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「鬼……でいいんだよな?」
見た目だけ見ればただの少女だ。
しかしここでは見た目なんてアテにならない、散々自覚している。
何より先程から感じる重圧もある上、あの死神が逃げたわけだし。
歪だが角も生えてる……
「近づかない方がいいかねえ……」
草木に隠れながら迂回していく。
少しだけ音は鳴るが……大丈夫と願って。
「うん?」
しかし目の前の少女は何かに反応する。
顔を見るにだいぶ酔っ払ってる筈なのに……
慌てて姿を隠す。
「んー……気のせいか」
なんとかばれなかったようだ……助かった。
今度は注意を払って……
「……え?」
目の前に居た筈の少女が消えた?
目を離したとはいえ一瞬だぞ!?
周囲を見渡す……気配が無いし何処かに行ったようにも見えない。
「……気のせいでは無いよな?」
先程まで居た筈の現場を確認する。
遠目から見えた瓢箪も無くなっている。
「勝手な思い込みか……」
確かに無縁塚にそんな恐ろしいものが居ても困るが……
「見ぃつけた」
「……え?」
そこには何も居ない筈なのに……声がした。
慌てて周囲を見渡すが……やはり居ない。
「何処……何処だ?」
「ここだよここ」
何も居なかった周囲に何かが集まり始める。
集まった姿は……先程の少女となった。
「何……が……」
「はっはっは、驚かせて悪いねえ。そんなつもりは無かったんだ」
「そんなつもりは無かったって……」
「私が呑んでた所でチラッと見えたからねえ。気になって誘い込んだわけさ」
「……ぐ」
そのまま去れば良かったのに興味本位で寄ったのは事実である。その結果……捕まった。
「取って食いはしないから安心しなって」
「それならなんとか……」
正直、危険とは考えていたが食われる考えはしていなかったな。
危険だが友好的な存在と会い過ぎたせいで気が緩んでいるのは事実だし気を締めないといけないことを自覚する。
「まっツマミにもならなそうな人間だしなぁ」
「なりそうな人間とかあるのか……」
「聞きたい?」
「……やめておく」
変に条件を知ってしまった方が絶対怖い奴だし。
「そうかい。まっなんでもいいけど」
酒を呑みながらそう話す。何が目的か分からないな……
「じゃあ俺はこれで」
「まあまあ」
離れようとするが掴まれる。
見た目では信じられないような力で動けない。
「……急ぎますんで」
「まあまあ」
どうやら拒否権はないらしい。
酒の匂いもだいぶキツくなってきたのだが……
「何が目的なんだ?」
「いや、一人で呑むのも寂しいなってわけでね」
「……呑めないが?」
「そんな固いこと言うなって」
「いや……匂いだけでもキツい……勘弁してくれ」
「うぐ……無理強いするとまたあの巫女に叱られるだろうしやめておこう」
「そうして欲しい」
「ただ……肴代わりに話し相手くらいにはなって欲しいねえ」
「それは……」
正直な話、急ぎたいのも事実だが……
「なら聞きたいことがあるんだが」
「ん?どうした?」
「幻想郷の事を教えて欲しい」
「……どう言う事だ?」
酒に伸びていた手が止まる。
此方の話を聞く気はしっかりあったようだ。
「外の人間ってここに居るの珍しいか?」
「外ねえ……その言葉は嘘じゃないか?」
「……?嘘じゃないが」
「ならいい」
……いきなり嘘を疑われた。確かに信じられないかもしれないが少し謎に思った。
「いや……でも待て……生きた人間は珍しいかもしれないや」
……そこら辺に埋まっているが普通人間はここら辺に居ないと……まあそりゃそうか墓場だしな。
「あー……そう言うことか」
「最低限話をしては貰ったが……正直全く分からないからな」
「あー分かった分かった。むしろ都合がいいかもな」
「都合がいい?」
都合が良いことなんてあったか?騙したりするタイプじゃないだろうし……
まさかここらの墓みたいに居なくなっても問題無いからとか言い出すんじゃないだろうな?
「なんだ怖い顔して」
「都合が良いってなんだろうなと」
「あー……そう言うことじゃないさ。私も外の世界が気になったからねえ」
「ああそう言うことか」
「外がどうなってんのかとかは正直どうでも良いんだけど……酒とかは知らないものもありそうだしなと」
「……まだ呑み足りないのか?」
「全然、いくらでも」
「その割にはまだ無くなってないようだが」
「ああ、このお酒は無くならないからね」
「……」
なんか今凄い事言わなかったか?
たださっきから呑んでいて無くなってない以上はそうなのだろうと思うしかないわけで……
「ほんと、幻想郷は出鱈目なものばかりだな……」
「私から言わせりゃ外の世界のが出鱈目だらけだがね」
「……否定はしない」
当たり前となっていたが、正直なんでこんなものが存在するんだって物が多いのは事実だ。
「そう言うのも合わせて聞かせてくれよ?」
「そちらこそ、互いに話せる事を話しきれるように」
目の前の存在は明らかに対峙してはいけない存在なのは理解している。
今回は運が良かったが今後は分からない……ただ死なないと言うのなら続けるしかない。
こんな死ねない化け物みたいなものから戻るために。
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to be continued