魔法剣士と異世界の姉妹 作:ニック
ブルッ
「……どうしたの?」
俺は気持ち悪い視線がさっきからかけられると俺はキョロキョロと見回す
その様子を怪しいと思ったのかハジメは心配してくれてのであろう。
「いや。なんかさっきから粘っこい視線感じないか?なんというか……ドロドロするつーか。……なんか母さんから感じるのと同じような感じの視線がする」
「…っ!」
「……ものすごい憎悪だな。見た感じ天之河あたりじゃなさそうだし檜山あたりか?」
憶測で考えるとその辺りだろうな。そしてその勘が当たっているのがわかるのは20層くらいになるのだが
「……相変わらず妬みの視線は慣れているんだね?」
「日頃から受けているからな……さっさと自由になりたいよな」
俺は苦笑する。悪意はずっと受け続けている
「……」
「ん?どうした?」
「何でもないよ。ほら。いこ」
とハジメが手を引く。俺はそれに従い入り口へと向かう
とここでメルド団長が気づく
「ん?確かお前は光輝のパーティーじゃ」
「あっ!俺基本的にハジメと行動するんで。天之河のパーティーには入りませんよ」
「「「えっ?」」」
すると全員が驚いたようにしている
「お、おい独断行動は」
「俺にとっての最優先事項はハジメと俺の命です。次に八重樫と白崎の命、ちゃんと優先順位がある。戦争とか人類を救えとかどうでもいいんで。元々あんた達がハジメを王都に残さない時点で俺は行動を別にすることを決めていた。あんたらはハジメがいない状態でパーティーを組ませたんだ。ハジメがいる状態だとまた話が違う。それよりも友達の命を軽視しているのにタダで命をかけるとでも思っていたのか?」
今までいい印象だったであろう俺の豹変ぶり。それはメルド団長どころかクラスメイトまで驚いているがここまできたら
「俺はハジメや自分の身が危ないと思ったら魔人族側に裏切るのことすら考えている。ハジメへの態度で俺たちの命をなんとも思っていないんだろ?教会は。そんな奴らのことをきく必要はないでしょ?」
俺が口撃を放つ。この世界では教会が全てでありそれが正義なのだ
だがそれを拒絶したのだ。
いわゆる宣戦布告。おれにとって大事なのは友達であると宣言しているのだ
「俺にとって一番大切なのは命だ。生憎今の教会も、まぁ今のところ姫さん関係以外の宮廷の人間も信用できない。死ぬって分かっていて前線に行くなんてバカがやることだ。報酬も貰えないって馬鹿らしいと思わない?」
俺は呆れたように、そしてバカにするようにする
「だから俺は俺のやりたいようにやらせてもらう。友達の命を守るために全力を尽くす」
だからこそ宣言する。絶対に変えることのない意志だ。
天之河がありえないと思ったのか俺に掴みかかる
「ちょ、ちょっと待てまさか、この世界の人達がどうなってもいいっていうのか!?魔人族をどうにかしないと、これからも人々が弄ばれるんだぞ!放っておけるのか!」
「心底どうでもいい、そんなことよりも俺は命が惜しいからな」
俺はきっぱりと答える。
するとメルド団長たちは苦い顔をする。
まぁとどめの言葉を言わないでおいてやるか
「……かっこつけすぎじゃない?」
「いいだろこれくらい。こうでもしないとハジメの近くにいれないからな。でも守ってやれると思うなよ。俺は迷宮ってところがどんなところかも分からないからな」
「……そういうのは八重樫さんにいうべきじゃ…」
「ハジメ?」
俺は軽くハジメの頰を引っ張る。もちろん手加減しているのでお互いにじゃれあいとしか思っていないが
「ごめん。ごめん。でも、あんなこと言って大丈夫なの?」
「ん?」
「ん?じゃないよ。教会に喧嘩売ったも当然じゃない?」
「……まぁ大丈夫だと思う。そのための準備も昨日のうちにしてあるし……それに」
と俺はニコリと笑い
「俺はすでに化け物だからな」
たった一言。それも重要な事実にハジメは叫び声を上げざるを得なかった
あれから数時間が経った俺たちは一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた
「……あ〜暇だな」
「そうだね」
とのんびりと列の後方で俺たちはのんびりとついていく
戦闘外ばっかりだが気配感知、あの後覚えた魔力感知の範囲が広まっている
「この調子ならなんとかなるんじゃない?」
「どうだかな?……嫌な視線も継続しているし、なんとなく嫌な予感がするんだが」
俺は少しだけ周囲を見回す。今の所俺自身も情報をあまり流してはいない
なのに嫌な雰囲気がするのはなんでだろうな
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
というが不快な視線が消えていない。
それどころか二つの魔物の気配を捉える
しばらく歩くとメルド団長が小休止を言い渡していても変わらなかった
「……厄介だな」
ポツリと呟く
それは俺にとってのこの先の負担になることだった
そして少しの小休止が終わると探索に戻る
しばらく歩くと一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。
そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりの予定だ
すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。気配感知にも反応しているし戦闘に入るのだろう。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
直後壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物、確か名前は
「ロックマウントだっけ?剛力が特徴で咆哮で足止めする」
「そうだね。仲間を投げることでも有名だから後衛に抜かれると面倒だったはずだよ」
こういうのは予習済みなので俺とハジメはどの対応をすればいいのか分かっている
ついでに対策をしないと
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
こうなる。ダメージ自体はないものの硬直してしまうのだから一瞬の隙が生まれることになるのだ
まんまと食らった前衛組が一瞬硬直してしまい一瞬の隙が生まれる。
一応準備しておこうか
ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩と思わせた擬態したロックマウントを持ち上げると後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越える
香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けたがそう甘くはいかない。投げられたロックマウントは空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて後衛へ押し寄せた。気持ちが悪かったのか白崎たちは詠唱をやめた途端俺はやれやれと思いながら魔法を発動させる
「ライトアロー」
光の矢が数本飛び出し俺は遠距離から狙いを定め狙撃する。矢はクラスメイトの隙間を抜けると同時にロックマウントに一直線とはいかないが数秒後着弾する
「へ?」
驚いたような後衛陣。白崎はどこから放たれた矢なのか理解したのだろう。白崎は俺の方をじっと見つめてくる
俺は手をひらひらと向けると奥からガラガラっと大きな音が聞こえてくる。俺がその方向を見るとパラパラと部屋の壁から破片が落ちていた。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで白崎達へ振り返る天之河に俺は一度ため息を吐く。崩落して生き埋めになったらどうするんだろうと思わざるを得なかったが同じことを考えていたのであろう笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった
「へぶぅ!?」
「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」
と思いっきりげんこつをくらう天之河。そう思っていると白崎がこっちにいつのまにか来ていた
「さっきはありがとう。えっと。さっきの魔法は?」
「ライトアロー。俺のオリジナルだよ。まぁ魔法を無詠唱で使えるんだけどイメージがあれば魔法を展開できることに気づいたんだよ。だから操作しやすいように改良して、威力を抑えて速度と命中力を重視させた魔法かな?」
「む、無詠唱?」
「威力は落ちるけど色々改良できるから便利だぞ?」
俺は自主練習に魔法の開発を行っていた。敵がどうなるにしろ、見知らぬ魔法というのは警戒しざるを得ない。すなわち既に準備を重ねていたのだ
「……オリジナル魔法に、無詠唱。凄いね!!」
「なれたら誰にでもできるだろ?つーかこう言ったことは俺たちには結構有利だしな。元々アニメやゲームで原型や効果があるものが結構多いしな」
いわゆる魔法の開拓に得意って言っているみたいなものだ
「あれ?あれなんだろう?」
とクラスのムードメーカーの谷口が何か気づいたみたいで一度魔法談義を打ち切るとそこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
「素敵……」
と白崎がこっちを見るのを確認して一瞬苦笑してしまう。本当にメゲないよなこいつ。……正直俺には本当に勿体無いくらいの人なんだけどなぁって油断してしまった
「だったら俺らで回収しようぜ!」
そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。
その瞬間猛烈に嫌な予感がした。そしてすぐさま魔法のため切っていた探索用の感知能力を使うと軽く舌打ちしてしまう
「誰か檜山を止めろ!!その鉱石はトラップだ!!」
「えっ?」
「ッ!?」
俺の警告は遅かった。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。
「ハジメ。白崎離れるなよ。魔力の展開が早すぎるから逃げるのは無理だな」
「それって」
「どっちにしろ地獄だろう……嫌な予感ほどよく当たるもんだな」
俺は軽く頭を掻く。その間にも純白な光は展開していき、俺たちを包み込む。
そしてその先が収まると俺はすぐさま立ち上がる
魔力感知には大きな魔法陣が二つとそっちと比べるとましだが量が大量だな
「……っ!瀬川くん」
「いいから。……チッ。出し惜しみする余裕はないか」
俺は軽く舌打ちをしてしまうこりゃ流石にろくなことないな
小さな無数の魔法陣からは、剣を携えたスケルトンみたいなが溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。
そしてもう一つの反対側。そっちが問題だ。
一匹は大きな斧を持った灰色の体にツノが生えている。地球でいうなら牛で、ゲームとかでよく見るミノタウルスと呼ばれる魔物で50層相当にあたる魔物だったはずだ。
そしてもう一体は 十メートル級の魔法陣からは体長十メートル級の四足で頭部に兜のような物を取り付けた魔物が出現したからだ。もっとも近い既存の生物に例えるならトリケラトプスだろうか。ただし、瞳は赤黒い光を放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から生えた角から炎を放っている
その一体は俺も流石に目を見張る。その名前を知っている俺は悪態をつく
「ベヒモス……」
その絶望の声は何も邪魔されることなく響きわたった