天才漫画家の給仕係   作:斎草

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03.陽のあるところに影は立つ
不思議な小道


 

ある日の昼下がりの事だった。

「うん。お茶を淹れるのが上手くなったじゃあないか、美晴」

「ありがとうございます、露伴先生」

水族館で買ったお土産のクッキーをお茶請けに、よく晴れた庭のテーブルで露伴は美晴が淹れてくれた紅茶を啜っていた。

ここ数日は徹底した防犯対策のおかげで変質者騒ぎもなく、新手のスタンド使いとの攻防もない平穏な日常を過ごせている。

「君もそこに座ってお茶にしなよ。僕らそんなに堅っ苦しい関係じゃあないだろ?」

露伴が自身の向かいの席を指すと美晴も「じゃあ……」と少し遠慮がちにしながらも椅子に座った。次いで自分の分の紅茶を淹れようとティーポットに手を伸ばすが、先に露伴にそれを取られ彼女のカップをソーサーごと引っ張ってきて紅茶を注ぐ。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

差し出されたティーカップ。露伴に視線を転じると片手で頬杖をつきながらジッとこちらを優しい目で見つめていて、若干緊張しながらも紅茶を一口飲む。

「美味しい……」

カップを置き、クッキーの乗った皿に手を伸ばしてイルカのプリントの施されたそれを摘んで口に運ぶ。濃厚な甘さが口の中に広がり、頬が緩むのを感じて目を細めた。

「……って、露伴先生。なにしてるんですか……」

クッキーと紅茶をのんびり味わっていると鉛筆が紙の上を滑る音が聞こえて向かいに視線を向ける。

「ん?君をスケッチしているんだよ。君にはヒロインの素質がある。康一くんを主人公に据えて、君をヒロインにすれば……完璧だな。いい作品が描けそうだ」

スラスラと完成したラフスケッチには紅茶を飲む己の姿があり(しかもやはりというかめちゃくちゃ上手い)、思わず気恥ずかしさで頬が染まる。

「そ、それはいいんですけど、"ピンクダークの少年"はいつ再開するんですか?」

カップをソーサーに置き、改めて彼と向き直る。一応彼の作品のファンである美晴からすれば、続きを早く読みたいものである。退院からまだ数日しか経っていない彼に復帰の催促をするのは酷だとは思うが、再開時期くらいは聞いておきたい。すると彼は「うーん」と唸って眉間にシワを寄せていた。

「少し手の調子が良くなくてね。今はあちこちスケッチして周りながら調整しているところなんだ。前みたいなペースで原稿を上げるのはまだ少し難しいかな」

悪いね、と露伴は手をぷらぷら揺らしながら苦笑いを零す。目の前に己の作品を心待ちにしている人間がいるのは露伴とて分かっている事だが、無理をして手が使えなくなるのはもっと困る。もっと万全にコンディションを整えてからの方がいい物が描けるし、これをインプット期間に充てるのも悪くない。

「そうだ。ティータイムが終わったら散歩に付き合ってくれよ。僕は昔、杜王町に住んでいた事があってさ……その辺りを少し見ときたいんだ」

露伴は紅茶を啜りつつ提案する。

そう、この杜王町は岸辺露伴の出身地でもある。彼はここで生まれ、4歳の頃まではここに住んでいたのだ。杜王町に戻ってきてからは仕事や取材で忙しくそこに出向く事は叶わなかったが、今ならちょうど余裕がある。それにこんなに良い天気だ。美晴とのんびり2人で町を巡るのはいい気分転換になりそうだし、彼女だってこの町の事は通学路くらいしかよく知らないだろう。彼女にとってもいい機会だ。

「ええ、いいですよ。久しぶりにゆっくりしましょうか」

前ならこんな風に2人でいる事が安らぐものだなんて思わなかっただろう。あの騒動があってからというもの、2人の間にあった壁は完全に取り払われたように感じていた。

 

ティーセットを片付け、露伴と美晴は家の外へと繰り出す。もうそろそろ陽も傾く頃合いなので、ついでに買い物もしてしまおうという話になり駅前まで歩く事に決めた。帰りはバスを使えばちょうどいい。

「ふーん、喋るペンギンか……今度そいつらに会って取材してみようかな。"ペンギンから見た人間"という視点は実に興味深い」

「是非行ってみてください!ペンギン以外にも可愛いイルカとか亀とかたくさんいましたし…!」

美晴が水族館で見た生き物達の事を興奮気味に話しながらこくこく頷くその姿を見て、思わずプフッと吹き出す。

「亀、そんなに好きなのかい?そのラインナップに亀が並ぶのはちょいと不思議だな」

亀といえば、美晴の部屋に最初に飾られたぬいぐるみもそうだった。ホームセンターへ彼女の部屋に置く家具を買いに行った時についでに買った安っぽいデザインの物だが、大層気に入っているらしく枕元に飾ってあるのを今も見る。——岸辺露伴の名誉のために言っておくが、掃除の過程で立ち入るのみで女の子の部屋を物色する趣味は彼にはない。

そんな話をしながらオーソンのある歩道とは車道を挟んで対岸に位置する歩道の地図看板の前まで来ると立ち止まり、それを何となしに眺める。

「どうですか?先生が前に住んでた時の地形とやっぱり変わってます?」

この辺りは前に仗助達に案内してもらった事がある。オーソンの限定スイーツは季節で変わったりもするので、美晴もいつの間にか常連の仲間入りを果たしていた。

「フム……いやね、僕が住んでいたのは4歳の頃までだと言ったろ?覚えているわけがないんだが……しかしだ。この地図は何か"奇妙"じゃあないか?」

「"奇妙"?どの辺が?」

一緒になって地図看板を覗き込むが、特に不可解な部分は一見してないようにも思える。しかし露伴は看板から視線を外すと対岸の歩道に見える店をひとつずつ指差していった。

「よく見てみろ。右からそば屋"有す川"、薬屋"ドラッグのキサラ"、そして……」

スイ、と露伴が差す指の先には小道があった。まさかと思いながら地図を見るとそこに該当する小道はなくて、薬屋とオーソンはピッタリと隣接する図になっている。

「な?」

「……いや、でももしかしたらこの看板が古いのかもしれません。露伴先生、確か町内マップ持ってましたよね?貸してください」

露伴は言われるまま美晴に町内マップを渡し、彼女がそれを広げるのを背後から覗き込む。しかしその地図は最新版であるにも関わらず、目の前にある小道は載っていなかった。

「ていうか……そもそも私、オーソンにはよく立ち寄りますけど……こんな小道、あったかしら……」

そう、最大の謎はそこである。普段何気なく通っているから気にも留めなかった、それだけの事なのだろうか。その小道はあまりにも唐突に現れたように思えて、更に疑問が募る。

 

「あ、美晴さん!……と、露伴先生ッ!?」

そんな2人に声を掛けてくる人物がいて2人でそちらを振り向くと広瀬康一の姿があった。が、彼は2人を——正確には岸辺露伴を視界に入れて気まずそうに視線を逸らす。

「やあ、康一くんじゃあないか。そんな気まずそうにしてなんだよ……よそよそしいな」

露伴は心なしか彼を視界に入れるや、パッと表情を明るめて近寄る。それを見て思わず康一は一歩後ずさった。

体育祭の時に彼の謝罪を一応受けはしたが、正直なところ広瀬康一は岸辺露伴に対して苦手意識を持っていた。彼は我儘だし他人の事を振り回しがちで、それは彼が"一方的に"友人だと思っている康一ですら同じだからである。恐らく彼はそう思っていないのかもしれないが、時たまに来宮美晴に対しても過保護で振り回し気味である。

「いやぁ……偶然とは素晴らしい。まさか僕のお気に入りの君達が一堂に会するなんて。ああ素晴らしい。スケッチさせてほしい」

このように。露伴は感極まるように康一、美晴と強引に肩を組んでこの上なく幸せそうに目を伏せる。構想中の作品の主人公とヒロインのモデルがそこにいるのだ。彼にとってはそうだろう。しかし当人達は溜まったもんじゃあない。

「ろ、露伴先生!離してくださいよッ、ぼくはこれから塾に行かなきゃあならないんですよッ!?」

「そうじゃなくても人の往来があるんですからやめてくださいッ!」

パタパタと暴れる2人の様子を見て露伴は渋々と名残惜しそうに2人を解放したが、彼らが息を切らしている間に手早くパパッと持っていたスケッチブックに鉛筆を走らす。

 

「康一くん。ちょっとだけ訊きたい事があるんだけど、いいかしら?」

一旦落ち着いてからそう切り出し、美晴が先程露伴が指摘していた地図の誤表記を康一に説明すると彼も「あれ!」と不思議そうに声を上げた。

「確かにこれはなんだか変だよ…!というかぼくだってオーソンで立ち読みとかするのに、こんな道があるなんて気付かなかった…!」

「やっぱり康一くんもそうなんだ……」

先程美晴が感じた気味の悪さは彼にも伝染するように伝わっていく。見れば見るほどこの小道、とても不気味だ。

 

「ところで美晴さん。地図のミスを報告すると図書券が貰えるって知ってた?」

「えっ、そうなの?いくら分貰えるのかしら」

「おいおい。そんなの都市伝説みたいなもんなんだから鵜呑みにするなよ。それともなにか?君は僕からの給金じゃあ満足出来ないってのかい?」

 

閑話休題。

車が来てないのを確認し、3人で車道を渡ると小道の前で止まる。まるでこちらを誘うような、手招きでもしているかのような雰囲気に思わず康一は固唾を呑んだが、露伴が一歩踏み出すのを見てそちらに弾かれるように視線を向けた。

「"好奇心は猫をも殺す"とはよく言うが……なぁ、この小道、ちょいと行ってみないか?」

露伴は美晴と康一を見て首を傾けながら先を指差す。しかし康一は腕時計を確認すると申し訳なさそうに苦笑いを零した。

「すみませんけどぼく、塾に行く時間なんで……」

ソロソロと2人から遠ざかろうとすると、すかさず美晴がニッと目を細めた。

「ひょっとして康一くん、怖いのかしら?そういえば億泰くんの家の時も怖がってたわね?」

仗助と康一と美晴の3人でこの辺りを散策して見つけた虹村家。その家の前でペニーワイズに関する話を仗助に振った時の事を思い返し、美晴はニヤける口元を隠すようにそこを手で押さえる。

「ち、違うよッ!怖がってたのは仗助くんだけだろ!?」

「へぇ〜、どんな話してやったんだよ美晴?実に興味深いぞ」

わたわたと強がりながら否定する康一の事を、露伴まで一緒になってニマニマ2人で笑っている。

(どうしてこんな時ばっかりあの2人、気が合うんだ!?仗助くんも零していたけど、美晴さんが時々意地が悪いのは絶対に露伴先生の影響を受けている!)

康一は改めてこの手の話にこの2人組は危険だと悟ったが、しかしここまでバカにされて逃げ出すなんて康一とて出来るわけがない。

「わ、分かったよッ!でも塾があるっていうのは本当だから…!ご、5分だけですよ…!」

だから、つい言ってしまった。言った後でやっぱり「しまった……」と後悔した。

そんなぐったりとした康一を尻目に、露伴と美晴はピシッガシッグッグッと謎に息の合ったタッチを交わしている。もう好きにしてくれ……康一はそう溜息を吐く他なかった。

 

小道を入っていくとまず見えたのはポストだった。ポストのそばには誰かが踏んだ犬の糞が落ちていて、康一は「うえ〜」と顔を顰める。

そのポストの左右にも道は広がり、普通の住宅街と同じく家が4、5軒ほど立ち並んでいた。しかし——、

「おかしいですね……この地図、この辺の家も載ってませんよ。図書券何枚分になるんですかね」

「また図書券の話かよ。しかし確かに……こりゃあミスってレベルじゃあないぜ」

"米森"、"小野寺"、"本間"、"沼倉"。ザッと見た表札のどれもが地形すら地図に載っていない。美晴と露伴が地図とこの場所を照らし合わせて唸っている横で、康一は一軒の家の敷地を覗き込む。

「というより……この辺り一帯、誰も住んでいる風じゃあないや。ほら、犬小屋だって何も入ってない」

彼の指差す家の軒先にある犬小屋を見ると、首輪だけがそこに繋がれていて肝心の犬はいないようだった。

辺りはシンとしていて、先程から3人で話している声が響くように感じる。風も吹いておらず、いつの間にかこの場だけ時が止まったかのように錯覚する程静まり返っていた。

「自動販売機の電気も切れている……なんだここは。管理はどうなっている?」

歩き回って見つけた自販機。試しに硬貨を入れてみるとカランと虚しい音を立てて返却口に戻ってきてしまった。その自販機を通り過ぎた曲がり角も地図には載っておらず、随分といい加減な地図だと思いながらそこを曲がる。

 

——刹那、その曲がり角を曲がった3人の前に広がる光景に、心臓が一様にドクリと跳ね上がった。

 

「……!このポスト!さっき見たポストだ!この踏まれた犬の糞、はっきり覚えてるッ!」

康一が指差す先にあったのは、この小道に入ってすぐの角を曲がった、最初に見たポスト。犬の糞、それを踏んだ足跡までがつい先程見た物と同じだ。

「ど……どうなっているんだ?僕らはまた……"さっき来た場所に戻ってきている"ッ!?」

「お、おかしいよ、そんなの……私達、さっきここを通り越したばかりじゃあないの。"真逆の方向に向かって"どうしてここに"戻ってくる"の…?」

動揺を露にする露伴の横で平静を装いながら美晴は役に立たない町内マップに視線を落とす。しかし何回見たってこの道、この場所はどこにも載っておらず、マップが手汗で湿り気を帯びるばかりだった。

 

何かおかしい。

それはこの小道を見つけた時からそうだ。

 

「……そうだ。落ち着け。次はちゃんと曲がった方向を確認してから曲がろう。僕ら3人もいるんだ、間違いようがない」

露伴は美晴からマップを取り上げてポケットにしまい、改めてポストから向こうの道を指差す。そうしてまた歩き始めた。

「米森さんに小野寺さんに本間さん……沼倉さん」

3人で指を差しながら右に曲がる。

「犬小屋の家……」

次にここを左に曲がる。

「切れた自販機……」

そして最後に右。そう、先程辿った道筋はこうだ。

……右。

「う……ッ!」

曲がり角から恐る恐る顔を出すとやはりと言うべきか、そこにあったのは犬の糞のポスト。

どう考えてもおかしい。右、左、右と曲がったのなら絶対にここへは戻ってこないはずなのに、また"ここに戻ってきてしまった"。

不可解な出来事に圧倒されて無言のまま立ち尽くしていると康一が一歩ずつ後退りし始める。

「あ、あの、美晴さん、露伴先生……なんだかぼく、気味が悪くて……も、もう時間もないし、これで引き返させてもらいますね……」

そう言い残して彼は踵を返すと勢いよく走り去ってしまった。

「露伴先生……これ、どう考えてもまずいですよ……いいですか、こういった"オカルト話"には定説というものがあってですね……」

美晴が康一が走っていってしまった曲がり角を振り返るのに釣られて露伴もそこを振り返る。彼の足音が響くように聴覚に伝わり、それは遠くまで行って聞こえなくなるかと思いきや、錯覚なのかまた近付いてくるようにも思えた。

 

「絶対にまた戻ってくるんですよ、ここに」

 

冷や汗が背を伝う。

「あ、…あっ、あ…っ!」

その背に掛けられた震えた声は聞き覚えがあり、振り返るとそこにいたのは——、

「あっ、あぁっ、あっ…!」

「こ、康一くん…ッ!」

恐れ慄くように目を見開いた広瀬康一。

「……ど、どうして美晴さんと露伴先生がそこにいるんだよーーッ!!」

「そ、それはよっぽどこちらのセリフだッ!なぜ康一くんが僕らの背後から現れるんだよッ!?」

彼は引き返したのだからさっきとは逆の方向に角を曲がったはずだ。だったらやはり"ここには戻ってこない"はずなのだ。

なのに背後から現れたという事は彼もまた犬の糞のポストに戻ってきて、こちらを覗いた事になる。

「あ、あの……ひとつの可能性なんですけど、これ……"スタンド攻撃"という可能性はありませんか?そうなら全部納得出来るはずです!」

こんな芸当が出来るのは"スタンド使い"しかいない。空間を丸ごと作っているのだから物凄く強い精神力の持ち主と窺えるが、可能性としてはあり得る。美晴が2人に問い掛けると彼らもハッと息を呑んだ。

「そうだな……スタンド使いの仕業ならば納得がいく。このままじゃあ気持ち悪い。今はそう仮定して考えるぞ」

半ば強引に結びつけ、露伴は何処かにいると思われるスタンドの本体を周囲を見回して探す。もしかしたら家の敷地の中かも……そんな事を思いながら手近にあった門に手を掛けるが、閂がしっかり掛かっていて開きそうにない。

しかしハッと思い至ると彼はまだ腰を抜かしている康一に視線を転じた。

「そうだ!康一くんのエコーズなら、空から道を辿れるじゃあないか!この場所がどうなっているのか見てきてくれよ!」

その声に康一も「あっ!」と声を上げて腰を上げる。

「その手がありましたね!よしッ、"エコーズ ACT-1"!」

己のスタンドなら突破口が見えるかもしれない。康一はその一心でエコーズを出し、上空へヒュンッと飛ばす。

しかし——、

「うわぁぁぁッ!?」

突如康一が叫び声を上げ、エコーズもビクッと驚いたように体を跳ねさせて彼の方へ帰ってきてしまった。

「ど、どうしたの!?」

「い、今……!」

その異常な反応に美晴も思わず肩を跳ねさせてから彼に問い掛ける。

「今……何かに触られた!空中で何かに触られたんだッ!」

「触られただって!?」

3人でキョロキョロと辺りを見回す。だが当然のように誰も、何もいない。先程だってエコーズが飛んでいくのに釣られるように空を見上げていたが、何かいるような気配なんてなかった。

「……康一くん。もう一度エコーズを飛ばしてみてくれないか」

「も、もう一度!?もう嫌ですよ露伴先生ッ!」

露伴はエコーズに触れた者の正体を探ろうと指示を出すが、康一は余程怖かったのか首を横に振って拒否する。

「美晴のガーディアンに守ってもらえば何も起こらないかもしれない」

次いで彼は美晴にも視線を向けるが、彼女もまた首を横に振っていた。

「いえ……"触られた"だけであれば、攻撃とは判定されない可能性があります。仮に触ってきたのが"見えない壁"か何かだとしても……私のは"身を守る"だけで壁を貫通出来るものじゃあないですよ」

殴られたのならともかく、康一の表現からして彼のエコーズに触れたのは攻撃の類とは考えにくい。

道を確認出来るかもしれない方法をあっけなく潰されてしまい、また3人は不気味な雰囲気に取り囲まれながらも突破口を探り唸る状況に戻ってしまった。

 

「ねえ、あなた達」

そこに、3人のどれとも違う少女の声が静まり返った空間に響き、彼らはそちらに弾かれたように顔ごと視線を向ける。

「道に迷ったの?」

そこにいたのは前髪をカチューシャでオールバックにしたボブヘアーにワンピース姿の淡い雰囲気を持つ少女。彼女は真っ直ぐに彼らを見つめ、優しい声音で話しかけていたが、唐突に現れたその姿に3人は身を寄せ合って彼女の方に視線を釘付けにしていた。

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