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パチュリー・ノーレッジ、またの名を知識と日陰の少女
ここの主はそう呼ばれているらしい。
そして……目の前にいるこの少女こそがその人物なのだろう。
俺達が来たのにも気付かないレベルで黙々と本を読んでいる。
「今なら何しても気付きませんよ?」
「……何を言っているんですか!?」
「いいの?好きにしても気付かれないのよ?」
「レミリアさんまで何を……」
「つまらないわね、男でしょ?」
「問題起こすなんざよりマシだと思いますけどね」
「つまらない男はモテないわよ?」
「モテる代わりに命の危機は勘弁なんですが……」
「まあいいわ、用があるのだから呼びなさい」
「……俺ですか?」
「貴方以外に誰が居るのよ」
「……分かりました」
そうして彼女に声を掛ける、しかし反応しない。
「……失礼します」
そうして彼女の肩を叩く、しかし反応しない。
「……どうしろと?」
「さあどうかしらね?」
笑ってるし……これでも気付かないならどうすっかな。
「ほらほら、どうするの?」
「なんでむしろ気付かないんですか?」
「知らないわよ、それで分かったでしょう?パチェは何しても気付かないのよ」
「……むしろなんでそこまでやらせたがるんですか?」
「わざわざ来たのにスルーされるのも癪じゃない?」
「それはどうかと思いますが……」
「それで、どうするのかしら?」
「……こうしますよ」
少女が読んでいる本を取る。
目線で追って行くが、目線外に動いた事でやっと気付く。
「何……誰?」
「小野寺蓮司と言います……ずっと反応が無いためやむを得ずこの対応をとりました」
「……レミィもいるのね。と言うことはお客様と言う認識でいいのかしら?」
「……そうですね、お邪魔させていただいています」
「図書館から滅多に出ることはないけど、よろしくね」
本の虫ではあるものの、常識人としか思えない。
咲夜さんも常識的だが……それ以外のメンツが……ねぇ……
「それで、レミィも来たと言うことは何の用かしら?」
「一応、俺の案内にとは言われましたが……」
「何も無さそう……ではないのよね。用件を手短に言ってくれると有り難いのだけど」
「まあ、それは後にするわ。今は新人も来たしそちらを優先させましょう?」
「……分かったわ」
「別に用があるなら優先していただいても構いませんけど」
「いいのよ、まずは互いに知り合いなさい。パチェの胸を触っただけじゃ物足りないでしょうし」
「触りませんでしたよね!!」
「あらどうだったかしら?」
おい!!勝手に嘘を吹き込んでるんじゃないよ!!
ほら、パチュリーさん俯いちゃったじゃん!!
「してないです」
「そう……」
信じてくれた……?のかは分からないけど今はそう思っておくとしよう
「この図書館を拡張させたって聞きましたが」
「ええそうよ。このくらい無いと本が収まり切らないもの」
「ここまで必要なんですね……」
「これでも足りないくらいよ?」
「うわぁ……」
ビブロフィリアって言うんだっけ?確かここまでの本狂……いや本好き。
「全部覚えられるんですか?」
「当然でしょ?」
「俺、一冊を完璧に暗記するのすら厳しいんですけど」
大まかに覚えているのはあるが、1冊であっても所々抜けが出てしまうだろう。
「それはそれぞれだし仕方ないわ。魔法使いなら頑張って欲しいけど」
「えっと……魔法使いでは無いです」
「でしょうね妖怪さん。なんの妖怪かは分からないけど」
「……人間です」
「え?」
「人間ですが……」
「冗談でしょう?」
「見えないですか……」
「……レミィの婚約者?」
「なんでそうなるんですか!!」
「そうでも無いとレミィに人間のお客様なんてあり得ないわよ」
「相変わらず言われてますね……」
「パチェ、私が何かおかしいとでも?」
「人間は玩具だ餌だと言って下等扱いしている貴方が突然彼をお客様として扱うなんて異常なのよ」
「そうかしら?」
「みんなにも言われているでしょうよ」
確かに言っていたが……友達がってより、人間を対等に扱っている事が異常だったのか……
「それに、貴女に友達が出来るとも思わないし脅して恋仲にでもなったとしか思えないわよ」
あっそっちも間違ってないんすか。
「さあ、どうかしらね。」
「脅されてるなら言ってちょうだい、流石に友人の凶行を黙って見過ごすのもいい気がしないわ」
「酷い扱いじゃない」
「それぐらいの事をしてるのよ……」
なんだか予想以上にやばい事に巻き込まれているんすか俺?
「まあ、どうしようもない時は図書館に来るといいわ。ただし、気付かないと思うけど本は取り上げないで」
「了解しました……」
そう言えば正面から見てなかったが、目尻に涙が溜まってたし本を取られて泣いていた……?
いや流石に読んでた本に感動しただけか……
「それで、貴方も何か読みたい本があるかしら?」
「読みたい本ですか?」
「ありとあらゆる本が置いてあるから、予想していなかった本まであると思うわ」
「それじゃあ外……いや……」
もしかしたら外の世界への手掛かりがあるかもしれない。
実際に出るかではなくて、確認するだけだが……それを今伝えるのは厳しいし、レミリアさんに明らかに聞かれてはならない事柄だろう……それはまた今度にしよう。
「……なんでもある」
なんでもあるなら今の自分にとって何が必要か……
魔導書?人形本?いや違う
避けてはいたが避けては通れない事がある。
「パチュリーさん、永遠亭についての本ってありますか?」
「……あるはずだわ。小悪魔案内してあげて」
「かしこまりました」
「よりにものチョイスで驚いたけど、満足いくといいわね」
「はい」
そうして俺は案内された。
そこは幻想郷の歴史みたいな場所で。年表を始め様々な過去の出来事の本が置いてあった。
「これか……」
そうして……迷いの森や、永遠亭についての本があった。
これで少しは知っておいた方がいいだろう。
今度こそ、あの異変を終わらせるために。
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to be continued