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「は……?」
「お前がこの里の雪を降り続けさせている妖怪だって言ってるんだ!!」
何を言い出しているんだこの人は。
俺は人間だ、見れば分かるだろう?
確かにルーミアさんとかみたいに人間に見える妖怪は分かるが……わざわざ弱くなる必要ないだろうと。
「そんなこと出来るわけがないだろう!!」
「去年まで不作も蝗害も無い!雨は降れども台風すら来ないこの里に雪が降り続けているのはおかしいというんだ!!」
「それは知りませんよ……」
あの人が言ってた通り村では災害なく暮らせて来れたと。
ただ、実際にどうであったかは知るわけ無いんだからどうしようもない。
「この異変が起きたのを我々は疑った、そしてその時聞いた話がより確実になった」
「妖怪である理由ですか……?」
「お前がルーミアに食べられず、それどころか案内された……おかしいだろう?」
「言いがかりですよ」
一度喰われた記憶がある。だからこそ生き延びようとして生き延びたのにそれはあんまりだろう。
出会わないように逃げただけだって話だし。
「残念だが我々はお前が我々を殺しに来た妖怪としか思っていない」
「出てけって言うんですか……?」
正直この雪の中、違う里まで辿り着ける自信がない。
ただ諦めず運が良ければと言ったところか……
「いや」
「良かった、弁明は聞いてくれそうですし、雪で死ぬこともなさそ……」
「お前は殺す。里を守るために」
「嘘ですよね……?」
殺害宣告に言葉を疑う……嘘だろ……そんなことが……
そもそも罪が重すぎやしないかと訴える。
「待ってください!!流石に妖怪と確信してないのに殺すのは……」
あの人だけは味方とばかりに止めようとしてくれた。
しかしその言葉すらも通らぬようで……
「里の“総意”だ皆、討ちとれ!」
その言葉とともに皆が武器を持って構える。
慌てて逃げ出す、流石に冗談じゃない。
「追え、絶対逃すな!!」
怒号と共に武器を持った人間が迫る。
慌てて逃げ出すが足に矢が刺さる。
「痛ッ……。」
「必ず追い詰めろ!絶対に生かして逃すな!」
足の痛みも血も止まってはくれないが、足を止めれば死ぬ。
その恐怖心で必死に逃げ出す。
「死んで……たまるか!!」
腕を長槍で刺された。腕から血と共に体温が逃げていくのを感じた。
腹に石がぶつかった。
さすりながら逃げる。絶対に変色しているだろう。
謂れのない罵倒を浴びせられる。
違うと叫びながらも足を動かす。
そうして村の入り口について、そのまま外へと出て行った。
「アイツが外に出て行きました!!」
「追い詰めろ!絶対に逃すな!!」
「ダメです!」
「何がダメなんだ!?」
「アイツが村から出た途端吹雪が強くなりました!!」
「畜生やはり妖怪だったか。逃したのが惜しいな……各自今後は防衛を固めるぞ!!」
「はっ!」
…
寒いと言う感覚はない、むしろ暑いくらいだ。
それも全部身体中が痛いから……痛みで身体が熱を持ち、しかしすぐに冷えていく。
「血が止まったのか……?」
流血していたはずの場所を見る。
そこには、血が止まっているのではなく、凍っている自分の傷口があった。
おそらくもう、傷口から露出した血管を通して、血液の奥底まで固まり始めている頃だろう。
「痛い……ただもう何処が痛いか分からない……」
徐々に神経が鈍ってきたのかもしれない。
それと同時に視力もだんだん落ちてきた感覚に陥る……元から吹雪で見えはしなかったが。
「死んじまうかな……」
もう既に動かなくなってきた身体を見ながら、目の前のどうしようもない事象に諦める。
既に外の世界に帰ることは不可能だろうと思い込んだ。
「これも夢だったら良いのにな……流石にそれはないか」
自分に呆れつつ徐々に脳の判断も鈍ってきて考えるのすら怠くなる。
「もっと器用に生きたかったな」
そう呟いて積もった雪に倒れる。
既に起き上がる力も判断もなくそのまま自身に雪が積もっていく。
そのまま全てが凍り付いて、俺は絶命した。
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「……まさかまた夢なんてオチじゃないよな」
この景色を見るのは3度目だ。
自分がまた同じ場所で目を覚ましたと自覚する。
それと同時に理解した。
「死んだら、元の場所に戻っている」
季節も、見る限り時間すらもここに来た時に巻き戻っているんだろう。
確か……こう言うのって……
「死に戻りって言うんだっけか?」
友人が言ってた、まるでゲームの様に死んだら元の場所に戻る。
セーブしてロードする感覚だと……まあゲームの様にってかゲームそのものに思えるが。
「つまりは……1回目喰われたのも本当ってことかよ」
正直思い出したくもない、こびりつく吐き気を抑えながら考える。
「元の場所からやり直し……普通に考えれば都合がいいかもしれないが……」
失敗すればやり直せる……そう考えれば便利なことには違いない。
ただ……流石にそんな馬鹿げたことはないし、何より何度も死ねるメンタルもない。
「そもそも誰かが覚えてる可能性もある以上変な行動は出来ないか……」
誰かが俺のことを人形の様に作り直して遊んでいるとさえ思った。
これじゃ元の世界に戻ることは出来ないのかなと。
「……」
だったら今やるべき事は……自分を殺した人間への復讐……
「……」
それをする気にはなれなかった。
正確に言うと……何かをする気にすらなれなかった。
所詮何かしても死んでしまえば全てが消える。
それに妖怪だらけのこの世界、生きていけることすら自信がない。
そう考えると生きる気力すらなかった。
「死のうとする気はないが……生きる気も出ない」
どうせ自殺した所で、この地獄が終わるわけでは無いだろう。
だったら何をしたって一緒だ。
好き放題する気力すら出ない。
信じていた者達に裏切られたことも、だいぶ心にヒビを入れた。
そうしてただ空をぼうっと見つめる。
これから俺は何をすればいいんだろう?
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