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ただひたすらに逃げる、危険が迫っていることが分かる。
背後から爆発音がする……まだ遠いが……何処からだろう?
「パチュリーさんや……小悪魔さんや……妖精メイドさん達は大丈夫だろうか?」
他人を気にしている余裕なんて無いが、それでも心配なものは心配になる……
それでも人間では無いし俺よりはマシか……
「なんで……迷いの竹林へ行ったわけじゃ無いのに……迷いの竹林みたいな事をしているんだろうな」
あの時だってそうだ幻覚に侵されつつ出口のない場所を逃げ出した……
今回はむしろ幻覚じゃ無い分タチが悪い。
「……聞こえるか」
後方から爆発音が聞こえる。
距離は感じるが、規模が大きいのであろう……音が凄まじく響く。
「姉妹ってなんだろうな……」
レミリアと全然違うだろと思いつつ逃げ出す。
早く異変を解決してきてくれと思いながら……
「次の曲がり角を……」
本棚を曲がり腰をつく。
本棚を背にして十秒ほど休む、そうしてまた走り出す。
「何を追って来ているんだよ……」
目印なんて無いはずなのに、何故正確に俺の方へと向かってきているんだ?
明らかに音が離れないどころか近づいてきている……
「……見つかったら即アウトかは分からないけど」
逃げろと言われた以上は逃げるしかないよなと。
余計な考えをするとドツボにハマると……そう考えながら走った。
「……一時間くらい経ったかな?」
実際はどれだけ経ったか分からないが、それくらい経ったと思い込む。
そうしないとやっていけないから。
「いっそ対吸血鬼の本とか探したほうがいいか?」
勿論それは願望でしか無いのだが……時間が足りない。
本を読もうものなら捕まりそうだ……
「……弱気でいちゃダメだな」
逃げるのは間に合う、そう思い直しながら弱い気持ちを抑えて走った。
ただ……もう近い、何かが聞こえる。
「あっはっはっはっは」
「え!?」
その嗤い声は……もうすぐ側だった。
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「パチュリー様!大丈夫ですか!?」
「ええ、大丈夫よ」
多少の怪我をしたものの、大怪我などはしなかったようだ。
一方の小悪魔の方は無傷のようだ。
「貴女……無事なの?」
「……そうですね。攻撃はしたんですがスルーされました」
「貴女もなの?」
「……はい、見向きもされませんでした」
「……何処へ向かったの?」
「……図書館です」
「なんで?あの子は何を感じ取ったの?」
「分からないです……ただ……彼について気付いているのでしょうか?」
「そこまでは分からないわよ……そもそも妹がどうやって小野寺蓮司について気付くのよ」
「あり得ないはずですよね……」
「一つだけあるとしたら……」
「パチュリー様、何か心当たりあるのですか?」
「月に狂わされてるのじゃ無いかしら?」
「月に?しかし今日は満月……」
「そう、本来ならば満月なのよ。妖怪達は月が欠けていて力を失っているのだけど……」
「けど……なんでしょうか?」
「力のある妖怪は満月を求めて暴れ回る……レミィだって誤魔化してはいるけど結局欠けた月に狂っているのよ」
「それじゃあ……」
「あの子はどう言う目的で暴れ回るのかは分からない、でもそれを満たしてくれるのが彼だって本能で悟ったのでしょうね」
「そんな……小野寺さんじゃ無理ですよ色々と……」
「図書館に急がないと」
「それでも無視されるんじゃ?」
「無視されてもいいわよ、結局彼一人じゃどうしようもないんだから」
「……それはそうですが。間に合いますかね?」
「間に合わせるしか無いのよ、見つかったら手遅れでしょうし」
「まさか……もう見つかったとかは無いですよね?」
「無いでしょう、空も飛べないし人間な以上ずっと全力疾走は出来ないだろうけど、それでも命の価値は分かって居るでしょうし」
「……でも満月ですから」
「そうね……」
二人は少年の無事を願いながら図書館へと入った。
惨事になっているからこそ場所は分かりやすい、壊れた道を追って行った。
「ちゃんと逃げ切りなさいよ」
「みぃつけた」
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「……はっはは」
目の前に圧倒的絶望がある。
なんだこれは……威圧なんてものじゃ無い、死というレベルな気がする。
「お兄さんだよね?」
「……何がですか?」
「この館で何してるの?」
「レミリアに許可が出て居候させてもらってるよ……」
「聞いてない」
「そりゃ……俺も君と会うのは初めてだしね……」
なんとか出る言葉でギリギリ話す。
正直自分で何を言っているのか分からない……
「まあいいや、今はどうでもいいし」
「そうですか……」
「なんだか満月の筈なんだけど力が出ないんだよね」
「……不調の日は大人しくしてなきゃダメですよ」
「でも魔理沙がお見舞いに来てくれないんだもん」
「あの人は気紛れですからね……そのうちポッと来ると思います」
「えーつまんない」
「そう言われましても……」
「だからお兄さん遊ぼ」
「……」
遊ぼと言う言葉に重圧を感じる……
その瞳は正気じゃ無い、まるで遊ぶ事を強いられているかのごとく狂って見える。
残念だがこれは死んだか?
「何を……して……でしょうか?」
「弾幕ごっこ!」
俺に弾幕ごっこは出来ない……そのまま弾幕に押し潰されて死ぬだけか。
「後少し……耐えないと……」
せめてでもレミリアさんが解決するまで……生き延びないと……
「どっかーん」
少女はそう呟くと同時に何かが潰れるような音がする。
慌てて足を見るがなんとも無い……良かった無事か……
「あ……」
何かを気にしているようだが分からない。
何もなかったなら逃げるだけ……
「すぐに壊れないでねお兄さん」
「え……?」
目の前の恐怖に怯えていたのもあって気づくのが遅れていた。
彼女が何をして何が起こったのかをもっと気を付けておくべきだった。
背後の本棚が倒れ込んでくる。
「まじ……でs ……」
考えるよりも早く動かなければ死ぬ……どうすればいいか分からなかったが……全力で横へと飛び込んだ。
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ーーふぅん、ただの人間の癖に面白いじゃない
ーー誰もが求婚してくるから嫌になったのに、話し相手としてなら貴方は良さそうね
ーーへえ、面白い事をしようとしてるじゃない、私にもそれを手伝えって言うの?
ーーいいわ、ただ一つだけ条件を与えるわ
ーー五つの難題、貴方に解けるかしら?
「……はっ」
気を失ったのは一瞬、まだ生きている。
重圧に押し潰されかけていた意識は、心臓は一瞬痛みのような物を感じて一気に動き出す。
何が……あったのか?
「逃げないと……」
あれ?あしがうごかない?どうなってる?
恐る恐る脚を見てみると……本棚に押し潰されている。
「折れて……いや?折れてるじゃ済まないのか?」
わからない、わからない本棚の底は赤く染まっている……
これは俺が流したのか?
「あーあ、これじゃあすぐに壊れちゃうな」
少女はつまらなそうに押し潰していた本棚を破壊する。
それと同時にこっちへと近付いて来る。
「もー、避けないから壊れちゃったじゃん、ダメだよ」
「脚……」
少女に壊れたと言われて慌てて脚を見る。
まるでそこには何も無いかのように、潰れた何かが目に見える。
「……ははは、嘘だろ」
脚がない……ない……そこに俺の脚はあるはずなのに……
「もう、心まで壊れちゃった?それじゃあバイバイ」
そうしてフランが最後まで遊ぼうとすると……
「あれ?お兄さん?そんな状態でも動くんだ」
脚がなくなって状態でも、腕を使って這いずっていた。
たとえ脚が無くても生きなきゃいけないから。
一秒でも、一瞬でも耐えればそれで異変が終わるかもしれない……
「……最初……から……戦うって……決めたんだ」
レミリア達のように、アリスさんのように戦闘できる力は無い。それでも俺なりの戦いがあるってことは分かっていた。
「そっかそっか、じゃあもっと遊ぼうよ」
「……」
既に答える力も減少している。
思考も動くことに割いている。
「それじゃあ頑張って避けてね、禁忌:クランベリートラップ!!」
少女がそう呟くと弾幕が図書館中に舞った。
それは朧げな少年は別に見えて……
「喉が渇いた……」
血を流し水分が不足している身体には弾幕が果物に見える。
それはまるで名前の通り潤ったベリーのように……
それに手を伸ばそうとする。
「あー、もう終わっちゃうんだ」
本当はそれを取りたかった、喉が渇いた。
ただ……既に手が届かずに諦めて進むことを選ぶ。
しかし、結局はその後自分で取るまでもなく弾幕が迫って……
「コンティニューは出来ないよ」
やっと果実に届くんだってそう思いつつ、それを食べてでも一秒でも生き残らないとって……
「お待たせ、とでも言おうかしら」
弾幕は即座に消え去った。
一体何が……?
「咲夜、治療は後。まずは彼の出血を止めなさい」
「はっ」
感覚さえ失っていた脚が動かなくなる。
時を止められたのだろうか?
「すぐに治療します……しかし妹様が終わるまで待っていて……」
「いいわ咲夜、すぐに治療しなさい」
「しかしお嬢様……」
「蓮司が今の今まで生き延びられた褒美よ」
「分かりました……」
「レミリア……?」
正直前すらも見えないが……それでも帰って来たのだろうか?
それなら異変は終わった……?俺は間に合った?
「少し休んでなさい。続きは後で聞かせてもらうわ」
「お姉様帰って来たの?遊ぼう遊ぼう!」
「フラン、ダメじゃ無いの。図書館を壊しちゃ」
「だって暇だったんだもん!」
「満月の日は……、そうねフラン、退屈にさせちゃってごめんなさい。ただ貴女に壊されたく無い物を壊されかけたし……貴女にも少しお仕置きが必要ね」
「そんなのはどうでもいいよ、遊ぼ!」
既に小野寺への興味は一切無くなっている。
追われたら面倒だったが、こっちに集中出来そうだ……
「それじゃあ来なさい、少しお灸を据えてあげるわ」
「わーい、楽しみー」
理解をしていないように返答をされる。
「ふふふ、こんな月も丸いから」
「楽しい夜になりそうだね!」
「煩い夜になりそうね」
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to be continued