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「全く……私でなければ怒るでは済まなかったですよ」
置いてかれかけた寅丸さんが文句を言う。
一人では魔界から帰れないしそりゃそうだ。
「宝塔を無くしたご主人様だし置いていっても良かったかもしれないが」
「ナズーリン……そんな事言わないでください」
聞いた話だとぬえさんによって宝塔が行方不明らしい。
流石に居なかった自分達では何処か見当が付かない。
「ぬえさん……いったい何処に?」
「分からない」
「えぇ……」
本当に魔界から出ていいのか不安になるんだが……
「一応ダウジングでは魔界の外を示しているが」
「ナズーリンのそれはアテになるのですか?」
「ずっとやらされてるわけだし、今すぐ辞めてもいいんだが?」
「ごめんなさい!!」
寅丸さんが謝って……あれ?上司だよな?
「私としては無いと思っている。あったら悪いがね」
「まあ、魔界で見付けたらって話したし大丈夫でしょ」
寅丸さんを見つけた後、念のため神綺さんにお願いしておいた。
不満そうではあったがアリスさんが念押ししてたし大丈夫だろう。
「それじゃあ、人里に向けてでいいのかな?」
「ああ村紗、少しだけ寄ってもらいたい所があります」
「ん?星何処へ向かうんだい?」
「まさかご主人様……宝塔を探しに行くとか言わないね?」
「いや確かにそれはそうですが」
「……」
「ナズーリン。住処が先ですので、流石に地上で即宝塔探しはしません」
「ならいいけど、だったらどうするんだい?」
「……地底へ」
「はぁ?巫山戯ているのかい?」
ナズーリンさんの驚きも当然だ。俺でも驚いたし。
つい最近まで封印されていたよな?
「巫山戯ていません。一度人里に向かう前に地底に行きたいのです……聖、よろしいでしょうか?」
「それは構いませんが……こちらも先に色々と済ませたいのですみませんが着いていけません」
「それは構わないよ。村紗だけ居れば十分だ」
「逆に私は必要なの?」
「ええ、あの子に会います」
「……えー!?あの子だよね?本気で言ってるの?」
「本気ですよ。聖は間違い無く助けるでしょう?」
「あー……そうだけどさあ……マジかあ」
「二人ともどうしたんですか……?」
流石に不穏に感じて来て口を挟む。
地底の妖怪達は難ありだし何より個別に生きているのばかりだ。
それなのに助けなきゃいけない存在ってなんなんだ?
「ああ、地底で助けたい妖怪が居るんだ」
「地底で?地底の妖怪達は出ないようにしている筈と聞いたのですが」
「ああ私もそう聞いてたよ。でも……明らかにその子はおかしかった」
「おかしかった?」
「明らかに嫌われ者だらけと言われていた地底でも嫌われていたんだ」
「……無くはないでしょうけど」
さとりさん達みたいに意図的に嫌われている者達も居るだろう。
しかし……それでも珍しい方だな。
「……ねえ。まさかその妖怪を地上に出すとか言わないでしょうね?」
アリスさんが険しい顔をする。
確かにそれは気がかりな事だな。
「流石にそれはしません。幻想郷のルールに違反するでしょうし」
「意外ね。平気で破ると思ったけど」
「不当に捕らえられている聖を救出するためならまだしも、今折角出れたのにまた封印されるような真似はしないさ」
「……ならいいけど」
「でも……どうするの本当に?」
「……村紗さんがそんな心配している所を見ると不安しかないんですが」
「私には不安しかないね」
「……どんな妖怪なんです?」
「近寄り難い雰囲気をした妖怪で……確か河童だったかな」
「河童……」
地底に河童が居ないわけでは無いが、偏屈者とは言え嫌われ者と言うほどでは無いだろう。
しかし、何故か頭に浮かんだ。
「……その色はもしかして赤ですか?」
「もしやご存知で?」
「……少しは」
あの時の河童か、唐突に殺されかけた記憶がある。
彼女は本当になんなんだ?
「そっか、それなら都合が良いや。一緒に来るかい?」
「……遠慮しておきます」
この前の事を考えると何も考え無しに行こうとは思わない。
さとりさんが居るとしても危険には変わりないし。
「仕方ないね。私達で行きましょう」
「……まあそうだね」
「村紗もそんな嫌ですか?」
「嫌というか……あの子の近くにいるとなんか違和感があるんだよね」
「違和感ですか?」
「うん。何と言うか封じ込められると言うか出来なくなると言うか……なんかむずがゆい」
「それは封印されていたからでは?」
「かなあ?それならいいんだけど」
「大丈夫ですよ村紗。無理そうなら諦めますから。無理強いはしたく無いですし」
「うんそれならいいかー」
「星、あまり村紗に無理をさせてはいけませんよ」
「大丈夫ですよ。村紗の気のせいですよ」
「何をー、だってあの時の私は違和感だらけでおかしかったんだぞー?」
「はいはい。なにがおかしかったのかって」
「だって封じ込められてて禁止禁止ーって叫ばれてるようだったんだよ?」
「……っ!?」
禁止?禁止って言ったか?
「小野寺君。急に表情を変えてどうしましたか?」
「今禁止されてるって言いましたよね?」
「……あっうん、言ったケド」
まさかその言葉を聞くとは思わなかった。
地底にその正体が居るのか……まさかあの子が……
禁止されている
「あがっ……」
かつて妖怪の山で襲ったような頭痛に襲われる。
割れるような痛み、いや実際には自分で分からないが割れているのかもしれない。
「小野寺君!?」
周りの皆が驚いたような表情で此方を見る。
しかし痛みは治らないどころか増す一方で……
「ちてっ……いに……いかな……」
その後自分がどうなったのかは分からない。
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