幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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四十三話 乗り越えられなかった夜〜fine souvenir.

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迷いの竹林では、新たに二人の迷子が彷徨っていた。

異変があると駆け付けた二人だが、初めて来る土地に迷うのは道理とも言える。

 

 

「やっぱり知ってる人頼るべきだったんじゃないの?」

 

 

「そしたら遅れるだけだろう?それじゃ負けるじゃんか」

 

 

「その結果がこれだけどね……」

 

 

「……竹林にいる奴をとっ捕まえて聞けばいいだろ!」

 

 

「そうも行かないでしょ……」

 

 

何度も同じ場所を進んでいるような、同じ場所を繰り返しているようなそんな錯覚に追われながら竹林を飛び続ける。

 

 

「おおい、誰だー!」

 

 

「おっと」

 

 

飛び続ける最中誰かが飛んで来て衝突仕掛ける。

慌てて止まって事なきを得たが……いきなりなんだって言うんだ!?

 

 

「いきなりぶつかって来そうになって危ないな」

 

 

「この先は危ないから人間は帰ったほうがいいよ」

 

 

「そんな事言ったって、ここで異変が起きている以上私達には用があるんだよ」

 

 

「貴女達も?」

 

 

「貴女達……って他にも居たのかしら?」

 

 

「っ!!そうだ、貴女達、人を見なかった!?」

 

 

「人って……目の前にいるアンタしか見てないけどな」

 

 

「そうか……何処に行ったんだ……!!」

 

 

「あの、誰か竹林に入ったの?しかも今日?」

 

 

迂闊な人間がいるなとアリスは思う。

……よりによって満月なのだから、里の人間だって気を付けるだろうし。

 

 

「蓮司……何処へ行ったんだ」

 

 

「蓮司……!?」

 

 

「おいアリス……これって……」

 

 

「どうした、二人とも?」

 

 

「その蓮司って……もしかして小野寺蓮司?」

 

 

「……!?、知り合いか?」

 

 

「ええ、彼は此処にいない筈なのだけど……」

 

 

「天狗に言われて異変を見に来たらしい」

 

 

「……魔理沙!!」

 

 

「悪かったって……ただ言ってる場合じゃないだろ!」

 

 

「ええ、探すわ」

 

 

一緒に来た筈がお構いなしに解散して探す。

異変の解決よりも彼が心配だから……

無事で居て、そう思いながらアリスは竹林を走り回った。

 

 

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今度は何を見せられるんだ……

何を見なきゃいけないんだ?

いっそ自分の目を抉ろうかとさえ考えたが……目を閉じても見えている以上続くんだろうなって。

 

 

「また誰かが……」

 

 

何時間経ったのか、或いはまだ何分しか経ってない程度なのかもしれない。

 

 

「いつになったら終わるんだ……」

 

 

狂気が終わることがない……それすらも思いながらも苦痛に悶える。

いっそ死んだほうが楽だろうか?

 

 

「彼女達は本当に死んでいるのか?だったら俺はなんで……」

 

 

徐々に心が溶けて来た、本当に生きているのか疑念に思えて来た……俺さえも生きているのかって。

 

 

「生きている……生きているから苦しいんだろ……落ち着け……」

 

まだ俺は生きている……きっと皆も生きている。

そう願っていると……竹林が燃え始めた。

 

 

「これも幻覚だ……嘘のはずだ……」

 

 

灼熱地獄を思い出す、あの時は動けなくなって……身体が炭になっていって……

 

 

「暑い……暑い……?」

 

 

幻覚だろ?なんで暑いんだ?

そう認識してるから?

それとも燃えている……?

 

 

「どっちみち……本当でも嘘でも……変わりはないか」

 

 

このまま居れば死ぬ……正確には死ねるなのかもしれないが……

 

 

「どうせ死ぬなら諦めたくねえな……」

 

 

立ち上がり走り出す。

竹林の妖怪達が燃えている、助けてって声も聞こえる。

それさえも気にせず通り抜ける……火の無い方へと。

 

 

「こっちは火が無い……」

 

 

燃え尽きずに済む……そう思って思い切りジャンプして飛んだ。

そしてその先は……

 

 

「え……?」

 

 

何も無い?足場がない?なんで?

燃える場所が無かった場所、崖に突っ込んでしまったらしい。

そのまま落下して行く。

 

 

「うわああああああああああ!!!!!」

 

 

地面に衝突し、そのまま潰れる……そうなるかと思われていた。

しかし……そのまま穴に落ち地面より深く落下する。

 

 

 

 

迷いの竹林には噂話がある

竹林には何処かに地霊殿に伝わる通路があると

 

 

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何処だ此処は……それさえも分からない。

身体は動かないし……見える物はまた吐き気がする。

 

 

「こんな動けなくなっても……幻覚を見るのか」

 

 

だったらもう死んでしまいたいと……

何か分からない物が俺を殺そうとしている気がする……

 

 

「来世はどうなるか分からないけどさ……少なくとも俺はもう疲れたよ。」

 

 

来世も幻覚を見続けるのかもしれない……

そしたらどうしようか……分からないや……

 

 

「……誰か?」

 

 

足音がする……誰か近くに来ているのか?

これさえも幻聴なのかもしれない……

 

 

「……酷い怪我ですね」

 

 

「誰かいるのか……?いないのか?」

 

 

「……これは……そうですか」

 

 

何を納得したんだ……?

分かったなら俺を殺してくれ。

 

 

「想起“ファイン”スーヴニール」

 

 

「何……?」

 

 

心から?何かが込み上げてくる。

楽しかった時の記憶。

地霊殿で皆と過ごしたこと。

アリスさんの所で人形の勉強をしたこと。

妖怪の山でワクワクを沢山体験した事。

これも幻覚なのかな?でもこれはさっきまでの死にたくなる様な物ではなくて……

 

 

「助けられなくてごめんなさい」

 

 

「さとり……さん?」

 

 

さとりさんが目の前に居る……居る筈がない……これも幻覚か。

 

 

「久しぶりですね小野寺さん」

 

 

「……久しぶりです」

 

 

本当に幻覚なんだろうか?さっきまでと違ってしっかりと見える気がする。

それと同時に痛みを認識する。

 

 

「……痛っ……なんで痛い」

 

 

「残念ですが、貴方はもう助かりません」

 

 

「そう……ですか……」

 

 

口から、身体中から血が流れるのを感じる。

自分の身体がどうなっているのか分からない……

 

 

「さとりさん……俺は今回は皆を助けられましたかね?」

 

 

「少なくとも、前の周の私みたいに助けられた人は沢山いると思いますよ」

 

 

「それなら……良かった……」

 

 

「……もう喋るのも辛いでしょう」

 

 

「そうですね、眠くて眠くて……仕方ないんですよ」

 

 

寝てはならない。そうは思っているのに……目蓋が既に閉じようとしている。

 

 

「話したい事もありますけど……今は眠りましょう?そして……それはまたいつか、貴方と会った時に」

 

 

「そうですか……さとりさん……有難うございました」

 

 

「私は何もしてませんよ」

 

 

「死ぬ時は、いつも一人だったので……」

 

 

「確かに今回は私が居ますけど……」

 

 

「さとりさ……前の周も今回も置いていってしまってごめんなさ……」

 

 

最後の言葉を話す前に、身体から熱は無くなる。

ゆっくりと眠り始める。

 

 

「……やっぱり、思った通りじゃないですか」

 

 

彼に何回謝ればいいのか、彼を何度看取ればいいのかって……何度も耐えられる物じゃないと。

また家族になりたいとは思った……でもその度に何度も私は泣くんだろうなって。

ただその言葉をグッと堪えて……

 

 

「小野寺さん、いい夢を」

 

 

彼が狂気も何も取り払った平和な日常に戻れる様にと祈った。

 

 

そして世界はまた巻き戻った

 

 

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