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懐かしい気のする音楽。
聞いた事は初めてだが、それ程までに引き寄せられる。
「……各々が好きな音楽は違ってた筈だけど」
長女が暗い音楽が好きで、次女が明るい感じだったな。
各少女達に集中すると、確かにそれぞれの好みの音楽を奏でている様だが、自然とそれが調和している。
だからこそ、文さんが言う様に人気なんだろうなと。
「やめろ!!流すな!耳障りだ」
明らかにレイラでは無い言葉をレイラが放つ。
悪霊に効いているのだろうか?それだと良いが……
「音を止めろ!!」
騒ぎ立てて三姉妹に襲い掛かろうとする。
それを死神が防ぐ。
「やらせるわけにはいかないねえ」
「貴女ならそのままぶった斬ると思ったのだけど」
「それ言うとアンタが怒るだろう?」
「ええ、当然ね」
「だから待ってあげてるんだよ。感謝して良いよ」
「……」
妥協ラインを探す二人を置いて音楽は流れ続ける。
それが苦しい様で必死に暴れる。
心配になるが死神に制止される。
「ダメだよ、待っててな」
「ですが……」
「今レイラが抗っているんだよ」
「レイラが……」
「だから見守っててやれ」
「……」
正直レイラと会ってから日数としては一日も経っていない。
しかし何度も死に何度も会った。
過去の彼女を知り、何度も苦しみを知った。
思う所が無いわけではないが……どうにかしたいって気持ちだってあった。
「怪我してる癖に真面目だねえ」
「彼女自体が悪くないと考えますと……」
「いやぁ、本当に不思議な人間だ」
「そうですかね……」
心配に思いつつ話し続ける。
彼女は未だに苦しんでいる。
早く中から出て行けと願うばかりだった。
「……レイラ」
真剣に弾きながらも姉妹達は本気で心配している。
正直あの紫さんも心配している様で驚いたが……
「……小野寺蓮司」
「なんですか紫さん」
「来るわ、構えなさい」
「構えなさいって……」
その言った途端レイラが倒れる。
慌てて近寄ろうとしたが……その瞬間中から何個もの黒い塊がレイラの中から飛び出す。
そのまなこちらへと直進して行き……
「よっと回収完了」
こちらに飛び掛かる前に、死神がその魂を刈り取った。
「有難うございます」
「これが仕事だしさ。と言うか周囲気を付けなよ、まだ回収しきってないだろうし」
唐突に霊が現れるのを警戒しながら周囲を見る。
そうしているうちに一匹、また一匹と刈り取られた様だ。
「これで最後だっと」
最後の塊を切り取りホッとひと息ついた。
何かもよく分からなかったが……凄まじい量がいた事は分かった。
「それじゃ、後は嬢ちゃんが目を覚ますのを待つとしますか」
「いいのね?てっきり貴女ならすぐに終わらせると思ってたけど」
「生憎、仕事をサボるのが生き甲斐でね」
「あまり上司を困らせてはダメよ」
「分かってるって」
二人の話を聞きながら、少しの時間が経ちレイラが目を覚ました。
「レイラ!!」
「お姉様……?」
三姉妹に囲まれ、少し戸惑いつつも喜びを見せる。
「大丈夫かい……?」
「ごめんなさいお姉様……私……」
「いいんだよ、無事ならば」
「それに……彼も巻き込みましたし……」
そう言いながらこちらの方を見た。
「……少なくとも今なんちゃらかんちゃら言う気はありませんよ」
折角家族で集まれたのに、今水を差すのは違うだろうしさ。
「今じゃないと多分話せませんよ」
「それなら尚更優先しなよ」
様々な感情が入り混じっているが……死神が来ている以上は彼女もまた戻るのだろうな。
だからこそ、そちらを優先して欲しい。
「……分かりました」
そのまま一礼をして彼女達の方へと向き直す。
本当に……素はいい子なんだな。
「だいぶ痛手を負った様ですね」
「文さん……」
レイラが視線を逸らすのと同時にこちらへと文さんが向かって来た。
「折れてるだけなら治す事はそうそう難しく無いですがね」
「それならいいですけど……」
脚が取れた時の様な地獄はもう勘弁して欲しいしな……
治ると聞いて安堵する。
「なんなら三姉妹の躁の曲によっては治せるかもしれませんね……単独での多用は禁止されていますが」
「薬か何かですか……?」
「いえいえ、ただの曲ですよ」
「そうですか……」
少し不安に思いつつ周囲を見渡す。
「にとりさんは?」
居るには居るが、こちらに来ないのは何故だろうか?
「貴方に託すしか無くて、それで脚を折って来ましたし……凄い落ち込んでいます」
「……」
「後でフォローしてくださいね」
「了解です」
無事に帰って……来ては無いな死んだし……
それでも帰って来れたとは言え脚折っちゃったしな……
「まあ……また永琳さん辺りに……」
「あの、これどうぞ」
「レイラ?話していたんじゃ?」
「終わりました。それで最後にこれをって」
謎の小包を渡される。
「なんですかこれは?」
「今回の件で迷惑掛けてばかりだったから……こんなのじゃ割に合わないかもしれないけど……」
「……オルゴール」
「お父様が残していてくれたの」
「……それって生前の姉妹皆のじゃ?流石に貰えないって」
「どうせ誰ももう来ないわ。それにこの子達の他にも私を覚えていて欲しいから……」
「と言うか貰わないなら私が貰いますよ?プリズムリバー姉妹達のオルゴールなんて貴重ですし」
「ダメ」
「……って事ですが」
「貰います。自分が貰ってしまっていいのか不安ですが」
彼女達が音楽が好きだった事は分かっているし、その結晶を貰えるなら有難い。
だが言われた様に……長い一日ではあったが一日だったんだよな……
「時間を掛けました」
「ん?もうちょっとサボりたかったけどねえ」
その後レイラが死神へと話しかける。
「いえ、これ以上残ると名残惜しくなってしまうので」
「まっ、残ってると悪霊になるのも予想できるから……ごめんよ」
「いえ、自分も久々にこの子達に会えて良かったです」
「そうかい、そりゃ良かった」
死神はそうして鎌を振るう。
当たったレイラは少しずつ身体が透けていく。
「皆様、また会う事があればその時は正気のまま逢いたいです」
「いつでも帰って来ていいからね大事な妹」
「有難うございます姉様達」
「正直君には良い印象はないけど……無事天国に戻れる様祈っておくよ」
にとりさんも文句はあるものの見送った。
それに一礼して文さん達へと続いて行った。
「それじゃあさようなら」
レイラが完全に消え、少しだけ泣きそうになるのを堪えた。
「皆様も有難うございました。あの子が無事天国に戻れた様で良かったです」
「まあ無事に異変も終わった様だしよしとしよう」
にとりさんがそう言うが……そうかこれで結界異変は完全に終わったんだ。
幽香さんを始め本当に長引いた異変だったな……
「……っとあの死神はもう帰ったんですね。本当に早いです」
文さんがそう言い、周りを確認すると確かにいない。
仕事が終わったら本当に消えたな……
「では私もこれで」
「逃がすわけ無いだろ?」
紫さんもさりげなく逃げようとしていたが、にとりさんが止めてくれた。
危なっ……逃げられかけた。
「……何か?」
「流石に色々聞かせてもらうぞ」
「……」
「異変も解決したしな、文句は言わせないが」
「そう言えば……異変が解決したらって話が……」
「……分かりましたわ」
紫さんがこちらへと向いている。
やや面倒臭そうな顔を一度だけして、真面目な顔になる。
「全部は話しません。ですが少しだけお話しするとしましょう」
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to be continued