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寒い寒い寒い……
身体が凍る。動かなくなる。
全身から血が流れ出す。そしてその血も凍っていく。
苦しい苦しいその感覚さえもう分からな……
「わああああああああ」
悲鳴を上げながら目を覚ます。
あれ?ここは……?
「……ウッセーゾ」
「あっごめんなさい」
上海さんだ……なんでこんな所に?
「ここは?」
「ワカンネーノカ?」
「はい……」
確か記憶の最後は豪雪の中だった筈なんだが……
「魔界……でいいんですかね?」
「……マッテロ」
「え?」
そのまま上海さんは何処かへ行ってしまった。
完全に一人取り残され呆気に取られている。
「……上海さんは幻覚……じゃないよな。だったらこの場所だっておかしいし」
彼女が幻覚だとしたら既に死んでいるだろうしな……この建物の中にいるのがおかしい。
これすらも幻覚は……無いな。死んだらすぐに戻るのだから。
「早苗さんとぬえも居ないし……」
それはそうか。ただ無事である事を願うしか無いな……
ダメだ。それで手遅れだと話にならない。
「家の主にお礼を言って向かわないと……」
「全く……本当にじっとしてられないのね」
「……アリスさん?」
なんでアリスさんが?と思いつつ改めて上海がいた事を自覚した。
そうだな上海さんがいたんだからおかしく無いか。
「久しぶりね。とでも言えれば良かったけどそんな場合じゃ無いわ。何してるの?」
「何って……魔界に向かった船を追い掛けて」
「それは二人から聞いたわ」
「二人って……無事だったんだ」
「……はあ。一番危険だったのは貴方だと言うのに呑気ね」
「実際自分はこう生きていたので。二人はどうなのかでしたし」
「……そう言う性格だったわね。その割には異変に首を突っ込むのに」
「……そうですね」
「今回も明らかに自分の身の丈以上じゃないの」
「それはそうかもしれませんが……何も知らないと万が一があっても全てやり直しになりますし」
「そうね。やり直しになる筈ね」
「?」
「……なんでもないわ」
アリスさんの言葉に少し違和感を持ちつつもそこには突っ込まなかった。
「とりあえず……これから先ですが」
「小野寺君はここで待つしか無いわね」
「え?」
「当たり前でしょう。どうにか出来るわけないもの」
「それはそうですが……」
「貴方が信頼して二人を連れてきたんでしょ?だったら信じて待ちましょうよ」
「それはそうですが……」
「……話聞かせてもらってもいいかしら?正直彼女達の話だけじゃ理解出来ないの」
「分かりました」
追う事も出来ないだろうし今やれる事と言えば話すことくらいだろうなと。
魔界を知っている彼女の方がこの先どうすればいいか分かりやすいだろうなども考えながら話し始めた。
「……」
アリスさんは表情を変えずに真剣に聞いてくれていた。
茶化す人なども多かったし真面目に取り合ってくれる存在は本当に有難い。
「それ、小野寺君が悪いとは思わないけど」
聞き終えたアリスさんはまずそう答えた。
「だって俺が封印を解いたんですよ?」
「事故じゃ無いの」
「事故だとしても……」
「あのねえ……幻想郷でそんな責任感ばかり考えてたらダメな事くらい分かるでしょ?」
「無責任過ぎません?」
「だからって悪いのは落としたその妖怪でしょ?なんでひとりで悪い悪い言ってるのよ」
「……」
「……ただ放って置けないのは分かったわ。此方でも少し知り合いに声を掛けてみるから」
「有難うございます」
魔界へと来た以上今までの異変と比べ物にならない気がするし、人手はいくらでも欲しい所だ。
「俺は何をすれば?」
「何もしなくていいわ」
「いやそれって……」
「どうせ暫く休んで無いんでしょ?少し休みなさい」
「休んで無いのは……」
紅魔館でフランちゃん達に振り回されて地霊殿でも落ち着く前に今回の事があって……
休めて無いな確かに……
「やらなきゃいけないって言いたいだろうけど間違いなく今の貴方は冷静さを失っているわ」
「……そうですかね?」
「まずは休みなさい。その後これからを考えましょ。彼女達の手伝いに行くとしてもね」
「分かりました」
焦り過ぎていたせいで気付かなかったが、身体がまだ僅かに痛む。
二人には申し訳ないけど少し休ませてもらおう……
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目の前には化け物がいた。
よく分からない化け物。幻想郷にいていいのか不安になるほどの存在だった。
人じゃあどうしようも無いと言える程の存在で霊夢さん達も倒れている。
「なんだよこれ……」
明らかに異常な存在は幻想郷を喰らい尽くす。
こんなものが魔界に封印されていたのかよ……
「無理だ……無理に決まっている」
他の異変がまだ優しいものだったんだなって気付かされた。
明らかに勝ち目のない存在でしかないから。
霊夢さん達もやられてどうしろって言うんだよ。
「お前のせいだ」
「え?」
「お前のせいだお前のせいだ」
「……」
周り中からそう聞こえる。
俺をひたすら責め続ける。
「そうだ……そうだよな……」
やったのは俺なんだし否定は出来ない。
自分でやったんだから俺が悪いと。
「手遅れだ」
そうか、手遅れなんだごめんな……
全部全部……
そこで目が覚めた。
「……やっぱ逃げてなんてられないよな」
ならどうする?一人じゃどうしようもない。
アリスさんに言っても待っててって話になるだろうし。
「誰か居れば……」
結局は他人頼みなのは分かっている。
ただあんな悪夢を見てこのままでいいなんて思えない。
誰か居てくれれば。
「辛気臭い面してるじゃないか」
「!?」
下の方から声がして慌ててそちらを向く。
そして床を突き抜けて現れた姿に驚いた。
「え?誰?」
あの閻魔様を思い出すような早苗さんよりも濃い緑髪だが結構長髪のようだ。
青い服に翼と言う姿だが……それ以上に脚がないのに違和感がある……まあ床を抜けてきたし幽霊なんだろうか?
「あんたの言う助けて欲しい誰かだけど?弟子から手助け要請されたしねえ」
「弟子……アリスさんの師匠とか?」
「そっちではないけど。まあいいじゃないか」
正直な話不審者にしか見えない。
ただ協力者なら誰でも欲しい所だが。
「大体の説明は聞いたけど助けて欲しいならあんたからも聞かせな」
少なくとも敵がここまで面倒な事はしないだろう。そう考えて話すことにしたのだった。
盤面を好転させれると信じて。
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to be continued