幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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二百二十五話 決意、そして迷い〜the distorted way for you.

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その翌日、また彼はここへと訪れた。

おかしいわけでは無いのだが、忙しい事もあって連日来る程余裕など無い筈だが……

 

 

「どうした、蓮司?」

 

 

「いえ、特に何も無く来ただけです」

 

 

「そうか……」

 

 

何やら違和感を感じる。

ただそれが何なのか……

 

 

「と言うかお前、また酒持ってきたのか!?」

 

 

「はい、萃香さん。ただ萃香さんのお酒の方が上質だと思いますが」

 

 

「それは確かにそうだが……それでいて、お前は呑まないんだろ?」

 

 

「だから呑めませんって言ってるじゃないですか」

 

 

「いや、それなのになんで持ってきたんだって思ってな……」

 

 

「そりゃ、必要だと思いましたし」

 

 

「私にとっちゃ必要だけど、お前にとっちゃ浪費だろうに」

 

 

「いいんですよ、これくらい」

 

 

「だったらこれでも呑むか?」

 

 

そう言いつつ伊吹瓢箪を渡そうと試す。

 

 

「年齢が……ってか萃香さんのそのお酒はそもそも人間じゃダメでしょう!!」

 

 

やっぱそうだよな、昨日と変わらないようにも見える。

いつも通り、酒は呑めないし反抗的でも無い……おかしな所は無い筈だ。

 

 

「っと悪いな、試したわけだが」

 

 

「何を試したって言うんですか……」

 

 

「いや、唐突に呑んだりしないかとな。出来ないだろうけど」

 

 

「分かってますよ、ああもういつも通りクラクラします……」

 

 

「いつも通りだな」

 

 

「ん?」

 

 

「いやなんでもない、お前はいつも通り酒が駄目なんだなってしみじみ思っただけだ」

 

 

「萃香さんが強いだけでしょう……」

 

 

「ああ、そりゃそうだ」

 

 

やたらめったら心配性になってしまったのだろうか?

何というか……自分がらしく無いなと思う。

 

 

「しかし、こりゃ暫く会えなくなるかね」

 

 

「まあそうですね」

 

 

「また酒持ってこいよ」

 

 

「持って来れたらですがね……」

 

 

「なぁに、お前の事だからなんだかんだすぐ持って来そうだがな」

 

 

「いや、そもそもここに来るかも分かりませんし」

 

 

「ん?」

 

 

何やら噛み合わない気がする。

そもそも自分の聞き方が悪かった気もするが。

 

 

「暫く仕事漬けって事じゃ無いのか?」

 

 

「いや、仕事は辞めてきました」

 

 

「……嘘だろ?」

 

 

仲良くやれていると言っていたし、唐突に辞める理由もあるように思えないのだが。

何より酒を持ってきた以上金じゃ無いだろうし。

 

 

「本当です。幻想郷で異変を起こしますので」

 

 

「……は?」

 

 

何を言い出した出鱈目じゃ無いか。

昨日言ってた筈の事を忘れてなんてわけないだろうし。

 

 

「おい蓮司」

 

 

「どうしました、萃香さん?」

 

 

「……!?」

 

 

そうか今更違和感に気付いた。

さっきからコイツ敬語になってるし、何より呼び方も萃香さんに変わっていた。

違和感を持てなかったのも謎だが、急にここまで変わり果てたのも謎だ。

 

 

「嘘だよな?」

 

 

「いや俺がこのままじゃ死ぬしか無いのは……だからこれだけは嘘じゃないんです」

 

 

「……」

 

 

一体何があった?しかも昨日だぞ……

寝ぼけているなどには見えないが……

 

 

「そうしないと俺が……」

 

 

「待てって」

 

 

「どうしました?」

 

 

「色々と、変だぞ?」

 

 

「変ですか?」

 

 

「昨日何があったんだ……?」

 

 

「何も、無かった筈ですが……」

 

 

「いや……」

 

 

何もかもがおかしいと突っ込みたくなったが、彼の表情から戸惑いを感じる。

本当に何も分からないのか?

 

 

「何やらありそうですが……そろそろ準備しないと」

 

 

なんのと聞かずとも分かる。

聞かずとも分かってしまう。

 

 

「アイツは何もするなと言うんだろうけど……」

 

 

むしろあの邪悪はこの事でさえ楽しんでるのではと思う。

下手すりゃ今回の原因もアイツじゃ無いのか?

 

 

「あの萃香さん」

 

 

「ん?ああ悪い」

 

 

もうすぐにでも行きたいのかと言わんばかりに急かす。

このまま行かせるのは……

 

 

「……恨むなよ」

 

 

「萃香さん何を……」

 

 

「お前が本心かどうか洗脳とかされてんのかどうか分からん、だからこれが一番だ」

 

 

そう言う萃香は巨大化し、目の前の人間を……踏み潰した。

それは一瞬の事であり、潰された本人は何が起きたのか理解すら出来ない、ただ瞬きするようなその刹那で命を落とした。

 

 

「……全て戻ると言えどもお前の中には残るし、私は紫には消させないしな」

 

 

それにあれが本心ならこのまま続ければいい。

死んだところで突き進むだけなのだろうから。

そうじゃない場合は……巻き戻って治って欲しいが……

 

 

「だからと言って殺すしかないのはやり過ぎである事は間違い無いな」

 

 

鬼を理解しようとしてくれる人間なんて居ない。

酒を持って来て呑めないながらも駄弁って、そんな事が出来る人間がいるとは思わなかった。

ただそれは……

 

 

「もしも正気に戻っても、二度と仲良くなる事は無いだろうな」

 

 

私は友と思ったお前を殺した。お前を裏切った。

お前も私に嘘を吐いた、如何なる事情があろうとも鬼に誓った言葉を忘れたのだ。

 

 

「私もお前も嘘吐きだ」

 

 

そうして萃香は酒を呑む……顔に溢して誤魔化しながら……

その直後、世界は再び戻った。

 

 

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to be continued

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