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「それじゃあ博麗神社でいいんだよな?」
「その前に魔法の森へ行ってもいいでしょうか?」
「構わないけど、何する気?」
「お地蔵さんを見掛けたので折角だしお供えしてこうと」
「別に構わないけど……今更感無くない?」
「それはそうですが……供え物買いましたし……」
「本当にお前さあ……ピクニックじゃないんだからしっかりしなよ?」
「……そうですね、気を張らないと」
「それじゃあ行くよ」
「いいんですか?」
「いいって言ったじゃん。それに神頼みでもするだけマシだろうしさ」
そのまま森へと潜って行くが、予想以上にお地蔵さんが多かった。
流石に多めに買っておいたのもあったから足りたが……少しはご利益があればとでも思ってしまう。
「っとこれで全部だね」
「妹紅さん有難うございました」
「しかし……こうやってお供物をするのもいつぶりだろうか」
「うん?」
「神様じゃ無くて輝夜が悪いのは分かってるけどさ……それでも神様のこともその頃から信じられなくてさ」
「……事情も知らずに、俺は」
「いや、今言ったけど恨む事はないしな」
「それでも、思う所はって考えますと」
「と言うかだ、死んだら仏になるって話あるけど私は不死だから死ねないし、生涯神や仏に関わりなさそうなんだよね」
「確かに……それに加えて竹林で過ごしているわけですし関わり無さそうですね」
「まあそれでも、友人の助けになるって事なら祈って損ないだろうなって」
「いい心がけね」
「うん?成美さんですか」
「なんで意外そうな顔してるのよ」
「いや、森に住んでいるのは分かってましたが……」
「言ったでしょうよ、私は地蔵だって」
「……全部見ていたって事ですか?」
「何を言ったのかまでは分からないけどね。お供えしていたのは見たわ」
「成る程……」
少しでもマシになれば良いな程度に思っていたが、こうなるなら、恥ずかしいような有難いような……
「それで、ここまでするって事は何か願いに来たの?」
「安全祈願と言うか……そう言った感じです」
「遠くでも行くの?」
「鬼に……会いに行くんです」
「は?」
当たり前と言えば当たり前だが……また驚かれている
確かに俺もアリスさんや霖之助さんとかが鬼に会いに行くって言えば驚くしな……妖怪の山の時だってそうだ。
もしかしたらあの時と同じ鬼だったりするのか?
「自殺願望は感心しないわよ」
「いや、自殺願望では無いです」
「だったらなんで……」
「……全部では無いですが自分は記憶喪失らしいんです」
「そうなの?」
「はい……それで、思い出せない記憶に無縁塚とその鬼が居たんです」
本当に合っているかは不安だが、鬼でサーチされたし合っているとは思う
「……だから会いに行くと」
「はい。危険だとは思っていますし、だからこそこうやってお参りに来たわけですが」
「だからって、万能じゃ無いわよ」
「一応、お酒とかは用意したんですけどね」
「正直馬鹿な行動としか思わないけど」
「……まあ、それでもって事で」
今更言われてやめるなら、正直とっくにやめているしな……
「流石にこれだけ供えられたら何もせずに送り返すってのは主義に反するわね」
「それは有難いですが……何を?」
「私は生命を操作する魔法使いだからね。前に言った貴方の死にそうなその命操らせてもらうわ」
「どう言う事で……」
「本当は弄るのは良く無いんだけどね……でもこのまま連れて行ったとかだと死にそうだし……」
心臓を掴まれるような苦しみがある。
なんだよこれは……痛みで死にそうだ……
まるでそれを拒絶しているかのような……
「ちょっと……」
「どうしました……?」
痛みで胸を押さえながら返答する。
「おい、蓮司に何するつもりだよ」
「蓮司さんはせめて消えかかってるようなその命を増幅させようとしたのだけど……まさかの反発されたわ。貴方、本当に死んでるんじゃ無いの?」
「そんな筈は……」
死に戻りしているし、それはあり得ないだろうと……死人がもう一度死ねるわけ無いだろうし。
「一応、強めにやるわ。先程の感じから苦しいかもしれないけど……」
「ちょっそれは……」
制止の言葉も聞かずに身体がぐしゃぐしゃになるような感覚までする……
鋭い痛みに命を失うんじゃ無いかと思いかけたが……なんとか生きては……
…
「よう蓮司、酒をちゃんと持ってきてくれたか?」
ここは何処だ?いや無縁塚だ。
ただ無縁塚に今いた記憶はない筈だが。
「はい、萃香さん。ただ萃香さんのお酒の方が上質だと思いますが」
あれ?俺が喋ってる?……と言うよりも俺がいる?
と言うかだ……萃香さんって前にやっぱりアリスさんが言っていた人物のような?
「それじゃ、呑もうか。待ってたんだぞ」
「だから呑めませんって言ってるじゃないですか」
「酒は呑まないって本当に真面目だなあ……」
あれ?この言葉は確か前に何処かで聞いたような?
「年齢が……ってか萃香さんのそのお酒はそもそも人間じゃダメでしょう!!」
「まあこの酒は人間が呑めたものじゃないし仕方ないけど」
「分かってますよ、ああもういつも通りクラクラします……」
「酒の匂いだけで酔ったって?弱いな本当に」
「萃香さんが強いだけでしょう……」
そのまま普通の会話が続いて行く。
これが実際にあった事なのか?
「それで蓮司、〇が言ってたんだが本当なのか?」
あれ?今なんて言った?聞き取れなかった……
「本当ですよ。幻想郷で〇〇〇〇〇〇ます」
「あー、はいはい……いつもの酔った大法螺だろう?」
頭が痛い……何かが禁止されている。
禁止ってなんだ?何を禁止されているんだ?
「いや俺が【禁止されている】……だからこれだけは嘘じゃないんです」
「はっはっは、これだけは嘘じゃないって」
「そうしないと、俺が……」
だんだん言葉が遠くなって行く……
聞きたい筈の言葉が聞き取れない。
そうしないとなんなんだよ俺。
「鬼に誓ったその言葉、忘れるなよ?」
最後に何処かで聞いた筈のその言葉を聞いて目を覚ます。
「蓮司、大丈夫か?」
「妹紅さん……すみませんが気を失っていました」
「無事なら良いんだ」
「ごめんなさい、流石にここまで反発されると思わなかったわ。人間の筈なのに不安になるのだけど」
「俺は人間ですって……」
少なくとも妖怪でも幽霊でもない。その事に自信を持っている。
「大丈夫身体への負担とか、余計な事とか無いかしら?」
「身体の負担はともかく余計な事って……?」
「無理にでも生命力をこじ開けたみたいな形だから、リミッターみたいなものが解除されて無いかと」
「リミッター……」
もしかして禁止が何か分からないけど、そのリミッターが少しだけ剥がれて先程のような物を見たのか?
それならやはりあれは過去の……
「今日は霖之助に無理言って一日休むか。そこののせいで身体がキツそうだしよ。」
「いえ、妹紅さん。そのまま行きます」
「大丈夫なのかよ」
「ええ、むしろ今は生命力に溢れていますから」
「なら良いけど」
「それに萃香さんは気紛れですから、いつ居なくなるか分かりませんし」
「萃香って……」
「伊吹萃香、地上の鬼です」
「ちょっと待って!!流石にそれは危険じゃ無い!?」
流石に成美さんもその危険性は分かっていたか……
でも大丈夫な筈だ。
「あの人は忘れていませんよ」
「……前にマジで会ったのかもしれないが確証は?」
「鬼は嘘を吐きませんから……俺は忘れて嘘を吐きましたが」
今でも思い出せない。だからずっと彼女に嘘を吐き続けている事になる。
彼女が一番嫌う事だと言うのに。
「だったら……」
「全力で謝って、全力で思い出します」
閻魔様は思い出す事が罪だと言う。
またするかもしれないから。
記憶を消した人物は前の俺がしていた行為を嫌ったからだろう。
俺は記憶を無くす前に誰かと契約して幻想郷で何かをやらかしたんだ。
「思い出す事は罪でも、忘れている事は彼女を騙し続ける嘘を吐き続ける事になる。それだって罪だ」
それは良くない。これから何をするべきかもその記憶の中にあるかもしれないから。
記憶を思い出して、今度は同じ事をしないようにしないといけない……
「……こうなったら幻想郷に来たのも意味があってのことかもしれないな」
「何か言った?」
「いえ……」
最初は幻想郷に拐われたとでも思っていた。
だがこうなって来ると何かをしようとして自分から来たまであるかもしれないぞ……
当然その事全てを萃香さんが知っているとは思えないが少しずつ思い出していけば良い。
「まあ……まずは話す事だな」
鬼が嘘を吐くわけ無いから、忘れないと思い込んでいるが……アリスさん達の様に、特別な事情があって忘れているかもしれない。
逆に覚えていても今度は俺が明確な嘘吐きだし機嫌を損ねて会話すらして貰えないかもしれない。
根気良くやる事になるだろうなと思いつつ、博麗神社へと向けて歩き始めた。
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次回は101話では無く、あらすじに近い100話までの簡易的な流れとなります。