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「レイラ……ですか?」
「文でも知らない事ってあるんだな……」
「そりゃそうですよ、稗田の当主とは違いますもの」
「……レイラは私達の妹だよ」
「妹……?」
「文?」
「おかしいじゃ無いですか、プリズムリバー楽団は三姉妹で……」
レイラと言う少女は聞いた事がない。
裏方とかでさえ分かる筈だし……だからこそ異常だ。
「話してもいいかい?」
「……時間が無いので、簡潔にお願いします」
「申し訳ないが多分それだとこんがらがるよ」
「分かりました……」
「まず私達は騒霊だけど、私達は自然発生したわけじゃ無い……大昔にレイラが生み出したんだ」
「……それじゃあお母さんじゃ無いのかい?」
「ううん。私達とは別人だけど、レイラには姉がいてそれが私達だったの」
「……?」
相手の会話に困惑する。
別人なのか本人なのかなどと……
「レイラは小さい頃四姉妹だったけど……離散しちゃって寂しかったあの子が姉達を想起しながら生み出したの」
「イマジナリーフレンドみたいな感じですか?」
「合っているような合っていないような……まあそれで、私達が生まれてまた姉妹になった」
「……ただの人間ではそんな力は無いのでは?能力者ですか?」
「いや、それが一家崩壊した理由でもあるんだけど……とあるマジックアイテムが補助となって、成功したの」
「分かりました」
人間から魔法使いになった存在も居る。
だからあり得なくは無いか……
「それで……その妹が、この館でおかしくなったんですか?」
「それも違うね」
「ならなんですかって言いたくなるけど……」
「レイラは天寿を全うしたからね」
「だったら何故……?それならば、既にこの世に肉体はないのでしょう?」
「今年が何だか分かります?」
「ん……今年ですか?」
「……結界異変か」
「にとり、知っているんです?」
「聞いた事があったからなあ」
「そんな事があったのか」
「むしろ君達も知らなかったのかい!?」
「うん。幽霊は多いなって思ったけど、理由までは知らないよ」
「まあ……確かに幽霊が増えているって聞いていたな」
「それで天寿を全うしたレイラも、一度此方へと霊魂が戻って来たらしい」
「お盆……は時期違うんですけどねえ」
「お盆ってのは分からないけど……兎に角他の幽霊達に混ざって久しぶりに会えたと思ったんだけどね……」
「何が……?」
「何かが乗り移ったのかもしれない……私達の知るレイラじゃ無かった」
「何か……悪霊ですかね?」
「流石に断定は出来ないかな」
「それで……そのレイラさんは何処に?」
「消えた……正確には逃げられたかな」
「逃げられた……ですか?」
「最初は家の中で暴れていたんだけど……貴女達がここに来てからひっそりと消えたわ。何かを見つけたのかもしれないし……」
「それが蓮司さんですと?」
「可能性はあると思うわ」
「ああいや……でも……」
それが事実だと言うのならば正直言ってかなりまずい。
幽霊に気に入られる事がどれだけ恐ろしい事か……
「手伝うって話でしょ?損無いだろうし頼んだよ」
「……私としては問題ありませんが、にとりがどうかですね」
答えは分かり切っているが、にとりへと尋ねる。
しかし此方を向いておらず、何処か呆けた表情だ。
「……にとり、聞いてます?」
「ん……っああごめんなんだっけ!?」
「大丈夫ですか?貴女がそんなだと困りますよ……」
「ごめん、館中に幽霊だらけなようでついつい見てしまってたよ」
「乗っ取られていませんよね?」
「大丈夫、そこは問題無い」
「それじゃあ、予定通り三姉妹の手伝いしながら小野寺さんを探すでいいですね」
「そうだな……急いで蓮司を見付けないと……」
「それじゃあ手分けして部屋を探そうか」
「外へは行かないんですか?」
「……それもそうか、文さんお願い出来る?」
「まあ私でしょうねえ……にとり、館内は任せましたよ」
「単独で大丈夫なのかい?」
「元から何処にいるか分からない以上、足の速い私くらいしか探せませんしね。にとりはにとりでやる事をやってください」
「そう言われるとそうか……了解した」
「皆、にとりをお願いします」
「悪霊共からは守ってみせるさ」
そう言いつつリリカに出口へと案内される。
目に見えるような幽霊もうようよしているが、騒音で追い払っている。
「レイラを見つけたら頼んだよ」
「ええ」
そのまま外へと羽ばたいて行った。
さて……次はこっちの番だ。
「ちょっといいかい?」
「にとりさん、どうしたの?」
「この屋敷は全部探索したのかい?隅々まで」
「まだ、これから手分けして探すところだったし」
「それで、レイラの様子がおかしいのもあったし……一度話し合っていたんだ」
「ああ……それでか」
最初何をしていたんだろうと思っていたが、それなら納得出来る。
ただ……時間は結構経っているのかもしれない。
「無事ならいいけどなあ……」
「ただちょっとおかしい事があったんだよね」
「何かあったのかい?」
「気のせいだとは思うんだけど……私達同じ話を繰り返していると思うんだよね……」
「え?」
「なんかしたことある話を妹達ともしている気がするな……って……」
ルナサが話している途中に視界が歪む。
身体を揺さぶって無理やり立ち上がると……
「何やってるんだ文」
「何やってるんだって何ですか!?」
「いや……お前外に出てっただろうよ」
「なんですぐに追い出したがるんですか……今から出るところでしょうよ……」
「え?」
「なんですかってば」
「いや、問題無い」
「館内は貴女に任せたんですからね。しっかりしてくださいよ」
不安そうにしながら文はまた玄関から外へと出て行った。
何が……いや……
「死に戻り……」
蓮司から聞いたんだっけな、それとも盗み聞いたかだが……今はどっちでもいいか。
問題は巻き戻った以上はそれが起きている可能性が高いと言う事だ。
「……いつ、何処まで戻るのか分からないな」
正直不明瞭過ぎる。
ただ対策が出来ないのが難点だ……
「ええい、全部全部やり直しよりはマシだ」
少しずつ、知恵を生かして物を作り始める。
こっからは我慢比べだ。蓮司を助けるために……
まだまだ知識は浅くても、少しでも皆の役に立てるように、発明を続けるのであった。
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to be continued