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「小野寺、分かっているかしら?」
「はい……もうすぐですね」
満月が近づいて来ている、もうすぐ異変が起きる。
「貴方の言う通りなら、この後満月が欠ける」
「そうですね……俺は見て来たので」
「嘘だったらどうしようかしら?」
「勘弁してくださいよ……」
「自信があるんじゃないのかしら?」
「ありますけど……春雪異変は起きましたし」
「春雪異変は?ってことは……」
「一つだけ起きていない異変があるんです」
「……何かしら?」
「後にします……今は恐らくは起きるであろう異変に集中して欲しいですし……」
「……分かったわ」
話すべき、なんだとは思っている。
ただ……話せない……地底の異変は……
俺も迂闊だったけど……このお嬢様下手すりゃ地底侵略とか言いそうだしそれは勘弁して欲しい。
「ただ、起きなかった話があったとしても私を動かしたのだもの。起きなかったじゃ済まさないわよ」
「……まあそれはそうですよね」
「安心しなさい、一生従者で許してあげるわ」
「それはいいのか悪いのか……まあ命あるだけマシと考えるべきか」
実際従者になったらどうすんだろと考えつつ、異変が起きないのが一番だが……起きてもこの人なら大丈夫だと感じる。
「……」
「どうしました?」
「一つだけ聞いていいかしら?」
「構いませんが……異変については前に言ったことくらいですよ」
「そうではないの」
「では何か?」
「貴方……前に会ったこと無かったかしら?」
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「……前も話しましたが一度会ってますよ?殺されましたし」
「そうでは無いわ、それよりももっと前」
「もっと前……?いつの話でしょうか」
「紅霧異変、貴方に記憶はあるかしら?」
「いえ……俺は……紅霧異変の後に幻想入りした筈ですから」
「本当に?」
「え?」
「それが本当かと聞いているの」
「……その記憶がないのはおかしいですし……レミリアさんは俺に会ったんですか?」
「分からないわ」
「分からないって……」
「ただ……記憶の齟齬があるの」
「齟齬ですか?」
「ええ……私は確かに自分で異変を起こしたはずなのに……パチェが言うには……私は唆されたらしい」
「……レミリアさんを唆せる人って居るんですか?」
「居るわけないでしょう?」
「でしょうね」
この人を騙す度胸なんてある人が居るわけ無いじゃんと……
いたらその人に最強人類の座を渡してもいいレベルだ。
「一人を除いてね」
「……居るんですか?」
正直驚き以外の言葉が出ないんだが……レミリアさんに物申せる人間がいるのかって。
「貴方よ」
「……俺ですか?」
「ええ、と言うか貴方くらいよ」
物申した覚えはないんだが……それでどうしたんだろう?
「そうですか……」
「だから、貴方は記憶がない?って。」
「いや……紅霧異変を起こしたって……そんなこと言われてもねえ」
「やはり心当たりはないのね」
「……異変を起こす側どころか、解決しなきゃーってしてる側ですし」
「それもそうね」
「だからそれは……俺じゃあないかなって思います」
「そう……分かったわ」
「それでレミリアさんはどうするんですか?」
「うん?何のことかしら?」
「そのような人物がいるとしたら……と」
「まずは探すわ、私の記憶の中からも消えた人間の事を」
「それはまあ……普通ですね」
「パチェの記憶違いかもしれないけど……それが真実なら私には知る権利がある」
「権利……ですか?」
「何故異変を起こさせたのか。何故貴方の記憶が無いのかってね」
「なるほど……ただレミリアさん」
「まだ何か?」
「レミリアさんは何故異変を起こしたか理由は覚えてますか?」
「勿論覚えているわよ」
「聞かせてもらってもいいでしょうか」
「と言っても、予想付くでしょう?外に出るためよ」
「外に……」
「日傘を差せば確かに外に出ることは出来る……ただそれは実際は一歩でも日傘の外に出れば命の危険がある」
「確かに……そうですね」
「だから紅霧を起こした、自分が外に自由に出れるように……」
「……成る程、確かに分かるかもしれませんね」
「あら?自分勝手だとは言わないの?」
「生まれついた種族のせいで自由が縛られるなんて辛いですから」
「……っ」
「どうしましたかレミリアさん!?」
「いや……痛い所を突かれたわねって」
「痛い所?」
「いや、こっちの話よ。気にしないでちょうだい」
「分かりましたが……」
何かを隠しているのは丸わかりだが……わざわざ聞き出す必要性も無いな。
「吸血鬼のせいで日の下を歩けない……それは仕方ないもの。それでも、どうにか出来る可能性があったならしたかった」
「ただ……太陽が必要な種族は存在するし、植物にだって必要……と」
「そうよ、だから私達は博麗の巫女に懲らしめられた」
「五体満足で良かったとでも言うべきですかね……?」
「……異変は自分だけの為を思って起こす。だから異変になるのよ」
「まあ……全員がいいなら解決する必要もないですし、異変と呼ぶかすら分からないですしね」
「月だってそう、必要な種族もいるわ。勿論吸血鬼にとっても満月と言うものは重要だもの」
「確かに満月の日に強くなっているイメージはありますね」
「だから、貴方の意見なんて本当は関係ない。自分達の満月を奪われたのが許せないから私が解決しに行く」
自分のためだけでは無く他の妖怪達を助ける気もあるのだろう。
プライドの高い彼女は絶対言わないだろうけど:
「それに……私が失敗した異変を勝手にこなしたりしたらズルいしね」
「……」
もしかしたらこの嫉妬が理由の大幅だったりするんじゃ?
……やめておこう。
「だから、手に入れた知識を改めて全部渡しなさい。完膚無きまでに叩き潰してくるから」
「頼りにしてますね」
「だから待ちながら、私の帰る場所を作っておきなさい蓮司」
「かしこまりまし……え?」
「あらどうかしたのかしら?」
「今蓮司って……」
今まで小野寺って呼んでいたよな?
これはレミリアさんが認めてくれたってことか?
「初めての人間の友となる事を許すわ蓮司」
「ありがとうございます。レミリアさん」
霊夢さんや魔理沙さんは友達じゃ無かったらしい。
……今気にする事じゃないか。
「友だって言ったのだけど……」
「えっと……レミリア……でいいんでしょうかね」
「ええ」
「それじゃあレミリア、永夜異変は任せた。君が頼りなんだから」
「月兎に蓬莱人。心の底から知るといいわ、吸血鬼の恐ろしさを」
レミリア・スカーレット、彼女と友達にはなったが、彼女に対する恐怖心は絶対に消えることはないだろう。
それが吸血鬼と人間の関係性なのだから。
ただ、怖くもあるが……今はそれ以上になによりも頼もしい存在に見えたのだった。
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to be continued