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思い残す事はあるとは言えいずれは行かなきゃと思っていた。
射命丸さんも危険な場所が多いので小野寺さんも気を付けてと言っていたが……
「では頂上に向かいますよ」
「何も無いみたいですけど危険みたいですね……」
「落ちたら間違いなく死ぬのと、普段の位置よりも空気が更に薄いので心配になることが多いのですよ……」
「ただ、行かないってわけにもいかないでしょう……」
「そうですかねえ……。まあ行くと言われた以上は連れて行きますが本当に気を付けてくださいね……」
「それは……分かってます」
「アリスさんに死んだとか報告したくないですからね……」
愚痴を散々言われながらも連れて行ってもらえた。
いつもよりも捕まっている距離は長いし、呼吸も多少辛くなる。倒れる程薄いわけではないが……
「間も無く着きます、落ちないように」
「はい、気をつけますね。」
色々と言われつつも山の頂上へと辿り着いた。
当然と言えば当然だが、そこには何もない。
「何もない……けど」
「どうされました?」
この場所は知らない、初めてだと断言できる。
ただ……なんだろうこの違和感は。
「大丈夫ですか!?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
一体なんなんだ?分からないからどうしようもないんだが……
「もっと奥の方行きましょう、崩れたりしたら怖いので」
「えっはい」
崩れそうには見えないけど……万が一崩れたら怖いのは事実か。射命丸さんに従おう。
言われるまま進んで行くが、舗装がされているわけもなく足の痛みが少しずつ溜まってくる。
「少し休みますか?」
「すみません……」
1、2km程歩いたかどうかってくらいだが、山の形状が登り降りどころか這い上がったりしなければならない位置もあるために苦労する。
「大きな石ですね」
「鬼がかつて置いたとの噂もありますが……知り得ない事なので……」
「まあ、昔のことまで知ることは難しいですよね」
「実質この山の神様はこの岩かもしれませんね……」
「神様……」
「先程から、どうしたんですって」
「何かが引っかかるんです」
「何かってなんですか本当に……」
分からない、けどなんだ……
地霊殿の時や、麓では感じなかったのに……なんでここに来て?
『神様ってのは高いところでドーンって居座ってるんです、だから神社は高い方がいいのですよ』
「射命丸さん何か言いましたか!?」
「いっいえ……何も言って無いですが……」
今のは……何処かで聞いたことある台詞だが……何処だ?
『え?それでご利益があるのかって?ご利益が欲しいのに来れない人なんてもってのほかだって○○○様が』
そうだ、確かこれを聞いたのは外の世界だ。
何故今思い出すのかが分からないが……
それで確か彼女に今ここで君に祈ればご利益があるのかってふざけて……
『だったら奇跡を信じてみます?○○○○○だって……こす……から。』
思い出せない、確かなんて言われたっけ。
そもそも彼女の名前は確か……
禁止されている
「あ……ああああ“あ“あ”ああ」
「小野寺さん!?何があったんです!!」
「頭が……割れる……」
「落ち着いて……!!落ち着いてください!!」
思い出すな、思い出しちゃいけないいけない。
頭にそう言い聞かせながら悶えている。
何が禁止なんだ……?そもそも禁止ってなんだ?
そう思いながらも痛みのまま……気を失った。
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目が覚める……一体何があったんだっけ?
「小野寺さん!!」
射命丸さんの声で思い出す、そうか気絶したんだった。
「申し訳ありません……」
「貴方は何度驚かせるつもりですか!!」
「気を付けては……いるんですけどね」
「自覚が足りて無いんじゃないですか?」
「自覚って言われても……」
「とにかく今日は降ります!これは決定事項です!」
「分かりました……」
流石にぶっ倒れたとなったらもうダメなのは分かっている。
「空気が足りなかったんですか?」
「いえ……忘れた何かを思い出そうとしてこうなったみたいです」
「忘れた何かって……本当に」
「外の世界での記憶……覚えてたかなって思ってたんですが……抜けがあったようで。それをここに来て思い出しました」
「ここは何も無い場所の筈なのですが……」
「今日は俺もまた倒れそうなんで厳しいですが……またくれば……何か思い出せそうな気がします」
「正直、記憶よりも体の方を大事にして欲しいんですが」
「すぐにとは言いませんが……、またいずれ来ます」
「異変は探さないでいいんですか?」
「探しても見つからない時は見つからないですし……それよりは分かりそうなことをやって行きたいです」
「まあ……確かに知りたい事は分かる事ですし私に止める事は無理そうですね」
「無理言ってしまってすみません」
「モヤモヤを取り払いたいのは誰だって一緒です。分かりました、叶えますよ」
頭痛は引いたものの、流石に今日は継続するわけにも行かず、一度退くことになった。
「では明日は一度休んでください、用があれば来ますので」
「分かりました……」
「それと、くれぐれも夜は外に出ないように……」
「施錠を気を付けます……」
それだけ言うと射命丸さんは会釈して帰って行った。
今日も含めて助けられてばかりな気がする。
「なんで妖怪の山で名前も思い出せない彼女のことを思い出したか分からないけど……通っていれば思い出せるかな?」
禁止されていようが無理にでも暴いてみせる。
何か大切な事の気がしたから……
そう思っていた……
…
「天魔様、一体何故ですか?」
「理由を言う必要はあるか?彼はこの山を汚した」
「人を嫌うのは分からなくも無いですが……彼が何かしたわけじゃ……」
「河童との建造物、知らないとは言わせないよ?」
「……っ!!」
射命丸文もその事実は知っている。
ロボットと言っていたものを山の中で作っていた事を……
「人と妖怪、確かに仲良くする事は出来るだろう。しかしこの山を人間の好き勝手にさせる気はない」
「彼が言うにはあと少しで忘れた事がって……せめてそれだけでも」
「ダメだ、彼を山から追い出す。これは決定事項だ」
「……そんな」
「好きな所に連れて行っていい。だがもう山に立ち入れさせないようにしてくれ」
「……」
言い返す事が出来ずに唇を噛み締めるだけだった。
「それにだ、彼自身間違いなく山に魅入られている。このまま死ぬよりはマシとそう思えばいい」
「……分かりました」
上司には逆らえない、それどころか今の山のトップだ。
それに……彼が危険な山にアリスがいないのに、居続けようとするのも心配に思っていた。
「小野寺さんを山から連れ出します」
それは、少女の悲しい決意だった。
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to be continued