幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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十六話 二度目の別れは唐突に〜dream end.

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最初にしたのは土の匂いだった。

草も混じった懐かしい匂いに少しだけ泣きそうになる。

ただ……いつまでも寝そべっていられないと起き上がる。

そして、歩き出す……。地霊殿へと向けて。

 

 

「急がないと……」

 

 

途中妖怪とかに襲われそうに何度もなるが、それでも避けながら行く

早く会いたいと思いながら。

 

 

「……あと少し」

 

 

ただし違和感がある……確かに走っていて熱を帯びているとはいえそれ以上の熱気を感じない。

 

 

「灼熱地獄……まだ出来てないんですかね」

 

 

確かお燐さんは最近復活したと言ってたし……俺が地霊殿にいる間に復活したのか……?

 

 

「……た……お邪魔します」

 

 

ただいまと言いかけたが、流石に今は違うだろうと。

言いたい気持ちを抑えてお邪魔しますと扉を開けた。

 

 

「にゃー」

 

 

黒猫が出迎えてくれる……と言うかこの猫は……

 

 

「お燐さん、さとりさんは居ますか?」

 

 

「……!?」

 

 

「あの……」

 

 

「お兄さん……何者だい?」

 

 

「あ……」

 

 

分かってはいるけどついうっかりやってしまう。

 

 

「まあ、さとり様に用があるなら呼んでくるけど……。」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

良かった、すぐに済みそう……

 

 

「とはならないよ?お兄さん何の用だい?」

 

 

「え……?」

 

 

「流石に大事なご主人を出せーと言われてもねえ」

 

 

お燐さんの明確な敵対を見る。

と言うか……初めてな気もする。

 

 

「……本当に大事な事なんです」

 

 

「そうは言ってもねえ……」

 

 

「お燐、構いませんよ」

 

 

「さとり様!?」

 

 

「……さとりさん」

 

 

「何泣いてるんですか……」

 

 

「あっすみません」

 

 

別に久しぶりに会ったわけじゃ無いのに……なぜ涙が出るんだろうな。

 

 

「さとりさん、お話が……」

 

 

「必要ありません」

 

 

「え?」

 

 

ああ、そうだよなうっかりしてた……

さとりさん見れるんだから言う必要ないか。

 

 

「お帰り下さい」

 

 

「……なんて?」

 

 

明確な拒絶を受けた。

いや……なんで……?

 

 

「ちょっとさとり様?」

 

 

「お燐、彼を地上まで案内してください」

 

 

「え!?地上に行ってくるのかい!?」

 

 

「ちょっとさとりさ……」

 

 

「貴方にはもうここは合わない、ここにいる必要はありません」

 

 

「そうじゃなくて、俺はここに……」

 

 

「お燐……」

 

 

「分かったよ」

 

 

そう言ってお燐さんに抱えられる。

力負けしているので敵わない。

そうして連れて行かれる。

 

 

「小野寺蓮司さん、ありがとうございました……」

 

 

最後にさとりさんの言葉だけを聞いて、その感謝の意味を……俺は理解したのかなと言うことと、自分の役目は終わったのかなと思った。

 

 

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「さとり様、聞かせてもらってもいいですか?」

 

 

彼を送り返した後に燐は主人に尋ねる。

 

 

「お燐、そんなに気になりますか?」

 

 

「まあ……敵意あるのかと思いきや丁重に送るだけじゃなくありがとうと言ってましたしね」

 

 

「……そうですか」

 

 

「もしかしてさとり様どっかで会ったことあったり?」

 

 

「お燐……貴女は死に戻りって信じますか?」

 

 

「……いや、死んだら戻るってないでしょ」

 

 

今まで送られてきた人間一人も蘇ってないじゃん!と正論だーみたいに言う。

 

 

「彼はその能力を持っているみたいです」

 

 

「……マジですかい?」

 

 

「彼の心底にはここ地霊殿での記憶がありました」

 

 

「確かに地上の人間には地霊殿のことは知らないですもんね」

 

 

「それから未来を知った気がします」

 

 

「未来ですか……?」

 

 

「彼が死に戻った理由を」

 

 

「……聞かせてもらってもいいですか?」

 

 

「お空が起こした異変、それを止めるために」

 

 

「……え?お空が?」

 

 

お空がそんなことすると思えないと驚愕する。

いくら賢さが足りなくても今の力じゃ異変なんて起こせるはずないと。

 

 

「地上を灼熱地獄にさせようとしました」

 

 

「なんだって……でも今のお空じゃ……?」

 

 

「何処からか力を手に入れて、また灼熱地獄が戻るようです」

 

 

「止めないと……」

 

 

「ダメです」

 

 

「さとり様……何でですか?」

 

 

「これが彼を地上に戻した理由でもありますが……。賢者との約束により異変は起こした以上、止める事はできません」

 

 

「……そんなことが。でっでもまだ未然ですし」

 

 

「いいえ、起こさせます。止めたら何が起きるか分かりませんし」

 

 

「でも……そしたら地上が……」

 

 

「そうしないようにこちらで調整します。彼は優しいですから止めようとしますでしょうが……そうするわけには行かないので」

 

 

「分かりました……。ただ一つ聞いていいですか?」

 

 

「なんですか?」

 

 

「さとり様理由はそれだけですか?」

 

 

「……彼は前世でここに来たときは自暴自棄でした。ですが今は十分前を向けたので」

 

 

「あたいにだけでも教えてくれませんかね?」

 

 

さとり様の友達にでもなれそうな人物だったのにと。

 

 

「……元の私は家族のように大切に思っていたようですよ」

 

 

「だったらなんで……!!」

 

 

「怖いんです」

 

 

「やっぱ信じ切れないんですか?」

 

 

「いえ……少なくとも信じたいとは思いました」

 

 

「……」

 

 

「人の一生は短いですが……それ以前に彼が住むには適した場所ではないし、呆気なく死ぬほど弱い存在です」

 

 

「まあ人間ですもんね」

 

 

「そしてその死んだことさえ彼は覚えていて……私には見える。後何回、彼を失えばいいんですか?後何回、死んだ彼に謝ればいいんですか?」

 

 

「さとり様……。」

 

 

必死に目を押さえるも溢れてきた滴に燐は焦り出した。

 

 

「すみませんが、私にはそれが耐えられません」

 

 

「さとり様は悪くないですよ。本当にすれ違ってしまっただけですって」

 

 

もしかしたら兄のように弟のようになれる存在かもしれない……だからこそ何度も失うのは耐えられないだろうと。

 

 

「せめて幸せになってくれればいいんですけどねえ」

 

 

「そうですね……」

 

 

結局泣き止むのに大層時間をかけてしまった。

 

 

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「さて……」

 

 

理由は分からないが追い出されてしまった。

ただ……さとりさんなら地霊殿に来た事情は分かっただろうから一応はよしとしよう。

 

 

「地上で生きていけるか……」

 

 

確かに地底の方が生きていくには心地よかったが……あの頃程は地上のトラウマは無くなっている。

本当にさとりさんのお陰だ。

ただ……最後のありがとうございましたって言葉が聞こえて無ければまた自暴自棄になってた気がするけど。

 

 

「ただ……正直やりたいことが無いんだよな……」

 

 

こいしさんに地霊殿で生きて行くって言ったばかりだったしな……地上に戻ると思わなかったし。

と言うか結局緊急事態とは言えあの時の約束裏切っちゃったな。

 

 

「嘘吐き」

 

 

「え?」

 

 

慌てて周囲を確認するが誰もいない。

ただ鈴の音がチリンと聞こえた気がした。

 

 

『あれ?今私なんて言ったんだっけ?まあいっか。分からないし』

 

 

こいしさんも記憶が無いはずだし何よりここにいるわけないから幻聴だろうなと。

ただ……恩返しをしたいって言ったのに返せてないって……

 

 

「恩返しか」

 

 

地底に戻るのは違うだろう、だったら地上で出来ること……

 

 

「博麗の巫女……」

 

 

確かさとりさんが言ってたな博麗の巫女が異変を解決するって。

起きるかどうかは分からないが……起きた時のために巫女さんに会っておいた方がいいのかな?

 

 

「ただ……見た目が分からないな。」

 

 

巫女って言ったって巫女服とは限らないし……ってか外の世界巫女服じゃ無い巫女たくさんいた気がするし。

それなら分かる人探した方がいいか……

 

 

「あの箒に乗っていた魔女さん」

 

 

確か魔理沙って名乗ってたよな。あの人をまず探そう。

見た目は覚えている。

 

 

「それに、確かあの時博麗神社って言ってたし何か知っているだろう」

 

 

そう信じて新たな目標を立てた。

前世で返せなかった恩を返せたらいいなと思いながら。

 

 

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