昼休み。
大判のレジャーシートの上はほんの一部だけ空気が重かった。
「露伴先生……みんないるんですからそんな顔しないでください」
その要因こそが、来宮美晴の隣に座る岸辺露伴その人であり、彼は"絶対誰とも話さないぞ"という気合いに満ちていた。
「そ、そっスよ〜露伴先生。もっと気楽に、ねっ」
美晴の左隣に座る仗助が露伴に声を掛けるが、逆効果のようでギラッと彼は仗助を無言で睨みつけ、己が持ってきた重箱の中身に箸を伸ばす。
「あっ、だめですよ!仗助くん達にこないだの事謝ってからです!」
「いてっ」
今朝提示された重箱——もとい、美晴の弁当を食べる条件。本当だった事とその約束が生きている事にも驚いたが、己の箸を持つ手が美晴にパシッと叩かれた事も衝撃的だった。
「えっ露伴先生、美晴ちゃんのお弁当食べられないんスか?じゃあ俺が代わりに食べますよ〜っと」
叩かれた手の甲をショックに満ちた顔で撫でている露伴を一瞥し、仗助は煽るように目を細めると美晴の弁当に箸を伸ばし、玉子焼きをヒョイッと口に入れる。
「あぁーッ!東方仗助ッ、きさま!」
「ん〜ッ!美晴ちゃんの玉子焼き、グレート美味いッ!」
もちもちと玉子焼きを頬張り、仗助は再び露伴に煽りの視線を向けた。それを見た露伴はぐぬぬと唸り、しかし開き直ったようにフン!と鼻を鳴らす。
「ま、まぁ美晴はこのぼくの給仕係だからな。料理も上手くないと困るんだ。これをぼくは毎日朝夕、休日は昼も食べてるんだぜ、仗助ェ?」
だから悔しくなんかないぞ、と言いたげに仗助を見ている。今度は仗助が唸り声を上げる番だった。
「んなっ!そんなところでマウント取るとかヒキョーっスよ!」
「ハハハッ!なんとでも言え、事実なんだからなァ!」
片や唸り声、そして隣から高笑い。その間に挟まる美晴は仗助の母親が先程大急ぎで届けにきてくれたサンドイッチを咀嚼しながら溜息を吐いた。仗助の母親の東方朋子は教師をしている。今日も業務に追われているらしく、せめて昼ごはんだけでもとわざわざ車を飛ばしてくれたのだ。
「美晴大丈夫か…?俺の隣来る?」
まだ言い争っている2人の間にいる美晴が不憫に見えたのか、億泰が隣の空いたスペースをトントン叩きながら誘っている。康一も家族に囲まれながら心配そうな視線を彼女に向けていた。
「仗助くん、露伴先生も……美晴さん食べづらそうだよ」
康一のその声にようやくハッと2人は我に帰り、間にいる美晴に視線を落とした。
「わ、悪りー美晴ちゃん!別に喧嘩したくてしてたわけじゃあ…!」
「なんだよ、先に煽ってきたのはお前の方だぞ仗助。自分の事を棚に上げるつもりか?」
露伴の言葉に仗助は「うっ」と言葉を詰まらせた。確かに、先に煽ってしまったのは己だ。軽はずみとはいえ、少し幼稚だったかもしれない。
それにこの岸辺露伴という男、前から思っていたがとても自己中心的で我儘だ。恐らく自分も悪いなんて1ミリも思っていない。こういう奴に対しては、ここは己が一歩引くべきなのだ。
「す、すみませんっス……」
てっきりまた言い返してくるかと思ったらしい、露伴は素直に頭を下げた仗助を驚いたように目を見張って見つめていた。そんな仗助を見て、美晴はジトッとした目を露伴に向けながら彼を肘でぐりぐりと二の腕辺りをつつく。
「う……っ、ぼ、ぼくの方こそ、悪かったよ……それに、こないだの事も……す、すまなかった……」
促されるまま、露伴はそうやって謝罪を口にする。チラと美晴を見遣ると、億泰と康一の方にも視線を向けていた。
「康一くんに億泰くんも……す、すまない、な……」
その言葉を受け、仗助と康一と億泰は目をまんまるく見開いていた。3人の視線を一身に受け、露伴は居心地が悪そうにまた美晴に視線をやると彼女は納得したようにうんうん頷いている。どうやら目的は達成されたらしい。
「ま、まぁ、分かればいいんスよ、分かれば……なぁ、億泰、康一」
「お、おう、そうだな……そうだよなァ…!」
「ちょっと意外だけど……もうあんな事しないなら、ぼくも」
3人ともなんとなく戸惑ったような表情をしていたが、露伴の謝罪はしっかり届いたようだ。何故か露伴はホッと胸を撫で下ろしながら改めて重箱の中身に箸を伸ばすともう阻止される事はなく、今朝は出されなかったエビフライを摘んで口に運ぶ。
「ン、美味しい……」
もぐもぐ咀嚼していると、他の3人の箸もワッと重箱に集まる。
「俺も今度はからあげいただきま〜す!」
「あっ!仗助ばっかずりーぞ!俺も俺も!」
「ぼくも食べてもいいかな!?」
「ふふ、いいわよ。頑張って作ったからたくさん食べてね」
美晴の顔にまた笑顔が戻った。少しだけプライドが削がれたが、こうして彼女の笑顔が見れるのだから、結果的には露伴にとっても良かったという事になった。
「あ、私実行委員の仕事で午後は応援席にはいませんので」
しかしその言葉にまたピシッと固まる。
「ち、ちょっと待て、聞いてない…!どこにいるって言うんだよ!」
「得点係なので、あのボードがある3階ですね。競技の時には降りてくるので心配いりませんよ」
露伴が美晴の指差す先を見ると、得点ボードが視界に入る。それによると今リードしているのは2年生で、僅差でそれを1年生と3年生が追いかけるという状況になっていた。しかしそんな事は今はどうでも良く、3階にあるというだけあって観客席からでは美晴の姿は米粒ほどしか見えないだろう。
「じゃあ、少し早めに集まる事になってるし……私行くね」
「ええっ!」
そう言って席を立つ美晴を露伴は残念そうに眉を下げて見つめる。
「大丈夫ですよ、競技見たいので外は見てますから。ボードまで来たら真っ先に顔出しますね」
靴を履きながら振り向き、美晴は苦笑いを零しながらしゃがんで彼の顔を覗き込んでいた。
「なんかよォ、露伴先生の方が子供みてェだな」
「心を許した人には結構甘えるタイプの人なのかもね……」
億泰と康一がコソコソ話す中、仗助は美晴を呼び止めてその姿を視界に入れる、
「美晴ちゃん、実行委員の仕事頑張ってな」
「仗助くんこそ、この後の騎馬戦頑張ってね。上で応援してるから」
コツ、と2人でグータッチを交わし、美晴は実行委員の仕事のために校舎の方へ向かった。
校舎に入りまずは自分の教室に入ると、昼食を教室で摂っている生徒や父兄が何組かいた。今日は天気が良いが少し日焼けが気になる陽気で、体育祭的には良いのだが女子にとっては天敵でもある天候だった。かく言う美晴も日焼け止めを水筒と一緒に外に持って行っていた。
美晴は机に水筒を置き、鞄から櫛を出すと女子トイレに向かい、鏡を見ながら髪型を整える。今日は運動がしやすいよう、また汗で肌に髪がくっつかないようにポニーテールでまとめていた。
普段あまり人を褒めない露伴が褒めてくれた事を思い出すと自然と顔が綻ぶ。鏡の中の己も幸せそうな顔をしていた。
「こんな感じかな……」
髪をまとめ終え、頭を振って左右を確認する。そうして満足したように笑うと、女子トイレから出た。
「……?」
しかしどこからか視線を感じ、辺りをキョロキョロと見回す。鋭く刺さるようなその視線は血のようにジワジワと不安を滲ませていく。
「気のせいかな……」
そんな感覚を残しながらも教室に戻ると先程ここにいた生徒や父兄達は既に外へ移動したらしく、ここには誰もいなかった。櫛を戻し、水筒を持って教室から出て3階へ向かう。
「……ッ!!」
だが階段を上り切ったその時また鋭く視線を感じ、振り向こうとすると同時に何かが背中にガッ!と当たった。
暗転。
「なんッ……なにッ!?」
視界が暗転し、依然暗闇に覆われている。体は縮こまるように脚を折り畳んで丸まり、横たわっているようだった。試しに脚を伸ばそうとすると、爪先が壁のようなものに当たり、腕を伸ばそうとすればまた壁のようなものに、頭を上げようとしても同じだった。
「何か……狭いものに閉じ込められているわ……!」
ガタガタと手足を動かしてみるがゴソゴソと音がするだけでビクともしない。
「あまり暴れない方がいいぞ。階段から落ちる」
そこに外から男の声が聞こえ、動きを止める。
「だ、誰!?あなたがこんな事をしたの!?」
「お前はもう動けない。攻撃も出来ない。そこから出られない。……なのに俺の事を知る必要があるか?」
男の声が冷たく響き、ザリザリと音を立てながら閉じ込めている物ごと移動させられる。
「蹴られないよう端に避けといてやるよ。じゃあな」
「ち、ちょっと!!私が何したって言うのよッ!出しなさいよッ!!」
中から声を張り上げるが、男のものと思われる足音は遠ざかっていきやがて聞こえなくなってしまった。
「美晴さん遅いね……得点ボードに来たら真っ先に顔を出すって言ってたのに」
康一が応援席から得点ボードのある3階の窓を見るが、他の実行委員が顔を出しているにも関わらず肝心の美晴の姿が一向に見える気配がなくて眉を下げていた。
「トイレにでも行ってるんじゃあねーの?」
「それにしたって……もうここを離れてから15分は経ってるよ?」
億泰の声に康一はもう一度校舎を見上げて時計を見る。もうすぐ昼休みも終わる時間で、校舎や体育館で昼食を摂っていた生徒も続々と応援席に戻り始めていた。
「まさか何かまずい事に巻き込まれたんじゃあ……!」
仗助がガタッと席を立った刹那、彼らが出場する"騎馬戦"出場選手の入場口への召集の放送が掛かり途端に眉間にシワを寄せる。
「じ、仗助くん、どうしよう!?ぼくら騎馬の上に乗るんだよ!?出ないわけにはいかないよ!」
康一が縋るように、或いは駆け出そうとしていた仗助を引き止めるように彼の腕にしがみつく。騎馬役であるならまだ替えが利くが、彼ら3人とも騎馬戦の花形である騎手役で出場予定であり、補欠になりそうな人物はいない。ギリギリと歯を食いしばり、仗助は得点ボードを見上げて悩むように唸っていた。
「だったらぼくが見てくるよ」
そこに足音と声が聞こえ、3人でそちらを勢いよく振り向く。そこには重箱やウォータージャグを車に戻しに行っていた岸辺露伴がいて、得点ボードのある教室を見上げていた。
「露伴先生!」
「お前達は競技に集中しろ。必ず美晴をあの得点ボードのある教室まで連れてくる」
そう言い残し、露伴はすぐに踵を返して校舎の方へ向かい始める。その足は次第に早まり、小走りで他の保護者の群れを押し除け始めた。
(何もなきゃあいいが、そういうわけにはいかんだろうな…!)
昇降口の扉を静かに開けて中に素早く忍び込む。昼休みも終わり、恐らく今この校舎内にいるのは教師か体育祭実行委員だけだ。"美晴に何かした"犯人は相当限定される。まずは階段を登り、得点ボードのある3階へ向かおうと歩を進めた。
一方、美晴は遠くの方で聞こえる騎馬戦出場選手の入場口召集の放送を耳にしながら状況を把握しようと頭を回転させていた。
(……こ、これは……こんな芸当が出来るのはスタンド…!あいつスタンド使いだわ!"何か"背中に当たって……一瞬でこの中に閉じ込められた。ここはその当たった"何か"の中なんだわ!)
感覚的に長い時間閉じ込められているように感じるが、昼休み終了を知らせる放送が聞こえる事を考えると恐らく経過時間は10分ほど。狭いために体が痛み始め、首も曲がっていて息苦しさもある。まるで母親のお腹の中にいる胎児のような体勢でまだ経過時間は10分……昼休みも終わり本格的にこの校舎に出入りする者はいなくなる時間帯、仗助達もこの後の騎馬戦に出場予定であり、助けが来ない状況に絶望する他なかった。
「……!」
と、そこに何者かが階段を登ってくる足音が耳に入り、ハッと息を呑む。時間的に教師か、トイレに行っていた実行委員だろうか。
しかし「助けて!」と叫んだところでどう対処してもらえば良いのだろうか。もしスタンド攻撃だとしたら、一般人にはどうしようもない。余計な心配を煽るだけなら声を上げない方が良いのだろうか。
「美晴、どこにいるんだ?」
考え込んでぐらぐらと視界が揺れる中、足音と共に耳馴染みのある声が聞こえて再び息を呑んだ。
「露伴先生ッ!!」
その名を声を張り上げて呼ぶと足音が止まる。
「美晴?どこだ!?」
「ここです!!"何か"に閉じ込められてるんですッ!!」
その場を回るような足音が聞こえ、やがてその足音はこちらに向かってきて閉じ込めている"何か"を軽く叩かれる。
「まさかとは思うが……この中かッ!?この、どう見ても"ただのダンボール箱"に閉じ込められていると言うのかッ!?」
「えっ……!?」
耳を疑った。今私を閉じ込めているのは、"ただのダンボール箱"だって?露伴先生は確かに今、そう言った。
理解が追いつかない中、ダンボール箱を擦る音と露伴の溜息が聞こえてきて、次にはカラカラと何かを探る音が聞こえる。
「おいおい……どんなドジだよ。今カッター出してやるからそれで解決だな」
恐らくカラカラとした音はスケッチ用の筆記具の中からカッターを探っている音だったのだろう。すぐにその音が止むと今度はカッターの刃がキリキリとせり上がる音が聞こえ、プツッと箱の端に穴が空いて線状に光が漏れ出す。
「き、気を付けてください…!」
「分かってるよ、怪我しないようにガーディアンで守ってろよ」
「そうじゃあないですッ!」
否定しつつも万が一の事を考えてガーディアンの守護を己に掛ける。一方の露伴は疑問符を浮かべながらもカッターを滑らせる手を止めなかった。
「"この箱"、私を一瞬で中に閉じ込めてしまったんです!背中に当たった瞬間にです!こんな事が出来るのは"スタンド使い"だけですよッ!そしてこれが"スタンド攻撃"という事は……ッ!!」
ピタリとカッターの刃が止まる。
「まさか……!」
露伴が呟いた、次の瞬間。
「な、なにーーッ!?」
ズズズッ!と音を立ててカッターで切ったダンボールが継ぎ目も残さずに修復されていく。まるでジッパーを上げるかのような速さで傷が塞がっていき、終いには今カッターが差し込まれている位置まで修復されてそれがバキッ!と音を立てて真っ二つにされた。
「や、やっぱり…!これは"スタンド攻撃"です!!真っ二つになったカッターの片割れが、こっちに落ちてきました!!」
再び暗闇に覆われた視界の中、確かに刃が出しっぱなしになったカッターの片割れが顔に当たった。幸い美晴にはガーディアンの守護があったので怪我はなかったが、もし自分がそういうスタンド使いでなければと思うとゾッとする。
しかしそれだけでは終わらなかった。
「なッ…!!」
「んッ…ぅ!!」
箱がギュッと握られるように更に狭くなり、圧迫感が増す。
「今この箱、"小さくなったぞ"!!美晴!大丈夫か!?」
「"小さく"…!?す、すみませ……ッ圧迫感がひどくて、喋るのも……ッ」
更に体を丸めて凌ぐが、狭さによる息苦しさで呼吸が浅くなる。
露伴は真っ二つになったカッターの柄の部分を握り締め、今確かに小さくなったダンボールを観察する。先程カッターで付けた傷はあの一瞬のうちに何事もなかったかのように塞がっていた。
「無理に開こうとすると修復し、中に閉じ込めた者を圧迫するために縮むのか…!どうやら本体を叩くしかないようだな…!」
立ち上がり、長く続く廊下の先を見る。
「多分、本体はこの階に…ッ階段を降りた音は聞こえなかったんです…!可能性は……!」
「体育祭実行委員の得点係、だな。得点ボードのある教室まで行けばいいんだろう?」
今いる場所の位置関係は手前の教室に入って窓の外を見れば分かる。得点ボードの位置は覚えているので、景観で何処の教室にそれがあるのか割り出せば良いのだ。
「ぼくに任せろ、必ず助けてやる!」
露伴は誰かがここに来てしまう前に片を付けようと教室へと駆け出した。
「この位置は……入場口側だな」
すぐ近くの教室に入り窓の外を見る。校庭には騎馬戦の選手達が騎馬を組んで睨み合っているところだった。その中に仗助と億泰と康一の姿を捉え、しかし彼らは美晴が出てくるはずの得点ボードの方をチラチラと気にしているようだった。
「あいつら、集中しろと言ったのに…!だがこれで考える手間が省けたぞ!」
彼らの視線はここより3、4個ほど離れた教室に注がれている。露伴は内心で彼らに一応感謝をしながら教室を出て廊下を走り始めた。
その彼の足音を聞きながら、美晴は自分の力でもなんとか出来ないかと思考を巡らせていた。露伴が助けに来てくれた事で安心したのか、思案する余裕が出てきたように感じる。
(露伴先生、この箱は"ただのダンボール箱"と言っていたわ……そして箱を開けようとすると傷が修復して圧迫してくる……それなら試したい事があるわ!)
美晴は持っていた水筒を開け、中蓋を取ると目の前の壁に水を掛けて濡らす。そして今一度確かめるように自分にガーディアンの守護を掛け直し、思い切りその湿らせた箇所を拳で殴った。
「やった…!」
殴った箇所に穴が空き、光が差し込む。しかし喜んだのも束の間、すぐにその穴を塞ごうとダンボールが修復していき箱も更に縮み始める。
「湿らせたダンボールはふやけて壊れやすくなるわ!そして私のガーディアンは、守っているものを絶対に壊させないッ!」
縮んでいく箱の中、美晴は水筒の中身の水を自分にもぶちまけるように撒き散らして内部からダンボールを湿らせ破壊していく。そうして箱はふやけたまま縮み続け、ガーディアンの守護のある美晴は修復攻撃を受けても体を傷付ける事なく、ついには彼女がまるでそこから生まれたかのように姿を現し、箱は破れふやけた小さなダンボール紙だけが床に落ちた。
「はー……露伴先生がお弁当と一緒にウォータージャグも持ってきてくれてたから、水筒の中身も満タンだったのよね。おかげで助かったわ……」
昼休みが始まって露伴と合流した時、すぐに彼の持つそれを使って水を補給しておいたのだ。顎を伝う雫を手の甲で拭い、水の滴る己の体を見る。
「これじゃあ競技に出られないじゃあないの……犯人を捕まえないと気が済まないわ!」
中身が水だったからまだ良かったものの、着替えは下の階に行かないと用意がない。髪を乾かす時間もいる。だが暢気に着替え等をしている暇があるなら、今犯人のスタンド使いを露伴と一緒に捕まえておかないと怒りが収まらない。大体そうでなくても、仗助達が出る騎馬戦を見逃す事になったのだ。許しておける事ではない。
美晴は立ち上がると水の滴る体のまま、得点ボードのある教室へと急いだ。