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「紫がそんな事を企んで居たなんてねえ」
お茶菓子を食べながらそう答える。
正直、話している最中に消えて行くお菓子に気を取られかけたがなんとか耐えた。
「聞いてなかったんですか?」
「そうねぇ、初めて聞いたわ」
「幽々子様は信じるのですか?」
追加のお茶菓子を持って来た妖夢さんがそう尋ねる。
「んーまぁ。分からなくはないからねぇ」
「分からなくない?紫様が?」
「ええ。紫なら十分あり得るわねと」
「そうでしたか……正直驚きですが」
「一番幻想郷の事を考えているもの」
「幻想郷の事を?」
たまらず突っ込む。幻想郷の事を考えているならこれはいいのか?
「妖怪の地位向上とは言っていましたが……正直」
はっきり言って胡散臭い。あの時は信じたが今となっては本当にそうとは思えないし……地位向上なんて必要ないくらいに立場もあって、元より妖怪強いしな。
「信じられない?」
「信じられないですし……幻想郷の為になると思えません」
「そうねえ、その理由ならならないと思うわ」
「……理由は思い付いているのです?」
「多分……だけどね」
思い付くのか……自分にはサッパリだが。
「ただ、紫が秘密にしている以上言う事じゃ無いけど」
「そうですか……」
……まあいいか。目的はそれじゃ無いし。
「こちらで異変は?」
「異変……んー」
彼女は少し悩む姿を見せる。
「無いは無いのだけど……」
「だけど、どうしました?」
「紫がそうしているなら、私もそうしようかって悩むわねって」
「……どうなんでしょうね」
あの人の考えなんて全く読めないわけで。
「まあ、やりたくなったらやりましょうか」
「それでいいんです?」
こちらとしては起こってくれるなら好都合ではあるんだが……この人の行動が全く読めない。
「いいのよ。もっと自由にやらなきゃねって」
「はぁ……」
「その時は相談に乗ってちょうだい」
そうのほほん言いながら席を立つ。
「何処へ?」
「お腹すいちゃった。ご飯にしましょ」
話は終わりなのか、本当に掴みどころと言うか掴ませてくれる気がしない……
「……ん?」
いや、いままでお菓子食べてたよな?お腹すいたってなんだ……?
「妖夢〜ご飯はー?」
ああ本当に食べるのか……予想以上だ。
と言うか……そっちの方が優先された気がする。
その後も話そうとしたが食事が優先で聞く耳を持たなかった。
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数日経ったが彼女は何も変わらないし何も分からなかった。
ふわふわしているし、話も上手く続かない。
「異変に関しても進展は無し」
あれから一度だけ尋ねてみたが、あらー、とかそうねーとかしか言ってこない。
気が向けばと言っていた以上は強く言い出すのは違うだろうけど……
「その場その場で言ってる事変わるとかもありそうで……」
ただ可能性がある以上は諦めもつかない。
別の場所とか行って何も起きなかったとかだと困る……特にここはそうそう来れないから。
「……」
一応妖夢さんにも言ってはみたが……
当然幽々子様がやる事に従うだけですと事態の変化は起きる筈も無かった。
「ああもう五月蝿い」
心の中では急げと何度も急かしてくる。
ただ、自力ではこれ以上の手段が無いと無理矢理自分を言いくるめる。
「待つしか無いんだよ」
いつまで……?何のために?
分からない分からない。
「何でアレはこんな事を……?」
……え?
アレって何だっけ?
「ダメだ分からない」
そのうち思い出せるだろう。
無理だとしてもキツくてもやらなきゃいけないんだから自然とまた浮かぶ筈だ。
「いっそガツンと……」
言えるわけは無い。言えたとしても効果はあると思えない。
もやもやしつつ更に数日が過ぎる。
また何も変わらない一日だと思っていた。
しかし彼女の方から声を掛けてきた。
「ちょっといいかしら?」
「どうされました?」
いつものようにニコニコはしている。
ただ雰囲気は異なり、真面目さを感じられ少し身構える。
「本当に起きたわねって」
「起きた?」
考えられるとしたら……一つだが……
「吸血鬼達が異変を起こした」
紅霧異変……もうその日になっていたのか。
ここからじゃ全く確認出来なかった上に時間感覚もズレて分かり辛かった。
「しかしそうね、そうなのね」
「あの……」
勝手に納得されても困るのだが……
此方からしたら何も分からない。
「一つ聞いていいかしら?」
「どうぞ」
むしろ聞いてくれないと分からないので……
「異変を起こして、その後どうするの?」
「その後ですか?」
その後と言うのは異変の目的だろうか?
「生き返る為にやっているのだから生き返るでは?」
「ああいやそう言う事じゃなくてね」
笑顔も消えてスッとした顔になる。
「異変がそのまま成立してしまったらどうするの?」
「成立ですか?」
「ええ、妖怪が異変を起こして人間が解決する」
「それが幻想郷のルールですね」
「だったら異変が解決しなかったらどうするのって?」
「それは……」
そんな事あり得るのか?
「幻想郷がずっと紅霧に覆われたら?」
「……フランさんが行動出来るようになる?」
突拍子のない事を言った気がするが。
彼女の目的はそれだしむしろ都合がいいとも思える。
「そう、ならもしもその異変で人が死ぬとしたら?」
「……」
人が死ぬ、有り得るのかと思ったがそもそも妖怪が何かしでかす時点で十分有り得る事だ。
しかし誰かが……
「異変ってそう言うものなの、それを理解しなきゃダメよ」
「分かってる。分かってなきゃやれっこない」
一度歪んでもう止まるなんてしない。
しちゃいけないのだから。
「私はね。したい事があるの」
「それは……」
やっと出て来た彼女の本音。むしろやりたい事があったのに驚いた。
「手伝いますよ。それが目的でしたから」
「いいえ」
「いいえとは?」
「そこまで貴方を信用出来ない。それだけの事をやろうとしているから」
「それだけの事……」
「貴方と同じよ。私は蘇りたい」
「蘇る方法があるんですか!!」
その言葉に食いつく。いや食いつかない方がおかしい。
「私だけだけどね」
「そうですか……」
残念と思う半分。生き返る方法があるのは助かると考える。自分にも使えるかもしれないし。
「ただそれには代償があるの」
「代償ですか?」
「多くの人間が大変な事になるわ」
「それは……もしかして死……ですか?」
「さあどうでしょうね?」
ふふふと彼女は笑う。しかし目だけは笑っていない。
「だとしても」
「小野寺君選択肢をあげる」
選択肢……秘密にするかどうとか?
「もしもそれでいいと思うならまた妖夢を頼ってここに来てちょうだい。その時は手伝って貰うから」
「そんな事しなくても自分は」
「今ここで選択を迫る事は脅迫まがいだもの。しっかりとまた来るか考えてちょうだい」
「……分かりました」
「……それじゃあ。もう一つの覚悟を」
もう一つの覚悟とは……と疑問に思っていると身体が軽く。
あれ……それって。
「これは生き返るための私の覚悟。貴方の覚悟も見せて」
ああそうか分かった……あれは俺の……
他人を殺してでもと言う……
「……ごめんなさい」
そこで謝っちゃ仕方ないんじゃ……いや文句すら言わない自分の方がおかしいか。
「貴方にもなんとしてもとの意思があればまた」
その言葉と共に、俺の魂は周囲へと飛び散った。
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to be continued