幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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六十六話 記憶のカケラ〜teddy bear.

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「人形作りを教えて欲しいの」

 

 

「???」

 

 

アリスさんに唐突にそんな事を言われた。

いや、どちらかと言うと教わる方は自分なんじゃ?

 

 

「え?俺がですか?」

 

 

「他に人形を作れる人なんて居ないわよ」

 

 

「そう言われると……そうですが」

 

 

「だから、教えてくれないかしらって」

 

 

「アリスさんに教えられる事ってあるんですか?」

 

 

「あの子について教えて欲しいのだけど……」

 

 

「あの子って誰ですか?」

 

 

「えっと……クマの……」

 

 

「ああ、テディベアですね」

 

 

「そうなのかしらね……?お願い出来るかしら」

 

 

「分かりました」

 

 

今回は教えるのでは無くて、自分が作ってみる。

自分が成長したのも見せたいし。

 

 

「さて」

 

 

黙々と縫って行く。

まだ一つに集中しているので返事が適当になってしまうのが課題だが……

 

 

「やっぱ丁寧ね」

 

 

「……」

 

 

「前のは覚えてないけど……今回、貴方が作っている所を見るの初めてだから……本当に、驚かされるばかりだわ」

 

 

「そうですか?」

 

 

手を止めてアリスさんの方を見る。

そんな出来なのかは不安しか無かったが……

 

 

「どうしたの?」

 

 

「いや……褒められるのが嬉しくて」

 

 

「レミリアは褒めてくれないの?」

 

 

「いや、褒めてはくれますが……やっぱ師匠からって言うのは特別でして」

 

 

「本当に師匠だった事思い出せないのが残念で仕方ないわ」

 

 

「……欠片すらも思い出せません?」

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

「いえいえ、こっちとしては……」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「いや、なんでもないです」

 

 

また会えてよかったと、今更どの口が言えるのだ……

こっちは異変解決をしてもらってる側なのに勝手して死んで……よくそんな事が言えたなって話だ……

 

 

「……だから、いいんだ」

 

 

「……辛いなら話して構わないからね。勿論話したくないなら無理やりとは言わないけど」

 

 

「有難うございます……」

 

 

だからこそ……辛いのだ……

その後は何も言わずに、人形作りに集中した。

 

 

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「出来ました」

 

 

「家に置いてあるのと比べても、やっぱりどっちも可愛いのだけど……後で私も作ってみようかしら」

 

 

「俺もアリスさんが作ったの見たいです」

 

 

「数日あれば作れると思うし、出来を見て欲しいわね」

 

 

アリスさんのぬいぐるみは一度見たし明らかに出来が良かった。

確かにそれはもう見るまでも無いのだが……

 

 

「ああそうだ、アリスさんどうぞ」

 

 

「いいの……?」

 

 

「むしろ二匹目になってしまいますし、そっちがいいのなら……ですが」

 

 

「構わないわ、ありがと……」

 

 

アリスさんに渡そうとすると……

 

 

「蓮司、いるかしら?」

 

 

「レミリア?」

 

 

「あら、ちょうどいいじゃない」

 

 

「うん?」

 

 

「蓮司そのぬいぐるみ、貰うわ」

 

 

「え……?」

 

 

「フランが癇癪起こしちゃってね……」

 

 

ああそうか、フランさんか……

なら仕方ないのかな……

 

 

「しょうがないわ、私は客だし主人優先よ」

 

 

そうだ……だから仕方ないのだ。

人形をレミリアさんに……

 

 

「レミリア、ごめん」

 

 

「え?」

 

 

気付けばレミリアに謝罪していた。

レミリアもアリスさんも……自分でさえも驚いてる。

 

 

「小野寺君……私は……」

 

 

「アリスさんに渡すって約束したんたんだ。だから……」

 

 

「今の優先は私じゃないでしょ!!」

 

 

「一度決めた事は覆さない……」

 

 

「……これでムキになられるのは予想外だけど。分かったわ」

 

 

「レミリア!!」

 

 

全力で頭を下げる、感謝してもしきれない。

 

 

「ちょっと……じゃあ代わりの物はどうするのよ」

 

 

「私のコレクションから出しておくわ」

 

 

「いいのかしら?」

 

 

「構わないわ、その分新しいのを二人に作って貰うもの」

 

 

「なるほど、それは名案だ」

 

 

「……万が一満足してくれなかったらアリス、お願い出来るかしら?」

 

 

「分かったわ、向かえばいいかしら?」

 

 

「ええ、最近ちょっと暇そうではあるし時折癇癪起こすけど……それでも満月が終わって落ち着いてるから」

 

 

「彼女も、落ち着いてるといいわね」

 

 

「あの……」

 

 

「どうしたの、蓮司?」

 

 

「その時、俺もフランさんのとこついて行っていい?」

 

 

「……は?」

 

 

「前に俺、言った通り……今、彼女と話すことが出来そうだと言うなら……」

 

 

「だからフランとも話したいと?」

 

 

「……ダメか?」

 

 

「死ぬ気なの?」

 

 

「いや、そんな気は一切ない」

 

 

絶対に死んでたまるか、アリスさんとまだまだ話す事あるし……

 

 

「だったら死なないとでも思ってる?」

 

 

「紅魔館はそもそもいつ死ぬか分からないとすら思ってるし」

 

 

「……そう言われると痛いのだけど。でも貴方脚がないじゃない?」

 

 

「一人じゃどうにも出来ないけど……どうか」

 

 

「小野寺君、レミリアの好意に甘え過ぎてない?」

 

 

「過ぎてるのは俺自身が一番……でもこのままでいたくもないんだ、お互いが仲良く出来ないままってのも……」

 

 

「蓮司、貴方は会って何がしたいの?」

 

 

「レミリア、妹さんに渡すぬいぐるみ、作ってもいいかい?」

 

 

「目の前で?」

 

 

「目の前でかな」

 

 

「理由は?」

 

 

「仲良くなりたいは言った通り、後は保身もある」

 

 

「保身?」

 

 

「ただの獲物って認識を、人形を作れる人になれれば少しは生きながらえられるかなって」

 

 

「面白さだけは認めるわ。……数日内に決めるからその決定に従いなさい」

 

 

「……ダメな可能性あるのか」

 

 

「当然でしょ、家主に逆らう事ないように」

 

 

「考慮してくれるだけでも有難い……」

 

 

「それじゃあ後はお若い二人に任せて……かしらね?」

 

 

「俺で遊ぶなああああああ!!」

 

 

「ふふっ」

 

 

一言笑ってそのまま去ってしまった。

畜生……俺で遊ぶなんて酷いや!!

 

 

「と言うわけでアリスさんどうぞ」

 

 

「……と言うわけでじゃないでしょ」

 

 

「すみませんが、今回は絶対に変えませんので」

 

 

「……強情ね」

 

 

「ってわけで受け取ってください!!」

 

 

溜息を吐きながらも受け取ってくれる。

紆余曲折したけど、アリスさんの元に届いて良かった。

 

 

「全く貴方はっ……」

 

 

「アリスさん!?」

 

 

一瞬だけ歪んだような顔をした……大丈夫だろうか?

 

 

「大丈夫よ」

 

 

「それならいいですが……」

 

 

「しかし……今回の熊のぬいぐるみは誰にも取られなくて良かったのかもしれないけど……」

 

 

「え?記憶が……?」

 

 

さっき頭痛のような仕草だったが……記憶が戻ったり?

 

 

「完全にじゃないわ、ただそう言うこともあった気がするって思えただけで……」

 

 

「そう言うこともあった気がするって……」

 

 

「記憶が塗り潰される……は違うけど、あったような気がするってね」

 

 

「……それ、大丈夫なんですか?」

 

 

あの日の言葉から、記憶の中に俺が全く居ないとは思わなかったが、思い出してくれるのは嬉しい。

ただ同時に……それで消えちゃいけない記憶とか消えてしまったらどうかとは思う。

 

 

「ええ、大丈夫よ」

 

 

本当は思い出して欲しい、ただそれで塗りつぶしてしまったらどうなんだろうと思う……

本当にこのままでいいのかって。

 

 

「なら……いいですけど」

 

 

「弟子との記憶を思い出せない方が正直最悪だからね」

 

 

「分かりました」

 

 

「そんな暗い顔しないの、私が望んでるんだから」

 

 

「そうですね……」

 

 

正直な話をすれば、思い出して欲しいし……無理をして欲しくない。

何が正解なのかは俺には分からない。

 

 

「アリスさんが無事でありますように……」

 

 

ただそれを一番に願うだけだった。

 

 

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to be continued

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