魔法剣士と異世界の姉妹   作:ニック

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ミオと恵里

「パパーおかえりなの!!」

「ミュウちゃん待って。」

 

するとミュウがハジメに飛びつくとその後ろから澪が追いかけてくる。

ステテテテー!と可愛らしい足音を立てながら、ハジメへと一直線に駆け寄ってきたミュウは、そのままの勢いでハジメへと飛びついた。

 

「ミュウ、迎えに来たのか? ティオはどうした?」

「うん。ティオお姉ちゃんが、そろそろパパが帰ってくるかもって。だから迎えに来たの。ティオさんは……」

「妾は、ここじゃよ」

「パパ〜」

 

するとリンがトコトコと

 

「おいおい、ティオ。こんな場所でミュウから離れるなよ」

「すいません。リン見てもらって。」

「いいんじゃよ。しかし、リンも大物じゃのう。ちょっと不埒な輩がいての。凄惨な光景はミュウには見せられんじゃがリンはその中で笑っておったわ」

「なるほど。それならしゃあないか……で? その自殺志願者は何処だ?」

「いや、ご主人様よ。妾がきっちり締めておいたから落ち着くのじゃ」

「……チッ、まぁいいだろう」

「ハジメなんだかんだで子供と女には甘いよな。」

「てめぇほどではないだろ。2人も義理とはいえ娘がいるくせに。」

 

と軽口を叩いているところに一人近づいてくる。

 

「あの?タクミ?それってそのティオの人との子ってこと?」

「スラムにいた時に拾ったっていうよりも捨てられていたから助けた奴だよ…」

「まぁ、父さんが言ってることには間違いないよ。」

「父さん?やっぱりタクミくんがどういうことなの!? 本当にタクミくんの子なの!? 誰に産ませたの!?ユエさん!?シアさん!?それとも、そっちの黒髪の人!?まさか、他にもいるの!?一体、何人孕ませたの!? 答えて!タクミくん!」

 

襟首を掴みガクガクと揺さぶる白崎に俺は懐かしさを覚える。

……テンパると変わってないな。白崎は。

 

「……で?説明してくれるのよね。タクミ。」

「あの、何で俺が悪いみたいになってるんだ?」

「だいたいお前の説明不足だろ。」

「……でもその通りだろ。澪、リンは捨て子だったからな。それに種族も迫害の理由の一つだし。」

「……種族?」

「澪。リン解いていいぞ。」

「うん!」

 

俺の言葉にミオは少し戸惑いながらしていたがリンはすぐに変化を解く。

赤色の髪に黒色の肌が見られ誰しもがその姿は見覚えがあるだろう。

 

「……魔人族。」

「こういうこと……敵対している国らしいけど子供には罪はないだろ。」

「パパ〜抱っこ。」

「…ほら。」

 

俺は無言で片手で抱き上げるとキャッキャと喜び始めるリン。

 

「…えっと、どこまで話したか?」

「ちゃんと父親やってるのね。」

「ハジメには言ったけど俺みたいな人生送ってほしくないだろ?」

「お前がいうと重いんだよ。」

「……お父さん。そんなに重い人生送ってきたの?」

「こいつ、不幸自慢で飯が食えるくらいには重い人生送ってるんだよ。」

「……最大の絶望はハジメが奈落に落ちていくことだったけどな。」

「……」

 

目をそらすハジメに俺は苦笑してしまう。多分一生擦り続けるんだろうなと思いつつ八重樫に向ける。

 

「八重樫出番だぞ。白崎が顔真っ赤になって蹲り始めたぞ。」

「……あなたね?」

「俺行っても逆効果だろうが。あいつ羞恥心で最悪逃げ出すぞ。その間に俺はもう一つの目的を済ませにいってるから先に慰めてきて。それとハジメ人払い頼めるか。」

「……?ってあの件か。」

「そゆこと。谷口と中村。ちょっといいか?少し話あるんだけど。」

「「えっ?」」

 

名前を呼ばれることにびっくりしたらしい2人に俺は苦笑する。そういえば本当に初めて会話する2人か。少し離れてミオと俺たちだけになる。

 

「……あの鈴何かしたかな?」

「……」

 

ミオを見ると少し息を飲み込んでいた。ここからはミオがどうにかする場面だ。

 

「俺は用事はないからな一応付き添いに入るだけだし。」

「……えっ?付き添い?」

「ミオ。」

「…うん。……本当に全く変わってないね。私も、鈴も。」

「「……えっ?」」

「こっちの世界では始めましてかな?谷口鈴さん。そして……上手くいってるのかな?こっちの世界私は。」

 

小さい少女から話される棘のある言葉に、2人どころか、俺すら始めてみるミオの言葉に押される2人。

 

「始めまして。今の名前は瀬川澪。でも、前の世界では中村恵里って言われてたの。」

「……あの、瀬川くん。」

「言っとくけど、娘ってことを除いても嘘ではなさそうだぞ。まぁ、俺がいない世界線での中村恵里ってことらしいけどな。」

「…ちょっと、ちょっと待って?どういうこと?」

「まぁ、意味が分からないだろうけど、お父さんが話す場を作ってくれたから最初から説明するね。お父さんも鈴も聞いておいてほしいんだ。私の前の世界での生涯を。そしてこの世界の中村恵里とは違う可能性があるけどね。」

 

その言葉を皮切りに話し始めるミオに俺たちは耳を傾ける。そして始まる話は、俺とほとんど同じ境遇で父親が中村を庇って死んだのを皮切りに、家庭環境が最悪で俺と同じく何度も児童相談所に通っていたらしい。俺以上に酷かったのは中村が女であったことだろう。母親の再婚相手からのレイプ未遂などがあったことやその母親から逆恨みを受けていたことだろう。

そして俺とは違いそこで壊れてしまったのだ。

 信じていたものは全て幻想だった。耐えてきたことに意味はなかった。そして、この先の未来にも希望はない。幼い恵里が壊れるには十分過ぎる要因だった。

 眠りというより気絶から目覚めた翌日のまだ日も登りきらない早朝、恵里は家を抜け出して自殺をしようとした。

その際に天之河が告げたのだ。

もう一人じゃない。俺が恵里を守ってやると

そして暫くの間はその言葉の通り守ってもらえたのだ。クラスの女子達が次々と明るく自分に話しかけてくれて。

まぁ、落ちるのも納得の結末だろう。

 

「……」

 

中村は何も発せずただミオの話を聞いている。

そして母親から逃げ出すことにした中村は天之河を手に入れるための作戦を立てた。

そこにはレベルの高い白崎や八重樫がいるから近づくのも困難だったはずだった。不用意に近づくと、他の女共に目付けられるから、嵌めたり自滅させたりするのは時間かかるらしい。

その点、谷村の存在はありがたかったらしい。明るく見せているおかげで何しても微笑ましく思ってもらえるとのこと。 だから、〝谷口鈴の親友〟っていうポジションだ。おかげで、向こうでも自然と傍に居られる。

……改めて知ると女の世界は怖いんだよなぁ。

そしてあの事件が起こる。異世界への転移では暫くスキルを使えないふりをして、その技能で今回のカトレアという魔人族を使い内通。そして檜山と魔人族が王都に襲来した際に魔人族に裏切りその際に代償として白崎を殺したことも。

そして技能を鍛えその場所にいたハジメのパーティーから天之河を傀儡にすることに成功するが、最後の神とハジメの戦いを際に、谷口に討たれたとのこと。

 

「これが私が体験した1周目の人生のおしまいかな。んで、生まれ変わったと思ったら捨てられていて、昔の私のような父さんに出会ったんだ。」

「……あの、俺が聞いててよかったのか?これ。」

「私は父さんだから聞いて欲しかったんだ。……父さんってお人好しだから何か助けてくれるかなって。」

「……期待が重すぎる。でも、これにしろ誰が悪いとかの判断ではないけど、中村がやってもしょうがないって思うしな。」

「……否定しないの?」

「できないさ。わかるから。両親のことを、家族のことを諦める辛さは。依存してしまうのも分かる。オレにとってのハジメが中村は天之河だっただけだろ?それが恋愛感情になるんだったらそうなるのも理解はできる。」

 

中村が恐る恐る聞いてくる。でも同じ境遇だったからこそ分かることがある。

 

「…つーか凄いな。よく耐えられてると思うよ。……まぁ、難しいわな。俺では天之河の代わりにはなれないだろ。これが初めての会話だし?」

「うん。でもなんとなく感じてたよ。だから雫から境遇を聞いたときに、納得したかな。」

 

察しつかないように隠してたつもりだったんだけどな。

 

「とりあえず戻すけど、実際今中村がやりたいんならやればいいんじゃないのか?」

「えっ?かおりんが殺されるかもしれないのに?」

「それと中村の気持ちはまた別だろ。気持ちがわかるから正直あんまり反対もできないさ。俺もかなり酷い人生送ってきたけど、中村も凄い人生送ってきたんだな。」

「……そういえば瀬川くんは?」

「俺は男性だったからかな。言葉の暴力系は多かったな。それと育児放棄か?食事も1日1回あればいいほうだし、性的ってよりもずっと生死を彷徨ってたかな?野草を詰んりザリガニを食べて小学生くらいは生活してたし、父親が変わりすぎて名字もかなり変わってるし。」

「……あの、鈴思うんだけど、2人相当家庭環境酷くない。」

「酷いからお互いに壊れてるんだよ。鈴。」

「……確かに。」

 

まさかこんなに近くで不幸トークを出来るやつがいるとは思いもしてなかった。そうするとしたらどのような決着をつけるのかは簡単だ。そのとおりに誘導してあげればいい。

 

「……それで、どうするの?その子。」

「その子って。2人のことか?」

「うん。育てるつもりなの?」

「…そだけど。やっぱり無責任かな?ミオにもリンにも救われてきたから。俺みたいに育ってほしくないんだけど。」

「…はぁ。十分お人好しだよね。……アルバイトは確か南雲くんのところでしてるんだったよね?どれくらいでてるの?」

「……えっと、月4万から5万くらいは。シフト増やせたらもう少し増やせると思う。」

「それならボクがもらっている生活費とボクがアルバイトすれば合わせたら地球でなんとかなるかも。」

「……えっ?えりりん?」

「ボクも面倒みていい?その2人。」

「……どうしてだ?」

「2人をみたら瀬川がどれだけいい親をしてるのか分かるしね。それに、少し瀬川の気持ちもボクにも、分かるから。」

「…そうか。」

「その代わり、瀬川にも手伝ってもらうからね。まず、瀬川もボクの家に住んでもらうよ。」

「……えっ?」

 

中村の言葉に谷口は絶句してしまう。

でも、その言葉の合理性は間違ってないのが少し苛つくところだ。

 

「……ってどういうこと!?」

「いや、中村が言ってることは驚きはしたけど、間違ってないんだよ。……しかも建前もあるのがなぁ。」

「…なるほど、取れるか分からない魚より確実に取れる魚を取ったんだ。」

「うるさいなぁ。光輝くんを諦めるんだからそれくらいの対価があってもいいでしょ。」

 

中村の言葉に商品にされた俺はため息を吐く。

 

「こいつが言ってるのは天之河を諦めるから俺を寄越せって言ってるんだよ。」

「……えっ!?」

「別に束縛も指定してないから、普通に地球で一緒に過ごすだけってことだからそこまで抵抗はないけど。」

「それってもしかして恵里が家族に憧れていたからじゃないかな?」

「……えっ?」

 

今度は中村が驚く番だった。

 

「鈴ね。利用されていたことは知ってたんだ。でも鈴も恵里のこと利用してたから。」

 

そうして話し始める谷口の過去。

谷口の両親は根っからの仕事人間だったので、物心覚えたから、雇われのお手伝いさんに育てられたようなものだ。

だけど両親に愛されていなかったわけではなかったけど、お手伝いさんが帰ってからは一人きりで大きな家に一人だったのだとか。だから、最初のころは少し根暗な性格だったらしい。塞ぎ込んでいく谷口を見かねた恰幅のいいお手伝いのおばさんは、谷口に一つアドバイスをした。

〝取り敢えず、笑っとけ〟

という何とも適当さ溢れるアドバイスだった。それで周りは変わるからと。それで実際に一人になることはなくなったらしい。

本当は楽しいことなんて特に何もなかったけれど、それでも常にニコニコと笑顔を浮かべるようにしたのであったらしい。もう少し打算的な女の子ではないかと思っていたのだ。それは、恵里の親友を自負し、常に傍で見ていたからこそ、そして、谷口鈴という女の子が特別、人の感情の機微に敏感だったからこそ分かったことだろう。だからこそ自分の身を、心を守る為に、何かを演じるという行為を谷口は否定できない。なぜなら、それは自分に対する否定に繋がるから。

自分を守るために利用し、裏の顔にも気付いていたが、恵里の本心に気付いていたとのこと。だからそのうちの一つに家族について気になることがあったのだとか。

 

「時々子供連れの家族や私の家に来てお父さんやお母さんと会った時に何処か悲しそうな顔してたからその時から少し憧れがあるのかなって。」

「……」

 

話を聞いて思うのは、何でこんな奴ばっかり俺の周りに集まるんだという率直なことだ。重い空気が路地裏に広がる。ミオも詳しくは知らなかったのかところどころ驚いていたし。

 

「…あはは。何で話しちゃったんだろ。」

「…全員が家族で問題があるからだろ。でも、谷口のも分かるんだよ。一人きりってやっぱり寂しいし。それに聞いてほしかっただけだろ。……はぁ。多分俺はこういう役回りなんだろうなぁ。」

「……父さん面倒見いいしね。」

 

ミオの言葉に苦笑する。それくらいしか恩を返せる自身はないしな。

 

「…ぶっちゃけ俺も家は出たかったから中村の家に住むことは相手のことを考えなければありなんだよなぁ。」

「そうなの?」

「…でも、そこはミオとリン次第になるかな。俺は別にいいぞ。」

「……いいんだ!?」

「いいぞ。正直居場所が出来るだけでもかなり楽になるから。」

「…私はいいけど……リン次第かな。なんか私自身が保護者になるなんて。」

「……何で受け入れてるの?2人とも。」

 

驚いた様子だったけど、ミオと真剣に話してくれた谷口にはただでこんな重いこと話してくれたことに対して真剣受け止めた結果だろ。

 

「…成り行きで聞いたとしても、中村も谷口も見逃せないだろ。何で二度と会わないつもりがクラスメイトの相談回になっているのかはさておき。谷口はその御手伝いさんは間違ってないのは確かなんだけど、幼いからその当時は仕方ないとはいえ多分間違った解釈なんだろうと思う。」

「間違った解釈?」

「笑顔っていう仮面をつけるんではなくて、自分の本心を相手に伝えることが大切って言いたかったんじゃないか?」

 

今でいう白崎と八重樫みたいな関係かな。あの2人、普段お互いに遠慮とかそういうこと殆どないしな。それは俺とハジメも同じようなものだ。

 

「素を出せる人が近くにいたら、楽になるもんだよ。一人きりって寂しいのは谷口も経験しているだろ。俺は言わずの側、中村も誰かに助けを求めていれば、元々義理の父親のことはなかったかもしれない。まぁ、今更言っても後の祭りだけどさ。」

「…確かにそうだね。…父親の糞っぷりは気付いていたけど、でも…ボクは…それでもボクは。お母さんを信じたかった…から……」

 

その言葉に中村の目から光るものが見え静かにその雫が零れ落ちる。軽く抱き寄せると服に捕まり泣きじゃくる。

その中でごめんなさいとずっと言っているので予想は間違ってないだろう

 

「……あの、瀬川くん。」

「ずっと時が止まってたんだろ。中村のお父さんが亡くなったのは自分のせいだと虐待を罰だと思い込んでいたらしいからな…。……谷口もこういうことだ。人には感情の蓋があるんだから耐えてるだけなんだ。今は大丈夫かもしれないけど、いつか壊れる時がくるんだよ。」

 

軽く頭を撫でながらよく転んで泣くリンをあやすように撫でる。

 

「…この世界に来て傷ついてないクラスメイトなんて居ないさ。全員被害者なんだよ。……だからこそ支えが必要なんだよ。一人で悩もうとするなら中村でも、俺でもいい。相談してくれたら聞くから。」

「……それは鈴にとって殺し文句だよ。」

 

ミオが呆れたようにしている。谷口も顔を真っ赤にして頷いている。

 

「言っとくけど、これ当たり前のことだからな?相談に乗るのが普通友達ってもんだろ?」

「…そうなんだけどさ。なんかタクミくん本当にお父さんみたいになってきたね」

「ミオとリンの父さんだからな。前世がどうとか関係ないからな。」

 

俺の言葉に少し苦笑する谷口。そして少し驚きながらも少しだけ嬉しいのが隠せていないミオに俺は空いた手で軽く撫でる。

その後中村が泣き止むまでずっと2人の頭を撫で続けていた。

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