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藤原さんが竹林を駆け抜けて行くのを慌てて追い掛ける。
家で話し合った永遠亭と言う場所に向かうために。
「永遠亭……そこには月人が住んでるって本当ですか?」
「ああ本当だ、そして月に何かするならアイツらしか考えられない」
「永遠亭では何をしてるんですか……?」
「患者の診察とか……病気とか怪我とかの治療をしているみたいよ」
「病院みたいな感じですか」
「病院……はよく分からないけど、薬師の真似事してるみたいよ」
「ここに患者って来るんですか……?竹林深くですよね」
「分からないよ流石に……。ただやりたいからやってるかもしれないしね」
「今日寄る時に、どう言う場所か確認……でも異変の元凶だし嫌な予感しかしないかな……?」
「そもそも輝夜の所なんて利用してもロクな目に遭わないよ?」
「元凶に心当たりあるってような雰囲気でしたし……やっぱり知り合いなんですか?」
「嫌なほどね……」
「……」
その怒りに込み上げた顔に、続けて質問する事は出来なかった。
触れてはいけない気がしたし……
「さて、もうすぐだよ」
未だに竹林が続いているが……終わると言うならばそうなんだろうなと
妖怪達もだいぶ数が減って来たが……あれ?妖怪に見えない誰かがいる?
「あっ!!」
「どうしたの蓮司君?」
「あの兎……!!」
竹林に入った時に糸を切りやがった兎だ……見つけたぞ!!
「ん?どうしたのお兄さん?」
「糸を切った兎だろ?」
「いきなりそんな事言われても困るんだけど……」
「いや……そのせいで迷ったんだからな!!」
「だからお兄さん、どうしたんだって」
「蓮司君、いきなりどうしたの?」
「あっ藤原さん……実は俺がこの竹林に迷う原因になった兎が……」
「だからー!私は知らないって!!竹林は似たような兎だらけだし誰かじゃ無いの?」
「誰か?何を言っている……?この竹林には兎人はもっといるのか?」
「むしろ竹林にしか兎人は居ないからね……集まってるんだ」
……確かに見ただけでついカッとなってしまったが、別人なら冤罪だし、いい迷惑か。
「すみません……確証がないのに疑ってしまって……」
「別にいいよ、私だってこの竹林でそんな事する兎とか許せないしさ」
「……そうなんですか?」
「一応私はここの竹林と兎達のリーダーだしさ」
「リーダーとか居たんですね」
「そうだね……私の名前は因幡てゐ、竹林内ではトップと思ってくれて構わない」
「小野寺蓮司です」
「で、その兎だっけ?私が探しておくよ」
「ありがとうございま……」
「おい」
「おやおや、どうしました?」
「お前だろ」
藤原さんが会話に混ざって来たと思ったらいきなりお前だろって?
「何のことやら」
「確かにこの竹林には兎は多いが、竹林入口に頻繁に来るのはお前くらいだろ」
「……」
「一体何が目的だよ」
「逆にこっちの話さ、何が目的だったのかってね」
「この異変を解決しないとなって」
「させないよ」
「え?」
「お師匠様の邪魔をさせるもんか!!」
そう言って何かを投げ付けられる痛い……やりやがったな!?
「待て!!」
「とっ捕まえて話を聞かせてもらわないとな!!」
そうして二人で追いかける。
しかしそれがてゐの罠だったのか……藤原さんとはぐれてしまったのだった。
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……迂闊だったってよりは、藤原さんが一人でガンガン進んで行ってしまったため、はぐれてしまったのもある。
「急いで合流しなきゃ……」
迷いながら周辺を探る。
何もないと思っていたが……運が良いのか悪いのか何か建物に辿り着いた。
「これが永遠亭……?」
恐らくはそうだろうと思いつつ、建物の周辺を探る。
また兎がいるが、先程の探してる兎では無かった。
「あの……」
後ろを向いている兎に話しかける。
髪の色は紫で、てゐと呼ばれていた兎より一回り二回り大きい。
ただし、耳は同様に兎の耳をしている。
「っ侵入者!?」
「いや……そう言うわけじゃ……。ただ探し人がいて……」
「お師匠様達が人間が来るって言ってたけど……まさかもう来るなんて」
「お師匠様……さっきの兎も言ってた……」
「どうしよう……撃退しなきゃダメなのかな?」
「お師匠様って誰ですか?一体この異変は何が!!」
戸惑っている彼女の肩を掴む、絶対に聞かなきゃならない事だと。
そして……
真正面からその真っ赤な瞳を覗いてしまう。
「ああああああああああああ」
なんだ、何が一体何が起きたんだ?
「瞳を正面から覗いちゃダメなのに」
世界が、世界が何か起きて……
「さしずめ、お前はもう狂っている。って所かな」
狂気を操る程度の能力、この能力の一端ではあるが……彼女の瞳を覗いたものは狂気に襲われると言う。
それを正面から覗いてしまった。
「誰だよ!!誰なんだよお前達は!!」
何かに見られている?笑っている?
来るな来るな、俺をそんな目で見るな!!
「もう声は届いて無いかな、とりあえずお師匠様に伝えて来ないと」
その兎は去っていったが、それさえも気付かない。
ただ悪夢に、幻覚に侵され続けている。
「悪夢だ……こんなのあり得っこ無い……」
先程までの妙な視線が消えたかと思えば……その跡地に、見知った人達の死体が並んでいる。
異変解決に竹林に潜ったであろうアリスさんが……
俺を助けようとして死んだ藤原さんが……
「やだ、そんなの嘘だ!!」
そんな事あり得るはずがない、皆死ぬ様な弱い人達じゃないし……あり得無いはずなんだ……なのになんで目の前に映っているんだよ!!
「悪夢だ、目の前のこれは全部嘘っぱちだ!!」
堪らなくなって走って行く、後ろから声が聞こえながら。
「置いて行かないで」
「このままだと死んじゃう」
先程見た姿は、腹に刃物が突き刺さっていたり……全身が燃え尽きていたり、身体がもげていたり……明らかに死んでいて喋れるわけがないのに……
「なんで置いて行くの?」
何人ものアリスさんが俺に問い掛ける。
落ち着け……アリスさんが何人も居るわけないし、これはただの悪夢だ
まるで本物にしか見えないけど……本物であるはずが無い。
「そもそも文さんがアリスさんは無事だって言ってたんだ……こんな事になっている筈がない」
目を閉じる、それでも脳裏に焼き付いたように目の前に映る。
俺を責め立てる幻聴が聞こえる。
「これは悪夢なんだ……早く終わってくれ……」
終わらない悪夢は、徐々に少年の心を蝕んで行った。
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to be continued