幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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百五十四話 人里にて〜unexpected event.

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何もしないと言うものも案外難しいもので、本当にこのままでいいのか怪しくなる。

ただ……出来ないのに気負うとまた言われるな……

 

 

「本当に、お兄さん最近静かだねえ」

 

 

「それでいいんでは無いですか?」

 

 

「それはそうだけど……もどかしくもある」

 

 

「そう言われましてもね……」

 

 

こいしさんに文句を言われるがどうしろと言うのだ……

俺だって何かしたいのは山々だが……

 

 

「正直文句言われるよりはマシだけど」

 

 

まあ……それはそうなんだろうけど……

 

 

「……ねえお兄さん」

 

 

「なんです?」

 

 

正直また文句を言われるのかと思ってた。

 

 

「辛そうだけど大丈夫?」

 

 

「まあなんとか……」

 

 

ままならないのはずっと一緒だしな……正直割り切るには時間がかかるだろう。

 

 

「んー……ねえねえ」

 

 

「……だからなんです?」

 

 

「一緒に出掛けない?」

 

 

「え?」

 

 

半ば連れて行かれる形でこいしさんと人里へと向かう事になった。

 

 

「……急にどうしました?」

 

 

「気分転換も必要だよーと」

 

 

「気分転換ですか?」

 

 

「うん、多分した方がマシだしねえ」

 

 

「俺はいいんですけど……」

 

 

周囲を見る。明らかに人通りが多い。

 

 

「こいしさんが大丈夫なんですか?」

 

 

「え?私の心配?」

 

 

「そりゃ……妖怪ですし」

 

 

「あーでも見えないから大丈夫だよ」

 

 

「見えてる人もいるかもしれないですよ……?」

 

 

「だって……お姉ちゃんだって見えないんだよ?」

 

 

「……」

 

 

それを言われると反論出来ない。

それと同時に大丈夫そうかと思ってしまう。

 

 

「だからー何しても見えないってわけでー」

 

 

そう言いながらこいしさんが引っ付いてくる。

 

 

「悪い事してみる?」

 

 

そう耳元で呟いた。

 

 

「犯罪はダメですよ……」

 

 

「そう言う事じゃないんだけど……まあお兄さんには分からないかあ」

 

 

何故だか馬鹿にされた気がする。

 

 

「兎に角、欲しい物があったら言ってください」

 

 

「うーん、まあそうだね。今日はお兄さん居るから盗んじゃお兄さんの責任になっちゃう」

 

 

「……俺が居なくてもやめてください」

 

 

「考えておくー」

 

 

少し不安に思いつつも……信じることしか出来ないわけで……彼女を信じながら人里を回り始めた。

 

 

「ほんとなんでも売ってるねえ」

 

 

「……そうですかね?」

 

 

比較対象が現在ってのもあるが、やはりそこまでと思ってしまう。

勿論自分の方がズレているのは分かっているが……

 

 

「なーんか面白い物は……」

 

 

そう言うこいしさんの脚が止まる。

正直彼女が気になる物なんて無いと思ってたが……

 

 

「何かあった……」

 

 

こいしさんが脚を止めた物を確認してすぐに理解した。

それは鈴だった。

 

 

「なんだろう、変な感覚」

 

 

「変な感覚ですか?」

 

 

「うん、なんというか……どうでもいい筈なんだけど……気になる」

 

 

「……」

 

 

やっぱり、断片だろうけど彼女にも記憶があるのか?

何も無いよりはマシかもしれないが……逆にもどかしい。

 

 

「欲しいですか?」

 

 

「どうだろ……欲しい気はしないんだけど……なんかこのまま放っておくのも勿体無い感じ」

 

 

「……分かりました」

 

 

確かに、鈴があるって事はこちらとしても見落としが減る。

あの頃に戻るわけでは無いが……それでもだ。

 

 

「これください」

 

 

「いいの?」

 

 

「欲しい物があったら言ってくださいと言ったじゃ無いですか」

 

 

「有難う」

 

 

鈴を購入し、彼女に渡す。

こいしさんはあの頃のように鈴を付けくるりと回る。

チリンと音がして一瞬周りがこちらを向いた気がするが……すぐに元の方へと戻る。

 

 

「うん、いいねこれ」

 

 

「それなら良かったです」

 

 

「ただ……どうしてだろうね」

 

 

「何かありました?」

 

 

「懐かしい感じがする……前にこうしていたような」

 

 

「どうしてでしょうね?」

 

 

「むー」

 

 

若干不満に思いつつもこいしさんが走り出す。

チリンチリンと音を鳴らすが先程とは違ってもう誰もこちらを向かない。

 

 

「ああもう待ってくださいってば」

 

 

「ここまでおいでー」

 

 

逃げるこいしさんを必死に追う。

音のお陰で見失う事はないのだが……人通りのせいで上手く追いづらい。

 

 

「ぶつかってるし……」

 

 

こいしさんの方は何度かぶつかりながら逃げ続けている。

当然だが、ぶつかられた相手はそれに気付いていない。

 

 

「後でその点は叱らないとな……」

 

 

ばれなきゃいいわけじゃないだろうと思いつつ、彼女を追い続ける。

移動距離に若干の疲れを覚えつつも、なんとか追い付いた。

 

 

「ほんと……好き勝手し過ぎですよ」

 

 

「しょうがないしょうがない」

 

 

「しょうがなくないですってば……」

 

 

「でも……気分転換にはなったでしょう?」

 

 

「それはまあ……」

 

 

どちらかと言うと気が晴れたと言うより、こいしさんが心配で仕方無いが強い気がするが……

それでもさっきよりはマシなのは事実か。

 

 

「それなら良かった」

 

 

「良かったじゃないですよ、人にぶつかっちゃダメですって」

 

 

「反省してまーす」

 

 

「絶対してないやつ!!」

 

 

そんな不満げな顔でどう信じろと言うのだ。

信じられる人は居るわけないだろうと。

 

 

「じゃあ帰ろうか」

 

 

「そうですね……」

 

 

半ば強制的に連れてこられたとはいえ、フランちゃんを放置して来てしまった。

正直後の事を考えると……若干の恐怖はある。

 

 

「まあ……それでも感謝してますよこいしさん……」

 

 

こいしさんの方を振り向きながら話を続けるがどうもこちらの方を見ていない。

 

 

「あれ?こいしさ……」

 

 

彼女が何を見ているのか気になって視線の方に目を向けた。

そしてすぐに理解した。

 

 

「え……?」

 

 

居るはずがないと言うのは願望だ。

それに本当であれば居て欲しいと思っていた筈なのに。

しかし実際に目にすると言葉を失う。

本当は自分でも信じて居なかったのではないかと思い知らされる。

 

 

「さとりさん……」

 

 

古明地こいしの視線の先、その目で捉えているものは。

古明地さとり。こいしさんの姉であり、俺が今一番会いたかった人物であった。

 

 

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to be continued

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