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「お待たせ、本当にごめん」
「……お兄さんは悪く無いし仕方ないよ」
若干沈み気味のフランの元へと着いた。
少なくとも今日は約束したし果たす。
「……でももうこんな時間だけど」
「フランちゃんが大丈夫なら大丈夫さ」
徹夜くらい問題無いし。
しかし明日からは……まあ考えるのは後でいいか。
「それじゃそれじゃそれじゃあ!!」
時間も忘れて遊びに暮れるようだった。
夜も暮れ朝日ももうすぐと近づいて……
「……」
大丈夫だと言った筈なのに、既にその人間の意識は無い。
原因とするならば久々に人里に向かった事など多々あるだろうが、それでも寝落ちてしまった……
それを叱る様子もなく、ただフランは見つめている。
「全くしょうがないお兄さんだなあ」
人間だから仕方ないと言い聞かせる。
吸血鬼に比べて弱いのだから、こうやってすぐに寝てしまう。
力も劣るし、すぐに死ぬ脆い生物。
だからこそこうやって愛おしく思うときもある。
「短命だからこそ美しいのかな?」
命短く輝くからこそ美しいみたいに、人間はそうでなくてはならないのかもしれない。
「んー、だけどそれは嫌だな」
たった100年くらいしか一緒に居られない。
そんなの短過ぎるし認められない。
お兄さんにはずっと一緒に居てもらわないと。
「まっいいよね。約束破っちゃったわけだし」
本来であれば今は眷属を作る事は出来ない。
しかしこの妹はそのルールすらも破壊する事が出来る。
「と言うわけでお兄さんこれからもよろしくね」
そのまま、眷属にしようと齧りつこうとすると……
「やっぱりね」
「!?」
慌てて入り口付近を見ると、怖い目付きをした姉がそこに居た。
「お姉様?」
「フラン、それはやってはいけないって言った筈だけど?」
「でも、お兄さんが……」
「それも踏まえた上でダメって言ってるけど」
「なんで?」
「彼がそもそも眷属化を望んで無いもの」
「そんなの……死なない方がいいに決まってるじゃん」
「そんなものは私達の決めつけよ。第一彼が言ったもの」
「なんで……そんなのおかしいよ」
「おかしく無いわ。だったら人間なんて種族は存在しないもの」
その方がいいと言う人間しかいなければ既に人間と言う種族は滅びているだろう。
そうでは無いのは人間であり続けたい人が殆どだからだろう。
「第一ウチの咲夜だって人間よ?」
咲夜を幼い頃から拾い育て上げた。
今でこそ立派な従者だが、当時は色々とあった。
「でも咲夜は一度も眷属になりたいと言った事はない」
人間だから出来ることがある。
人間だからこそ成長し続けられる。
妖怪の生は長い。途中で何度も折れたり足を止めたりしてしまうだろう。
成長を辞めたらそれはもう私じゃないから。
「だから、それを決めるのは私達じゃ無い」
「分かんない、分かんない分かんない」
「ほんと……私って子育て苦手ね……咲夜が良い子に育ち過ぎたのもあるけど」
目の前の暴発しかけのフランを見る。
そして妹さえも満足させてあげられない自分に溜息が出る。
「最近は蓮司に任せきりだったからこうして遊ぶのも久しぶりね。さあフラン遊びましょ?」
そうして建物内に弾幕が飛び交い始めた。
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やべっ寝てた……申し訳ないなこれ。
まずはフランちゃんに謝らないと……
「……今何時だ?」
時計を確認しようとしたがその前に違和感に気付く。
なんだか暗い……しかしそれはすぐに分かる。
「外?」
気付けば夜空の下にいる。あれ?なんで?
「夢でも見てるのか?」
「あっお兄さんやっと起きた?」
「……こいしさん?」
「うん、そうだよー」
「何が起きているんです……?」
「えっとね、紅魔館の一部が壊れちゃった」
「……?」
一体何故そんなことに?
「上上」
こいしさんに言われるままに上を見る。
そこではフランちゃんと紅魔館の皆が戦っていた。
「ちょっと状況が読み込めないです」
「お兄さんを争ってーじゃない?」
「いやいやいや……」
何で俺で争うのか分からないんだがって話だしな。
「まあお兄さんが何かしたんじゃなーい?」
「……否定は出来ない」
現に寝落ちしたしな……
「それでこいしさんは此処で俺の見張りしてくれてたんですか?」
「まあそれもあるけど……」
「?」
「私もお姉ちゃんも戦えないからね……」
「ああ、紅魔館の問題ですもんね」
「そうでもなくて……」
「まだ何かあるんです?」
「お姉ちゃんは戦えないし……能力がバレたく無い」
「……ああ、確か」
さとりらしい能力なんだっけか?
それだったら確かにまずいな……
「それで私はもっとダメ」
「それ以上にまずいのが?」
「遊びじゃ無くてこう言う時は調節出来ないから……私かフランか死んじゃう」
「え……いやいや……」
だってそれを防ぐためのスペカルールなんだろう?
だったらおかしく無いか……?
「スペカは?」
「お姉ちゃんは律儀だけど地底で流通してるわけないじゃん」
「分かりませんが……」
「してたら地底の鬼達は常日頃どつきあいなんてしないよ」
「そうですか……確かにか……」
だったらどうしようもないか。レミリアを応援……いやそれ正しいのか?
「合っていますよ」
「さとりさん?」
どうやら近くで座っていたようだが気付かなかった……
「貴方はむしろレミリアさんを応援しないとまずいです」
「そうなんですか?」
「突然館が壊れていたため彼女達を覗いた所、フランさんが貴方を眷属にさせようとしてレミリアさん達と争い始めたらしいわ」
「……成程」
唐突に言われて戸惑うが、結局は自分が原因かと。
「急いでこの館を離れる事をオススメします」
「いやいや……それは……」
「何か出来るわけではないでしょう?だったら避難したほうがいいでしょう。そのために彼女達は戦っているわけですし……」
「そう言われると……否定は出来ませんが」
「こいし、先導してあげなさい」
「でも本当にいいの?」
「何かあります?」
「あのままじゃみんな不味いよ?」
「え?」
「……こいし」
「悪いけど今回は言うよ。確かそれだけの恩を受けたし」
曖昧な記憶だが。それでもこいしさんは必死に覚えている。
だからこそ返したいって。
「不味いとは?」
「フランがいつもよりも強力になってる。あの皆でもきついよ」
「そんな……」
何が起きている?どちらにせよそれじゃあいけない。
目の前を見る、レミリアが咲夜さんがかなりの血を流している。
「……さとりさん」
「正気ですか?」
「はい」
心をすぐに読んで察してくれる。
それだけの事をしなきゃならないと。
「本当は眷属になってあげれればいいんだけどね」
当然なる事は出来ない。
永遠を生きる種族になる気はないし、元の世界にまだ戻る気があるから。
「所詮は人間とは言いませんけど……軽いですね」
「何度も死んでますからね」
久々にさとりさんやこいしさんに会えたがこれは仕方ない。
誰かが死ぬなんてあってはならないから。
「……小野寺さん」
「大丈夫ですよ俺は」
「……何か持っていませんか?優しい音楽が流れるものとか」
「……ありはしますけど」
唐突に何を言い出したのかは謎だが……
あるにはある、オルゴールだ。
ただ……レイラから貰ったこれを渡すのは……
「お願いします。どうしても必要なんです」
「……分かりました」
どうせ死ぬなら……いいか。
レイラには悪いけど……
「ありがとうございます」
そのままオルゴールを鳴らし始める。
優しい音楽が流れる。
「これならいいわね」
「お姉ちゃん?」
「こいし、ごめんなさい」
「お姉ちゃん!?」
「小野寺さん。心の底から貴方が皆を思っているのが分かりました」
「さとりさん」
「後は任せてください」
「でもさとりさんは……」
「ええ、バレるだけですので」
そう告げて空を飛ぶ。当然飛べない俺は追い付けない。
「ちょっと、これは紅魔館の問題よ」
「傷だらけで文句言わないでください」
「……」
「終わらせます」
「……大切な妹なの」
「ええ、分かっていますよ妹は大切なものです」
オルゴールを鳴らす、その音に近付いてくる。
「本当に純粋な子。だけど忘れちゃいけませんね」
想起する、彼女が楽しかった思い出。
それは蓮司だけじゃない、姉も従者も様々な人達がいる。
彼一人じゃ無かったはずだ。
「っ……」
その記憶にフランが立ち止まる。すかさずレミリアが抱き締める。
「お姉様」
「……ごめんなさいね、フラン」
「なんか意識がずるいずるいって持ってかれちゃって……そしたら気付いたら」
「分かったわ。ゆっくり聞いてあげるから」
「うん!」
そのまま館の壊れてない部分に戻って行った。
良かった、無事で済んで。
「……」
「さとりさん?」
さとりさんは一人の少女を見つめている。
パチュリー・ノーレッジ、彼女も同様にさとりさんを見つめている。
「さとり妖怪……」
パチュリーさんからそう聞こえた気がした。
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to be continued