昼食は水族館にあるレストランでシーフードカレーを食べた。6月にしてはよく晴れていて、仗助と美晴はテラス席で足を休めながらのんびりとした時間を過ごしていた。
「今日は空いてるし、ゆっくり見て回れて楽しいわ」
美晴が館内マップを広げながら満足している様子で今まで辿ってきた道を指でなぞっていく。まだ見ていないコーナーもあるが、半分ほどは周れただろうか。さすがの広さである。
「んじゃあよー、次はペンギン見に行くか。そろそろショーも始まる時間だぜ」
仗助が別紙のイベントプログラムを見ながら腕時計を確認すると、時刻は13時の10分ほど前だった。ペンギンは屋外展示となっており、ペンギンふれあいショーもそこで行われる。2人は席を立つとここからさほど遠くないその場所まで歩を進めていった。
「はーい!みなさーん!こんにちはー!」
ペンギンの展示コーナーの中で女性飼育員がピンマイクで拡声された声を響かせる。平日なのもあって人は疎らだが、1番前を取れて興奮を隠し切れていない美晴も「こんにちはー!」と声を響かせていた。飼育員の周りにはペンギンが10羽ほどよちよち歩いていて、更に目を輝かせている。その様子を仗助はペンギンそっちのけで見ていた。
『おいッ、そこのにいちゃんッ!カノジョよりも俺を見ろよォッ!』
「ッ!?」
そこに突如、飼育員のものではない声が響いて仗助はギクッと肩を揺らした。恐らく条件に当て嵌まるのは己だけで、辺りをキョロキョロと見回す。
『ここだよ、ここォ!』
『これこれミントよ、つがいに夢中になるのはおのこのサガよ』
若い男の声にジョセフのような老いぼれた声。まさかと思いペンギン達に目を向けてみると、その中の2羽のペンギンがこちらをジッと見つめていた。
「おやおや〜?1番前のお兄さんがカノジョさんに夢中で、ペンギンさん達も嫉妬しちゃったみたいですね〜!?」
飼育員が補足すると周りからクスクスとした笑い声が聞こえてきて、カァッと顔に熱を集中させて俯く。まさかこんな事で美晴をずっと見つめていた事がバレてしまうなんて。チラリと隣いる彼女を見れば、彼女もまた顔を赤らめながら口元を両手で恥ずかしそうに隠し、仗助を見ていた。
そんな2人の前では飼育員が「若くて緑色のリングがミントくん、青いリングのおじいちゃんがブルーじいじ」と2羽の脚に付いたリングの色も交えて紹介している。
「さて、この喋るペンギンさん。ちょっとどうして喋れるのかは私達にも分かりませんが…!みなさーん!これはアテレコなんかじゃあないですからね〜!みんなそれぞれ自分の意思でおしゃべりしてるんですよ〜!」
プールから上がってきたペンギン達が『エサ!エサくれ!』と飼育員に群がっていく。
(確かにこりゃあ……予想以上だぜ。若い方は分かるがよー、ジジイまでいるとは。しかしこれは……)
仗助は気を取り直し、喋るペンギン達をジッと見つめる。その視線を感じたのか、先程のおじいちゃんペンギン——ブルーも視線をこちらに向けた。
『はて、お主……』
ブルーはエサやりをする飼育員そっちのけでプールに飛び込むと仗助の前まで泳ぎ、水面にプカリと顔を出す。
『お主、少し"承太郎"と雰囲気が似ておるのう』
「なにッ……!?」
まさかペンギンの口から承太郎の名が出てくるとは思わず、辺りを忙しなく見回す。隣にいる美晴にもその声が聞こえたようで同じように視線を動かしていたが、彼ら以外の視線はエサに群がるペンギン達の方に注がれていて更に焦りが募る。しかしそんな2人の様子を見てブルーはケラケラと笑っていた。
『今ワシの声は、お前さん達にしか聞こえておらんのじゃ。そうなるように"範囲を絞っておる"』
「し、絞る…?」
2人して疑問符を浮かべていると、水面をスイーッと何かが滑るように流れてきてそちらに視線を向ける。
『アレじゃよ。他にもあるんじゃ。ワシのはそういう"スタンド"だと、承太郎が言っておった』
流れてきたのは薄型のスピーカーのようなもので、よく見ると同じようなものがペンギンの展示スペースの至る箇所に貼り付けられていた。
「ス、"スタンド"だとォ…!?」
「じ、じゃあ、このブルーじいじは"スタンド使い"…!?」
また周囲を窺うとどうやらその薄型スピーカーはこの場にいる2人にしか見えていないようで、ブルーがスタンド使いである事は確定的となった。
ブルーのスタンド。"翻訳者"の名を冠する"トランスレータ"は自分や周りの言語を、伝えたい相手の操る言語に翻訳するだけのスタンドである。だからブルーの周りにいるペンギン達の言葉が人間の言葉に瞬間的に翻訳され、声を伝える事が可能となったのだ。ちなみにスタンド名は以前ここに訪れた承太郎が付けてくれたものらしい。
「いや、まぁ、ネズミのスタンド使いもいたぐれーだしよォー、分からなくはねーけど。こういうスタンドもあるんだな……」
仗助はついこないだ承太郎と共に狩ったネズミのスタンド使いを思い返す。あのネズミは凶暴だったが、同じように動物のスタンド使いである彼は凶暴どころかショーに一役買っている。それは恐らく、水族館に飼われているペンギンだからこその思考なのだろう。
今まで戦闘向きだったり脅威になり得るスタンド使いとばかり遭遇していたが、そういえばイタリア料理店のトニオ・トラサルディーという料理人も、"料理を食べた人間を健康にする"という無害なスタンド使いだった事を思い出して、スタンドとは多種多様なのだなと改めて感心してしまった。
『ワシはのー、ここでのんびり過ごしているのが好きなんじゃよ。ほんで、人間も好きじゃ。エサはくれるし、ワシらが喋るとみーんな笑顔になるんじゃ。楽しいのう〜』
ブルーはまるで笑うように目を細めていた。なるほど、確かにこのペンギンにしてその能力なのだ。やはりスタンド能力というのは、本体の才能や性格に依存するものなのだろう。
そうしているとスイーッと先程ブルーと一緒に紹介されていた若い方のペンギン——ミントがこちらに泳いでくる。
『おい、じいさんよ!早くしねーとエサなくなるぜ!……あっ、オメーさっきのにいちゃん!近くで見るとジョータローにちょっと似てんな!』
その声を聞くや、ペンギン達が『ジョウタロ!?ジョウタロ!』と言いながらプールに飛び込んで仗助達の方へ群がってくる。
「あれー!みんなお兄さんの方に行っちゃいましたね!エサはもういいのかな?」
飼育員も驚いてそちらを見ているので、ブルーがまた翻訳範囲を2人に絞っているらしい。その声に思わず苦笑いしながらペンギン達を見ていたが、『ジョウタロじゃない!』『違った!』と口々に言いながらスイスイと水面を泳いで解散し始める。まったく気ままな連中である。
「承太郎さん、ここのペンギン達にずいぶん好かれてるみたいね」
『承太郎がたまーにここに来て構ってくれるんじゃ。ワシらペンギンの事について詳しいからのー、みんな大好きじゃよ』
そういえば空条承太郎は海洋冒険家だ。ここを勧めてくれたのも承太郎だし、よほど彼もここのペンギン達や水族館自体が気に入っているのだろう。
『さて、エサを食いっぱぐれるのはイヤでの。みんな食べたならワシもゆっくり食べに行こうかの』
ブルーはスイーッと水面を泳ぐと飼育員にエサをねだりに行ってしまった。
「ふふ、なんだか愛着が湧いちゃうよね、こうしてお喋りが出来ると」
美晴の方にスイスイと群がってきたペンギン達が『ジョウタロの知り合い?知り合い?』と彼女に質問している。「そうよ」と笑い声を零しながら応える姿が可愛らしくて、また仗助は美晴の事をつい目を細めながら見つめてしまっていた。
『時に仗助だったかなぁー?』
そこにまたブルーの声が響く。美晴が反応を示していないのを横目にし、彼が翻訳範囲を仗助1人に絞った事に気付いてチラリとそちらに目を向ける。
『こういう場所ではのー、おなごばかりデレデレ見るでないぞ!あとで話が噛み合わなくて苦労するからのー!』
その言葉にギクッと肩が跳ねる。しかしよくよく考えてみれば彼の言う事は尤もであり、仮に美晴が後で「あの魚が可愛かった」などと話しても「俺、美晴ちゃんしか見てなかったから分かんねーや」なんて言ってしまったらきっと彼女は残念に思うだろう。今するべき事は、彼女だけを見つめる事ではなく、彼女と一緒に水族館を楽しんで共有出来る思い出を増やす事ではないか。——それをペンギンに教わるとは思ってもみなかったが。
『それとワシらペンギンはのう、一度つがいになったら一生添い遂げるほど一途なんじゃよ。お揃いの土産を買うならワシらペンギンの物がオススメじゃよー!』
ブルーがパタパタと翼を上下に振っている。それを見た美晴はその視線を辿って仗助を見上げた。
「ブルーじいじ、もしかして仗助くんにだけ何か言ってるの?」
「えっ!?お、俺も何も聞こえねーけど、こっちにいるペンギンにでも話してんじゃあねえの?」
さっきからこのペンギン達のおかげで動揺しっぱなしだ。仗助は声を裏返しながらも手を顔の前でプルプルと横に振るが、相変わらず美晴に疑問を含んだ目で見つめられて背中に冷や汗が伝う心地になる。
(くっそ〜、ブルーのヤツ!ちゃっかり俺にだけ売り込みやがって!ぜってー買わねえ〜ッ…!!)
と、思ったのだが。
おみやげコーナーまで来ると美晴がイルカのぬいぐるみを手に持って眺める横で、仗助はペンギンのキーホルダーを見ていた。あの後ペンギンの展示コーナーの説明文を読んだのだが、ブルーの言った通りそこにも"カップルのおみやげにおすすめです!"と書かれていて、信じるわけではないがあやかってみるのも悪くないかもしれない……と思ってしまった。
(ペンギン、まぁ可愛いしな……美晴ちゃんも喜んでくれるかもな)
あそこにいたペンギン達は意思疎通が図れるというのもあるが、皆一様に愛嬌のあるペンギンだった。また来る機会があったら話をしたいと思ったほどだ。承太郎が2人にここを勧めた理由の中に、きっと彼らの事も入っているに違いない。
見ていたキーホルダーの隣の棚にはご丁寧にペア物まで売っていて、それを手に取ると美晴を見る。彼女だったらこのペアのペンギンキーホルダー、どこに付けてくれるだろうか。
「仗助くん、決まった?」
その視線を感じたらしい彼女がこちらに小走りで近付いてきて慌ててキーホルダーを隠そうとしたがそれより先に手の中を覗き込まれてしまい、しかし彼女はそれを見てパッと表情を明るくさせた。
「可愛い、それ!2つ合わさるとハートみたいになるのね」
くちばしと翼、向かい合った2羽のペンギンがくっつくとそれらでハートが出来上がるデザインになっている。そんなデザインのものを仗助が持っていたものだから、美晴は頬をほんのりと染めながら彼を期待を込めた眼差しで見つめる。
「これ、もしかして……一緒に付けてくれるの……?」
正直、これを己が買うのは小っ恥ずかしいなんて直前まで思っていた。だが、目の前にいる彼女の恥じらいと期待の目を見て"買わない"なんて選択肢を選べるだろうか?
「ん……まだどこに付けるか決めてねーけどよ……美晴ちゃんが付けるところ決めていいぜ。俺も、そこに付けるからよォ」
少なくとも俺はその選択肢、美晴ちゃんがこっちに来てくれた時からとっくに潰している。仗助がひとつ頷いてみせると、彼女の表情が一層明るくなって笑顔が溢れた。それは、仗助が1番好きな美晴の表情だった。
「うん、決めとく!ありがとうっ」
この笑顔をいつまでも見ていたいから、だから彼女を守りたい。共にいられる限り、ずっと隣にいたい。
後にも先にも、そう思える相手はきっと彼女だけなのだ。仗助はそんな根拠のない、けれども自信のある思いを抱いていた。
帰りの電車の中、今朝のように隣同士に座席に座り、仗助は陽の傾く窓の外をぼんやりと見つめていた。美晴は仗助の体に寄り掛かり、目を細めながらずっと手の中にある小袋を見つめている。中には先程駅のホームで分けたペアのペンギンキーホルダーの片割れが入っていて、他にも膝の上に抱えている袋には露伴へのお土産のクッキーやブルーじいじにそっくりなペンギンのぬいぐるみが入っていた。
今日のデートはまだ終わりではない。夕飯はトラサルディーで予約を取ってある。それと美晴を家まで送っていく事、そこまで終えて今日のデートは終わる。しかし水族館でのデートの余韻に浸っていたくて、2人は電車の中、特に言葉を交わす事をしなかった。それでも彼らの熱が冷めないのは、互いに寄り添った体温が優しいものだったからだ。
『杜王ー、杜王ー』
駅のアナウンスが2人を現実に引き戻し、彼らは手を繋いで電車を降りる。
3ヶ月前、初めてこの駅に降り立った時は、こんな未来があるなんて思ってもいなかった。美晴はこの杜王町に来てから、いろんな意味で人生が変わったように感じていた。恋愛なんて興味がなくて、それどころか周りにだってあまり関心がなく、体育祭のような学校の行事もあんなに楽しいものだなんて思ってもなかった。露伴や仗助を始め、こんなに心を通わす事の出来る人達と出会えるなんて想像もつかなかった。
"来宮美晴"を分かってくれるのは、己の両親だけだと思っていたから。
「お待ちしておりました、仗助さん。……と、お連れさまですね」
イタリア料理店"トラサルディー"に着くと店主で料理人の"トニオ・トラサルディー"が出迎えてくれた。案内された席に座ると、彼は厨房へと引っ込んでいく。
「前にチラッと億泰くんから聞いたけど、雰囲気のいいお店ね」
美晴が席につきながらぐるりと店内を見回し、そうしてからどんな料理が出てくるのかとソワソワしている。その様子に自然と顔が綻んで、今日はずっとそんな調子だなと仗助は改めて彼女に惚れ込んでいる事を自覚していた。
「いつか絶対連れてこようと思ってたんだ。ちっと寂しい立地だがよー、トニオさんの腕は確かだぜ」
初めて億泰とここに来た時は結局己はなぜか厨房の掃除をしただけで料理を食べておらず、後日もう一度来店した時にやっと口にする事が叶ったのだが、億泰が絶賛する理由がその時にようやく分かった。トニオならもっといいところで店が出せると思うのだが、敢えてここにした理由は未だ聞いていないしさほど興味のない事である。
「お待たせしました。まずはアンティパストから……」
少ししてからテーブルに前菜のブルスケッタが並び、その鮮やかな色合いに思わず2人して「おお、」と声が漏れる。
「それにしても、仗助さんが恋人をお連れになるとは想像もつきませんでした。それもこんなに素敵なシニョリーナを」
ふふ、とトニオも微笑みを見せる。今日初めて2人が"恋人同士"だと他人から言われた事に恥ずかしそうに顔を俯かせるその様子はトニオにとっても微笑ましくて、なるべく2人の邪魔をしないよう、料理を出す事に専念しようと1つ目のメイン料理の用意をするために早々に厨房へ引っ込んだ。
「な、なんだか……さっきあんなに人の目を気にしたのに、いざ言われるとやっぱり照れるわね……」
「そ、そうだな……けど、悪い気はしねー……よな?」
ブルスケッタを食べながら、こくこくと頷く。貸切予約をしたわけでもないのに店内はトニオを除いて2人だけで、その偶然的な特別感に幸せな気持ちが積み重なる。本当に今日はいい日だ——、仗助は心の底からそう思っていた。
「お次はプリモ・ピアット。メイン料理になります」
ブルスケッタを食べ終えたタイミングで、今度はカルボナーラの皿がテーブルに並ぶ。鼻腔を擽るチーズの香りに、前菜を食べた事もあってか食欲が増していく。
「……!さっきのブルスケッタも美味しかったけど……このカルボナーラもとても美味しいわ!すごい……隠れた名店ね」
「お褒めに預かり光栄です、シニョリーナ」
トニオが嬉しそうに微笑みながら深々と頭を下げる。美晴にとってこうして外食をするのは久しい事で、それもあってか余計に美味しく感じた。
「ん……でもなんだか、右足がムズムズするわ……」
しかしトニオが引っ込んだ後、美晴が不意にそんな事を零して仗助はハッと顔を上げた。彼女が靴を脱いで靴下を下げ始める様子に、唾を飲み込む。
そして——、
「ん……——ッ!?」
靴下を下げた事で顔を覗かせる、踵に貼り付けられた絆創膏が突如勢いよくベリッ!と剥がれてそこの皮膚を持っていった。そこからは血が勢いよく噴き出し、2人して目を丸めてその様子を呆然と見る。
「み、美晴ちゃんッ!」
「なッ、えっ!?ど、どうなってるのこれ!?」
我に帰って慌ててガタッと席を立って血の噴き出る踵を見るが、それは急速に塞がって元通りの綺麗な踵になってしまい、美晴は唖然と目を丸めたままそこを不思議そうにペタペタと指先で触れていた。
「彼女、靴擦れを起こしていましたよ。少し右足を引きずっているようだったので、すぐに分かりました」
厨房からヒョコッと顔を覗かせたトニオが2人に声を掛けてきて弾かれたようにそちらに顔を向けたが、仗助はすぐに美晴に視線を転じる。
「そうだったのか!?」
「新しい靴だったから……」
「言ってくれれば俺が治したのに…!」
仗助の言葉に美晴はシュンと俯く。
「だって、カッコ悪いじゃない……背伸びして履いて、靴擦れ起こしたなんて……」
トニオはそんな2人の様子に内心ヒヤヒヤしていた。良かれと思って己のスタンド、"パール・ジャム"で彼女の靴擦れの治癒力を急速に速めたのだが、それが原因で2人の仲に亀裂が入ってしまったら……どう責任を取るべきか。
しかし仗助がポンと彼女の頭に手を置いて、それも杞憂に終わると悟った。
「カッコ悪くねーし……痛いのに無理してる方が俺は嫌だぜ。……その靴、履き慣れるぐれーいろんなところ連れてってやるから、今度はちゃんと言えよな。俺が何度だって治してやるからよー」
「仗助くん……」
優しくて大きな手。その手で頭を撫でられると、不思議ととても落ち着く。それはクレイジー・ダイヤモンドではなく、彼自身の能力か何かなのだろうか。美晴は目を細めながら自然と頷いていた。
(とても幸せそうなシニョリーナ……仗助さん、本当に彼女を大切に想っているのですね)
トニオは自分まで顔が綻ぶのを感じながら、いつまでも見ていたい目の前のカップルから名残惜しそうに離れると2つ目のメイン料理の皿を彼らに持っていった。
「お待たせしました。セコンド・ピアットでございます」
仔羊肉のソテーの皿がテーブルに並ぶと2人の笑顔がまた一層に咲き誇る。
トニオが求めるのはお客様のその表情である。
どうか2人の未来が、笑顔溢れるものでありますように。彼は自然とそう願って止まなかった。
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