幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

200 / 238
百九十八話 侵食された日常〜demons feast.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

人里に訪れると言葉を失った。

何が起きているんだ?

 

 

「……つい、さっきまで居たよな?」

 

 

あちこちに瓦礫の山が出来ている……しかしそれ以上に感じたのは……

 

 

「血の匂い?」

 

 

血の匂いを分かるなんて思わなかったが、流石にこれは鼻に残った。

 

 

「なんだよこれ」

 

 

見えては居ない。だけどその匂いがあちこちからする……どれだけの血が流れているんだ?

 

 

「霊夢さんと魔理沙さんを急いで探して来ます」

 

 

「文さん、お願いしました」

 

 

状況を伝え文さんはすぐに飛び立った。

此方もすぐに対応しなきゃならない。

 

 

「すまないね。早苗が居ないのは不味いかもしれないのに」

 

 

「いえ……今出来ることをするしか無いでしょう」

 

 

本来なら来る予定は無かったが文さんの表情を見た諏訪子さんも人里へと来た。

ある程度は戦えるメンツではあるが……

 

 

「警戒を怠らないように。何があるか分からないもの」

 

 

「アリスさん、とりあえず怪我人を探さないと」

 

 

「それは人形達にやらせるわ。まずは寺子屋や命蓮寺に向かいましょ」

 

 

「分かりました」

 

 

慧音さんや白蓮さん達も心配だ。

特に子供も多い寺子屋が今どうなっているのか不安で先に向かう事にした。

 

 

「慧音さん大丈夫です……熱!?」

 

 

「来やがったか」

 

 

唐突に襲われ首を掴まれる。

ヤバい……息が……

 

 

「待て妹紅」

 

 

奥からそう聞こえると身体が自由になった。

 

 

「慧音、何を言って」

 

 

「その人達は違うだろう」

 

 

「……え?」

 

 

驚きつつも妹紅さんは此方を見る。そして青ざめる。

 

 

「すまない……間違えていたようだ」

 

 

「この状況を見るに仕方ないかもしれませんが……何があったんですか?」

 

 

周囲を見渡す。慧音さんに妹紅さんに……いつもよりも生徒が少なく見える。

 

 

「……鬼だよ」

 

 

「……え?」

 

 

鬼……?なんで人里に鬼がいるんだ?

 

 

「萃香さんですか?」

 

 

「いや違うね。普通の鬼だ」

 

 

「……地底にいる筈では?」

 

 

「私達だってそんなの分からない!!なんでアイツらが人里に来やがったんだよ!!」

 

 

「ちょっと待って、今らって言った?」

 

 

「言ったよ……一匹や二匹じゃ無い」

 

 

「……どう言う事だ?」

 

 

鬼が地底から上がってくるなんてあり得ない。

あり得ない筈だが……

 

 

「さとりさんは、地底は何があったんだ」

 

 

「ちょっと落ち着きなさい!!」

 

 

「いや、急がないと……」

 

 

「そっちも大事かもしれないけど、人里だってどうにかしなきゃだし……何より命蓮寺だって心配でしょうよ」

 

 

「……そうですね。すみません」

 

 

地底も大変だと思うが、地上は現在進行形で問題が起きている。

特にこの状況を見て地底へ向かうのもダメか……

 

 

「寺子屋は妹紅もいるし大丈夫だ。あっちの寺の方が多いだろうし向かってくれ」

 

 

「しかし……」

 

 

「これ以上の被害は減らしたい。頼む」

 

 

「行こうか二人とも。そのために人里に来たんだろう」

 

 

諏訪子さんがそう話す。ここにいたままではどうしようもないだろうと。

 

 

「……分かりました」

 

 

何故鬼がいるかや無事なのかなど様々な不安が残るが。それでも立ち止まれないと走り出した。

 

 

「ほんと酷いな……」

 

 

鬼どころか住民の姿すら見当たらない。

全滅とか言わないでくれよ?

 

 

「……後少し」

 

 

命蓮寺に辿り着くと足が止まった。

出来たばかりの筈の寺は倒壊しており、見るも無残な姿になっている。

 

 

「聖さん!?ぬえさん、皆さん!!」

 

 

建物に声を掛けるが反応が無い……

抜け出したんだよな?そうに決まっている。

 

 

「……君達……か」

 

 

「っ!ナズーリンさん!!」

 

 

慌ててナズーリンさんの元へと駆け寄る。

見ただけでも左腕は折れており、足からも血が流れている。

 

 

「アリスさん、治療を」

 

 

「ええ、少し待って……」

 

 

「いやいい……それどころでは無い」

 

 

「それどころでは無いって……この傷はどうにかしないと……」

 

 

「その暇があったら襲撃に備えてくれ……またあいつらが来る」

 

 

「あいつら……」

 

 

「鬼だよ。里の人達の話じゃ地底にいる筈だったのになんでいるんだ!!」

 

 

妹紅さん達と同じように犯人は鬼らしい。

相手として悪過ぎる……出来れば他であって欲しかった気もするが。

 

 

「……聖さんは?」

 

 

「……」

 

 

「ナズーリンさん?」

 

 

「あの中だ」

 

 

寺を指差す。潰れた建物内に居るとでも言いたいのだろうか?

 

 

「え……そこって?」

 

 

「聖は建物から出れずに倒壊に飲み込まれた。助けたかったが……」

 

 

折れた腕、見つからない協力者……ナズーリンでは掘り起こす事は不可能だった。

 

 

「……だったら急いで起こさないと」

 

 

「頼んだ」

 

 

「こっちはやっておくから、話を聞いておいて。今のままじゃ全然分からないもの」

 

 

アリスさんは多くの人形を動かし瓦礫を動かし始めた。

確かに……こうなると作業しても邪魔か。

 

 

「……聖さんなら鬼と戦えた筈では?」

 

 

「……信じてしまったんだよ」

 

 

「信じた?」

 

 

「ああ。鬼と分かり合えるとな。外の有様を確認せずに」

 

 

寺へ駆け付けた鬼達を何も知らずに受け入れてしまった。

疑う事を嫌う彼女は、それゆえに鬼達を止める事が出来なかったと……

 

 

「聖の性格上私達が止めるべきだったな」

 

 

「ナズーリンさん達が悪いわけでもありませんよ」

 

 

「……ああそうだ。悪いのは襲って来たあいつらだ」

 

 

「……そいつらが来たみたいだよ」

 

 

「……」

 

 

諏訪子さんの言葉に後ろを向く。

確かに……人里に居てはならない者がそこに居た。

 

 

「おいおい、まだ人間がいるじゃねえか」

 

 

「鬼……なんで地底から出て」

 

 

「そんなのどうでもいいじゃねえか。テメエらには関係ねえんだよ」

 

 

この量は……一匹だけでも異常だと言うのに何匹居るんだ?数え切れない程だ。

アリスさんの方を見る。流石にこの短時間で白蓮さんを見つける事は出来なかったようだ。

 

 

「……この量は、流石に危険かもしれないわね」

 

 

「それでもやるしかないだろう?」

 

 

諏訪子さんとアリスさんも戦闘準備をする。

時間を稼げれば文さんも間に合うかもしれない……と思っていたが。

 

 

「……嘘だろ」

 

 

まだまだ増える。地底にいる鬼全てが出てきたんじゃないかと思うレベルに思える。

本当に……何があったんだよ?

 

 

「あがっ……」

 

 

当然と言えば当然かもしれないが数が数だ……一瞬で決着がついた。

現在自分の身がどうなっているか分からない。

 

 

「なあ……する?」

 

 

「勿……引……うだ……」

 

 

鬼達が何か話しているのが聞こえる……ただ……何も聞こえない。

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

あれ?本当に聞こえなくなった……なんでだ?

 

 

「耳……?耳……」

 

 

耳が聞こえない……いや、耳が無いのか?

なんで耳が無いんだ……

 

 

「ああ……あれか……」

 

 

目の前に俺の耳がある……それどころか腕まであるぞ……

 

 

「……返……せ」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

目の前で鬼どもが笑ってる気がする。何がおかしいんだよ……何を笑えんだよ……

怒りのまま睨みつけていると目先に手が伸びて来る。

待て、待て待て何する気だ?

 

 

「あ"ああああああああああああああああああ」

 

 

何も見えない。暗い暗い、目が熱くなる……そこに目は無いのに。

 

 

「ゴホッ」

 

 

今口から何かを吐き出した気がした。

何を吐いたかすら分からないが、一気に冷たくなった気がした。

 

 

「……ぁ……ぇ?」

 

 

呼吸が呼吸が出来ない……なんで……

そもそも今の俺には何が出来るんだ?

何が……何が……

 

 

 

……そうか、何も出来ないんだ。

何故かって……もう何も残ってないから。

 

 

そのまま、何も分からずに俺は鬼達に全てを奪われていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

to be continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。