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一歩進んで一歩下がる。そんな様子見が続く。
踏み出そうにも牽制されいまいち突っ込みきれない、このままと言うわけにもいかないのに。
「どうしたどうした」
移動はしていないものの、風圧の拳が此方へと飛んで来る。ただの風の筈なのに当たるだけで痛い。
「焦っちゃいけない。ただのんびりもしてられない」
冷静に考える。既に地底の鬼達が知っていると言うことは、地上に上がって来ている奴らも居るのではないかと。
また地上を地獄にするわけにはいかない。
「……」
石ころを拾いぶん投げる。しかしそれは捕まれ握り潰される。
「おいおい、喧嘩だろ?」
「素手だけが喧嘩なのは勘弁して欲しいんですが」
「だったら一方的にやられろと?」
「近付けばこっちが一方的ですしね」
「そうかい、それなら構わねえ」
え……いいのか?
「そっちが折れて突っ込んで来るの待ちゃいいだろ?」
「確かにそう言われると合っていますが……」
「それに、時間が無いのはむしろアンタらだろ?」
「……」
やっぱりそうなのか、なら急がないと。
気を付けなければならない筈なのに、慌てて勇み足気味に近付く。
「来たんなら少しは本気見せようか」
「その前にどうにかしないとなっと」
結構近づいたが未だに準備運動みたいな動きをしている。
ここでどうにかなればいいが。
「一歩」
「蓮司!」
にとりさんの言葉に足を止める。
さっき喧嘩する前に言われた事か。
三歩目に気を付けろと。
「三歩目……か」
さっき言われた事を思い出す。本当に何が……
しかしそれはすぐに分かった。
「天井が……」
小刻みに震えたかと思った途端岩が降ってくる。
慌てて避けようとするが……
「痛っ」
隆起した地面にぶつかる、なんでここまで盛り上がってるんだよ……
「っじゃない」
慌てて上から降って来た落石を避ける……足踏みだけでここまで出来るのかよ……
「本当は地面じゃ無くて弾幕なんだけどな。これもいいだろう?」
「メチャクチャだな本当に……」
一度距離を取らなきゃ、落石が無さそうな場所に……
「そうか、下がるか」
「下がっちゃダメだ」
下がるんじゃ無い、立て直してすぐに落ちない位置から……
「二歩」
にとりさんの制止を聞かず距離を取った所に二回目の振動が起きる。
しかしそれは先程よりも離れており再び巻き込まれる。
「なっ……」
慌てて内側に飛び込むが岩が顔面に当たる。
頭は割れてはいないものの出血する。
「ぐぅ……」
「へえ、耐えるか」
「無茶だっての」
「……大丈夫」
無茶だとかどうとか、決闘が終わった時点で負けたら鬼達が駆け寄って来るのだからここで負けを認めるわけにはいかない。
「まだ、まだやれる」
「そう来なくっちゃな。それじゃこっちも全力だ」
そう言いながら足を振り上げる。
「三歩必殺。さあさあさあ!!」
地面が先程以上に大きく揺れる。
ただもう既に分かった、前に突っ込めば当たらないと。
「よし」
案の定後ろ側の方でメチャクチャな事が起きている。
今までとは違って爆発に近い気もするが……本当に揺らしただけで起きたのかアレ?
「最後の三歩目を避けたか」
「大体分かりましたからね」
「へえ……分かったって言うか」
「……まだ何かあるんですか?」
「いや、正真正銘三歩で終了だ」
「なら、今が……」
「今を読めてないのはお前の方だけどな」
「はっ何……」
落石の方を見ていたせいで慌てて勇儀さんの方を振り向き気付く。
避ける事に集中して目の前に居ると。
「避けたまでは良かったんだがな」
そのまま全力の拳を喰らう。
流石に耐えきれず吹っ飛ぶ。
そのまま、三歩の領域に入り込み頭上に岩が降って来る。
「ぐぅ……」
「悪いな人間、終わりだ」
「蓮司いいいいいい」
にとりさんの叫び声が聞こえる……
ああそうか、今頭上から岩が……ああダメだ。
「……」
痛みはある。ただそれは殴られた腹部に感じるだけであって肝心な頭などには感じない。
何が起きたのかと閉じた目をそっと開ける。確認すると岩が直撃して居ない。
「助かった……?」
運なのだろうか?偶然直撃しなかったと言うなら有難いが……
「うぐ……」
腹を抑えながら立ち上がる。直撃したはずだが貫通がしていないようだ……骨折してないとは言い切れないが。
「蓮司、生きている……無事なのか?」
「驚いたな。拳に岩で確実に仕留めたと思ったが」
「……なんとかですがね」
足を引き摺りながら前進する。まだ動けるから負けでは無いのだ。
「……はあ、はあ」
「その身体でやる気か」
「まだ、終わってないならやるしか無い……から」
「しょうがない、耐えきったご褒美だ。一撃受けてやるさ。一方的も喧嘩としてつまんないしな」
「……」
来た。油断とは言えないが、それでもどうにか出来るかもしれない時が。
ここしかない一撃を浴びせる時が……
「今行く」
先程のように怯えた足では無く、引きずりつつも退かずに直進して行く。そして目の前に辿り着いた。
「さあどうする?」
「奥の手を……」
勇儀さんの目先でお札を使う。何か起きてくれと願いながら。
「……頼みました霊夢さ」
札は燃え上がり辺りに突風を巻き起こす。
予想していなかった勇儀も足が揺らぐ。
「うわっなんだこりゃ」
当然目の前で起きた突風に自分も無事では無く地面へと叩きつけられる。
「がっ……」
痛みを感じつつ、周囲を確認する。地べたから見えた彼女の足を。
「あっ……」
勇儀さんの踵がはみ出たのが見えた。
ほんの少しだったが、目線が低い自分には確認出来た。
「危なかったが、これで終わりか」
「……て」
待てと叫びたかったが満身創痍で声が出ない。
周りもはみ出た事に気付いていない。
「それじゃ。俺達の勝ちって事ですか」
周りの鬼達の歓喜の声が聞こえる……認めてたまるか。
動け、動けよ……
しかしその想いは通じず、既に自分は動けない。
「……ぅ」
悔し涙を流しながら、立ち上がる事が出来ずそのままだった。
もうどうしようもないと思わされていた。
「いいえ。違いますよ」
その声が聞こえるまでは。
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to be continued