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最初の出会いから一週間くらいが経った。
今だに萃香さんから事情は聞けてないが、少しずつマシになっていっている。
「来たのね、萃香は相変わらずよ」
「いつも通りならまだマシですが」
「あらそう?事態が変わらずに嫌になってそうだけど」
「流石にいつもの感じなら話は聞いてくれるかな……とは思ってますし」
「知らないわよ?明らかにいつも不機嫌そうだし」
「来るなとは言われてないんで」
「強情ねえ……正直私なら償い切れたと考えるけど」
「いや、許されてませんし」
「一生かかっても知らないわよ」
「俺のために言ってくれているのは分かるんですが……それでもです」
「別にやりたいなら止めはしないわ。ただもう冬な事を理解しておいてね」
「了解です……」
11月ももう終わりを告げる、冬に入ったと言っていいだろう。
いい加減、神社への階段を登る最中に手も悴んでくる。
「分かってます……」
心配と神社を滅茶苦茶にされたくない心境が混ざっているせいか、本気で危惧されている。
意地の張り合い……とは違うが……
「最悪寒いなら私が火を出せば良いんじゃないの?」
「境内燃やそうものなら全力で退治される気がしますが……」
妹紅さんの言葉に霊夢さんがギラリと睨んでくる。
皆本気では無いんです……
「あっじゃあ行きます!!」
その場に居座るのも心境的に辛くなり、境内の方に居る萃香さんの方へと向かっていった。
「萃香さん来ましたよ」
「……酒は?」
「そう何度も持ってきたら破産しますって」
「なんだつまらない」
「お酒が好きなのは分かりますが勘弁してください」
「……またそれも嘘かもしれないけどな」
「嘘じゃ無いですって……」
少しずつ話してくれる様にはなったかも知れない。
ただし本題に入ろうとすると聞く耳を持たずだし……どうすればいいか。
「……」
酒に頼れば口を開いてくれるかもしれない。
ただ相当な量になる……それにそれじゃあ解決になったとは言い辛いし、なにより懐が消える。
「萃香さん……」
「……」
力尽くは違うと思う。しかし、もう少し強ければなと思う。
こう言う時こそ全部吐き出すために喧嘩が出来ればなのかもしれないと。
ただし……この普通の肉体じゃ一撃で死ぬのがオチだ。
「話す事はない」
「……どうしてもですか?」
「そもそも知る意味がない。今のお前には関係無いだろう?」
「いや、過去でも自分に変わりがないですから」
「……強情だな」
本当だったら妖怪の山で思い出せたかもしれない……でも思い出そうとして止められた。
永夜の中でも忘れた何かに触れられたかもしれない……ただ肉体が耐え切れなかった。
何度も逃している……
「第一お前は償いたいんじゃないのか?」
「勿論、忘れた事も……やらかした事もどうにかしたいと思っています」
「どうにかねえ……」
悩む様に萃香さんは頬杖をつく。
「自分がどう言う事したと思ってるんだ?」
「予想出来ませんね……」
悪事、と言ってもピンからキリまである。
流石に殺人などはして無いだろうけど、それでも多い。
「この幻想郷でやってはいけない事ってなんだと思う?」
「やってはいけない事ですか?」
いつもと違う切り口に驚く。
ただ……やってはいけない事だって?
「盗みや殺人……嘘を吐くとかですかね?」
「まあそうだな……盗んだりする魔法使いはいるがあれはダメだし、殺人もダメだからスペカルールがある」
「やっぱりそ……」
「だがそれは人間のルールだ」
「え?」
「それがダメなら妖怪は外の人間すら食べないしな」
「あれは妖怪達が好き勝手にやってるんじゃ?」
「いや、そもそもルールに定められていない。流石に里の人間を襲うのは禁止だけどな」
「里襲ったら大変ですしね……」
「そのように、人間には人間のルール。妖怪には妖怪のルールがある」
「一緒だとは思っていませんでしたが」
流石に妖怪にもルールがあるとは思わなかった。
「それで……そのルールがどうしました?」
「人間には人間のルール、妖怪には妖怪のルールがあるように……逆が許されるわけではない」
「逆が……許されるわけではない?」
「人間が妖怪のルールでやるわけにはいかないし、妖怪が人間のルールに従うわけがない……」
「そうだな」
「それじゃあ俺は妖怪のような事をやったとかですか……?」
誰かを殺した……?そんな事を俺がした可能性があるのか?
「どうだろうな」
「え?」
「そこまで言う気はないよ」
そう言いつつ話が途切れる。
急な話だったが、どう言う事なのだろうか?
「……」
忘れる、だけじゃなくて人間でしてはならない事をした?
大した事がないなら里で怒られるくらいだし……それなりのレベルの事を?
「分からないです……妖怪の真似事をしたのか……?」
「……さあどうか、正直今を捨ててまで思い出す事とは思えない」
何度目かの警告、今の方がいいのは完全に分かった。
「興が冷めた、帰ってくれ」
「……」
こうなってしまうと、萃香さんと今日これ以上話すのは無理だろうと諦めた。
ただ、帰り際に先程の気になった事を思い出す。
「……妖怪のルール」
これはあり得ない仮定だ、俺が殺人並みにする事とは思えない。
ただし……一人の言葉を思い出した。
『パチェが言うには……私は唆されたらしい』
「大丈夫……仮定だ」
「何がだ?」
「いえ……」
異変は妖怪が起こし、人間が解決する。
それが普通であって、逆ではならない。
ただ……俺はまず異変を起こす理由が無い。
「他にも色々……」
異変の脅威は身をもって知っている。それなのに他人を気にせず起こせるか。
わざわざ自分を危険に晒してまでする事とは思えない。
「だが万が一……」
それが本当だったらどうすればいいんだろうなと。
あくまで想像の域であってくれと願いながら……今日は神社から降りていった。
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to be continued