二百一話 異変への備え〜strongest priestess.
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「……やめっ」
悲痛と共に目を覚ます。
場所は……博麗神社だ。少し前まで居たこともあって流石に分かる。
「そうか……」
死んだのか、確かにアレはどうしようもない気がするが……
周囲どころか人里を埋め尽くすレベルの鬼。人間どころか妖怪でも無理に近い。
兎に角、霊夢さんにこの事を伝えないと……
そう思っていると襖が開く。
その姿は霊夢さんだ、鬼とかならどうしようかと思ったが……
「霊夢さん、大変な事が……」
「……」
こちらをじっと見て来る。
何かあったのだろうか?
「あの……霊夢さ……」
「ちょっと待って」
「はい」
よく分からないが止められた。
すると霊夢さんはうんうん唸り始める。
「ほんとごめんなさい」
「えっと……何がです?」
「昨日大分飲んだせいで思い出せないわ。アンタのこと人里から攫ってきたかしら」
「え……?」
少し話が噛み合ってない……ああそうか。死んだんだ。
しかし初対面だとしても異変の事を話さないわけにもいかないしな……
「ああ大丈夫です」
「ならいいけど……ほんっと思い出せない程飲む気はなかったのだけど」
言い訳にしか聞こえないが今はそれはいい。
そう言えば霊夢さん視点で知らない人間が神社で寝てるのはそりゃ戸惑うよな……
「とりあえず落ち着けてないけど落ち着いたわ。探してたようだし何か私に用件があるんでしょ」
「あっはい……霊夢さん異変が発生しました」
「……は?」
「人里に鬼が出ました」
「いやいや無いでしょ。昨日だって人里寄ったわけだし」
「今日ってわけではないんですけど……」
「出鱈目言ってるんじゃ無いわよ。そもそも鬼は地底から出れないの」
「そうですよね……その筈だったんだ」
幻想郷について教えられている時に、鬼は出られないルールだと聞いた。
しかしあの時は何故か出れてる上に本能のままに動く奴やその仕返しをする気だった奴もいた。
「第一、異変は既に起きたばかりなの。しかも二個同時よ二個、だから暫くは起きないでしょ」
「しかし起きたものは……」
「酔った自分のせいで連れて来たと思ってるけど。素っ頓狂な事ばかり言ってるとそろそろ追い出すわよ?」
霊夢さんの目付きが変わる、これ以上はいい加減にしろって目だ。
戻った所で止められないのか?
「っ……そうだ」
そう言えば記憶が消えない妖怪が居たな。
「何よ、まだ何か巫山戯た事を言うの?」
「紫さん、八雲紫は居ますか?」
「……」
少なくとも彼女ならこの状況を多少は分かる筈だ。
多分居るだろうしそれに賭けるしかない。
「なんであんた……って人里の人間だし知っててもおかしくはないか」
「……居ない、ですかね?」
「生憎アイツも暇じゃないしどうでもいい事に出て来るわけないでしょ」
「なら敢えてどうでもいい事に出ようかしら」
その言葉が聞こえて唐突にスキマが現れる。
そしてその中から目当ての人物が現れた。
「紫さん」
「正直、貴方の方から呼び出してくるとは思わなかったけど……まああんなことでもあったなら仕方ないのかしらね」
「紫、何を言っているの?」
「ああ、彼の言った事が実際に起こるわよって話」
「は?二人揃って異変解決の巫女を騙すんじゃないわよ」
「霊夢。残念ながら本当よ」
「だって、そんなの出鱈目じゃない」
「ええそうね。でも異変と言うのは出鱈目で理不尽な物よ」
「……」
その言葉に霊夢さんは黙り込む。
やはり信じ辛いのか飲み込みにくそうだ。
「それで、それが本当だとしてどうしたいわけ?異変を解決しろとでも」
「はい……止めないとまずい異変ですので」
「いえ、違うわ」
「紫さん、何が違うんですか?」
唐突な否定に驚く。この場合賛同だから出て来たと思ったが……
「霊夢は向かわないわ」
「え?」
霊夢さんが向かわなきゃどうしろと言うのか……解決出来る人間は……魔理沙さん?
「だったら魔理沙に譲れって言うの?」
「いいや、それも違うわ」
「だったらどうするのよ?ヤバい事が起きるんでしょ?」
「だからこそよ、霊夢や魔理沙には地上に残ってもらう必要があるわ。対処出来るのは限られてるし」
「だったらどうするの?まさか抑えるだけにとどめて異変を解決しないとか言う気?」
「それはこっちでどうにかするわ。貴女は他の巫女とか皆を呼んで異変に備えなさい」
「異変は起きてから解決する筈なのに……異変に備えるとか、紫が協力するとか滅茶苦茶なの分かってるかしら?」
「そうね。でもそれだけ今回の異変はまずい。死人が出るなんて話じゃないもの」
「……任せていいのね?」
「ええ、勿論」
澄ました顔で紫さんは答えた。
「それじゃ、行くわよ」
「え?行くって何処に?」
唐突に言われてもさっぱり分からないのだが……
「着いてくれば分かるわ。急ぎなさい」
「はっはい」
紫さんのスキマを追いかけながら走る。
「……ほんと、信じていいのかしらね」
二人が行った後に霊夢は呟く。
正直信用ならないけど、信じないといけないかもしれないと。
「……まっ地上で死人が出ても面倒ね。やるしかないか」
面倒だし胡散臭いのは事実。しかしそれで放置出来るほど非常ではなかった。
「魔理沙に……早苗に……後誰かしらね」
紫が人間を残した意味を考えながら出来るだけ対応出来そうなメンバーを考える事にした。
「後で話聞かせなさいよね」
見知らぬ筈だが気になる男と紫、あの二人から散々聞いてやろうと思ったのだった。
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to be continued