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「やっと見つけた……」
何度も音に怯えて遠回りしながら、歩き続けて二階への階段を見つけた。
正直、もう疲れたが……休める場所なんて無い。
「急いで登るか……」
姉の部屋は何処にあるかすら分からないし、手当たり次第探さなければならない以上急がないとと慌てて階段を登る。
「ん?」
途中、踊り場の階段に目が止まる。
何か違和感がある。
「……あっ、でもどう言う事だ?」
鏡が正確に写していない事に気付いた。
明らかにまだ綺麗な筈な階段なのに。鏡の中の階段はボロボロで歩き辛いで済まないレベルだ。
「これも幽霊の仕業なのか?」
気になりはするが、今はそれどころではないので慌てて階段を登る。
その直後……鏡から知り合いの声がした気がしたが、気付かなかった。
「何処へ行くか……」
正直金持ちを舐めていたかもしれない。
二階なんてそこまでじゃ……とは思ったが一階と同様くらいには広いかもしれない。
これならレイラが迷った理由もよく分かるな……
「手当たり次第しか無いんだろうけど……キツイな」
もしかしたら三階もある可能性に怯えつつ一つずつ部屋を探った。
一階に比べて数が減っては居るが。それでも幽霊はいる様だ……気を付けなければ。
「よく分からない部屋だらけだが……」
少なくとも誰かが生活していたらしき部屋は見当たらない。
「急いで探さなければ……」
またいつ来るか分からない。幽霊達が告げ口するか分からない。
……色々と厳しいなな。
「一先ず手当たり次第……」
部屋を開けて違うと思えば部屋を閉める。
女の子の部屋を必死に探す姿はヤバいものを連想するが……生き残る為だし仕方無い。
「ここも違うか……」
一つ一つの部屋が大きく、次の扉までも苦労する……
「なんでマンションよりも広いんだよ……」
一部屋がマンション以上ってどんだけ豪邸なんだよ。いやデカい館なのは知ってるけどさ……
「もうちょっと話してくれれば良かったんだけど……」
ただ記憶の様な彼女達に尋ねる事はできなかったしな……
「……この部屋は?」
今までの部屋とは違う……と言うか女の子らしい部屋だ。
「申し訳ありませんがお邪魔します……」
この部屋があの子の部屋だろうか?
「っと探さないと……」
残っている事を願いながら地図を探す。
しかし探っても見当たらない……
「ここじゃ無い?或いは地図が消えたのか……?」
確かに……この記憶は数日前とかそんな類ではない。既に無くてもおかしくないが……
頭を抱えながら悩んでいると、また幽霊の姿がくっきりと映る。
またレイラだが……先程よりは少し成長した姿に見える。
それともう一人……確かに人形にあった姿だが先程の金髪の子じゃなかった。
「メルランお姉様の音楽は本当に明るいですわね」
「習わされてる以上は、明るい歌でもやっていないと滅入っちゃうもの」
「確かに……音楽を聞く以上は、明るい曲が良いかもしれません」
「レイラは分かるわね。それに比べて姉さんと来たら」
「ルナサお姉様がどうされました?」
「いつもいっつも暗い歌。音は綺麗なのに気が滅入るわ」
「でもルナサお姉様の曲も好きですけど……」
「駄目だよレイラ。あんなのに憧れたらレイラまで暗くなっちゃう」
「あんなとは随分な言い草だなあ」
扉の方から声がして、振り向くと金髪のあの子が部屋へと入って来た。
「ルナサお姉様おはようございます」
「姉さん、事実だろう?」
「事実なもんか、メルランは無知なんだよ」
「姉さん、何が言いたいの?」
「もう明るい歌の時代は終わって暗い歌が流行っているのさ」
「そんな事は無いでしょ。今だって明るい歌の方が良いよね?」
「えっと……どちらも良いじゃ駄目なんでしょうか?」
「駄目だよ、レイラには決めて貰わないと」
「うーん……」
「それじゃあいいよ、今から聴かせ合うから」
「ええ……?」
「いいねメルラン。それじゃあ私も楽器を取ってくるよ」
「隣だし折角だから姉さんの部屋でやりましょうか」
「オッケー、最新の流行りを教えてあげるよ」
「……」
「ちょっとレイラ、逃げようとしてないかしら?」
「いっいえ……そんな事は……」
「レイラも来なさい。隣だから迷う事もないでしょう?」
「……はーい」
半ば助けを懇願する顔で連れて行かれた。
記憶の様だし、こちらの事を気付いていない様だし……助けてあげられないんだ……
「仲は……あれはいいのかな?」
少なくとも二人の姉は文句は言い合っても険悪には見えなかったが……
と言うかレイラが巻き込まれて、可哀想な気がした。
「何があったのか……」
この記憶を辿る限り、姉に逆らえないどころか人形を壊すとも思えない大人しい少女だし……何より姉達を大事にしていた様に思える。
それなのに……あの変貌の仕方は何なのだろうか?
出口を探すついでに分かるだろうか?
「隣の部屋……だよな」
片方の扉は見た。だからこのまま奥へと向かえばいいか。
扉を少し開け確認するが大丈夫そうだ……
「今っ!!」
一目散に駆け抜けて扉へと入る。
廊下で見付かると逃げ場がないし隠れられないのが本当に怖い……
「部屋に入れた……館の地図はあるかな……」
お邪魔しますと言いつつ、部屋の中を探る。
少し探していると、筒状に丸まった紙を発見する。
開いてみると館の地図と書かれている。
「これか……」
地図を見ても何処が何室か分かるだけではあるが……それでもあると無いとでは大違いだ。
娯楽室、とかそう言った分かり易い場所を起点にするのもありだし……
「食堂は……あった」
そのまま右折して行くと玄関か……開くかはともかく見に行った方が良いだろうな……
「後は……地下がある……」
地下室があるのかと驚いているとギィっとドアの音がする。
最初から隠れながら地図を見ていた筈だが……
「みぃつけた」
「……」
見えていない筈なのに、何故か見つかっている様で恐怖する。
ハッタリかもしれないが……怖く無いなんて無理だろう。
「姉様の部屋を勝手に荒らして。思い出すらも奪う気?」
そんな事は無い。むしろここから出て行けって出してくれればそれで済むんだが……
流石にそれを言い出し始めるわけにも行かず、じーっと去るのを待っているが……
コツコツコツ
徐々に足音は近付き、ベッドの下から足が見える……近い……
「ここ」
その言葉とともに、ベッドが宙に浮く。
彼女と目があってしまった。
「ここだったのね」
慌てて待ってくれと訴えかけるが通用しない。
彼女の瞳から光が消える。
「姉様達から奪う人間なんて消えればいい」
その直後、ベットが頭に当たり砕ける。
潰れたのか?酷い音がしたぞ?
まだ……地図をそこまでは覚えてないのに……
「ただ……まずは玄関へと向かわないと……」
しかし考えがまとまらない。
今の俺の身体には考えるべき脳がないから……
まずはどうすればいいかすら分からない。
覚える事も今は無理だ……次回は頭に入れないと……
割れた頭から血が止まる事は無かった。
その直後、死んだのが分かり……戸惑いつつも、今できる事をやって行くしかないと思った。
ただ……何度死んでも少しずつ進んで来ているんだ。絶対に諦めずに出て見せる。
空っぽの頭にふっとそう浮かんだ。
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to be continued