味音ショユの短編集   作:味音ショユ

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神様転生杯参加作品


神様転生なんて、ロクでもないのばっかり!!(オリ主 多重クロスオーバー)

 眼前に広がるのは一面の白。前を見ても後ろを見ても、上下左右すべてを見てもただ白一色。空も地面も全てが白な所為で空と地平線の区別すらつかない異空間に、今俺は立っている。

 ここはどこなんだ?

 どうして俺はこんな所にいるんだ?

 いや、それ以前に――

 

「俺は、誰だ?」

 

 自分の名前が思い出せない。

 家族の名前も、いや家族がいるかどうかさえ思い出せない。

 友達の顔も、今まで過ごしてきた思い出も、何一つ頭に思い浮かばない。

 覚えていることは、今まで読んできた漫画に小説、見てきたアニメや映画にやってきたゲームのことくらいだ。

 漫画なら金田一、小説ならこのすば、アニメならまどマギ、映画ならターミネーター。それくらいだ。

 とにもかくにも、そんな娯楽作品しか記憶が残っていないことに、俺は恐怖で体を震わせる。

 

「一体俺の身に何が起こったんだ!?」

「その問いにはわしが答えよう」

 

 俺の叫びに呼応するかのように、さっき見た時には誰もいなかった筈の後ろから声がかかる。

 慌てて振り返ると、そこには白い髭をたくわえ、髪を剃った老人が立っていた。

 着用しているゆったりした白一色の服装に、この場所も相まって俺はどこか非現実的な雰囲気を感じ取った。

 だがそんなことはどうでもいい。

 

「お前、何を知っている!?」

 

 現状について知ってそうな相手を見つけ、俺は思わず老人に掴みかかる。

 しかし、目の前の老人は俺の慌てっぷりなど余裕綽々に流し、掴みかかった手を容易く外し、指を眼前に突き付けて冷たく言う。

 

「こりゃ、落ち着かんか」

「す、すみません」

 

 老人の言葉に、俺は初対面の人に向かって掴みかかり怒鳴り散らすという行いも相まって、素直に頭を下げた。

 この対応に満足したのか老人はうむ、と上機嫌な笑みを浮かべ俺に話す。

 

「お前さんは死んでしまったんじゃ」

「はぁ……?」

 

 老人の言葉は衝撃的だったが、死んだと言われても実感が無さすぎて言葉に重みを持てない。結果、俺は生返事をするしかない。

 そんな俺の反応を見ても老人は気分を害した様子も見せず、話を続ける。

 

「おぬしが自分の死を覚えていないのも無理はない。おぬしは降臨したニャルラトホテプを直視して、正気度を全て喪失したからの」

「どういうことですか!?」

 

 俺の生前、クトゥルフの探索者だったの!?

 だが老人は衝撃が収まらない俺に、さらなる連撃を加えてくる。

 

「じゃがお主の最期は物凄かったぞ。正気度を全て失った状態でも、邪教団が放った銃弾から仲間を庇って戦死したからの」

「俺の死因ドラマチックすぎません!?」

「あれこそ大和男子。真の益荒男じゃと感心したぞ」

 

 うんうんと感心している老人に、俺はふと気づいたことを尋ねた。

 

「ん? じゃあ俺の記憶がないのは――」

「うむ。わしの仕業じゃな。過去を思い出せばニャルラトホテプのことも連鎖して記憶に戻り、おぬしは再び発狂するぞ」

「怖っ!!」

 

 というか俺の記憶が爆弾過ぎる!! と頭を悩ませている俺に対し、老人は話しかけてくる。

 

「さて、状況は理解したじゃろう」

「半信半疑なんですけど?」

「わしを信じるのではない。おぬしの心が信じるおぬしを信じろ!!」

「信じる根拠が全部ニャルラトホテプに塗りつぶされてるんですけど!?」

 

 いきなりグレンラガンみたいなテンションで言われても困るわ。

 ……が、まあ……この気付けば記憶を失い、一面白の空間にいるという異常事態。信じるしかないのだろう。

 受け入れられるかな……俺。

 

「それで、わしがこうしてぬしの記憶を封じてまでここに呼び出したわけじゃが」

「はい」

 

 そうだよ。そういえば理由を聞いてなかったよ。

 

「おぬし、神様転生やってみんか?」

「転生、ですか?」

 

 昨今よく聞く死んだら神様に出会って、チート貰って違う世界に行き、無双してハーレム作るあれか。

 

「そう、それじゃ」

「ということは、あなたは神様ですか?」

「イエース。じゃが敬語を使う必要はないぞ」

 

 目の前の老人が神様を自称する。そんな事態にすら動揺できない俺に、神はさらなる試練を与えてきた。

 

「おぬしは強い男じゃからの。それにわし、実年齢十歳じゃから」

「十歳!?」

 

 そんな白い髭たくわえておいて!?

 

「わし、早熟じゃから」

「そういう問題!?」

 

 神様の息もつかせぬ衝撃発言に、俺はゼエゼエと息を切らせながらツッコミ続ける。

 ――もう頭追いつかない。ここからは常識で考えるのはやめよう!

 

「で、どうじゃ? 転生せぬか?」

「じゃあ、やろうかな……」

 

 別世界への転生。そんな非現実的な提案を俺は割とあっさり受け入れた。

 もし、親や友達の記憶があるなら嘆き悲しんだかもしれないが、それが無い以上気にもできない。そして取り戻せば発狂というなら、過去には目もくれず未来だけを見続けることを正しいと信じよう。

 実際周りがどう思うかは別として!

 一方、神様は俺の返答に気をよくして、テンションを挙げて言い放った。

 

「よし、ならばこれを見よ!!」

 

 神様は手を大業に振るい指し示した先にあったのは、三つのモンスターボールが横に並んでいる台座だった。

 

「ってなんでモンスターボール!?」

「ボールの中には三つの属性の能力が入っておる。これで無双もハーレムも好き放題じゃ!」

「ディティールをポケモンにする意味は?」

「無い!!」

 

 神様のあまりに力強い断言に、俺は何の反論もできなかった。

 そしてこのまま黙っていても仕方ないので、俺は一番左をモンスターボールを選んでみる。

 

「うむ。これは火属性の異能。スタンド、マジシャンズレッドじゃ!!」

「おお!!」

 

 最初に飛び出して来たのは、なんとも分かりやすい異能だった。しかも強力だ。これでテンションの上がらない奴はいないだろう。かくいう俺のテンションも上がっていた。

 

「ただし、スタンド使いにふさわしい精神を持たぬと生後五十日で死ぬがの」

「初っ端からハードル高いな!?」

 

 そして神様の忠言で俺のテンションは一気に下降した。

 

「大丈夫じゃ。自分を信じよ」

「だから信じる根拠は全部ニャルラトホテプに塗りつぶされてるってば」

 

 とにかくなし、これはなし! と俺はマジシャンズレッドを突っぱねて、次は真ん中のモンスターボールを選ぶ。

 

「うむ。今度は水の属性、モビルスーツのゴッグじゃ!!」

「水かそれ!?」

 

 確かに水中専用のモビルスーツだったけど、水属性では無くない!?

 そんな俺の思いが通じたのか、神様は腕を組みながら力強く頷いて同意した。

 

「やはりそう思うか。わしもじゃ」

「じゃあ何でこれ選んだ!?」

「実はの、属性はわしが決めたがそれ以外はランダムじゃ」

「ランダム!?」

 

 お前ら転生をどう扱ってんの!? と聞くと神様は神妙な顔をして発言する。

 

「いや、今までの転生界隈は希望特典があまりに偏るから、因果律的にアレじゃない? って話になったと母上が言っておったのじゃが……」

「何でそんな曖昧なんだよ」

 

 神様の発言に思わず呆れる俺。だが次の瞬間、恐ろしい可能性に気付く。

 

「……なあ、転生先もランダムか?」

「不安に思う必要などない。おぬしの記憶にある作品のうちどれかの、主人公に転生させてやるからの」

「別に安心材料でも、何でもない……っ!!」

 

 ベルセルクみたいに、原作知識があっても嫌な世界とかいくらでもあるぞ!?

 ……でも転生やめたくねえ。二次元の世界に興味あるし、チーレムに憧れる馬鹿な男だから……!!

 それに当たりの優しい世界に行ける可能性だって、十分にあるし!!

 当たりがある以上、チャンスから逃げたくないんだよ! 完全にギャンブルしちゃいけない人間の思考だなオイ!!

 

「フッ、流石わしが見込んだ男じゃ」

「褒めてないだろ」

 

 それはそれとして、神様のこの一言にはちょっとムカついた。

 が、それはそれとして俺はゴッグについて気になることが見つかったので質問をする。

 

「まあいいや。そんなことより、俺モビルスーツの操縦とかできないぞ。というかできる奴いないだろ現代日本に」

「心配無用じゃ。おぬしはゴッグに乗るのではない、ゴッグになるのじゃ。SDガンダム方式でな」

「……それ人間からモビルスーツが産まれる衝撃映像が誕生しないか?」

「うむ、そうじゃな。ちなみに母体には何の影響もないから安心せい」

「さすがゴッグだ、なんともないぜ!」

 

 じゃねーよ!! 馬鹿じゃないの!? どう考えてもSAN値チェック案件だろうが!! ガンビーノじゃなくても忌み子扱いするわそんな奴!!

 

「とにかくこれもない! ゴッグもなしで!!」

「なぜ人は異形というだけで命の一つも愛せぬのか……」

「急に神らしい傲岸な視点に!?」

 

 神様界隈では全然違う生物が産まれるのは普通なのか……?

 俺は人と神の価値観の隔絶を感じながら、最後のモンスターボールを選んだ。

 

「うむ。最後は闇の属性」

「闇!?」

 

 火、水と来たら最後は草じゃないのか!? ポケモン的に考えて。

 

「伝説の決闘者(デュエリスト)、武藤遊戯のデッキじゃ! しかも決闘盤(デュエルディスク)にカードを乗せればモンスターを実体化させ、リアルファイトも思うがままじゃぞ!」

「……リアルファイトがメインにならない?」

「あれじゃ。召喚術師(サモナー)とかそんな感じで」

決闘者(デュエリスト)名乗らせてくれよ」

 

 まあ、名乗ろうと思えば名乗れるかもしれない。

 カードに封印された魔物を扱う能力、といえば聞こえはいい。

 というか、これ以外選択肢に安パイが無い。

 

「じゃあ、俺は転生特典に武藤遊戯のデッキと決闘盤(デュエルディスク)を貰おうか」

「そうか。ちなみに表遊戯のデッキと闇遊戯のデッキ、どちらか選べるがどうする?」

「表遊戯デッキで」

 

 闇遊戯デッキってあれだろ? 三幻神にブラックマジシャンにガール、更にバスターブレイダーまで入った超重量デッキなんだろ?

 そんなの引きたいカードを引ける戦いの神にでもならなきゃ扱えないし。

 と考えていると、腕にデッキがセットされた決闘盤(デュエルディスク)がいつの間にか、俺の腕に装着されている。

 

「これでおぬしの来世は決まった。さあここからはわしの管轄外じゃ。思うが儘に生き、世界を興すも滅ぼすも好きにせよ!」

「おうよ」

 

 神様の別れの挨拶に、俺は軽く答える。

 まあ、滅ぼすなんて真似をしようとは今の所思えないけど。

 

「では、目を閉じよ。それで来世の始まりじゃ」

 

 その言葉に従い目を閉じたと同時に、俺の意識は暗転した。

 

 


 

 

 こうして俺は転生した。性別は男のまま変わらなかった。

 気づけば赤ん坊として生まれ、今は母親の腕に抱かれている。

 ……胎内にいた記憶が全くないから、胎教に意味があるというのはデタラメかもしれないな。

 

「ハジメ。お腹一杯でちゅか~」

 

 下手な赤ちゃん言葉で、母が俺におっぱいを飲ませている。いや、飲んでいるのは俺の意志だから飲ませている、というのは正しくないかもしれない。

 正直、ひたすら新手の羞恥プレイにしか思えない。早く離乳食に移行したい……。

 ちなみに、ハジメというのは俺の名前だ。

 周りを見ると、どうやらここは病院らしい。看護師や医者があたりを歩き回り、看板を見ると日本語の文字が書いていて、飛び交う言語も日本語だ。どうやら俺はまたしても日本人に生まれたみたいだ。

 正直ファンタジー世界とか、物凄い興味あったのに……!!

 

「金田一さん、少しいいですか?」

 

 俺が現世についてちょっとした不満を溜めこんでいると、いつの間にか母が看護師に呼ばれ、俺を抱えて歩く。

 ……成程、どうやら母の名字は金田一というらしい。

 となると、当然俺の名字も金田一だ。

 つまり俺の名前は金田一ハジメになるな。

 

「……っ!?」

 

 俺、金田一一?

 名探偵金田一耕介の孫で、『金田一少年の事件簿』の主人公のあの金田一一?

 それって、つまり――

 

「お、おぎゃあああああああ!!」

 

 いやああああああああああああ、これから沢山の殺人事件に巻き込まれる――――――――!!

 しかも貰った特典金田一少年の事件簿(このせかい)だと使い辛え!! 選んだの誰だよ!? 俺だよ畜生が!!

 

「おぎゃあああああああああああああ!!!」

「ど、どうしたの!?」

 

 俺の嘆きは呂律の回らない泣き声として辺りに響き渡るが、赤ん坊という立場が阻み、周りからはただの生理現象として扱われる。

 そんな俺を母が宥めようと必死にあやすのを見て正気を取り戻し、未来に目を向けようと決意するのは、これから五分後の話だ。

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