幻想郷で死に戻る俺は   作:せかいちっ!

74 / 238
七十二話 本当の再会〜Alice Margatroid.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目を覚ます、ここはいつもの野原ではない?

と言うか……ここは紅魔館だ。

 

 

「……」

 

 

念のため、自分自身を確認するが……

 

 

「脚がある……」

 

 

元通りに戻っている。

納得した、やっぱり死に戻ったんだなって……

 

 

「動く……動いた!!」

 

 

自分の脚が帰って来た事に喜びを覚える。

しかしすぐに、その表情は変わる。

そうだ、紅魔館から出ないと不法侵入者扱いされる。

 

 

「……皆記憶がないから、咲夜さんとかに見つかったら完全にアウトだ」

 

 

そっか、改めて記憶が無いんだと自覚する。

ただ、それ以上にアリスさんが死ぬ事が耐えきれなかった。

 

 

「折角思い出してくれたのに……アリスさんには悪い事したな」

 

 

「本当にね」

 

 

「!?」

 

 

慌てて身体を起こす、近くでアリスさんが椅子に腰掛けていた。

 

 

「アリスさん……?」

 

 

「ちゃんと目が覚めた?」

 

 

「はい」

 

 

正直、現状が理解出来ずに混乱している。

どう言う事だ?

 

 

「どう言う事ですか……?」

 

 

「いや……それだけ聞かれても分からないのだけど」

 

 

「なんで記憶が……?」

 

 

「これは、怒れって流れなのかしら?」

 

 

「なんで……!?」

 

 

マジで状況分かってないんですって!!

 

 

「そもそも、死んで無いわよ」

 

 

「え?でも……俺もアリスさんも……」

 

 

「死んで無いわ、お互い死にかけだったけど……医者が間に合ったの」

 

 

「医者、八意永琳さん……」

 

 

「そうね、私の病気も、小野寺君の脚も身体も全部治療されたわ」

 

 

「……どのくらいで?」

 

 

「貴方は丸一日寝ていたわ」

 

 

「一日で脚が治ったんですか!?」

 

 

「そうね、聞いた話だと咲夜が時を止めていたから、壊れていたけど状態が良かったのがすぐに治った理由みたい」

 

 

「……咲夜さんにも感謝ですね」

 

 

本当に、一月近く時を止めていてくれた彼女には感謝の言葉しか出ない。

負担も相当なものだったろうはずなのに……

 

 

「それじゃあ、永琳さんの所に感謝の言葉を伝えに行きますね」

 

 

「やっと休憩に入れたからもう少し後の方がいいわ」

 

 

「分かりました」

 

 

流石にこっちの都合って訳にもいかないし、すぐに帰るわけでも無いだろう。

もう少し落ち着いてから向かうか……

 

 

「それに、私からも話したい事があるし」

 

 

「アリスさん……」

 

 

そうだよな……記憶が戻ったんだ、俺だって話したい事が沢山あるんだ。

 

 

「小野寺君」

 

 

「はい!!」

 

 

「正座」

 

 

「え?」

 

 

「私、久し振りに怒っているの」

 

 

「……」

 

 

怒気が混じる声に汗が流れる。

これは分かる、まずい奴だ……

 

 

「前の世界だけじゃなくて今回も……覚悟しなさい」

 

 

「分かりました……」

 

 

……流石に覚悟するか、100%悪いのは自分だし。

ベッドを降りて、その場に正座した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「残された人の事を考えた事あるかしら?」

 

 

「いえ……無いです」

 

 

生ききれなくて死んだケースばかりで、残された人を考える余裕なんて無かった。

数日前だけは余裕があったが……それでも……残された人には謝罪しか出来ないなって思った。

 

 

「死んだら皆が覚えてないから、どうせそう思う気だったでしょう?」

 

 

「……そうですね」

 

 

自分の命は軽い、そう思っている。

正確には、知り合いの命が失われるのを納得出来ないから、自分が死ねばどうとでもなると……

 

 

「……貴方が皆の死を受け入れられないように、私達だって貴方が死ぬのは耐えられないのよ」

 

 

「……」

 

 

分かってはいるんだ、それでも納得が出来ない。

 

 

「迷いの竹林で、住人が貴方とハグれたと言われて……私はどうしたらいいのかと」

 

 

「……あの時、アリスさんも竹林に居たんですね」

 

 

正直、怒られると思ったが……心配されたり。不安そうにしていたりアリスさんの顔に陰がある。

泣きそうなその顔は……正直怒られるよりも辛い。

 

 

「貴方は異変に対して諦めないのは覚えている、だけど他人よりも命の天秤が軽いのも」

 

 

「……」

 

 

事実だ。生きようとはするが、代わりに知り合いが死ぬとか言うのなら喜んで命を捨てるだろう。

天秤を……下げてしまう。

 

 

「ここまでだと、正直もう貴方には異変に関わらせたくないのだけど」

 

 

「……それは困りますが」

 

 

「なんであの時教える事は教えきったって言ったのかしらね……まだまだ教えるべき事あるじゃない」

 

 

「えっと……すみません」

 

 

「本当にね……」

 

 

遂に溜息を吐いてしまった……まあ俺が原因だけど。

 

 

「……どうせまた行くんでしょう、付いて行くわよ」

 

 

「いいんですか?」

 

 

「今度は甘やかさないから」

 

 

「……はい」

 

 

「まだ言いたい事はあるけど……いい頃合いだと思うわ。会って来たらどうかしら?」

 

 

「もうこんな時間経ってたのか……分かりました一度失礼します!!」

 

 

部屋を後にする、決して逃げたわけじゃない。

 

 

「はぁ……」

 

 

残った部屋で再びアリスは溜息を吐く。

彼の言い分も分からなくはないのが辛い。

 

 

「生きてて良かった」

 

 

気を失う寸前、自分を刺す彼を見て無事だった事に様々な感情を抱くのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「貴女が八意永琳さんで合ってますよね?」

 

 

「ええそうよ、脚ももう動くかしら?」

 

 

「はい、元あった頃と変わらないくらいには」

 

 

「メイドに感謝するのよ、本当にすぐに治ったのは彼女のおかげなんだから」

 

 

「ええ、本当に感謝してもしきれません」

 

 

「……そう、それならいいの」

 

 

「永琳さんも有難うございました」

 

 

「私は、頼まれただけよ姫様が気に入らなければ間に合わなかっただろうし」

 

 

「気に入ったって?」

 

 

「あの竹取物語よ」

 

 

「ああ……あれで良かったんですね」

 

 

「大好評だったわ」

 

 

「なら良かったですが……」

 

 

アレを気にいる姫様って本当に何なんだろうか?

 

 

「それで、聞きたい事とかはあるかしら?」

 

 

「ああ、ありますよ……アリスさんの病状って結局何だったんですか?」

 

 

「自分よりも先に彼女なのね」

 

 

「本当に心配でしたから……」

 

 

「ヴァンパイア病って知っているかしら?」

 

 

「名前だけは……」

 

 

「まるでヴァンパイアみたいに、日光を浴びると身体が崩れて行く、恐ろしい病」

 

 

「でもアリスさんがなった理由って……」

 

 

レミリア達も驚いてたし、紅魔館でも起きた事が無かったのだろう。

なんでアリスさんだけが発症したのかも気になる……

 

 

「幻想郷特有の病気なのだけど……アリスさんだけが感染したのにも理由があるわ」

 

 

あれ……ヴァンパイア病は外の世界でも聞いた事があるような?

ただそうか、外の世界に吸血鬼はいないもんな……

 

 

「……吸血鬼の血を魔法使いや妖怪が取り込むと発症するわ」

 

 

「人間は違うんですか?」

 

 

「人間は、満月の夜に血を取り込むと眷属になる……気を付けなさい」

 

 

「レミリアはそう言う事はしなそうだが……っと魔法使いや妖怪の場合はどうなんですか?」

 

 

「そこら辺の種族はそれぞれ妖怪、魔法使いなどといった種族であって、血が反発し合うの。ただ結局夜の吸血鬼の血には勝てなくてヴァンパイア病が起きる」

 

 

順応性の高い人間とは違い、妖怪などはそれぞれが独立しており、別種になれないため受け入れられなかった身体が壊れていくと。

 

 

「……あの時フランの血がアリスさんに」

 

 

「満月じゃなくて良かったわね……満月だったらすぐにでも身体が壊れていたでしょうから」

 

 

もっと勉強しておくべきだったかもしれない……

 

 

「だけど、血は取り替えたし、もう抗体を身体に取り込んだから今後は平気よ」

 

 

「……良かった」

 

 

今後アリスさんが紅魔館に来れないかと思ったけど……そんな事は無くて良かった。

 

 

「それで、貴方の方は……特に無いわ。普通に怪我を治療しただけ」

 

 

「それでも驚きなんですけどね……本当に有難うございました」

 

 

「……そう言えば」

 

 

永琳さんが何かを思い出したようだが……

大変な事じゃなければいいけど。

 

 

「本人には伝えてないんだけど……アリスさんの血液を取り替えている最中に不思議な物を発見したわ」

 

 

「不思議な物って……?」

 

 

「頭にも血管があるし、一度頭も切ったのだけど……脳に穴と言うか……スキマって言うのかしらね?何か不思議な物があって……除去はしたけど」

 

 

「スキマ……?」

 

 

一体どう言う事だろう、分からない。

 

 

「脳には存在しない物だから……ただこの先彼女に異変があったら伝えてちょうだい」

 

 

「分かりました」

 

 

一体何があったって言うんだ?

脳だと言うなら……記憶に影響している?

 

 

「永琳さん……」

 

 

「何かしら?」

 

 

「少し質問いいですか?」

 

 

「構わないけど……」

 

 

記憶喪失の例えを出して色々と聞いた。

 

 

「そのスキマが原因かもしれないと」

 

 

「脳にあるって事は可能性も……」

 

 

「興味深いわね……取ったら消えちゃったし調べてみないと」

 

 

「消えたんですか!?」

 

 

「ええ、消えたわ」

 

 

「本当に分からないわね……」

 

 

頭に気に留めておくだけにしよう、そのうち何かあるかもだけど……正直見当が付かない。

 

 

「それでもう一つ、時折思い出したって言ってたわよね」

 

 

「何か理由、あるんですか……?」

 

 

「完全に機能していたわけじゃなさそうなのと」

 

 

「なのと……なんでしょうか?」

 

 

「熱で脳の機能が弱まって、抑える機能も弱まったとかあったかもしれないわね」

 

 

「……つまり高熱が原因と?」

 

 

「だと思うわ。医者な以上高熱で良かったとは言わないけどね」

 

 

「それは……そうですね」

 

 

あの時のアリスさんは本当に苦しそうだったし。

 

 

「それらの件は此方でも調べてみるわ。最後に、お代の方だけど」

 

 

「……」

 

 

足りると思わない、どうしよう……

奴隷にでもなればいいですか?

 

 

「紅魔館の皆にはもう伝えたけど、数日間永遠亭で姫様のお遊びに付き合ってもらうわ」

 

 

「永遠亭……」

 

 

行ってみたかったと同時に、あの兎がいるトラウマの場所でもある。

ただ……呼ばれた以上は行かないと。

トラウマを乗り越えて見せると決意したのであった。

 

 

 

 

人里からだいぶ離れた寂れた場所、一匹の妖怪とその式が辺りを覗いていた。

 

 

「紫様、別の要因が原因で切除されましたが」

 

 

「仕方ない事です、諦めましょう」

 

 

「いいのですか?」

 

 

「ええ、こうなった以上は受け入れましょう」

 

 

「でも、確か彼……」

 

 

「藍、余計な事は言わないように」

 

 

「はっ」

 

 

「別にいいのよ。彼がこれが原因で“不幸”になっても、それも運命なのだから」

 

 

「これより先は、私達は何もせずに見守るだけです」

 

 

「分かりました」

 

 

そう言い残し、一匹の妖怪はクスリと笑うのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

next episodes

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。