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姉妹の神様に見送られながら山を登る。
正直神様達も危険と言ってるし本当にこの山はヤバいのだろうけど今更止まらない。
「いやしかし……、これを登るのかあ」
「小野寺さん、早くして下さいな」
「飛べる人たちはいいっすよねえ」
「いや、それは分かってましたよね?」
「分かっていましたけどさ」
二人は空を飛ぶ中追いかける様に山を登る。
勾配はまだ楽な方だが上の方は想像したく無い。
「足元注意しなさいよ」
「そう言えば飛んで居れば足元が大丈夫ですもんね」
「ただしアリスさん、スカート気をつけてくださいねえ」
射命丸さんの言葉にハッとする。
アリスさんが慌てて抑えるが別に見てません!!信じてください!!
「と言うか、このペースだとすぐ夜ですよ?何も分からないままじゃないですか」
「そうは言われても……射命丸さん運べたりしません?」
「出来はしますが……出来るだけ自分の足で歩いて山を見てくださいな」
そうしたい気持ちもあるんですよ俺だって……
ただ富士山かそれ以上のクラスありますよねこの山?
ただ文句よりも足を動かさねばと歩き続ける。
「ここ山って誰が住んでるんです?」
「河童だったり天狗だったり山姥だったり、後は時折神様が住んでるって噂もあります」
「ああ麓の……」
「いえ、彼女達じゃありませんよ」
「だったら山のてっぺんにドーンと構えてるんです?」
「……何故そう思いました?」
「いやあ……神様って上からドーンと構えてるものかと」
「なるほどなるほど」
「もしかして……合ってた上で何か不都合とか?」
「いえ?そんな事はありませんけど?」
「なんだったんですか今の……?」
「いえ、山の上に神様って言うのが興味深かったので」
「え?そんな興味深いことですか?」
神社とか神聖な場所って、階段を果てしなく登って高い位置にって思ったが……
「外の世界ではそんなイメージなんですか?」
「どうですかねえ……なんかふわっと高い場所にあるってようなイメージはありましたが」
「でしたら、この妖怪の山の頂上にもそのうち……」
「あり得るんですか?」
「無いでしょうけどね。この山はそういった類のものも受け付けたく無いでしょうし、妖怪の山自体頂上に何か建ちそうにも思えません」
「まあ……ここまで明らかな高さの山に建てても誰も来ないですから信仰集まらないでしょうしねえ……」
「どっかの神様がこの山の神に成ろうとしても、山の住民が神に成ろうとしても……どっちもどっちで異変と思える様な事ですね」
「異変……」
「あれ?探しに来たんでは無いですか?」
「いや……それでも異変は起きない方がいいので」
「あー、そういった感じでしたか」
「……射命丸さんは異変起きて欲しいんですか?」
「一応妖怪側ですしね……まあ妖怪と言う事を抜きにしても」
「抜きにしても、なんですか?」
「記者な以上スクープが必要なので!」
「あー……」
確かに射命丸さんらしいなとは思った。
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山に入って多少は経ったものの……地形の都合上登り下りを繰り返している内に木の量が増えてきた……
「まさかすぐに森があるなんて思わなかったな」
「小野寺さーん大丈夫ですかー!?」
「大丈夫でーす!!」
「小野寺さーん!!」
ダメだ……森のせいで視界に入り辛いだけではなくて、声がこちら側からはくぐもっている。
なんとか付近を飛び回ってくれているお陰で心細くは無いが……向こうに伝える手段がない……
「と言うか……失敗だったな。声が聞こえる方を追いかけて行っていたが大人しく森に入ったと思ったら出るべきだった」
お陰様でこっちからは大体射命丸さんのいる場所が分かるのに、絶賛迷子だ……どう言う事だよ。
「アリスさんに至っては声も聞こえないし……」
実際は射命丸さんが場所が分からぬまま高速で動き回って叫んでいることが聞こえる理由なのだが、そんな事は気付きもしない。
「と言うか……森は厄なのかもしれないな……」
行くたびに迷う、そう考えると近づかない方がいいのかもしれない。
今回の場合は予想外のケースだったが……地図を覚えたアリスさんの家以外に向かうのは危険なのだろうなと思う。
「上海さんも今回は確実にいない……人形を自分で作っても魂は宿らない。」
運良く山の妖怪を見つけられても排他的な上に妖怪だ……
むしろ殺しに来たっておかしく無いわけで……
「山の麓にあるのは樹海って言うんだっけ……」
確か磁力か何かでコンパスとかも狂って方向感覚も滅茶苦茶で、決して出られない的な……
「……」
慌てて木を揺らしたりするものの、当然気付く素振りはない。
歩いて探しに行った結果これって……って気持ちで凹みながらも少し歩く。
「木だらけ……葉っぱだらけ……最近こう言ったのばかりだな……」
そう思いつつ前も見る、やっぱり葉っぱが……
「……ん?」
ただの葉っぱかと思ったが違う?
緑色で擬態している様で見えなかったが。
人?妖怪?とにかく誰かいる。
「あの……」
「っ人間!?」
「あっすみません……驚かせて」
やっぱここの妖怪達は人間に良い印象を持ってないんだろう。
「急いで人差し指と中指を交差させて」
「え?」
「早く!!」
「はっはい!!」
慌てて急かされて交差させる、一体なんだというのだ?
「えんがちょって」
「えっえんがちょ……」
「もっと大きな声で!!」
「えんがちょ!!」
よく分からないまま叫んでしまった……なんだと言うのだ?
「間に合ったみたいね」
「あの……何が?」
「ちょっとしたおまじないよ、気にしないでちょうだい」
「すっごい気になるのですが……」
「しかしこの樹海に人がいるなんて珍しいわね」
ああ話す気はないんですねわかりました。
「諸事情で妖怪の山に入ることになりまして……」
実際のところは完全な私情だが、それで迷子が笑えないし誤魔化す。
「そうなの……大変ね」
あれ?なんかあまり無碍にされないな……
射命丸さんの言っていたことが適当は無さそうなんだが……
「出口って分かります?」
「分かりはするけど……遠いわよ?」
「いいんです……夜までに山を降りないとダメなわけですし……」
「事情は分からないけど……分かったわ」
「いいんですか?」
「どうして?困ってる人を見捨てろと言うの?」
「いえ、山の人達は排他的って聞いたので」
この優しい人が特別なのか、実は山全体が優しいんじゃと疑いたくなる。
「実際そうよ、人間に優しい妖怪なんて少ないわ」
「えっでも……?ああ貴女のような人が人に優しい珍しいタイプですか」
「私が妖怪に見える?」
「いえ……分からないですけど……実は人間……でも無さそうだけどなあ……」
だったらなんだって話になる。
知能のある獣には見えないし。
やっぱ妖怪なのかな?
緑の髪に赤いリボン、それだけでなく全身を覆う真っ赤な服は何処か人形をも彷彿とさせたが。
「その通り、人間では無いわ」
「では貴女は一体?」
「私の名前は鍵山雛、厄神様をやっているの。厄神様とでも呼んでちょうだい」
「厄神様?」
貧乏神や疫病神とかの一種なのかと考えるが……
「貴方のような厄まみれの人間から吸い取るのも私の使命だから」
射命丸さんの言っていた神様とは彼女のことだろうか?
って言うかですね……
やっぱ予想通りというか何というか……厄まみれなんだな自分っと。
頭を下げてガックシしたのであった。
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to be continued