幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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百十三話 信用、そして……〜near spring.

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新年を迎えたが大して実感はない。

そもそも正月も変わらずだったし……

 

 

「なんだかんだこのまま暮らしていっても、問題なく感じてきたな」

 

 

最初こそ苦しんだものの、今じゃあ正直学校で勉強するよりはマシだったかもしれない。

嫌いではないが……何と言うか気怠かったし。

 

 

「……」

 

 

「あっこんにちわ」

 

 

「何も言わずに気付くの……?」

 

 

「大体いつもこの辺にいるなと思いましたので」

 

 

「そんなどうでもいい事覚えてるのね」

 

 

こっちにとっては半ば命がけでもあるんだけど。

 

 

「まあでも、今日はもう切り上げても良いわ」

 

 

「了解しましたが……理由はどうしてでしょうか?」

 

 

「宴会するわよ」

 

 

「え?」

 

 

「なんでそんな意外そうなのよ」

 

 

いや……そりゃ意外としか言いようがないし。

何より……

 

 

「正月はもう終わりましたけど?」

 

 

「なんで正月にやらなきゃならないのよ」

 

 

「それが正月かなと思ったのですが」

 

 

「それは人間の都合でしょうが」

 

 

「……そうですね」

 

 

確かに妖怪が人間の行事に乗っ取る必要なんて無いのか。

 

 

「正月は人間は働かないみたいだから、終わった後にやるのよ」

 

 

「なるほど……そう言われるとそうですね」

 

 

「だからあの河童も呼んできなさい」

 

 

「分かりました」

 

 

一度小屋へと戻り、にとりさんを呼ぶ。

部屋の中で怪しい物を作っていたようで、未然に防げて良かった……

 

 

「宴会ねぇ……」

 

 

「どうしました?」

 

 

「胡散臭い以外の言葉が無いんだけど」

 

 

「……そんなですか?」

 

 

「油断すると蓮司、頭から齧られるぞ!!」

 

 

「……」

 

 

ゆっくりと後ろを振り向く。

こう言うケースの時はいつも後ろに居たから……今回は居ないようで良かっ……

 

 

「流石に人間を食べる程、悪食じゃ無いわよ」

 

 

「……」

 

 

いるじゃん、にとりさんどうするのさ?

 

 

「そうかい?妖怪は人間を襲ってなんぼだと思ったが」

 

 

「なら貴方はどうなのよ」

 

 

「山の妖怪は人間を食糧とは見ないからねえ」

 

 

「そう……」

 

 

怒っては居ないのだろうか?

とりあえず何ともなくて良かったと安堵する。

 

 

「私は友だったり協力者って考えるけど……文は間違い無くカモと見ている気がするが」

 

 

「ネギ背負えば結局食糧なのでは?」

 

 

「食べないからねえ、食い物にはされるだろうけど」

 

 

「ははは……」

 

 

苦笑いをしつつ目的地まで着く。

しかし……呼んで来いと言った割には何故来たのだろうか?

 

 

「さて、飲むわよ」

 

 

「おっ樽にしたのかい?」

 

 

「当然でしょ」

 

 

俺は飲めないし……飲めたとしても樽なのか……?

ああ……早く飲みたいから結局彼女も追って来たのか。

 

 

「しかし……こう言う時に何と言えばいいか困るね」

 

 

「どう言う事です?」

 

 

「いや、私達は妖怪だからな。新年おめでとうは違うだろうし……」

 

 

「何でもいいじゃ無い」

 

 

「それもそうか、乾杯」

 

 

そして宴会が始まった。

この空気、本当に久々な気がするな……

そう思いつつ、こっそりと水を飲みながら宴会を進めていった。

 

 

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「なあ、もう空かい?」

 

 

「そうねえ……追加持ってくるわ」

 

 

嘘だろ……たった二人で樽を空にしたのか?

やっぱ妖怪なのもあるかもしれないが、幻想郷全体が酒に強い気がする。

 

 

「それはいいね、折角のこんな日だし楽しませてもらうよ」

 

 

にとりさんも既に遠慮が無くなって来ているなあ……まあそこをとやかく言うべきでも無いか。

 

 

「じゃあ持って……」

 

 

「幽香さーーーーーん!!」

 

 

「ん?」

 

 

遠くから声が聞こえる。

太陽の畑に誰か来るのは無謀じゃ無いのか?

 

 

「幽香さん、注文されていた品です」

 

 

「ああ、有難う」

 

 

「それでは失礼します!!」

 

 

慌てて駆けて行く。一体何だったんだ?

 

 

「なんだ?脅したのかい?」

 

 

「元から酒を人里で頼んでいたのよ。太陽の畑って言われて嫌な顔されたけど」

 

 

「あー、そうかー太陽の畑には怖い妖怪がいるもんなあ」

 

 

「にとりさん!?」

 

 

「いやあ、別に幽香の事言ったわけじゃ無いしー」

 

 

ダメだ……相当酔っている……止めないとまずいか?

 

 

「そうね、私とは限らないもの」

 

 

「ん?そう言えば幽香の名前聞いた事無かったけど」

 

 

「ん?私かしら?」

 

 

「そーそー」

 

 

「……風見幽香よ」

 

 

「なるほどなるほど、それで太陽の畑で怖いのは幽香と決まったわけじゃ無いしセーフって事でー」

 

 

一言一言に冷や汗が流れる。

 

 

「あっ私は河城にとりねー」

 

 

「覚えておくわ」

 

 

気付けば追加の酒も凄いスピードで消えていっている……萃香さん並では?と言いたくなる程だ。

 

 

「貴方は?」

 

 

「え?」

 

 

「貴方の名前はって聞いているのよ」

 

 

「小野寺蓮司です」

 

 

正直、こっちの名前を聞いてくるなんて思ってもいなかった。

どうでもいいと思われてるんだろうなと思ったし。

 

 

「蓮司ね……まっ覚えておくわ」

 

 

「有難うございます……かな?」

 

 

「蓮司は凄いんだぞー、私には届かないけどな」

 

 

「あら、にとりはそれ程なの?」

 

 

「当然だろう?私は天才だしさー」

 

 

「だったら今度はガラクタじゃなくて、にとり自身と戦おうかしら」

 

 

「勘弁してくれよー」

 

 

そのまま宴会は続いて行った。

ただ俺は……幽香さんと呼ばれた彼女が俺の名前を覚えようとした事に驚いた。

宴会が終わった後も、ずっと悩んでいた。

 

 

「……飲んでは無いんだけどなあ」

 

 

匂いで二日酔いしたのか痛い頭を押さえる。

にとりさんは昨日の飲みっぷり的に暫くは起きないだろうと、書き置きだけして外に出た。

 

 

「……」

 

 

驚いた事に幽香さんはもう外に出ているらしい。

二日酔いとかは無いのか?

 

 

「おはよう」

 

 

「おはようございます……あの、幽香さん」

 

 

「……ああそう言うことね」

 

 

何かを思い出したかのように振る舞う。

 

 

「昨日の記憶は正直無いわ」

 

 

「……無礼しましたかね」

 

 

「構わないわよ。今までの事から貴方は信用できそうだしね」

 

 

「そう言われるのは助かりますが」

 

 

「何より何かしようとすれば捻り潰せばいいし」

 

 

「……そうですね」

 

 

実際に出来る力があるからなあ……

 

 

「で、確か蓮司だっけ?」

 

 

「そうですね」

 

 

「正直漢字は面倒だから後で覚えるわ」

 

 

「あっはい」

 

 

やっぱり難しいのか……面倒な名前では無いが。

 

 

「昨日は酔っていたけど。元々そろそろ覚えようとしていたから……酔っていても殆ど変わっていなかったようねと」

 

 

それだと……前から覚えようとはしていてくれたのか?

 

 

「そうね……人間の里に行く事も許すわ」

 

 

「良いんですか?」

 

 

「そろそろ暖房等準備しないとまずいでしょう。私はしてあげる気ないし」

 

 

「もっと早くしたかったですね……」

 

 

「花同様、甘やかすのは良くないのよ」

 

 

今の人間は冬にそのまま居れるほど適応できていないと思う。

 

 

「まあいつ異変が起きるか分からないけど……安全だけは保証してあげる」

 

 

「それだけでも十分ですよ」

 

 

頼もしい事この上ないしなあ。

 

 

「だから、これからも仕事を頑張りなさい」

 

 

「了解しました幽香さん」

 

 

そのまま異変が起きずに冬の間体調に気を付けながら日常を繰り返していた。

安堵もあるがこれからどうなるのだろうとも思う。

暖房も買って来たし、火も気を付ければ使って良いと不満は既にほぼない。

だからこそ……これで良いのかとも思うが。

 

 

「平穏が一番だけどさ」

 

 

そう願いながら、また日が進み……

冬が過ぎ、春が始まった。

 

 

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to be continued

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