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「分からず屋め……」
「あら、分からず屋はどっちかしら?」
未だに時間を稼いでいたようで怒声混じりの天魔の声が聞こえる。
この時間煽られ続けたなら普通なら攻撃に出てそうだが……
「……」
文句を言いつつも、隙を見せないように淡々と睨んでいる。
正直戻るのが怖いのだが……
「やっとかしら」
「……」
当然のことながら紫さんに即バレた。
まあ実際逃げるわけにもいかないのだが。
「君達は……そう言えばコイツに気を取られて見ていなかったが……」
そのまま天魔はこちらを確認し、驚く。
河城にとりがその場に居たからだ。
「……お前、何をしたか分かっているのか!?」
「ええ、分かっています。ただこうしないとと」
「だったらどうなるかも分かるな?」
「天魔様。私が言ったんだよ」
「にとり。本気か?」
「ああ本当だ。私を除け者にする気じゃ無いだろうな?」
「にとりには関係ない事だ。除け者どころか関係ないのにどうしろと?」
「嘘だろう?」
「嘘?何がだ?」
「私の姉が関わっているんだろう?」
「っお前達まさか……」
「いや、蓮司じゃない。言ったのは私だよ」
「……本当に山に関わらないでいただきたいのですが」
「この件に関しては私も同意だからな」
「……貴女も関わっただろうに」
「だからこそだよ。これ以上はダメだあの子がそう言ったんだろう」
「……ぐう」
「天魔様。姉とは?何があったんですか?」
「……はあ。後悔はしないな?」
「勿論。これで何も知らない方が後悔が残るよ」
「……仕方ない。君の姉だが」
流石に状況を理解した天魔は諦めて話す事とした。
「……成程」
「軽蔑したか?」
「いや、どうせ姉がこの山じゃ住めない事は分かるしな……ここはそう言う山だ」
「にとり……」
「当然納得は出来ない。思う所は当然あるけどさ……」
「にとりさん……」
まあ飲み込めるわけなんてないな、姉がいて住処を追い出されたなんて……必要だったとしてもにとりさんが納得する必要なんてないだろうし。
「それで、その姉が地底の鬼達を率いて反乱を起こすと言うわけか……」
「そう言うことよ。だから貴女に協力してほしいってわけ」
「協力か……」
「貴女もこの惨劇……いや異変を止めたくないのかしら?」
「……」
「にとりさん?」
「正直な話。姉のことは知らないが……それでも姉なんだろう?」
「……そうだな。間違い無く姉だ」
「そうか……とんでもないことをしようとしているが、それでも姉なんだよな」
「ええそうよ。だからこそ共に止めましょう?」
「紫さん」
「何?」
「少し静かにしましょ?」
間違い無く悩んでいるだろうし、姉に協力したいと言う気持ちもあるのだろう。
そうなると困るのだが……今まで世話になったにとりさんを無碍にしたくはない。
「分かっているの?敵になられるわけにはいかないって」
「だとしても……」
「君は何がしたいんだ?」
戸惑うにとりさんに尋ねられる。
「異変を止めたいですね。地上で大勢の人が死ぬのは勘弁ですし」
「だったら私の力が必要なんじゃないのか?」
「……それはそうなんですが、それを決めるのはにとりさんですし」
最初から彼女抜きで話し合うのがおかしいって事でもあって探しに行ったわけでもあるしな。
だからこそ、彼女が嫌だと言うのなら……
「……おい八雲紫」
「何かしら河城にとり」
「お前、私の記憶持ってるんだろ?」
「正確には持っているとは違うけどね、貴女が思い出せないようにしているだけ」
「どっちでも変わらないだろ。さっさと解け」
「へえ」
「何意外そうな顔してるんだよ」
「いえ、問答無用だと思ってたのよね」
「別に、全て思い出してからでもいいだろう?」
「本当にいいのね」
「やけに念押しするな……何だよ一体」
「正直な話、かなり戻っているから莫大な情報で脳がどうなるか分からないわよ」
「……そこまでなのか?」
「……はい、そうですね」
「そこで何故お前が返事するのか分からないが……そこまでヤバいか」
「だからこそもう一度聞くわね。どうするの?」
天魔が後ろで不安そうな顔をしている。
やっぱ山の皆は大切なんだなと。
「……聞く」
「にとりさん……」
「そんな心配そうな顔をするな。正直私がどうすればいいのか確かめる為でもあるんだから」
「……分かりました」
「それじゃあ」
紫さんが何かをし、にとりさんが膝をつく。
それを心配し、慌てて駆け寄る。
「にとりさん……大丈夫ですか?」
「……ああ、大丈夫だ」
「良かった……」
「が……納得は出来ないな」
「納得出来ないですか……?」
「ああ。この事にじゃ無く思い出せなかった自分にだがな」
「それは……」
どう考えても仕方ないだろう。封じていた人がいるのだから。
俺自身も思い出せない事あるのだから俺も悪になってしまう。
「分かってはいるんだよ、無理な事は……それでも蓮司を忘れていた事は納得出来なくて」
「……」
間違っているも正しいも違う気がして何と答えればいいか分からなかった。
そのまま言葉に詰まっていると……
「それで、にとりはどうするかしら?」
紫さんが沈黙を破った。
「ああ、そうだな……天魔様」
「……好きにするといい。もう止めはしないよ」
「有難うございます。それじゃあ……協力するよ」
「いいんですか?」
「蓮司に協力する事は元からずっと決めてた事だしな。それに今回は……姉が居るなら絶対に止めたい」
「そうですね」
アレを止める為に皆集めているんだ。止めなきゃダメだろう。
「一度話してみたいしな。私の姉、河城みとりがどんな人物かも気になるし」
「仲良くなれればいいですね」
「ああ、そうだな」
「さて、これにて一件落着ですか」
紫さんが安堵したように振る舞う。
それが本心からかは分からないが……と言うよりも胡散臭いが……
「ああそうそう紫」
「何でしょうか?まだ何か?」
「一発殴らせろ」
「……え?」
「元はと言えば全部お前のせいで面倒事になったんじゃないかああああああ」
そうして背中のリュックから飛び出したロケットパンチが直撃する……痛そう。
「痛っ、ちょっとやめなさ……」
「まだまだあああああ」
そのまま喧嘩が始まった……止めなきゃダメだろうか?
「あのー」
一応萃香さんに訴えかけるが。
「よし行くか」
萃香さんも参戦し始め止まらなくなった。
とりあえず、心強い仲間は出来たのだが……大丈夫なのか不安になるばかりだった。
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to be continued