。脱出計画について知らなかったクラスメイトも騒めきだした。

誰もが、天之河でさえその言葉を待っていた。

 

「それにな、俺が完全に壊れたっていうときの言葉は今でも一言一句覚えてるよ。ハジメが死んでから『あの無能を残しておく価値なんてないのにな。最後まで我らに面倒ごとを作りよって』だってさ。……何が面倒ごとだよ。誰が無能なんだよ、こうやって大迷宮を脱出できるくらいの力はあるだろ。ベヒモスからクラスメイトを守れる力は持ってるだろ?それに無能じゃなくってもハジメは俺の親友なんだよ。たとえ姿や容姿、性格が変わってもたった一人の大切な友達なんだよ。」

「瀬川。」

「これが俺が思っていたことだよ。ずっとこの異世界に来てからずっと俺は戦ってきたんだ。俺は大切な人を失いたくはない。もし敵対するんならたとえクラスメイトでも殺す。これが俺ができる唯一のことだから。だから殺したんだ。ここには白崎も八重樫もいた。俺にとってこの二人はハジメ以外で唯一大切だった人だったからな。」

「タクミくん。」

「タクミ。」

「……背負いすぎだバカ。」

 

ハジメは軽く頭を叩く。俺は苦笑してしまう。

 

「少しは考えろよ。天之河。ここは日本ではないんだよ。だから全員を敵だと思え。聞く言葉をまず疑え。それが本当に正しいのか、もし救えても大切な人が失ったのなら意味ないだろ。お前には友達だって多いだろ?」

「あぁ。」

「絶対に俺みたいになるなよ。」

 

その言葉に天之河は言葉を詰まらせる。

 

「俺みたいになったらいけないんだよ。絶望して、何で生きているのか分からなくなったら誰かに頼れ。俺みたいに一人で抱え込んだらそれ以上のものを失うぞ。」

「……そんなこと分かってるさ。」

「ならいいよ。ハジメ帰るぞ。お互いに待っている人がいるだろ?」

「……あぁ。そだな」

 

そういって俺は先頭を歩き始めそのあとをハジメが続く。そのあとに勇者パーティーが続きその中にはいつの間にか離れた二人の姿もあった。

少しの戦闘を挟み【オルクス大迷宮】の入場ゲートまで向かうと

 

「パパ~」

 

と明るい声が聞こえてくるのであった。

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