【緊急】魔法少女になったら路頭に迷った【ぼすけて】   作:名無しの魔法少女

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ちょっと時間空いたけど1話くらいひっそり更新してもばれへんやろ……

なんかちょいちょい思い出したように感想が頂けるのでいろいろ振り絞りました。
久しぶりすぎていろいろ忘れているので矛盾点あったらバシバシ指摘してください。
指摘してくれるような読者がいるかはさておき。

ちなみにこの話には関係ありませんが、私は素朴な女の子がさいごにしあわせになる話が好きです(にっこり)
この話にはまったく関係ありません。


壊され、取り戻し、また崩れる

 最近、わたしの住んでいる街の近くで“怪獣”の被害が増えているらしい、っていうのはニュースで知っていた。

 でもそれはテレビの向こう側で起きている事で、あんまり実感はしていなかった。

 それが実感へと変わり、わたしの世界がひっくり返ることになったあの夜のことを、忘れられないあの夜のその時を、わたしはあまり覚えていない。

 それに、わたしを助けてくれたはずの女の子に、わたしはまだお礼も言えていない。

 

 

 

 

 

 友達と遊び終わって帰ってきたら、手を洗っておやつを食べて、うんうんと悩みながら学校の宿題をおわらせて、お母さんの作る晩ご飯を食べて、お風呂上りのジュースを飲みながら録画のアニメを見る、そんないつも通りの夜だったのに。

 窓の外が急に明るくなって、何かなって思って窓を開けてベランダに出た私の目に飛び込んできたのは、すぐ近くなのかすごく遠くなのかもわからないような、ぐちゃぐちゃに狂った落書きのような、化け物だった。

 わたしの家は、住宅街の中にぽつんと立つ3階建てのアパートの3階で、他の家の屋根より上にあってとても見晴らしがよかったから、街を眺めてあそこは○○ちゃんの家、あそこにいつも行くスーパーがあって、あっちはよく遊ぶ公園が、って街を見渡すのが好きだった。

 だから、その化け物、“怪獣”がどこで暴れているのかはすぐわかった。

 あそこは、わたしたちの通う中学校があるところで、たった今怪獣の手のようなものが振り下ろされて粉々にされた場所の近くには、友達の家があったはずだった。

 不格好に立ち上がった怪獣の手が退いた場所には、何もなかった。友達が、死んだかもしれない。

 暗くて、遠くて、見間違いだと思いたかったけど、暗くて遠くても見間違いではなく現実だと、どこか冷えた私の中の何かが、そう言ってくる。

 現実感がなかった。

 

「ぁ……ぇ……」

 

 わたしの口から、声とも息ともつかない音が漏れる。

 わたしの声なんて届いているはずないのに、わたしの声を聞きつけたように怪獣がこちらを向いた、そんな気がした。

 大きく裂けていく、顔のような部分。

 吐き出された光がアパートに直撃して、大きく揺れた。

 なにか叫んでいるお母さんに引っ張られて、アパートの廊下を走る。

 他の部屋の人たちも一緒に慌てて逃げ出す。

 

 なにかに躓いて体が倒れていく、しっかり握られていたはずのお母さんの手が離れ、地面にしたたかに打ち付けられる。

 2回目の光と轟音と共に、アパートが本格的に崩れ始めた。

 ひっくり返った視界の端、崩れて行くアパートの隙間から怪獣の顔に光が集まっているのが見えた。

 まっすぐにこっちを見ていた。

 

 光が、溢れた。

 

 

 

 

 全身を襲う鈍痛、耳鳴りの向こうで誰かが叫んでいる、ぼやけた視界に怪獣の姿が映る。

 大きくてごつごつした、けれどやさしい手が離れていく。

 

 綺麗な黒髪の女の子が居た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に目覚めた時、わたしは病院のベッドの上で、あれから丸三日眠っていたらしかった。

 病室に入ってきた怪我だらけのお母さんは、びっくりした顔をした後、すごい勢いで抱き着いてきて変な声が出た。そのまま泣きながらよかった、よかったって抱きしめられて、なんでか私まで泣いちゃった。

 

 あの後、怪獣は駆け付けた魔法少女に倒されて、私たちは駆け付けた救急隊に連れられて病院に運ばれたらしい。

 おかあさんは、(わたし)を助けてくれた娘が居ないって不思議そうにしていた。

 やっぱりあの時見た黒髪の女の子は見間違いじゃなかったらしい。

 

 不思議なことに吹き飛ばされて転がった時にできた打撲や擦り傷以外に大きな怪我はなくて、頭を強く打ったから念のための検査だけして数日後には退院することになった。

 それでもカウンセリングとかで、しばらくは通うことになるらしい。

 病院でのたくさんの検査は大変だったけど、退院した後の方がもっと大変だった。大変すぎて、あの女の子のことが頭からすっぽ抜けるくらいには大変だった。

 家がなくなっちゃったから仮設住宅に引っ越して、長くて覚えられなかったなんとか給付金っていうのを受け取ってしばらく生活することになるらしい。

 とっても大変だけど凛が居れば幸せだから平気ねってお母さんは笑ってた。わたしも、お母さんが居れば幸せだと思った。

 引っ越し、と言っても家ごと全部瓦礫になっちゃったから、通帳とか財布とか最低限の着替えだけで一瞬で終わっちゃったけど、引っ越しを終えた翌日には学校に復帰した。

 

 午前中は病院に行っていたから午後からの出席で、昼下がりに一人で歩く校内はちょっと特別な気がした。

 校庭はひどくでこぼこで、外周のフェンスとその向こうはぐちゃぐちゃになっていたけれど、校舎は無事だったらしい。

 友達がどうなったかは、結局怖くて聞けていなかった。

 

 ばくばくと煩い心臓を押さえつけて、教室のドアをくぐる。

 恐る恐る視線を回す。

 びっくりしたような顔、ほっと安心したような顔、泣きそうな顔、いろんな顔に出迎えられて、すこし後ずさった。

 でも、全員、誰一人かけることなく、居る。いつも通りの教室だった。

 

 安心して涙が出てきたけど袖で拭って、鼻水が出そうだったのでぐすっと大きく吸って、笑顔で挨拶した。

 次の瞬間教室は大混乱で、わたしはもみくちゃにされ、午後1回目の授業は半分くらい潰れて先生は苦笑いしていた。

 

 後から聞いたところ、どうやら怪獣被害で意識不明の重体(と言っても怪我自体は軽傷だったのだけど)になっていたのはわたしだけらしかった。

 学校のすぐ傍に家があるアイナちゃんやマイカちゃん、ミコちゃんは、私と同じく家こそ瓦礫の山になってしまったが、怪獣が出てきた時には奇跡的に家族そろって外食に行っていて本人たちは無傷だったらしい。

 どうしても完全に元通りとはいかないけれど、日常が帰って来てとてもうれしかった、その日の放課後。

 

「キミには魔法少女の才能があるニャワン!魔法少女になって、いっしょに街を守って欲しいニャワン!」

 

 唐突に現れたイヌかネコか定かではない謎のナマモノがそう言って、大きな透明な宝石を差しだしてきた。

 わたしの日常がまた崩壊していく音が聞こえてきた気がして、わたしは空を仰いだ。

 夕日が眩しくて涙が出た。




登場シーン1行だけの主人公が居るらしい。
次話更新は依然未定。
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