幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

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七十一話 病に臥す〜vampire disease.

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俺のせいだ。

俺が迂闊だったせいでアリスさんは怪我をした。

もっとアリスさんの方を見ていれば、異変に気付いた筈だ……それなのに。

 

 

「蓮司、アリスの調子はどうかしら?」

 

 

「……まだ、苦しんでいます」

 

 

夜の事故から数時間しか経っていない。なのにアリスさんの消耗は激しく見える。

 

 

「原因は分かったりしたり……?」

 

 

「ごめんなさい、分からないわ」

 

 

「パチュリーさんの方は……?」

 

 

「数時間で見当たらないらしいわ……普段読んでる癖に」

 

 

「いやいや……パチュリーさんが悪いわけじゃ」

 

 

「数日すれば、見つかってくれると思うのだけど……」

 

 

「数日……」

 

 

アリスさんの顔を見る。

顔色は青くなって、苦しんでいるのが目に見える。

治療の時、日光を浴びてから症状は更に悪化したように思えた。

 

 

「まるで私達のようね」

 

 

「私達って……?」

 

 

「日光が嫌いだなんて似ていると思っただけよ」

 

 

「吸血鬼……」

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「いえ……」

 

 

確か、そう言った症状の病気を聞いた事がある気がする……

ただし……名前を聞いた事あるだけで、その病気を全然知らない。

 

 

「……変わるわ」

 

 

「問題ないよ」

 

 

「寝てないでしょう?」

 

 

「一徹くらいは大丈夫、それよりも戦い疲れがまだあるんじゃないか?」

 

 

「……そこまで言うなら分かったけど」

 

 

「ああそうだ、レミリア」

 

 

「何?」

 

 

「今回の件、フランに伝えないで欲しい」

 

 

「とんだ甘ちゃんね」

 

 

「お願いします……」

 

 

「……分かったわ」

 

 

決めつけではあるが、アリスさんは絶対フランさんを恨まないだろう。

俺だって彼女を恨む気はない、悪いのは知っていたのに迂闊過ぎた俺だ……

 

 

「……アリスさん」

 

 

まだまだ話したい事だらけなのに……なんでこんなことに……

 

 

「うぅ……」

 

 

「アリスさん!?」

 

 

うなされているようで足の付いた椅子を動かして慌てて近寄る。

触ってみると熱い。高熱まで加わったのか……

 

 

「タオルを……」

 

 

部屋の近くにいた妖精メイドさん達に声を掛けてタオルと水を持って来てもらう。

 

 

「……熱下がってくれるといいですけど」

 

 

苦しむ彼女を見て、そう願うばかりだった。

 

 

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寝ちゃダメだ……

頭がぼーっとして来たが頬を叩いて目を覚ます。

 

 

「……アリスさんはまだうなされて」

 

 

ただの高熱ではない、原因不明だ。

体調管理などはレミリアがしっかりしてたし、本当に唐突でしかない。

 

 

「こうなるなら医学に精通しておくべきだったな……」

 

 

俺はただ、祈るしかないのは分かっている。

 

 

「あの時は俺が心配させてばかりでしたね……」

 

 

魔法の森の迷子から始まって、妖怪の山でも散々彼女に心配させていた。

 

 

「まさか、同じ部屋内でも心配されるとは思いませんでしたが……」

 

 

今となっては俺の事を考えての事だったって分かったが……当時はドギマギしまくりだったな……

 

 

「人形も教わってばっかで……今回教える側になるとは思いませんでしたけど……」

 

 

確かにあの時もテディベアを教えていたが、あの時作ったのはアリスさんだ。

当時の俺は人形作り出来なかったし仕方ないけど……

 

 

「でも……本当に俺成長したんですからね……」

 

 

流石に雛さんに七色の人形遣いだって言える程ではないが、あの時よりも成長している。

 

 

「だからちゃんと……元気になってくださいよ……」

 

 

泣きそうになるのを必死に堪えながら呟く。

このまま目覚めない事なんてあってはならないと思いながら、拳を強く握る。

 

 

「小野寺……君……?」

 

 

「アリスさん!?」

 

 

少しだけ目を開いた彼女を見る。

思いが通じたのか……?どちらにせよこのままうなされているだけで目覚めないなんて事はなくて良かった……

 

 

「ちゃんと生きているの……?」

 

 

「はい、生きていますよ。アリスさんが死ぬわけなんて無いじゃないですか!!」

 

 

「……そうじゃなくて」

 

 

……?意図が読み取れない。

熱で色々と混濁しているのか、それとも俺が理解出来ていないだけか?

 

 

「小野寺君が……」

 

 

「俺……?俺は大丈夫ですよ?」

 

 

「迷いの竹林で……貴方を探して……」

 

 

「!?」

 

 

また欠片を思い出しているのか?

やっぱり前世の記憶が片隅にあるのか……?

 

 

「アリスさん……それは」

 

 

「熱にうなされながら、頭だけはぼんやりと前世の記憶が浮かんでいたわ。……ふふっ、自分の記憶なのに自分じゃないみたい」

 

 

「ごめんなさい……」

 

 

「なんで謝ってるのよ」

 

 

「今のアリスさんを否定してしまうような気がして……」

 

 

俺がいた記憶が存在する。

俺にとっては嬉しい事だけど、アリスさんにとっては今までの記憶と違うって事だ……本当にそれが良いことなのかと思ってしまう。

 

 

「私が思い出したいって……言ったでしょ?」

 

 

「それはそうですけど……」

 

 

「小野寺君……」

 

 

「起きっぱなしは辛いでしょう、そろそろ寝た方が……」

 

 

「ただいま」

 

 

「お帰りなさい」

 

 

色々と言いたい事はあった、ただそれでもお帰りなさいとだけ伝えた。

少なくとも俺が長い間一緒にいたアリスさんなんだと。

 

 

「今は休んでもらって、元気になったらまた色々と話しましょう」

 

 

「……」

 

 

「アリスさん?」

 

 

「ごめんなさい」

 

 

その口元からは血が垂れていた。

無理させてしまった……いやそれ以上にどうすれば……

 

 

「今誰かを……」

 

 

「……」

 

 

しかしアリスさんは何も答えない。

かろうじて呼吸をしているようだが……もうそれさえも小さくなっている。

 

 

「また……会えたのに……」

 

 

そんなの耐え切れない、思い出してくれたのにこんなのって。

 

 

「……苦しいですよね」

 

 

返事もままならない程だ、相当辛いに決まっている。

ならば……答えは一つだ。

 

 

「もしも次会った時に思い出せなくても構いません。それが普通ですから」

 

 

そうして小刀を取り出す。

 

 

「自分の命を軽く扱ってる癖に、他の人が大変な目に遭うのは看過出来ないなんて自分勝手かもしれませんが……」

 

 

だけど、アリスさんを失ってこの先真っ直ぐに生きていけるとは思えない。

ただ一つだけ、こうなるならもう少し話しておくべきだったと。

 

 

「……レミリアも色々としてくれようとしてたのにごめん」

 

 

来世で、仲良く出来るか分からないけど……それでもやるだけやってみるんで許して下さい。

そのまま短刀を自分へ突き刺す。

 

 

そして世界は巻き戻……

 

 

「家主の話だと、この部屋ね」

 

 

蓬莱山輝夜によって紅魔館へと向かわされていた銀髪の医者がこの部屋へと訪れた。

 

 

「脚の治療だと聞いたのだけど……どう言う惨状かしらこれ?」

 

 

一人はベッドで倒れている。

普通ならその人が頼まれた患者だと思うが、脚の無い患者は車椅子に座って短刀が刺さっている。

 

 

「よく分からないけど……治して話を聞いてから考えましょうか」

 

 

世界は巻き戻らなかった。

 

 

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to be continued

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