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話し相手と言っても何を話し出せばいいものやら……
面白ければなんでも良さそうだが、だからこそ難しい。
「こっちに来てからの話……は興味無さそうだし、外の世界の話は避けたい」
何が起こるか分からないのが一番。
最悪な未来も考えている……
「レミリアさんはそうでは無いと思いたいけど……」
ルーミアさんがかつて言ってた筈だが、外の人間は食べて良いと……
少なくとも吸血鬼である彼女にとって人間を餌とする事は可能だろうし……
「下手を言わず話を続けるか……」
「どうしたの?」
「あえっと……」
咲夜さん、なのは分かるが……この人のことはまだあまり知らない……
「そう言えば名乗って無かったわね、十六夜咲夜、紅魔館のメイド長をしているわ」
銀髪でいかにもなメイド服、カチューシャまで付けた徹底ぶりのメイドさ……
うん?メイド長?
「メイド長……ですか?」
「何か?問題でもあるかしら?」
「いえ、若いなって」
もしかしたら一緒の吸血鬼で若く見えるのかもしれないけど……人間だって言ってたよな?
「年齢だけが全てじゃないもの。なる必要があったから私がなったのよ」
「そうですか、すみません勝手な決めつけで……」
「構わないわ。それよりどうしたの?」
「ああ実は……レミリアさんの話し相手を頼まれましたが、何をすればいいのかって」
「話し相手になればいいのでしょう?」
「いや……何話したものかって……」
「呆れた、話題で困っているなんて」
「実際困るじゃないですか」
「話し相手を勤めるって言った癖に話題で困るとか言ってもどうしろって話なのだけど」
「……下手なこと言ったら命すら危なくないですか?」
「……まあそうでしょうね」
やっぱり……死が隣り合わせなんだよな……正直勘弁して欲しい。
「……お嬢様は外に出られないわ」
「え?前に博麗神社に来てましたけど」
「日傘があったからね。夜はともかく太陽の下を歩けないからそこまで遠くには出られないの」
「確かに……そう言われると弱点も様々ありますね……」
確か流水もダメなんだっけ?
それじゃあ尚更遠くは不可能だ……
「だからその分、紅魔館の図書室とかで……冒険譚を読み漁ってるわ」
「冒険譚……」
「お嬢様が知らない話なら喜ぶんじゃないかしら?」
「……知っていたら?」
「さあ?」
冒険譚は確かにアリだと思うが……さあって怖いんですけど……
「どっちみち逃げ場はないのよ頑張りなさい」
「はい……」
思い浮かぶ冒険譚って何かあったっけと……考えながら、そろそろ呼ばれそうだなと察して部屋へと向かうのであった。
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「あら、来たのね?」
「すみません……時間を間違えました!!」
昼だけど、よく考えたら夜行動するんだもんな……
席につきながらもネグリジェ姿の彼女を見て扉を閉める。
「早く入ってきたら?」
「でも今!!」
「構わないわ、それとも話が聞けないの?」
「分かりました」
観念して部屋へと入る。
普段は館内でも外すことないキャップを外しており少しだけ尖った耳がよく見える。
服装はピンク色のネグリジェ……いや詳しく考えるのはやめよう。変態みたいだし……
「座ったら?」
「では失礼します」
対面の席へと腰を掛ける。
しかし違う違うとモーションをされる。
どう言うことだ?
「そこじゃあ貴方の声届かないでしょ」
そうしてベッドの方を指差し……
「……棺桶?」
「何か?」
「いえ、ベッドの上に棺桶が置いてあって驚いただけです」
「当然じゃないの吸血鬼だもの」
そうだな吸血鬼だもんな棺桶で寝るんだったな。
「ただベッドの上なんですね」
「何かおかしい?」
「ベッドから棺桶が落ちたりしたら大変だなって」
「……大丈夫よ。ええ大丈夫」
「……」
もしかしてよく落ちるんじゃ……と、いや……触れるのはやめておこう。
無事じゃ済まない気がするし。
ベッドに腰掛けるが棺桶のせいで狭い……
「それで、何の話をしてくれるのかしら?」
棺桶に潜りながらレミリアさんは待ち望んでいる。
こうなったら腹を括るしかないと……
「大切な人のために死んでも帰ってくる人の話とかは……」
「どうせ貴方の事でしょ?パス」
「じゃあ一人の少女の冒険譚にしましょうか」
「へぇ、楽しそうね」
初めは御伽噺や童話の類も考えた。
ただ……それは既にこの世界に流れ着いてるかもしれない……
それだと良くない、何故俺が知ってるのかになる。
「その少女は……」
外の世界の漫画やアニメ、これなら流れ着いている事はまず無いだろう。
冒険譚となるとそこまで種類を知っているわけではないが、最悪それ以外に行けばいい。
「えっと……ワクワクはするわ。ただ言っている事が難しいのだけど」
「あー……レミリアさん人形ってあります?」
「……無いわ。正確には持って来れるのが」
「……?」
言っている事が良くわからないが、無いものは無いのだろう。
「それじゃあ布と糸ってあります?」
「それはあるけど……どうして?」
「人形を作ります」
「……作れるの?」
「習ったので」
自分でもバトルシーンとか説明するのは難しいと思ったし、人形があるとちょうどいいかもしれない。分かりやすいだろうし。
「それじゃあ、今日のお話はどうするの?」
「あー……」
確かに話しながら縫うとかアリスさんみたいに器用な事は出来ない。
「今日は作るので……また後日……いや明日って事で」
「……」
やっぱダメだよなあ……
もっと情景とか説明しやすい噺を……
「いいわ、その代わり作ってる所を見せてちょうだい」
「了解しました」
人形劇で使うから見栄えも耐久も良くしないとすぐにダメになってしまう。
だから丁寧に人形を縫う。
「こう言う特技があったのね」
「ありはしますが……説明した所で使うように思いませんでしたし」
「それもそうね」
レミリアさんは縫い終わるまで食い入るように見ようとしていたが、途中で寝てしまったようだ。
そして夜まで何人かの人形を作り上げて、達成感からかそのままベッドに寄っかかるように寝てしまったようだ。
目が覚めた時には、メイド長がナイフを構えながら見てましたとさ。
……生きててよかった。
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to be continued