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「よう蓮司、酒を持ってきてくれたか?」
あれから一週間程が経ち、萃香さんや周りを通じて幻想郷の事が分かり始めてきた。
その分酒を要求されるのだが……
「余裕はあまり無いからな?」
一応仕事出来る場所を探しながら酒を購入し持って来ている。
中々キツイが、村の人が優しくて助かっている。
「別に良いだろ、ほらちょうだいな」
「萃香の酒のが上質な奴だと思うが……」
「いいんだよ、こう言う酒だって飲みたくなるんだから」
「あの……金……」
「細かい事は気にすんなって」
細かいで済む額じゃ無いのを考えて欲しい……
幻想郷について色々と教えてくれた事には感謝しているが。
「それじゃ、呑もうか。待ってたんだぞ」
……しかしこの鬼はお構いなしである。
まあ分かっていたけど。
「だから呑めないって言ってるんだがな……」
そして呑めないのだからやめてくれとは……
それにその酒は買った奴以上にやばいわけで……
「酒は呑まないって本当に真面目だなあ……」
萃香から聞いた話で一番納得したのは、上位種は自由奔放と言う事だ。
例外は居るかもしれないが、少なくとも今まで会ってきた者達は……紫にしろ、死神にしろ萃香以上に自由に生きすぎてると思う。
「まあ良いだろ?大人への通過儀礼みたいなもので」
「いやそれでも年齢が……ってかその酒はそもそも人間じゃダメじゃんか!!」
「確かに」
「いや確かにじゃなくてな?」
それ呑んだら命の危険とかふざけんなって感じだ。
死なないから良いだろとか言ってきたが、そんな危機あるもの呑もうとするわけがない。
「まあこの酒は人間が呑めたものじゃないし仕方ないけど」
「……」
突っ込む気力も消えてきた。
ダメなものなのに呑むって言ったら嘘つきはダメだーって呑ませてくるんだろうしなあ……
「ああ近付けないでくれ……流石に匂いだけでクラクラするんだ」
「酒の匂いだけで酔ったって?弱いな本当に」
人間でさえ無理なものを未成年でいけるわけが……って。
それを平然と呑んでるのも大概ではあるが。
「キミが極端に強いだけなのもあると思うけど」
「ハハハ、酒に弱い鬼が居てたまるかって言うんだ」
「それは……まあそうか」
御伽噺でさえも鬼は酒に強いのだ。
下戸の鬼など想像も付かない。
「それにだ、呑めば呑む程物足りなくなるのさ」
「現在進行形で呑んでいるのに!?」
「だって蓮司言ってたろ、外の酒について」
「……まあそれは」
確かに目を輝かせていたからついつい記憶にある物を全部言ったが、当然持ってこれるわけがない。
なのに募られると罪悪感が……
「なあなあ、お前に知識があるなら村とかで作れないのか?」
「詳しい作り方までは分からない。何より今の立場でギャンブルはしたくない」
成功すりゃいいが、失敗したら目も当てられない。
一応幻想郷で生きていくのに融通してくれた人達だ、無駄なリスクを負わせたくはない。
「そうか、残念だ……」
そのまま萃香が悲しそうな顔をする……話題を変えるか。
「それで萃香」
「幻想郷の話をもっと聞きたいわけで」
「あー……まあ酒も持ってきたしなあ」
渡した酒を開けて呑む、そのままプハァと息を吐く。
「そういや思い出したが」
「……?」
何だろうか?重要な事か?
今更重大な爆弾を落とすとかだったら少し怖いが。
「蓮司、紫が言っていたんだが本当なのか?」
「何の事だ?」
流石にそれだけじゃあ分からない。
あの妖怪の事正直謎が多過ぎるし。
「異変を起こすって話だ」
「ああ、その話か」
既にその話も彼女にした、その度に笑われるのだが……
「相変わらず疑われているようだが」
「そりゃそうさ。あのサボりが過干渉なのも疑わしい」
「俺だって分からないよ」
萃香から聞いたが相当だったみたいだし。
「ただ、ギリギリで救ってやったから幻想郷で色々やってみろと」
「あー、はいはい……いつもの酔った大法螺だろう?」
分かった分かったと言わんばかりに此方を見る。
そもそも普段から嘘など吐いていない筈だが。
「俺だってこの身体のままは嫌なんだから嘘じゃないって」
「はっはっは、これだけは嘘じゃないって?」
「俺だって、死にたいわけじゃないし」
「だから、やるってわけか」
「……」
「蓮司?」
「……その話だが」
あれだけ決意していたのに悩んでいる。
と言うより……心が折れかけているのもある。
最初は何としてもと考えていたが、萃香含めて肝心な上位種族の面子がお好きにどうぞって感じな時点で本当に効果があるのか不安にしかならない。
それに、躊躇いが発生する事も多々起きた。
「どうした?」
「正直、幻想郷を知り始めて悩みが出て来た」
「成程……ね」
いつになく萃香が聞く気になっているようだ。
「本当は他人なんざ気にするべきじゃないんだろうけど」
異変を起こすってなるなら、それだけの覚悟が必要なわけだが。
「それはそうだねえ。過去に起きた異変達はみんなそうさ」
皆、皆自分の為。だからこそ巫女にとっちめられたと。
正直とっちめられるで済むならまだマシなのだろうが。
「それに怯えたってわけかい?」
「いや違う」
痛い目や死ぬ意味なんて気にしてない。
正直何度も死んで成すべきだと思ってたし。
「……本当に何もされなかったんだ」
「されたかったのかい?」
「……返せる物は無かったけどさ」
「なら良いじゃないか」
外の世界でも無かったわけではないが、いきなり来た人間を素性も聞かずに助けることはそこまで多くはない。
しかも……それが村全体でだ。
「それでどうするか悩んでるって感じか」
「……絶対やるって決めてたんだけどな」
「別に良いだろ、悩んで出した結論のが良いに決まってる」
「……やった方がいいとか、ダメとか言われると思ったが」
「それを決めんのはお前だろ?私が言う事じゃないさ」
「それは、そうか」
「まっそもそも、実際お前が出す結論も予想つくんだけどな」
「それは」
「言わない。さっき言っただろ?」
「それもそうか」
「ただ……今決めるよりも、幻想郷をもっと知った方が良いんだろうな」
死体同然の気味が悪い自分の身体だが、場合によってはこれと付き合ってく必要あるわけだが……雑に決めて手遅れになるわけにもいかない。
決めてしまったらリセット出来るとは限らないんだ。
「村ならまだしも、外は妖怪だらけで危険だぞ?」
「ああ、だが後悔はしたくないからな」
「そっか」
「好きになれるなら、好きになりたいし」
「お前は……いや」
萃香は言いかけた事を仕舞い込んだ。
そこまで思ってる以上は答えなんて出てるだろうと。
「一つだけ言っておくか」
「何?」
「鬼に誓ったその言葉、忘れるなよ?」
「誓ったかと言うと疑問だが……どっちにせよそのつもりだしな」
そのまま萃香と約束して別れる。
そして向かう場所を決めないとなと。
萃香に色々な場所を聞いたし、向かって知っていくべきだと。
「……もっと知って行くっきゃねえな」
そのまま幻想郷へと溶け込んでいく……筈だった。
「面白そうなの見ーつけた」
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to be continued